[日本と韓国の交差点] 戦争で南北に生き別れとなった「離散家族」探し再開

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韓国と北朝鮮の間で対話が再開した。8月26日、ケソン公団に入居している企業の関係者537人が、公団内の設備点検のため同公団に入った。午前8時から午後6時30分の間、業種別にそれぞれ9時間30分ずつ作業を行った。ついにケソン公団が再稼働する。

 韓国内には「再発防止策はあるのか」との不安の声もある。北朝鮮側がある日突然、入居企業を再び追い出すようなことがないとは限らないからだ。それでも入居企業は、これで会社が潰れずに済むと安堵の表情を見せていた。

 中断している金剛山観光事業の再開に向けても、9月25日、南北の間で話し合いを始めることを決めた。さらに、離散家族問題も進展した。8月23日には南北の赤十字社が、離散家族探しと再会を再開することに板門店で合意した。朝鮮戦争の休戦に伴い南北で生き別れになった離散家族が9月25日から30日まで、金剛山観光地区内で再会する。これは2010年10月以降、3年ぶりの南北離散家族再会である。

 韓国赤十字社はこの再会を、ソウルと平壌の両方で開催することを提案したが、北朝鮮赤十字社が金剛山に固執した。離散家族探しを再開する代わりに、場所は何が何でも金剛山でないといけないと主張したという。

 離ればなれになった家族に再会できるのは、韓国赤十字に申し込んだ人の中から選ばれた100人と、北朝鮮にいるその家族である。韓国赤十字は200人を希望したが、北朝鮮側がこれを受け入れなかった。ただし、別の100人が11月、北朝鮮にいる家族と再会できることになっている。

 韓国統一部(対北朝鮮政策や脱北者問題などを担当する省庁)は8月23日に会見を開き、「今日の合意は、離散家族の問題を解決するための出発点である」と強調した。今回の南北合意について、「北朝鮮側の要求通り合意した。韓国側の主張は何一つ通らなかった」「北朝鮮に拉致された人、朝鮮戦争当時の国軍(韓国軍)捕虜を返せとなぜ言えない」という批判が起こっていた。これに対して同部は、北朝鮮との対話を再開したことに意義を置いた。韓国と北朝鮮の赤十字社がいつでも対話できるよう関係を改善するために、まずは北朝鮮が反発しない分野――離散家族の問題――から解決するという。

 統一部は、韓国と北朝鮮の赤十字社が以下の合意文を交わしただけでもすごい成果だと評価しているようだ。「南と北は離散家族の再会を定例化する。生死確認、書信交換の実施など、離散家族問題の根本的解決のために継続して努力する」。

「離散家族を探しています」の放送が130日間の生放送に

 「離散家族探し」は1983年6月30日、公営放送のKBSが「離散家族を探しています」という特別番組を放映したのが始まりだった。戦争で離ればなれになり、同じ韓国にいながらも30年間消息の分からなかった家族を探すため、全国からソウル市汝矣島にあるKBS本社前に人が集まった。

 人々は画用紙に探している家族の名前、特徴、出身地、生い立ち、分かれた場所などを書いてカメラの前に立った。自分の家族らしき人を画面の中に見つけた視聴者はKBSに電話した。スタジオにいる人と電話をかけた人を会話させ、家族だと判明したらスタジオに呼んだ。この再会の場面を生中継した。

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[日本と韓国の交差点] 日本ドラマの韓国版リメイクが流行る理由

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韓国の地上波放送MBCが2013年6月から8月初めにかけて、「女王の教室」を放映した。日本のドラマ「女王の教室」をリメイクした韓国版だ。このドラマが、韓国で大きな注目を集めた。本放映時の視聴率は8.2%と高くなかったものの、再放送の視聴率も本放送と同じレベルを維持した(本放送は、人気タレントが出演する裏番組のドラマに押された事情がある)。テレビ局の掲示板やブログ、Twitterにも書き込みが絶えなかった。

