[日本と韓国の交差点] 韓国人の休暇:休みたくても休めないのは昔の話!?

ファイナンシャルタイムズのドイツ語版(7月10日付け)が、韓国人の労働に関する記事を掲載し、韓国で反響を呼んだ。ソウル発の記事で、韓国の労働時間の長さと休暇日数の少なさ、韓国観光公社の社長イ・チャム氏(韓国に帰化したドイツ人)のインタビューを取り上げた。

 筆者はドイツ語が分からないので韓国の聯合ニュースが翻訳した記事を読んだ。主な内容は以下のようなことである。


 「韓国は他の先進国に比べて労働時間が長い。自殺率も高い」
 「韓国人は年平均11日しか休暇がない。これを短期に分けて休まなければならない」
 「韓国人は年平均4日しか旅行しない。労働意欲の高い日本人でも、韓国人の10倍以上の時間を旅行に費やしている」
 「OECDによると韓国人の年間労働時間は平均で2256時間。ドイツは1430時間、オランダは1389時間しか働いていないが、1人当たり名目生産高は韓国の2倍である」
 「韓国人は休暇よりも、働くことを選ぶ。働くことでボーナスと称賛を得られるからだ」
 「韓国人は自分が仕事中毒であることを誇りに思っている。しかしこれは自分で自分の首を絞めているようなもので、効率良く仕事をこなしているとは言えない」


 この記事の内容を裏づけるように、韓国観光公社の社長が「韓国にはまだ、産業化時代の考えが残っている。生産性と労働時間を同じものと考える」とコメントしている。


 ファイナンシャルタイムズの記事の中で、筆者は、PR会社の会長で韓国をよく知るMichael Breen氏のコメントがいちばん気に入った。いつリストラされるか分からないほど不安定で、競争の激しい韓国社会で働くビジネスマンの本音をずばり言ってくれた気がしたからだ。「韓国人は、自分が休暇を取っている間も会社の業務がスムーズに行われるのを同僚に知られるのが怖くて休暇を取りたがらない」


 ファイナンシャルタイムズが言いたいのは、こういうことのようだ。韓国人は休みたくても社内で自分の居場所がなくなるのが怖くて休めない。休まず働く自分を誇りに思う。これは非効率的なことで、逆に生産性が低くなる。だから休みも必要。



一斉休暇を取る企業が増加



 しかし、韓国は少しずつ変わり始めている。


 かつては、「暑い夏は、どこかに出かけるより会社に居るほうがよい。いちばんの避暑だ」と言って休暇を取りたがらない人がいた。だが、光熱費が値上がりしたため、会社は経費節約のため強制休暇を実施するようになった。夏の休暇を決まった期間に決めて一斉に休むようにする。その期間はエアコンを稼働中止にする会社も増えた。


 韓国の代表的な造船所と自動車製造団地がある蔚山では、「現代重工業」が7月23日から8月7日まで16日間の夏の休暇を実施する。同じ地域にある関連会社も7月30日から9日間の休暇を実施すると発表した。これに合わせて、下請け会社も同じ時期に夏の休暇を取ることになった。


 強制休暇を取る会社が増えているとはいえ、ここまで同じ時期に休暇が集中するとは。8月の1週目は、ソウルはがらがら、全国の観光地は足の踏み場もない状態になりそうだ。



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By 趙 章恩

2011年7月27


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110725/221669/

[日本と韓国の交差点] 長い梅雨のため農産物価格が高騰、食料需給に不安

韓国は日本と同じく四季があって、6月から7月にかけて梅雨がある。四季の楽しみ方も日本と韓国は非常に似ている。春は梅や桜の花見をしたり、子供を連れてイチゴ狩りに行ったりする。夏は海水浴、渓谷で避暑。秋は紅葉狩り。農園に行って、りんご狩りや梨狩りを体験。冬は雪まつりやスキーを楽しむ。1月1日は山に登って日の出を迎える。おいしいものを食べて、農産物をお土産にもらえる日帰りバスツアーが人気なのも同じだ。

 韓国で雨が降ると、スーパーには小麦粉とネギ、サラダ油の特設コーナーができる。雨の日は油っこいブチンゲが食べたくなるのだ。ポータルサイトで「雨」と入力して検索したら「雨の日はブチンゲ」と出てくるほど、韓国人にとって「雨=ブチンゲ」なのだ。雨の日は家に早く帰って、ブチンゲとマッコリで家族団らんという場面が、韓国ドラマでよく登場する。



雨の日はブチンゲ

 ブチンゲは日本ではチジミと呼ばれている、韓国のお好み焼きのようなものである。「チジミ」は釜山地方の方言で、標準語ではジョン、またはブチンゲという。ジョンは一般に、丸くて、ちょっと分厚くて、材料がたくさん入っている。一方のブチンゲはシンプルに具は一つ。形も色々だ。


