[日本と韓国の交差点] 白いスープのラーメンが王者「辛ラーメン」のシェアに食い込む

「ココミョン」と「長崎ちゃんぽん」のどっちがおいしい?



韓国ドラマや映画を見ていると、貧乏な青春を象徴する仕掛けとして、こんなものがよく登場する。冷蔵庫の中で数カ月は放置されていたような赤いキムチ。緑色の瓶に入った焼酎。そして、ぼこぼこになった古いヤンウン鍋(アルミでできた小さい鍋)に辛いインスタントラーメンだ。

 韓国人にとってラーメンとは、最も安上がりにお腹をいっぱいにできる食事だ。さらに、すぐ食べられる、体を温めてくれる、非常食でもある。辛いものを食べないと食事をした気にならない韓国人が多いので、海外出張には必ず持っていく。空港に行けば、辛いインスタントカップ麺を箱詰めにして手軽に持ち運べるようにした出張パックまで売っている。ファミレスで外食した後、口直しに辛いのが食べたくて、家に戻ってインスタントラーメンを食べてしまったという話もよく聞く。


 韓国でラーメンと言えば、激辛で真っ赤なスープのインスタントラーメンである。食堂で売っているラーメンもすべてインスタントラーメンだ。なので、日本を訪れていろんなラーメン店があるのを見て、「ラーメンをこんな立派な食事にできるなんてすごい」と驚く韓国人はとても多い。


 日本式ラーメンは2002年開催のワールドカップの前後から流行るようになった。しかし、韓国では、じっくり煮込んだスープにはご飯――チゲやサムゲタン、カムジャタンのように――という組み合わせが一般的なので、ラーメンといえばまだまだ激辛な真っ赤なスープのインスタントラーメンが主流である。



Well-being時代を迎え、プレミアムラーメンが登場



 健康第一のWell-being時代を迎え、韓国でも、インスタントラーメンは健康とダイエットの大敵として敬遠されるようになった。高カロリーで辛い。ナトリウムが1日推薦摂取量の97%(約1930ミリグラム)も入っているほどしょっぱい。これを受けて、Well-beingラーメンとして油を使っていないノンフライ麺、こんにゃく麺を使ったラーメンやナトリウムの量を減らしたラーメンも登場した。













 それでもやはり、最も売れているのは日本でもおなじみ、ノンシム社の「辛ラーメン」である。1986年の発売以来、不動の1位だ。辛ラーメンが登場してから韓国では、ラーメンといえば「赤くて辛い牛肉スープに太麺」が定番となった。ACニールセン調査結果によると、「辛ラーメン」は2010年韓国のインスタントラーメン市場の71%を占める絶対王者だ。カップ麺を含めて韓国内だけで年間5億7000万個を出荷しているという。


 「辛ラーメン」はWell-beingブームを受けて、2011年4月に「辛ラーメンブラック」という高級インスタントラーメンを発売した。インスタントラーメンではあるけれど、牛肉を煮込んで作るスープ「ソルロンタン」1杯と同じ栄養が1袋に入っていると宣伝した。価格も、「辛ラーメン」が1袋約50円なのに対して一袋約110円と2倍以上する。


 「辛ラーメンブラック」の人気は5カ月ほどしか続かなかった。公正取引委員会がノンシム社にたいして「辛ラーメンブラック」のパッケージに書かれてある「ソルロンタン1杯と同じ栄養が摂れる」「理想的な栄養が摂れる保養食品」という文句は誇大広告であるとして1億5500万ウォン(約1000万円)課徴金を課した。これに機に「辛ラーメンブラック」に期待した消費者も背を向けるようになり、ノンシム社は9月から「辛ラーメンブラック」の生産を中止してしまった。



「ココミョン」が大旋風を巻き起こしている



 「辛ラーメンブラック」が創造したプレミアムインスタントラーメン市場に、大型新人が登場した。韓国ヤクルト社が2011年8月に発売した「ココミョン」が大旋風を巻き起こしている。











 「ココミョン」はテレビ番組をきっかけに登場した。あるバラエティー番組が、インスタントラーメンを利用したアレンジ料理のレシピを競う「ラーメンの達人選抜大会」を開催。ここで韓国の人気お笑い芸人が紹介したレシピを商品化したのである。審査員だった食品メーカーの担当者たちが「マイルドに見える白いスープなのに、ピリ辛でサムゲタンのような味がする」と絶賛し、大会で2位を獲得した。


 韓国ヤクルト社は9月末までの2カ月の間に「ココミョン」を2250万個、出荷したという。韓国ヤクルト社は「1日10万個も売れれば成功だ」と思っていたそうなので、この売れ行きは予想をはるかに超えるものである。値段は、辛ラーメンブラックより安い一袋約70円。既存のラーメンよりプレミアムだけどそれほど高くはないという路線を選んだのも効果があったようだ。


 辛ラーメンに比べれば、ココミョンの売り上げはまだまだ少ない。だが、ココミョンが辛ラーメンのシェアに食い込んでいるのは確かである。韓国経済新聞が実施したアンケート調査では、回答者4000人のうちに62.8%が「最近もっとも頻繁に食べるインスタントラーメン」の項目に「ココミョン」と答えている。



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[日本と韓国の交差点] 韓国全域で予告なしの停電~悪いのは節電しない国民?