 日本の「女王の教室」は、日本テレビ系列が2005年に放映したもの。とても厳しい担任教師とぶつかる中で、小学校6年生の子供たちが成長していく物語である。韓国版はタイトルも日本版のまま。登場人物の性格、家庭環境、衣装、ストーリーも日本版とほぼ同じだった。いつもふざけてばかりだけどやさしい男の子と、「てぃひっ!」「でへー」といった奇声を放つおっちょこちょいの女の子が中心になって、担任教師とクラスの子供たちの心を動かすという設定も同じだった。「この中で将来幸せになれるのは、1人か2人だけなんです」というセリフも何度も登場した。


 舞台となる公立小学校では様々なことが起こる。貧富の差や成績の差から生まれるいじめ。リーダー格と子分ばかりでクラスの誰も本当の友達がいないこと。成績さえよければ、我が子がほかの子供をいじめようが放っておく親。自分より成績の悪い子とは友達になるなと教える親。校長先生や親の機嫌ばかり気にする教師たち。――こうした子供たちや同僚教師に、主人公である担任先生マ・ヨジンは容赦なく皮肉や毒舌を浴びせる。これを聞くと逆に癒やされる、というファンが続出した。


 せりふを韓国語に置き換えただけに見えるドラマであるにも関わらず、マスコミは「女王の教室は韓国の教育現場をリアルに描いたドラマ」と絶賛した。韓国の視聴者も「韓国の教育問題を暴いたドラマ」「今までこれほど感動的なドラマはなかった」と称賛した。


 韓国の教育熱の高さは日本でもよく知られている通りだ。韓国の子供たちの、一人で勉強する学習能力は高い。しかし、その一方で、学習意欲や、他の子供たちと協同して学習する能力がとても低いことが問題になっている。大学入試のためにしか勉強しない子供が増えている。競争社会で生き残る術を身につけないといけないとして、小学校から何事にも順位をつけ差別をしているのが現実だ。


 しかし一般のドラマは理想的な小学生の姿しか描かない。「女王の教室」はいじめや差別を生々しく描いているので、とても新鮮だった。


ネットで広がる名台詞


 ドラマの名台詞集がネット上で出回った。人間味のない冷酷な教師の毒舌が、実はとても人間的で、見ているこちらが反省させられるからだ。話題になっている韓国版の名セリフのいくつかを紹介しよう。


 「童話のような世界はない。君たちの生きる世の中では、善良な人は貧しく、悔しい思いをするでしょう。あなたたちが悪いことをしても、力のある人が味方になってくれたら罰の代わりに賞をもらえるでしょう。大人になったら、あなたたちは私があなたたちにしたことよりもっとひどいことに立ち向かわないといけない。その時にどう行動するかは、あなたたちが考えないといけない。その結果もあなたたちに回ってくる。今まで私と戦いながら何を学んだの? 生きていく中で直面する苦しい問題を解決する超能力や魔法の杖なんて現実にはないわ。ただ一つ、希望があるだけです」


 「すべての人間が持つ、世の中に対する純粋な好奇心、その好奇心を満たしていくのが勉強なの。だから良い大学や良い会社に就職することは勉強の目的にはならない。試験の成績の良し悪しが勉強の結果ではない。勉強することは人間だけが持つ最高の特権です」


 「学校で起きた事件を隠ぺいする場合、ほとんどの場合、子供のためと言います。実は、大人が責任を回避するために隠ぺいするのです」


 「子供は奇跡を作ります。教師は案内者にすぎません。自ら道を探した子供は自分の人生だけでなく、世の中までもっと良い方向に変えていくのです」


 「自分が幸せでありたいと願うように、友達も幸せになるべきだということを忘れないで。自分を大事にし、その気持ちで友達も大事にして。最善を尽くして、友達と一緒に、今日を幸せに生きなさい」



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By 趙 章恩

2013年8月21




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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130821/252476/

[日本と韓国の交差点] 日本企業による強制徴用に、韓国の裁判所が初判決

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韓国の裁判所が初めて、「日本企業は強制徴用被害者に対して損害賠償をすべき」という判決を下した。この判決は海外でも取り上げられ、
英ガーディアン英ファイナンシャルタイムズが、「Landmark ruling(画期的判決)を下した」と報道した。