 ネギが入ったチジミはパジョン(ネギ=パ)。ネギの上にイカや牡蠣をのせたチジミはヘムルパジョン(海鮮物=ヘムル)。その他にも、シンプルに小麦粉をまぶして白菜を焼いたベチュブチンゲ(ベチュ=白菜)。ニラを材料にしたブチュブチンゲ(ブチュ=にら)。ミナリという独特の香りがするナムルが入ったミナリブチンゲ。生のじゃがいもをすりつぶして小麦粉と混ぜて焼いたガムジャジョン(ガムジャ=じゃがいも)。緑豆をすりつぶして作るビンデトッ。5センチほどの長さに揃えたカニカマ・ハム・肉・ネギを楊枝に刺して、小麦粉をふって卵をまぶして焼くサンジョクなどがある。


 ジョンもブチンゲも、種類は数えきれないほどある。地域や家庭ごとに、好きなものを焼くのだから。


 ブチンゲは法事料理でもある。このため年に何度も作る。油っこくて太るから法事の時は食べたくないのに、雨の日になるとすごく食べたくなる。なぜだろう。


 Twitterやポータルサイトの知識検索(ユーザー同士で質問に答えあう)でも、「なぜ雨の日はパジョンやブチンゲが食べたくなるのか」と質問する人が多い。「パジョンを油で焼くときのジュージューする音が雨の音に似ているから食べたくなる」「湿気の多い雨の日は自然と血糖値が落ちるので、小麦粉と油っこいものを体が欲しがる」などなどいろんな説があった。


 ソウル市の明洞や鐘路には昔ながらのパジョンを売る食堂がある。クァンジャン市場にはブチンゲをテイクアウトできる有名な屋台がある。雨の日にソウルを訪れたら、ぜひブチンゲに挑戦していただきたいものだ。



長引く梅雨のため食品価格がウナギ登り

 ところが、梅雨の影響で、ブチンゲの材料になる農水産物の価格が高くなるばかりだ。庶民の食べ物ではなくなってしまうかもしれない。日本の梅雨は今年、晴れた日が多く、例年より早く終わったと聞く。ところが、韓国の梅雨はいつもより長く、異常気象とはこういうことなのかと怖くなるほど大量の雨が降った。降水量は平年の4倍近かったという。まるで東南アジアの雨季を思わせるような激しい雨の降りようだった。
 



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By 趙 章恩

2011年7月22


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110720/221569/

[日本と韓国の交差点] なぜ韓国に「ソーシャルテイナー」が生まれたのか?

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芸能人が社会問題に取り組み、世の中を変える


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韓国ではこの頃「ソーシャルテイナー」という言葉をよく耳にする。「Society」と「Entertainer」を合わせた造語だ。社会や政治の問題に対する自分の意見を、ソーシャルネットワークサイトで積極的につぶやく芸能人のことをいう。市民運動や集会にも参加する。

 芸能人が貧しい人のために寄付をしたり、政治家になったりすることは、何十年も前からあった。ところが最近のソーシャルテイナーはちょっと違う。政治家になるわけではない。政党に加入したり市民団体に所属したりすることもない。自分の目線から見て社会の不条理なことや、これは納得いかないということに対して、Twitterとブログを利用して積極的に意見を言う。自分のファンはもちろん、一般の人にも広く自分の意見を聞いてもらおうと現場に飛び込むこともある。


 ソーシャルテイナーと言われる芸能人は「概念のある芸能人」とも呼ばれ、DaumやNateなどポータルサイトの掲示板で称賛されている。韓国で「概念がある」という言葉は、誠実で裏表がない、倫理的でマナーを守る、道理を守るといった意味で使われている。


 彼らは、いろんな分野で「こんなこともあるんだよ」とファンに訴えている。労働組合と財閥企業が解雇を巡って対峙している現場に出かけて労働者を応援する。警察が実力行使して、労働組合員を逮捕しようとするところをTwitterでレポートする。学費が高すぎて、大学に入学すると同時に借金を背負うことになる学生の生活を改善するため、国会の前で一人パネルを持って抗議する。飼い主が気まぐれで捨てたペットを助けようと救助活動に参加する。東日本大震災で被災した朝鮮学校の子供たちを支援しようと呼びかける。


 日本でも似たような活動が見られる。ミュージシャンが、反原発の歌「ずっとウソだった」をYouTubeに投稿して話題になったことがある。このような活動をする人も、韓国ではソーシャルテイナーの一人と言える。



大学と掃除労働者の対立を世に広める



 日本のテレビを見ると、国の政策を辛口に批判する芸能人をよくみかける。しかしそのような人にソーシャルテイナーという修飾語をつけたりはしない。なぜ韓国ではソーシャルテイナーというカテゴリーができたのだろうか。