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2011年9月15日15時過ぎ、韓国のあちこちで予告なしの停電が起きた。筆者の住むソウルのマンション団地は停電にならなかったので、友人のTwitterのタイムラインを見て初めて知った。友人がソウル江南付近をクルマで走っていたところ、道路の信号がすべて消えてしまい、大混乱が起きているというのだ。また銀行にいた別の友人は、ATMが停止し、窓口業務も突然中断されたという。「何事なのか」とつぶやいた。

 電力需給を担当する知識経済部(日本の経産省に当たる省庁)は停電が発生して2時間近くたった16時50分に「停電が起きた」と公式発表した。それまでは警察も消防も国民も、全国各地で何が起きたのか分からず、右往左往するしかなかった。


 消防防災庁によると、エレベーターに閉じ込められた人からの救助要請が全国で944件、「交差点の信号が消えた」という通報が全国で2877件あったという(15日18時時点)。


 停電は全国各地で20時頃まで続いた。停電は地域によって30分~1時間ほど続いた。病院や銀行は自家発電、非常電力を稼働させてなんとか業務を再開した。


 知識経済部によると停電の被害に遭った地域はソウル、仁川、釜山、江原、忠清、全羅など広範囲にわたった。被害戸数は、15時10分時点で全国52万戸、16時10分時点で162万戸、19時20分時点で83万戸が停電。19時50分にはすべて停電から復旧した。



厳しい残暑のため電力需要が予想を上回る



 どうして突然、全国各地で停電が発生したのか。知識経済部が、停電から3日たった18日に発表した停電報告によると、残暑のせいで電力の使用が急激に増えたからだという。


 韓国では今年9月、残暑としては異常なほどの暑い日が続いた。テレビでは熱中症に注意するよう呼び掛けていたほどである。停電した9月15日の気温はソウルが32度、ほかにも幾つもの地域で30度を超す暑さだった。14時から15時の間、電力使用はピークに達した。


 韓国電力は9月15日の電力使用量を6400万キロワットと予想したが、実際の電力使用はこれを321万キロワット上回る6721万キロワットだった。本来は予備電力が400万キロワット以上ないといけない。しかし15日は、夏の電力使用ピーク期間(6月27日から9月9日)が過ぎたため、定期点検のため全国23の発電所――830万キロワット――の稼働を停止していた。この他に2つの発電所が故障中だった。


 さらに韓国電力は「予定通り点検を続ける」として、この高気温にも関わらず発電所を再稼働させなかった。このため、供給不足を補うための電力をすぐに確保することができなかった。


 9月15日の午後、電力需要が増えるに従って、予備電力はどんどん減っていった。電力取引所は予備電力が24万キロワットを下回った15時から、地域別に30分ずつ予告なしで強制的に停電させる循環停電を始めた。全国で一斉に停電が起こるブラックアウトを防ぐためだ。電力取引所は韓国電力の一部で、発電所が生産する電力の量を決め電力需給を調整する役割をしている。



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By 趙 章恩

2011年10月12


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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20111011/223123/

[日本と韓国の交差点] 痴漢の被害者を助けようとしたら傷害で有罪判決

2006年3月、ソウルの地下鉄2号線シンダン駅で、車両とプラットフォームの間に人が挟まれる事件があった。地下鉄は運行を中断。悲鳴が聞こえる中、地下鉄から降りた人たちは車両を押し始めた。車両をプラットフォームの反対側に押してスペースを確保し、挟まった人を引き上げようとしたのだ。

 当時現場にいた人がネットに寄せた投稿によると、地下鉄に乗っていた人、プラットフォームにいた人、老若男女関係なくみんなが車両を押したという。ソウル地下鉄公社によると、地下鉄車両の重さは33トン。乗客らはこの大きな重い車両を押して、救出を成功させた。乗客が一斉に車両を押している写真は、ポータルサイトの掲示板やブログに掲載され、「団結力のある韓国人の国民性を象徴するもの」「韓国を泣かした写真」として注目を集めた、「私たちはみんな誰かの英雄です」というSKテレコムのブランド広告にも使われた。


 2010年7月には、バスに轢かれた人を助けようと、乗客がみんな降りてバスを持ち上げた美談が話題になった。通行量の多い道路の真ん中で、知らない人同士が力を合わせて人を助けた話に皆が感動した。


 こういう美談が象徴するように、不意を見て、見ぬふりできないのが韓国人の情と言われてきた。ところが、この頃は怖いニュースばかりが耳に入る。バスの中で黒人が韓国人の老人に暴行を働いたのに、誰も――携帯電話で動画を撮るだけで――止めなかった。地下鉄内で若い男性が大声で老人を罵っているのに、誰も止めなかった。他人が危ない状況に置かれているのに、見ぬふりをする。後になって「こんなことがあった」とネットに動画を投稿する。こんなことが頻繁に起きている。