 ソウル高等裁判所は7月10日、新日鉄住金に対して、強制徴用した被害者4人に1億ウォン(約900万円)ずつ支給せよとの判決を下した。7月30日には釜山高等裁判所が三菱重工業に対して、強制徴用被害者5人の遺族に8000万ウォン(約720万円)ずつ支給せよと判決を下した。


 釜山高等裁判所は、「三菱(現三菱重工業)は、原告らを広島に強制連行して劣悪な環境で重労働をさせながらも給料を支払わなかった。原爆が投下された後は、(原告らに)避難場所や食糧を提供する救護処置を行わなかった。これを賠償する責任がある」とした。請求額は1億ウォン(約900万円)だったが、同裁判所は、全額は認めなかった。新日鉄住金の被害者の強制徴用期間が2~4年だったのに対し、三菱重工業の被害者の強制徴用期間は1年ほどだったからだ。


 原告はこれに先立つ1995年12月に広島地裁において、三菱重工業を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。この訴訟では、1999年に敗訴している。その後2000年5月、三菱重工業の釜山事務所がある釜山地方裁判所で、再び損害賠償請求訴訟を起こした。この第1審も原告の請求を棄却。2審を担当した釜山高等裁判所も同様の判決を下した。両裁判所は韓国の裁判所だが、日韓の両政府が1965年に締結した請求権協定に則って、未払い給料や、強制労働に対する慰謝料を日本企業に請求する権利は消滅したと判決した。


 ところが2012年5月、韓国の最高裁は「日韓の請求権協定は個人の請求権まで消滅させるものとは言えない」として原審を破棄。事件を釜山高等裁判所に差し戻した。それから1年以上過ぎた2013年7月30日、釜山高等裁判所は原告を一部勝訴とする判決を下した。


 今回の判決が出るまで、新日鉄住金との訴訟は16年、三菱重工業との訴訟は18年の年月がかかった。原告は80代後半から90歳で、裁判中に亡くなった方も多い。新日鉄住金と三菱重工業は上告するとしているので、最高裁判所が下す最終判決を見届けることができないまま亡くなる可能性が高い。


 大韓弁護士協会は7月30日、「釜山高等裁判所の歴史的判決を歓迎する。植民地時代の強制動員が不法であったことを認め、損害賠償を命じた。三菱重工業は上告して責任を回避するような非人道的蛮行を即刻中止すべきである。この判決を契機に韓国政府は日韓首脳会談を開き、被害者が生きている間に、植民地支配がもたらした問題を解決すべきである。三菱重工業は強制徴用被害者救済財団を設立し、問題の包括的な解決に乗り出すべきだ」という内容の声明を発表した。




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By 趙 章恩

2013年8月9




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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130807/252076/

[日本と韓国の交差点] 脱北者を公務員に採用~その一部にスパイ容疑

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 韓国の公務員採用を担当する安全行政部(部は省)は、脱北者を対象に公務員採用試験を2013年7月末から実施すると発表した。これは国家公務員法が改訂されたことに伴う措置。脱北者の中から11人の経験者(経歴職と呼ぶ)を中途採用する。業務の内訳は一般行政5人、食品衛生1人、医療技術1人、機能職1人、機械関連1人だ。


 これまでも、統一部(脱北者が韓国に定着できるよう教育や生活支援を行う省庁)の推薦に従って、各省庁が脱北者を契約職公務員として採用することはあった。既に13人ほどの脱北者が契約職公務員として全国自治体で脱北者支援業務を担当している。だが、誰でも応募できる競争採用は今回が初めてである。2013年7月時点で韓国に住んでいる脱北者は2万5000人を超えている。


 応募資格は、1 )脱北して韓国に住民登録をしてから3年以上経過していること、2)該当分野の経歴や資格を持っていることである。経歴職なので、北朝鮮での経歴も認めることにした。脱北者の北朝鮮での経歴は統一部が確認する。統一部に経歴を認められれば筆記試験は免除、面接だけとなる。2008年から北朝鮮と韓国政府の交流が途絶えているため、北朝鮮での勤務経歴や資格取得を統一部が確認できるのか疑問は残る。