痴漢に注意したら


 さらに怖いと思ったのは、人を助けようとした人が加害者になってしまうことである。


 2011年3月、障害のある子どもたちが利用するスクールバスの中で、障害のある男子学生が、前の座席に座っていた女子学生に痴漢行為を働いた。バスの中にいた教師が注意すると、逆上して教師に殴りかかった。そこで運転手がバスを停めて男子学生を取り押さえようとして殴った。この行為が傷害罪に問われ、1審で懲役6カ月執行猶予2年の判決を受けた。


 ポータルサイトのDAUMには、バス運転手の無罪を訴える署名が1週間で5200人分集まった。「人を助けるため暴力を振るうしかなかった状況なのに懲役はひどい」「こんに判決を受けるならば、誰も人を助けようとしないだろう」との抗議が巻き起こった。その甲斐があったのか、2審では罰金100万ウォンとなった。ただし、それでも正当防衛にはならなかった。


 痴漢行為をして暴れる人を取り押さえたにも関わらず、正当防衛どころか逆に傷害罪を受けそうなった。この判決は、法律を変える必要があるのではないかと人々に思わせた。さらに「被害者を助けようと善意で行動しても、自分が加害者になってしまう可能性が十分ある」「巻き込まれたくない。私じゃなくても誰かが助けるだろう」という、人を傍観者にする役割を果たしたように思う。


 刑法21条1項は、自分や他人の法益(法律で保護される利益、命、身体、財産、自由、名誉、信用)に対する現在の不当な侵害を防衛するための行為は、相当な理由がある限り処罰しないとしている。「現在」とあるのは、過去の不当な侵害に対する抗議はこの項の対象ではないという意味だ。こうした条文があるにもかかわらず、現実には、被害者を助けようとした人が加害者になってしまう。



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By 趙 章恩

2011年10月5


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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110909/222533/

[日本と韓国の交差点] 2010年は白菜大乱、2011年はとうがらし大乱

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輸入に頼るだけが解決策だろうか?


9月になると、マンションの屋上や空き地にビニールシートを広げ、赤いとうがらしを並べて天日に干す光景をよく見かける。大都市のソウルでも同様だ。とうがらしを干して粉にして、キムジャン(キムチを大量に漬ける秋の行事)をするのだ。とうがらしの粉はキムチだけでなくチゲ、ナムル、魚の煮つけなどに幅広く使うもの。毎日の献立に欠かせない重要な薬味である。

 とうがらしの粉は天日によく干したものほど味と香りが良い。値段も高い。でも最近は、大量に乾かすため専用の乾燥機に入れて回す農家が増えている。だから家族においしいキムチを食べさせたいお母さんたちは、とうがらしを買って、手間暇かけて自分で天日に干す。


 ところが今年は、赤いとうがらしを並べる光景を全く見かけない。


 今年の夏は雨の日があまりにも多く、6月末から8月の間で、晴れた日が2週間もなかった。「これじゃ農作物が育たないだろうな」と予想はしていたが、ついにとうがらしが黒く腐る炭疽病が流行ってしまった。去年は白菜の値段が高騰してキムチが“金チ”になったが、今年はとうがらしのせいで“金チ”になりそうだ。



品薄のため価格が2倍に跳ね上がった



 ソウル郊外にある高級住宅街ブンダンで8月25日、農協が畝いするスーパーがとうがらしを販売するイベントを行った。乾燥とうがらし3キロ=12万ウォン(約9000円)を、先着100人に半額で販売するというものだ。朝の3時には、100人を超える主婦が並び、話題となった。ブンダンの主婦といえば、田園調布や白金のマダムといったイメージ。そんなマダムたちがとうがらしのために早朝からスーパーの前に並ぶとは。マダムたちの行列を見て、他の地域の主婦も動揺し「とうがらしを確保しなくては」と焦り始めた。


 忠清北道の「グェサンとうがらし祭り」でも異変があった。この祭りには、キムジャンのためのとうがらしを買うため、全国から主婦が殺到する。今年のとうがらし祭り(9月1日~4日)では、開始から20分ほどでとうがらしが売り切れ、とうがらし祭りなのにとうがらしが全くない事態になってしまった。グェサン乾燥とうがらしの値段は、去年は600グラム当たり8000ウォン(約600円)だったのが1万8000ウォン(約1400円)に値上がりした。それでも、首都圏のスーパーよりはずいぶん安い値段だという。


 グェサンとうがらし生産者協議会は、とうがらし祭りで例年47トンの乾燥とうがらしを販売している。それが今年は、雨の日が多すぎてとうがらしが育たず、18トンほどしか確保できなかったと説明した。「品薄なのに祭りを中止しないのはおかしい」と朝から並んで待っていた人たちが抗議している様子がテレビのニュースで流れていた。



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By 趙 章恩

2011年9月28


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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110908/222522/

[日本と韓国の交差点] お盆にお墓参りする習慣がなくなる?

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土葬文化の韓国で火葬を望む人が増加



旧暦8月15日は韓国のお盆、「秋夕(チュソク)」である。2011年は9月12日がこのお盆に当たり、9月11日~9月13日が連休であった。連休が短いせいか、帰省ラッシュが終わったと思ったら、すぐに帰京ラッシュが始まった。

 最近は秋夕の雰囲気がずいぶん変わってきている。


 教会に行くクリスチャンの人は法事をしない。「イエス・クリストしか信じてはならない」「先祖を祭ることは異教徒のやること」ということで、お祈りをするだけで法事をしないのだそうだ。なので、田舎にいる彼らの両親が、逆に彼らの家に遊びに来たりする。家族みんなで海外旅行に行ったりする知人もすごく増えた。


 昔ながらの慣習で大忙し――田舎の家に親戚一同が集まり、伐草(ボルチョ)をして、法事の準備をする、秋夕当日は早朝からお墓の前に料理を並べて省墓(ソンミョ、お墓参り)をする――なんていうのはもう筆者の家ぐらいかもしれない。



朝鮮時代から土葬が始まった



 韓国は、高麗時代までは仏教が盛んで、遺体は火葬していた。これが朝鮮時代に入って、儒教の教えを大事にする「抑佛崇儒」が起こり、火葬を禁じた。代わりに、遺体を棺に入れて土葬をしてきた。特に田舎では、家ごとに山を買って代々の先祖のお墓――丘のように丸い封墳――を作る。封墳は棺を守り、ここがお墓であることをはっきりさせるためのものである。亡くなって間もない方のお墓は土の封墳。だいぶ前に亡くなった方のお墓は、きれいに芝生が生えた封墳になっている。


 儒教の教えに則れば、風水で明堂という吉地に先祖の墓を建て、大事に祭れば子孫が繁栄する。お墓の大きさ、派手さがその家門の威勢を象徴するものとされた。



お墓参りの準備は草むしりから



 秋夕の1~2週間前になるとお墓の雑草を抜いて、草をきれいに刈る伐草(ボルジョ)をする。毎年8月23日前後にやってくる處暑(チョソ)から秋夕の前までが伐草の期間だ。封墳が雑草だらけにならないようにする。ちなみに「立秋」の次が「處暑」。韓国では處暑になれば残暑も終わり、蚊の口もへし曲がると言われている。


 伐草は秋夕の前に終わらせないといけない。なので、秋夕連休の2週間ほど前から全国の高速道路は伐草しに行く家族連れで大渋滞となる。テレビのニュースは「伐草の際には蛇や蜂に注意するように」と呼びかけ、蜂に刺された時の応急処置方法を紹介する。テレビや新聞で何度注意しても、伐草中に蜂に刺されて救急車のお世話になる人が後を絶たない。これも秋夕の風物詩だろうか。


 筆者の家の場合、先祖のお墓がある山があって、従兄弟たちと一緒に区域を分けて伐草している。だが忙しいビジネスパーソンは伐草代行業者を利用することもある。伐草代行業は村の農業組合や山林組合が副業でやっていることが多く、農家の所得になる。伐草する様子を動画や写真で送ってくれるので、海外に住んでいる人やどうしても伐草する時間がない人にはうれしいサービスである。



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By 趙 章恩

2011年9月21


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110914/222637/



[日本と韓国の交差点] 小学生の給食無償化は税金の無駄遣いか?

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2011年8月24日、ソウル市は大騒ぎとなった。「公立の小中学校に通う全生徒の給食を無償にすべきか」というテーマである住民投票が行われたのだ。

 ソウル市教育庁は2011年から、公立小学校の1~3年生に対して給食を無償で提供している。財源は教育庁とソウル市の傘下にある区の予算だ。2012年からは、これを公立小学校の全学年に拡大。2014年までに、公立の小中学校に通うすべての生徒を対象にする予定だ。


 ソウル市教育庁によると、ソウル市の公立小学校1~6年生は約52万8000人。全員に無償で給食を提供するためには年間2298億ウォン(約177億円)が必要となる。加えて、ソウル市の中学生は33万2000人。小中学校を合わせると年間4092億ウォン(約315億円)が必要だ。


 これに対して、ソウル市のオ・セフン市長が突然、見直しを唱え始めた。
 「お金持ちの子供の給食まで無償にするのは過剰福祉」
 「福祉を持続可能なものにして韓国財政の健全性を保つのか? それとも、過剰福祉を選択して、借金を残すのか? これを選択する時期にきている」
 「国家財政を危うくする過剰福祉に歯止めをかけなくてはならない」



財政の規律を優先する市長の発言をきっかけ住民投票へ



 そして無償給食を進めるべきかどうか、国家の未来のために市民に意見を聞いてみようということになった。


 ソウル市長は「所得水準下位50%の子供の給食だけ無償にすべき」という意見。「無償給食を実施しているのはOECD加盟国の中でスウェーデンとフィンランドだけ」「貧乏な子供にだけ無償で給食を提供する。残りの予算で教育競争力を強化すべき」と主張した。


 さらに「この住民投票が成立しなかった場合(投票率が33.3%を下回ると無効になる)には市長を辞める」とまで言い切った。


 ソウル市の与党のハンナラ党は「無料給食は亡国的ポピュリズム(populism)」と無償給食に反対して、市長を援護した。「小学生全員に無償で給食を提供することになれば、税金を値上げせざるを得ない。庶民の暮らしがますます苦しくなる」といった意見である。


 ハンナラ党のホン・ジュンピョ代表は「ギリシャは無差別福祉を行った結果、財政赤字が悪化した」「日本の民主党は子ども手当月2万6000円、高校授業料無償化、高速道路通行料無料を公約したが国家財政の問題で実現できず国民に謝罪した」として、無料給食に賛成する民主党を非難した。