 地方自治体は一足先に脱北者を対象にした一般職公務員の競争採用を実施した。京畿道庁(キョンギ)では47倍の競争となった。京畿道庁が採用したのは、2002年に中国経由で脱北した33歳の男性。現在は道庁で、公務員や住民を対象にした「統一教育」(韓国と北朝鮮の統一に関する教育。北朝鮮の生活や実情を伝えて理解を深める)を担当している。


 脱北者を公務員として採用するのは、彼らを差別することなく韓国人と認め、経済的に自立した生活を送れるようにするためである。脱北者は命がけで韓国に逃げてきたものの、資本主義の金銭感覚がないので、韓国政府が支給した定着金をすぐ使い果たしたり、詐欺に遭ったりする。その結果、生活保護を受けることが多い。


 韓国に住む人と北朝鮮に住む人は同じ民族ではあるが、北朝鮮から来た人はなまりが強くてコミュニケーションがうまく取れないことがある。育った文化が全く違うため、脱北者を怖がる韓国人も多い。脱北者は韓国に定着できず米国に移住したり、中国から国境を渡って北朝鮮に戻ったりする人さえいる。脱北者が韓国で安定して暮らせるようにするためには、何よりも安定した収入が必要だ。脱北者が韓国で普通の韓国人として生きていけるようにするにはどうしたらいいのか、この問題は韓国政府の重要な課題である。


脱北者が韓国に定住するのは容易ではない


 脱北者で、東亜日報で記者をしているチュ・ソンハ氏は自身のブログで、北朝鮮の人々の生活や、韓国人が知らない脱北者の悩みなど、新聞には載らない情報を紹介している。チュ記者は脱北者でありながら、2004年に脱北者約200人をインタビューした。2009年には、同じ人たちに再びインタビューし、その結果をブログで紹介した。


 それよると、インタビューに応じた脱北者200人のうち30%は韓国に来て5年たった時点でもまだ無職だった。1年以上同じ会社に勤めている人も33人しかいなかった。仕事をしている人でも脱北者の世帯所得は月平均140万ウォン(約12.7万円)、韓国の勤労者世帯所得(平均月329万8900ウォン、約26.7万円)の半分にも満たなかった。海外に移住した人も20人いた。



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[日本と韓国の交差点] 参院選受け、韓国のマスコミは「日本右傾化加速」で一色に

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韓国のマスコミは日本の参議院選挙の結果について大々的に報道している。22日の朝刊には、以下の見出しが躍った。
「日本、自民党が予想通り圧勝」
「与野党、日本自民党圧勝に警戒」
「安倍総理は平和憲法改定に意欲的、日本右傾化加速」

 自民党と公明党の連立与党が圧勝したことで日本は右傾化するだろう――というのが韓国マスコミの全体的な論調だ。加えて、米国と中国のメディアも、韓国と同様の見方をしていることを強調した――「米国も『自民党の勝利により、日本政府と韓国、中国との葛藤が深刻になるだろう』と見ている」。


 23日の昼現在、大統領官邸や外交部(部は省)は、日本の選挙結果に関する論評を公表していない。一方、与党のセヌリ党と野党の民主統合党は22日午前に論評を発表した。


8月15日の靖国参拝に注目


 セヌリ党は、以下のように論評した。




 今回の選挙結果によって安倍総理の政治的立場は強くなる。だが、日本の近隣国はこれから日本の外交政策がどうなるかについて懸念している。安倍政権は歴史認識を歪曲し、侵略的領土欲を露骨にして近隣国との関係を悪化させた。その結果、韓国と中国は日本と首脳会談を躊躇している。


 このような結果をもたらしたことに関して日本は自省する必要がある。近隣国に対して行った過去の過ちを心から反省し、日本が侵略の歴史を繰り返さないと信じられるようにしてほしい。


 その第一歩は、8月15日に安倍総理が靖国神社を参拝するかどうかだ。侵略の歴史を擁護するなら、日本は近隣国との関係を回復できない。セヌリ党は安倍政権が近隣国の傷に配慮し、国際社会の常識あるリーダーとして戻ってくるかどうかを見守る。国際社会の憂慮と期待に応えてほしい。