ソウル市野党はそろって無償化に賛成



 一方のソウル市教育庁は「全員無料給食にすべき」という意見。


 ソウル市の野党である民主党もなんとしても無償給食を推進すべきとした。
 「子供たちに貧富の差を感じさせるべきではない。子供たちがみんな平等に無料で給食を食べられるようにすべき」
 「韓国の児童福祉支出はOECD平均より12兆ウォン(約9200億円)も少ない」
 「OECD加盟国の中で児童手当がないのは韓国、メキシコ、トルコ、米国だけである」
 「親の所得で子供を区分してはならない」
 「選別福祉ではなく普遍的福祉を目指すべきである」
 「児童福祉は平等であるべき。子供の頃から差別をあじわわせてはいけない」
 「既に一部の自治体では小学生全員を対象に無料給食を始めている。何の問題も起きていない」


 民主党はさらにこんな主張もした。「ソウル市だけ住民投票をするのはおかしい。住民投票のために税金を使うくらいなら、無料給食に使えばいい。無駄遣いだ」。確かに、ソウル市が公表した住民投票の費用は182億ウォン(約14億円)、投票用紙の印刷費は2億ウォン(約1500万円)であった。


 同じくソウル市の野党の進歩新党も無償給食に賛成した。「ソウル市の住民投票は、ソウル市民だけの問題ではない。韓国の福祉が拡大されるのかどうかを決める投票である。今の政権は福祉拡大という時代の要求に逆らっている」。民主労働党もこれに同調した。「ソウル市長は普遍的福祉を亡国政策と主張する。だが、普遍的福祉が行き届いている先進国ほど国家財政も健全である。世界的金融危機を、福祉予算を減らす言い訳にしてはならない」。


 これに対してソウル市長だけが過剰福祉であると異見を唱えたのだ。



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By 趙 章恩

2011年9月14


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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110908/222510/

[日本と韓国の交差点] 韓流ビューティーブームで化粧品の輸出が好調

日本に続いて、中国やアジア各地でも話題に

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先週末、久しぶりに明洞に出かけた。明洞はソウルで最も大きな繁華街で、外国人観光客にも人気がある。オフィス街でありながら、デパートやショッピングセンター、屋台が密集している。いつ行っても、人をかき分けないと歩けないほど混んでいる。

 「韓流ブーム」と騒がれた2002年あたりから、明洞には日本人や中国人の観光客が多くなった。日本語と中国語しか聞こえてこないので、韓国だということを忘れてしまうくらいだ。どのお店にも日本語担当、中国語担当の店員がいる。最近は日本人や中国人を店員として雇うお店もよく見かけるようになった。


 明洞で驚いたのは、春に比べてまた一層、化粧品屋さんが増えたことである。メインストリートも裏道も、ほぼ1店おきに化粧品専門店とドラッグストアが並んでいる。それぞれのブランドのイメージキャラクターになっている韓流スターの巨大ポスターや立て看板が飾ってある。お店の中は日本人や中国人観光客で賑わっていて、いくつかの化粧品専門店では、レジ待ちの列が店の外にはみ出しているほどの繁盛ぶりだった。


 明洞にある化粧品専門店のほとんどが扱っているのは「低価化粧品」というカテゴリーの製品である。化粧水1本300~1000円ほど。ただし、安かろう悪かろうではない。値段はとても安いのに品質はそれなりに良いので、韓国の女性にも人気が高い。シートマスクなんて、美容液が25ミリリットル含まれているのに1枚40円~100円ほどだ。きゅうりパック、卵パック、トマトパック、黄土パック、炭パック、よもぎパック、紅参パックなど、種類も数えきれないほどある。見ていると、ついついあれもこれもと買いたくなる。


 それに「おまけ」がこれでもか!というほどついてくる。化粧品のサンプルはもちろん、購入金額に応じてもらえるポーチやブラシ、化粧品の現品セットなど…。「おまけ」ほしさに、ついつい買いすぎてしまう。日本円で2000円分も買えば、紙袋の中身はおまけの方が多くなる。



日本人は韓国化粧品、韓国人は日本化粧品を好む



 「低価化粧品」の元祖であるMISSHAとピンクのお姫様風インテリアが印象的なEtude Houseの店員さんに、外国人観光客には何が人気なのか聞いた。2009年までの人気商品は「BBクリーム」と呼ばれる肌色のクリーム。シミなどを自然にカバーしてくれるものだ。スキンケア効果もある。日本のテレビや雑誌に紹介されたところ、1人で50本、60本と買うお客が続出したそうだ。


 2010年ぐらいからは、中国の漢方と韓国の伝統医学を融合して開発した韓方化粧品や、かたつむりクリームという高機能性化粧品が人気だという。以前はお土産に買って行く人が多かったが、この頃は自分用に定期的に買いに来る常連の観光客が増えたという。