 セヌリ党のナム・キョンピル議員らは日本の選挙結果に関して次のようにコメントとしている。「日本は戦犯を英雄視し、侵略行為を否定している。韓国政府は安倍政権の憲法改定には冷静に対応しなければならない。自分たちが行った侵略行為を否定する国家と安保協調を続けていいものか? 韓国、米国、中国の安保パラダイムを考え直すため議論が必要な時期になった」と主張している。


 民主統合党は、以下のように論評した。




 日本は歴史的間違いを否定する発言と行動を続けている。これからでも間に合うので、東アジアの一員として、平和と共生に協力してほしい。そのためには侵略行為を謝罪し、軍国主義時代に行ったのと同じような挑発をしようとする無駄な妄想はやめるべきだ。


 右傾化を心配する日本国内の良心ある勢力と、全世界の人々の要求に応え、国際社会と発展的な関係を作れるようになってほしい。韓国政府も低姿勢外交を捨てて、堂々と日本の変化に対応してほしい。



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By 趙 章恩

2013年7月24




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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130724/251468/

[日本と韓国の交差点] Twitterを選ぶか、カカオトークを選ぶか、それが問題だった

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韓国は、日本初のネット選挙運動に注目している。

 韓国のマスコミを、こんな記事が賑わしている。
 「日本の政治家はTwitterとFacebookよりもLineを選挙運動ツールとして選択した。理由は2つ。誹謗中傷が少ないこと、日本だけでも4500万人のユーザーがいることだ」
 「日本の政党はLineやSNSを、支持者との関係をより強くするための選挙運動ツールとして使っている。選挙に関心のない人やこれまで支持者でなかった人に情報を提供することよりも、従来の支持者との関係強化を重視している」。


 韓国は2012年12月の大統領選挙で、日本より一足先にSNSを使った選挙運動を経験した。その結果、反省すべき点にきづいた。2014年には次の地方選挙(自治体の首長と議員を選ぶ選挙)が控えている。日本のSNS選挙運動から学ぶことはないかと気にしている。



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By 趙 章恩

2013年7月19




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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130718/251252/

[日本と韓国の交差点] 韓国の深刻な懸念~2050年には人口が2割減少

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7月11日は世界人口の日(World Population Day)である。1987年7月11日に世界の人口が50億人を突破した。これをきっかけに、世界人口の急速な増加が引き起こす食糧不足問題などに関心を持ってもらうため、国連人口基金(UNFPA)がこの日を制定した。

 韓国でも、この日を「人口の日」と定めている。ただし、その位置づけは国連とは逆だ。出産率の低下と高齢化による将来の人口不足問題に関心をもってもらうため、この日を定めた。全国各地で結婚と出産を奨励するイベントも行う。2013年の人口の日を記念し、あるお坊さんが国務総理賞を受賞した。2005年からお見合いを積極的に開催して、これまでに1200組を結婚させたことを評価した。

 ソウル市はこの日、市役所の前でダドゥンイカードを所持した家族向けのイベントを開催する。このカードは、ソウル市が取り組む出産奨励政策である。子供が2人以上いて、末っ子の年齢が13歳未満の家族だけが持てる。このカードで決済すると、ファミリーレストラン、スターバックス、美容院、映画館、子供用品、ガソリンスタンド、塾、eラーニング、書店、博物館などで5~20%の割引が得られる。テーマパーク入場料には50%割引といった特典がある。バスや地下鉄などの運賃も割引してもらえる。子供の数が多いほど割引率が高くなる。

 同様の特典を持つクレジットカードを、全国の自治体が地元の銀行と提携して発行している。全国共通の特典もある。子供が3人以上の場合、大型自動車取得税免除、電気料金20%割引、銀行で金利優遇、新築マンションを優先的に分譲してもらうこともできる。

2050年までに人口が2割減る

 統計庁のデータを見ると、韓国女性1人の平均出産率は2011年に1.24人(ソウル市1.01人)、2012年に1.30人(ソウル市1.06人)を記録した。OECD加盟国の中でも最も値が低いグループに入っている。それでも出産率1.30は2000年以降で最も高い値である。2005年に1.08人という最低値を記録した後、少し上向いている。

 2012年に出産率が伸びたのは、35歳以上の高齢出産が増えたことが影響している。2012年に出産した女性の年齢を見ると、20代より30代以上の方が多かった。この年の初出産の平均年齢は30.48歳。2011年の30.25歳よりも0.23歳上がった。2012年生まれた新生児の母親の68.0%は30歳以上で、前年比3%ポイント高くなった。2012年、30~44歳女性の出産率(女性1000人当たり出産した子供の数)は前年比で11人ほど伸びた。これに対して20~29歳女性の出産率は逆に1.5人ほど減っている。

 出産率が2.1人を超えないと人口は減少するという。統計庁の人口シミュレーションでは、このままだと現在5000万人超の韓国の人口は2040年には4500万人に減る。同庁は2050年には4000万人にまで減る可能性が高いと見ている。

産児制限が人口減のきっかけ

 韓国の出産率は1970年には4.53人だったものが、1980年には2.63人、1990年には1.60人と急激に減少している。その理由は70年代に始めた産児制限政策にある。韓国が先進国になるためには人口を減らさないといけないとして、政府は子供を3人以上産むなと制限した。当時は「子供が多いと、食べることだけで精いっぱいになり、他の消費ができないので貧乏になる」「国民の数が減れば国民1人当たり所得が高くなる(統計上)」と信じられていた。世界銀行がお金を貸す条件として途上国に産児制限を要求していた、とう事情もあった。

[日本と韓国の交差点] 極限の節電~サムスンの工場が短パン勤務OKに

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梅雨に入っても、雨の降らない日が続いている。そのせいか、韓国は6月から30度を超える猛暑が続いている。節電のため、オフィス、レストラン、デパートなどでは室内温度を26度以上に設定するよう政府機関が取り締まっており、どこに行っても暑い。カフェでパッビンス(甘く煮込んだ小豆と果物、きなこ、餅、ミルクをかけた韓国のかき氷)を食べるのがいちばんの避暑だと思っていたが、どこのカフェも暑くてゆっくり座っていられないほどである。

 6月中旬のある日、展示会取材のためソウル市内にあるCOEX展示場に行った。暑さと湿気で、室内にいるのに頭がくらくらして熱中症になりかけた。エアコンの設定を26度にしたというが、人が多すぎるので冷房効果は全く感じられなかった。

 さらに、節電のため展示場の灯りを60%ほどしかつけていないので薄暗かった。照明が暗いと商品がよく見えないので、展示企業はブースごとに自前の照明を持ち込んでいた。照明が発する熱のせいで室内が暑くなるので、ブースごとにまた扇風機や冷風機(水を入れることで冷たい風が出る扇風機)を持ち込んでいた。果たしてこれで節電になっていたのだろうか。

 6月から既に猛暑と戦っているのに、7月1日から「極限の節電」が始まった。原子力安全委員会が同時に2基の原発の稼働を停止したのだ。不良部品を使っていたことが5月に発覚したのを受けての措置だ。これまで以上に節電しないと、2011年のように全国が一斉にブラックアウトになる危険性が高まった。

 韓国電力は、一般家庭に節電をうながすための施策を相次いで打ち出した。1つは、基準使用(2010~2012年の平均電力使用量)より30%以上節電した場合、電気代を10%割り引きする措置。さらに、Critical Peak Pricing料金制度を導入する。この料金制度では、電力消費がピークに達する7~8月のうち、予備電力量が最も少なくなった10日間の午後1~5時は電気料金を通常の3倍に値上げする。ただし、その他の時間帯は通常より20%安くする。昼間は家に誰もいない家庭だと、冷蔵庫ぐらいしか電気を使わないので自然に電気代を節約できる。

規制値を越える冷房に罰金

 産業通商資源部(部は省)は7月1日から、商店に対して過怠料を課し始めた。室内温度を26度以下にしている店舗や、出入り口を開けっ放しにして冷房を稼働させている店舗を取り締まり、最大300万ウォン(約27万円)を賦課する。