 そう言えば、日本の化粧品専門店で、韓国ブランドの化粧品を頻繁に見かけるようになった。日本の本屋さんで「韓流ビューティー」「韓国コスメ特集」といった雑誌の見出しをよく見かけるようにもなった。韓流ビューティーって何だろうと思い、つい立ち読みした。中には「韓国の化粧品はすごい」「韓国の美容法はすごい」とちょっとおだて過ぎではないかと思う記事もある。だって「韓国の女性は肌が白くてきれい」とか、「メイクが上手」だとか、「みんなプロポーションが良い」とか。そういう記事を読むと「私は一体…」と落ち込んでしまう。


 韓国最大手のロッテデパートや、新世界デパートの2011年上半期化粧品売上ランキングを見ると、韓国で最も売れているのは日本の「SK IIである。2位はアメリカのブランドKiehl’s、3位は韓国の韓方化粧品ブランド「雪花秀」(ソラス)であった。韓国の女性で間では日本の化粧品がブーム、日本の女性の間では韓国の化粧品がブームというのは面白い。



韓国化粧品が海外展開を拡大



 韓国の化粧品は、日本に続いて、中国やアジア各地でも話題になっているようだ。


 食品医薬品安全庁が韓国化粧品の生産と輸出実績(2010年)を調査した結果、生産額は前年比16.4%増の6兆146億ウォン(約4627億円)、輸出は5億9700万ドルで前年比43.5%増だった。化粧品の主な輸出先は中国、日本、香港の順。ただし伸び率では、タイ向けの輸出が前年比638%増、対マレーシアが122%増と伸びている。一方、2010年化粧品の輸入は前年比21.2%増の8憶5100億ドルだった。


 食品医薬品安全庁は化粧品の生産と輸出が伸びている理由として、世界各地で起こっている韓国ドラマブーム、KPOPブームを挙げている。韓国ドラマにはまり韓国の女優のような白い肌になりたいと思ったり、KPOPアイドルのようなメイクがしたいと思ったりする女性が増えている、との分析だ。



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By 趙 章恩

2011年9月7


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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110830/222350/

[日本と韓国の交差点] 頼る貯金も年金も子供もないまま、不安な老後を過ごす不安

韓国独自の不動産制度に「チョンセ」がある。毎月家賃を払うのではなく、まとまった金額の保証金を大家さんに渡し2年間その家に住む。家を出るときには保証金をそのまま返してもらえる。大家さんは保証金を銀行に預けその利子が家賃代わりになる。チョンセの保証金は不動産価格の2分の1から3分の2ほどである。

 新婚夫婦は銀行から融資を受け、それを保証金にしてチョンセで家を借りる。2年間共働きして貯金を増やし、借金を返し、もっと広い家をチョンセで借りる。チョンセを繰り返すのと併行して貯金をため、マイホームを購入する。不動産価格が値上がりすれば売却し、不動産価格のさらなる値上がりが見込める地域にまた家を買う。これを繰り返すことで中流層は家を持ち、財産を増やすことができた。


 ソウルの不動産価格は高い。その要因はいろいろ――駅から近い、漢江が見える、緑が多い――が、何よりも重要なのは教育環境である。ソウル大学への進学率が高い高校の周辺のマンション、風水で子供が出世するとされているソウル中心部のカンナム、ハンナムといった地域のマンションやビラほど高い。


 中学と高校は、自宅から遠い学校でも申し込めるので、必ずしも進学校の周辺に住む必要はない。だが、学校の近くに住めば子供の移動時間を短縮でき、その間も勉強できることから、進学校の周辺はいつでも不動産価格が高く、チョンセの保証金も高い。



金利の低下が家賃負担の増加をもたらす



 不動産価格が暴落していることから、韓国の人々は家を買うことを恐れ、マイホームを購入するより負担の少ないチョンセで住み続けようとする傾向が強くなった。


 しかし大家さんは、ウォルセでしか家を貸さない、もしくは、チョンセの保証金を大幅に上げるようになった。金利が低下し、利子で家賃を賄うことが難しくなってきたからである。20年前まで、銀行の定期預金の金利は20%近くあった。だが、10年ほど前から6~8%に落ち込み、ここ数年は3~4%にまで落ち込んでいる。


 毎日経済新聞の8月19日付け記事によると、光州市の場合、2011年4月時点でウォルセがチョンセを逆転し、それぞれ69%、31%になった。一方、銀行から借金をして高いチョンセ保証金を準備する家庭もよくみかけるようになった。高校生の子供がいると、「引っ越しで転校し環境が変わると、受験勉強に身が入らないのではないか」と心配になるからだ。


 一方で「チョンセ大乱」も始まった。会社はソウルなのに、地下鉄で1時間30分以上離れた京畿道や仁川市に引っ越すのだ。借りる人からすると、ウォルセは毎月まとまったお金が家賃として出ていくので、貯金をするのが難しくなる。このため家賃の高いソウルを離れる決断を下す。


 住む家が見つからないことほど惨めなことはない。筆者はまだマイホームを持たずチョンセで家を借りている。なので、契約期間が終わる11月が来るのが怖い。ただでさえ物価が高騰しているのに、これに家賃の負担まで重くなると、生活は苦しくなるばかりだ。老後のことを考えると背筋がぞっとする。



韓国の生活の質は39カ国中27位



 国の予算を担当する企画財政部は2011年8月、政府系シンクタンクである韓国開発研究院に依頼して、国連や世界銀行が発表しているデータを分析した「韓国国家競争力分析体系開発報告書」を作成させた。これによると、韓国人の生活の質は2008年、39ヵ国の中で27位(2000年も同位)であった。生活の質は、保健医療費の多寡や病院の接近性、犯罪率や自殺率、失業率、老齢雇用率、貧困率などを総合して評価した。


 この報告書によると、2008年生活の質が最も高い国はフランス。2位がデンマーク、3位がオーストリア、4位がチェコ、5位がスウェーデン。日本は19位、米は26位であった。


 韓国は2008年、失業率や老齢雇用率などで評価する経済的安全指標において、39ヵ国中で29位であった(2000年も同位)。貧困率の高さは39ヵ国の中で24位(順位が高いほど、貧しい人が多い2000年は19位)。寿命だけは2000の年25位から2008年の20位に上昇した。



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By 趙 章恩

2011年8月24


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110823/222211/

[日本と韓国の交差点] 伝統のシジャン(市場)を守る取り組みのあれこれ

日本に行ったことがある韓国人、中でも留学やワーキングホリデーなどで長期滞在したことのある韓国人のブログやTwitterを見ると、「日本の商店街がとても印象に残った」というコメントが多い。

 韓国ではソウルでも田舎でも、財閥グループが経営する「マート」と呼ばれる大型ディスカウントショップばかりが目立つようになった。商店街と呼べるようなシジャン(市場)はだんだん見かけなくなった。これに対して日本では、東京でも、小さいお店が密集する商店街がありびっくりしたというのだ。地方ではシャッターを閉ざしたままの商店街が増えているというが、スーパーもコンビニも多い東京で、まだ商店街が健在であることにすごいと思ってしまう。



大型ディスカウントショップの「マート」が人気を集める



 韓国にも南大門市場や東大門市場のように24時間活気あふれるシジャン(市場)がある。韓国ドラマでも、市場で値切り交渉をする場面がよく登場する。このため、スーパーより市場で買い物をするイメージがあるようだ。でも最近の市場は庶民の台所というより観光名所――たまに遊びに行く場所――になりつつある。筆者の場合も、市場よりマートかインターネットスーパーで買い物することの方が多い。市場ごとに豚足、ユッケ、トッポギなど名物の屋台料理があるので、それが目当てでたまに行くぐらいである。


 市場は値段が安くて、おまけがあって、楽しい場所ではある。だが、駐車場が狭い、夏は暑く冬は寒い。定価がなく客を見て値段をいう、返品や交換が難しい、早く買わずあれこれ選んだりすると怒られる、など不愉快な思いをすることがある。マートだと値段は安くないが親切で、品揃えが豊富で、夜遅くまで買い物ができる。マートの中には書店やベーカリー、薬局、ペットショップ、メガネ専門店、スポーツ用品店、園芸品店などもある。家族みんなで出かけて、それぞれ買い物を楽しむこともできる。


 海外からの観光客の間でも、市場よりマートが人気を集めているようだ。日本語が通じるし、値段がちゃんと書いてあるからだ。特にソウル駅にあるロッテマートは、韓国の旅行業界では「聖地」と呼ばれるほど観光客で賑わっている。ここは日本語が話せるガイドさんが常駐していて、店内の案内も日本語で書いている。会計を済ませたらすぐ、国際宅配で荷物を自宅まで郵送することもできる。


 ソウル駅のロッテマートは5月末に、韓国の動画サイトで話題になった。日本人女性が、リアルブラウニーという韓国のお菓子をカート3つ分も買い占める風景を撮影した動画が、Youtubeに掲載されたのだ。タイトルは「Japanese girls at the Korean mall!」。撮影する男性の声も録音されている。「あれは何を買っているんだ?」「デバク!(すごい!)」を連発していた。


 キムチやのりではなく韓国のお菓子が日本人観光客のお土産として大量に買われていること、日本人がお土産を買いにマートを利用していることを世に知らせるきっかけになった。ロッテマートによると、ソウル駅店の日本人利用客は月平均4万人ほどで、全利用客の10%を占めているという。龍山駅のEマートでも、アクセスが便利なせいか日本人観光客をよくみかけるようになった。


 韓国で店舗数が多いマートは、「ロッテマート」「Eマート」「ホームプラス」など。この3つは、どれも財閥グループが経営している。ロッテマートはロッテグループ。Eマートはサムスンオーナー一族の従兄弟が代表取締役を務める流通財閥グループ。ホームプラスはサムスンと英Tescoの合弁だ。いずれも、全国どこにでも支店があり、ネットで注文すればその日のうちに配達してくれる。24時間営業の店舗もあり、いつでも食材や家電、衣類などを買うことができる。マートごとにPB(プライベートブランド)商品があり、他社製の同様の品物より安く買える。



人気の経済評論家がマートの財閥経営を攻撃



 ところが、この便利なマートに反感を持つ人が徐々に増えている。「財閥が経営するマートが増えれば増えるほど、庶民の暮らしは貧しくなり、韓国の経済は悪くなるしかない」と主張する経済評論家が登場した。