 サムスングループは7月1日から8月31日まで、オフィスの室内温度を28度に設定。午後2時から5時までは、社内の照明を30%に減らすことにした。エレベーターとエスカレーターの運行も最小限にする。通常期より20%節電することを目標としている。サムスングループは2012年にも、工場・オフィス・社員の家庭で5~15%節電しようとSmart Summer Saveキャンペーンを行った実績がある。

 現代自動車は節電だけでなく自ら発電して電力消費を賄う計画を立てている。2013年末までに、工場の屋根21万3000平方メートルに太陽光発電パネルを設置し、10メガワットを発電する予定だ。屋根に設置したパネルの面積と屋根上での発電容量において、韓国で最大規模である。ある大型ディカウントショップは夜間、防犯シャッターを下ろした状態で出入り口をすべて開放し、涼しい空気を入れて室内の温度を少しでも下げようとしている。

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[日本と韓国の交差点] 大学の存在意義は就職にあり?

日本では少子化のために新入生が減って、地方大学は大変だ、という話を聞いたことがある。韓国も少子高齢化で同じような状況に陥っている。ソウルにある名門大学に入るための受験戦争はいまだにすごい。受験の日には国中が緊張する。遅刻しそうになった受験生を白バイが会場まで送ってあげたり、公務員の出勤時間を1時間遅らせて受験生が渋滞に巻き込まれないようにしたり、といったことが起きている。しかし、入学試験の成績が悪くても授業料さえ払えばすぐ入学できる地方大学も増えている。大学の数があまりにも多いため、定員割れが起きているからだ。

 筆者は、ソウル市内の高校で教師をしている従姉から、大学のロゴ入り健康食品や靴下、ハンカチをよくもらう。地方大学の教授らが首都圏の高校を回り、3年生の担任らに頭を下げてお土産を置いて行くのだそうだ。「うちの大学も受験するよう、ご指導のほどよろしくお願いします」というわけである。以前は大学の教授がわざわざ高校まで来てくれたのだから、とちゃんと対応していた。だが、その数があまりにも多いので、最近は「あ、またか」と振り向きもしなくなったという。

 入試説明会という名目で大学側が高校3年生の担任先生を観光地に招待し、接待することもある。学生がいないと教授も大学もいらなくなる。地方大学は新入生を勧誘するため必死になっている。

就職率の低い学科を廃止へ

 こうした中、定員割れが続く大学に対して、政府がリストラを促し始めた。

 大学の講義や教授の研究活動のレベル、学生の就職率を評価して、点数が低い大学には補助金を給付しないことにしたのだ。韓国の大学は、私立であってもすべて、政府から一定の運営補助を受けている。政府からの補助金がなくなり、学生も減ると、大学は経営難で廃校するしかなくなる。

 大学側は政府による評価をなんとか高めようと、就職率が低い人文学部――国文学科(韓国文学)や哲学科――ほか、絵画科といった人文学部と芸術学部を廃止し始めた。大学が示す理由はこうだ。就職率が低い学科があると、大学全体の平均就職率が低くなる。そうなると大学全体の評価が低くなる。評価が低いと政府の補助金がもらえなくなり、大学のイメージも悪くなる、そうなれば新入生が来てくれない。大学の財政がさらに悪化する。だから就職率が低い学科を廃止するのは仕方ない。

 6月末には、ソウル市にある名門大学も次々に、就職率が低い学科の廃止を発表し始めた。フランス文学科、ドイツ文学科、哲学科、比較民俗学科、福祉学科、物理学科などを廃止し、その分の新入生枠を就職率の高い経営学科に回すという。朴槿恵大統領が旗を振るICT(情報通信技術)政策をチャンスと見て、コンピュータ工学部を廃止してソフトウェア工学部や情報セキュリティ工学部を新設し、就職率を上げようとする大学もある。

 廃止が決まった学科の学生と教授らは、「就職率が低い学科は学問としての価値がないのか」「大学は就職するためのスキルを教えるところではない」「政府は大学を評価する軸に、就職率を選ぶべきではない」と反発している。学生らは、大学側が学生や教授の意見を一切聞かず一方的に廃止を決めたことも悲しんでいた。

 廃止が決まった地方大学の絵画学科の学生らは「ピカソが就職したことあるのか」「芸術を就職率で判断するな」と、大学の外で廃止撤回を求める集会を始めた。6月中旬にはソウル大学をはじめとする全国の大学の芸術学部の学生が集まり、芸術学部の価値を就職率で評価することに反対する集会をソウルにある政府庁舎の前で行った。一部の私立大学では学科廃止に反対する学生らが大学を相手に訴訟を起こす準備をしている。

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[日本と韓国の交差点] 徴兵免除のため? なくならない「遠征出産」

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この頃、「ジンチャサナイ(本当の男、男前の意味)」というバラエティー番組が韓国で高い視聴率を上げている。俳優やアイドルが韓国の軍隊に1週間入隊し、徴兵で入隊した若い人たちと一緒に生活しながら本物の訓練を受けるという内容である。1週間ごとに部隊を移動し、全国各地の兵営生活を紹介するリアリティー番組だ。

 放映は日曜日の夕方。月曜日になると韓国の男性はみんなこの番組の話題で盛り上がる。還暦をとっくに過ぎた、筆者の父もこの番組の大ファンである。徴兵で入隊した経験があるからだろう、「自分の若かった頃のことを見ているようで面白い」と昔話しに花を咲かせるのだ。「軍で2年間一緒にいた仲間たちに会いたくなった」というつぶやきも、Twitter上でよく見かける。

 「ジンチャサナイ」には、韓国で活躍するオーストラリア人お笑い芸人も出演している。外国人がすっかり韓国の軍隊に慣れて、韓国人以上に韓国人らしく振舞うところも笑える。番組では入隊した芸能人が二等兵になり、先に入隊した先輩(一般人)に世話になる場面がたくさん登場する。教え合い、助け合いながら、数々の訓練を無事に終える場面を見ると、競争で勝つことが重要なのではない、仲間と一緒にやり遂げることが重要なのだと感動してしまう。

米国で生まれた子供は米国籍が得られる

 北朝鮮との休戦状態が続く限り韓国の男性は徴兵から逃れられない。だからこそ、軍隊の話になると経験談を披露したがり、燃える傾向がある。しかし、今週、韓国をにぎわせたニュースは、これとは反対の話だった。某財閥ファミリーが、生まれてくる子供を徴兵から逃れさせるために米国で「遠征出産」したという疑惑である。

 某財閥企業の会長の娘で、副社長を務めている女性が、妊娠9カ月の身で米に渡った。表向きは「米支社勤務のため」という理由だ。しかし、子供に米国籍を取得させて徴兵を逃れさせようとする遠征出産だとして、ネット上で非難の声が上がった。留学や就労目的で米国に6カ月以上滞在する外国人が出産した場合、生まれた子供は米国籍を取得できる。

 この女性は自分を非難する書き込みをしたネットユーザーを名誉棄損で告訴。これを受けてネットはさらに炎上した。「財閥は韓国で利益を上げているのに、韓国民としての責任は果たさない」「企業が妊娠9カ月の妊婦を海外支社に転勤させるなんて常識的に考えられない。遠征出産に違いない」と非難する書き込みが殺到した。

 この財閥企業に対する疑惑も持ち上がっている。オーナーの娘のためにわざわざ米支社勤務というポストを作り、米国に長期滞在できるビザを取得できるようにしたのではないか、というものだ。企業の信頼問題になりうる。

 財閥ファミリーによる遠征出産疑惑はこれが初めてではない。サムスングループも現代グループも、ほとんどの財閥ファミリーが米国で子供を出産している。総選挙や長官任命聴聞会があると、富裕層や政治家の子供のほとんどが二重国籍者であることが必ず話題になる。本人も子供も徴兵を免除されており、軍隊経験がないのである。

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By 趙 章恩

2013年6月20

-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130618/249862/