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By 趙 章恩

2011年8月17


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110811/222045/

[日本と韓国の交差点] 健康増進のためポテチやハンバーガーへの課税を検討

 日本人が考える韓国人のイメージは「とにかく酒が強い」「辛い物が好き」のようだ。韓国に出張した経験を持つ日本人男性は、必ずと言っていいほど、「韓国人に酒で殺されかけた」話をする。


 「日本からお客さんが来た」ということで、ビールにウィスキーを混ぜた「爆弾酒」や、緑色の瓶に入った焼酎を延々と飲むのだという。さらに「本場の味をみてほしい」とマッコリに移る。「それなのに翌日、韓国人はみんな何ともない顔で朝8時の会議に参加していた。自分は死ぬかと思った」といった話を、何十人もの人が楽しそうに筆者に告白してくれた。


 言われてみれば、韓国人は酒を飲むのも、勧めるのも大好きかもしれない。それに、唐辛子がたくさん入った辛くて刺激的な料理を、酒と一緒に食べる。そのせいか、高血圧の人が多い。


 国民健康保険を担当している健康保険審査評価院の調査によると、韓国の高血圧患者は、2008年から2009年の1年間に、590万人から620万人へと5%ほど増えた。人口は約5000万人なので、国民の12%が高血圧で病院に通っていることになる。高血圧患者が支払う診療費も、2008年には2兆4000億ウォン(約1930億円)だったものが、2009年には2兆6000億ウォン(約2150億円)へと8%ほど増加した。


 健康保険審査評価院は、高血圧にならないための健康的な生活を国民に呼びかけている。2009年に高血圧で入院した人が、OECD平均の2倍以上――15歳以上人口の10万人当たり191件――に達したからだ。呼びかけの内容は、例えば酒・たばこをやめる、肉食を減らす、野菜と果物をたくさん食べるといったものである。


 高血圧患者は、心筋梗塞や脳卒中といった合併症によって死亡することが多いため、血圧を下げる薬をずっと服用しないといけない。これには当然、コストがかかる。健康保険審査評価院は、国民健康保険の財政を建て直すためにも高血圧患者を減らす必要があるとしている。



健康増進のためポテトチップスやハンバーガーに課税



 そんな中、国民の健康のためにポテトチップスやハンバーガーに課税する話が持ち上がっている。


 保健福祉部の傘下にある保健医療未来委員会は7月6日、「酒、炭酸飲料、スナック菓子などカロリーが高いにもかかわらず栄養はないジャンクフードに健康増進負担金を賦課することを検討している」と発表した。さらに、清涼飲料水の自動販売機の小学校への設置を禁止する、ファーストフードの広告をテレビで放映する時間帯を規制する、という方案も検討しているという。


 韓国は1995年、健康増進法を制定し、たばこに対して健康増進負担金を課した。同法は、国民の栄養状態を把握し、国民が健康な生活を実践できるよう支援することが目的。同負担金は、たばこ1箱あたり354ウォン(約29円、たばこの価格は1箱約250~270円ほど)だ。


 この負担金を財源にして、自治体ごとに置かれている健康生活実践委員会国民健康増進基金を運用している。同委員会の主な役割は慢性疾患を予防すること。基金を使って肥満、高血圧、糖尿を予防するための教育や健康相談、禁煙教室などを運営している。また農漁村の高齢者、低所得層を対象にした無料健康診療や1対1の健康管理サービも実施している。保健医療未来委員会は、こうした健康サービスを拡大するために、たばこだけでなく、酒やスナック菓子、炭酸飲料にも健康増進負担金を課すべきだとして検討し始めたわけである。


 もともと保健医療未来委員会は、持続可能な医療保障をテーマに、保健医療体制の課題を議論するために発足した諮問委員会だ。2011年4月から8月まで月1回会議を行っている。大学教授、担当公務員、医師会、薬師会、市民団体がメンバーとして参加している。政府が運営する国民健康保険と民間保険の役割分担、医療人材の養成方案、医療保険の効率化方案、医療機器や医療資源の効率化などを議論してきた。


 保健医療未来委員会は以下の目標を設定している――2020年までに韓国人の健康寿命(病気をしないで健康な状態でいられる寿命)を75歳にし、人口に占める肥満の割合を男性は35%未満、女性は26%未満にする。国民の医療費増加や健康保険財政の悪化は高血圧・糖尿といった慢性疾患が原因であるため、これらの原因となるたばこ、酒類、ジャンクフードの消費を減らすことを目指している。これらの品目以外にも、負担金を課すべき品目――高カロリーで健康に良くない食品――があればどんどん追加していくという。増税によってこれらの品目の値段が上がれば消費が減ると期待している。


 保健医療未来委員会は、健康増進負担金を国民に課す論拠として、米ニューヨーク州とデンマークの事例を挙げている。ニューヨーク州では炭酸飲料と果汁70%以下の砂糖添加飲料に18%の税金を課している、デンマークはアイスクリーム、チョコレート、炭酸飲料に25%の税金を課したところ肥満が減少した。またハンガリーでも、国民の肥満を防止するために、2011年9月から「ポテトチップス税」――カロリーの高いお菓子、炭酸飲料にかける税金――を導入するという。



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By 趙 章恩

2011年8月3


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110801/221815/