 The daily(2011年1月17日)、ハンギョレ新聞(2011年1月14日)、キョンヒャン新聞(2011年4月11日)などの報道によると、ソウルにあるホンイク大学で、以下の事件が起きた。同大学が2011年1月1日、170人余りの掃除労働者を解雇したのだ。彼らは1日10~12時間働き、月給約75万ウォン(約6万円)をもらっていた。法律上の最低賃金100万ウォン(約8万円)への賃上げと、休憩時間の確保を要求したところ、彼らが所属している掃除会社は学校と契約を更新することができなかった。ホンイク大学は、円満な解決のため努力しているという告示をホームページに掲載したが、交渉は4月まで続いた。


 それでも解決のめどは立たず、掃除労働者らはホンイク大学の前で集会を始めた。韓国では、賃金や雇用をめぐる集会は珍しくない。街角でよく見かけるものなので、よほどのことがない限りニュースになることはない。筆者も、掃除労働者の問題をみかけても、「お年寄りが苦労している」「かわいそう」というぐらいでそれほど関心を持たなかった。


 しかし芸能人が集会に参加するとなると、マスコミが取材に来る。この問題は女優のキム・ヨジンさん(http://twitter.com/#!/yohjini)をはじめとするソーシャルテイナーがTwitterでつぶやき、集会へ駆けつけたことから、マスコミが紹介し、一般市民にも広く知られるようになった。



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By 趙 章恩

2011年7月14


-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110711/221402/

[日本と韓国の交差点] 値段の高いコーヒーを飲んでいるおしゃれな自分が好き!?

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インスタント好きから見た韓国コーヒーブーム事情



日本を訪れたことのある韓国人が選ぶ、忘れられない日本の味と言えば? お寿司、すきやき、とんかつ、ラーメン、おいしいものが色々浮かぶ。だが、ブログやTwitterを検索してみると、よく登場するのは「ケーキ」「パン」「コーヒー」だった。特に絶賛されているのがコーヒーだ。「テイクアウトのコーヒーに当たり外れがない。どこの店も味が濃くておいしい。しかも韓国のものより安い」「自動販売機が缶コーヒーで埋まっているほど種類が豊富でびっくり」という意見がすごく多かった。

 逆に韓国を訪れる日本人観光客は、カルビや参鶏湯といった豪華でおいしい食事が、日本より断然安い値段で楽しめることに感嘆する。ランチに400円も払えば、ごはんにチゲに焼き魚、ナムルやキムチといったおかずが5~6種類ずらっと並ぶ定食を食べられる。日本でも知名度の高いサムギョプサル(豚の三枚肉)だって、1人1000円もあれば歩けなくなるほどお腹いっぱい食べられる。韓国では、肉さえ注文すれば、サンチュやごまの葉などの野菜、キムチは食べ放題だ。


 どの食堂でも食後のコーヒーは無料である。入り口のところに自動販売機があって、甘いミルクコーヒーが出てくる。この甘ったるいコーヒーを飲むと、キムチや料理の辛さが中和される。デザート並の甘さがあるので食後の満足感が2倍になる。



家でも会社でもコーヒーミックス



 「コーヒーミックス」をご存じだろうか。インスタントコーヒーに植物性粉クリームと砂糖がたっぷり入っている粉で、食品メーカーの東西食品が1976年に開発した。この商品の登場を契機に、家庭でも会社でもインスタントコーヒーが広く飲まれるようになったと言われている。東西食品は今でもインスタントコーヒー市場の最大手だ。コーヒーミックスは、年末になると各経済新聞が発表する売上番付で、常に上位を占めている。


 韓国ではどこの会社も、コーヒーミックスとミネラルウォーターを社員に無料で提供している。お客さんに出すのも、VIPでもない限りコーヒーミックスか、薄すぎて何の味か分からないドリップコーヒーか、ティーバッグで入れた玄米緑茶ぐらい。食堂でも会社でも家庭でも飲んでいるせいか、私も韓国を離れて1週間もすると、キムチの次にこのコーヒーミックスが恋しくなる。


 イギリスの紅茶、中国のウーロン茶、日本の緑茶。それぞれ国が国を象徴する「茶」を持っている。韓国も緑茶、柿の葉茶、コーン茶、とうもろこしひげ茶、決明子茶、ドゥングレ茶(あまどころ茶)、菊花茶、五味子茶などなど、たくさんの伝統茶がある。どれも、おいしくて体に良い。


 だけど慣れというのは怖いもので、乳化剤がたっぷり入ったどろどろのコーヒーミックスを食後に飲まないと、何かを忘れているようで口さびしいのだ。東西食品が2010年に実施した調査によると、韓国人が最も好む飲料の種類はコーヒーが54.5%、牛乳・豆乳・ココア9.7%、炭酸飲料6.1%、緑茶6%、ジュース5.7%の順だった。



廃れてしまった緑茶文化



 韓国も日本と同じく昔から緑茶を飲む習慣があり、茶道もある。チェジュは緑茶畑が観光名所になっているほど有名だ。高麗時代まで、韓国では茶道が広く親しまれていた。朝鮮時代もチャレ(茶礼)といって、お正月やお盆には先祖のためにお茶を淹れて礼をしていた。ところが今では茶礼という名前と形式が残っているだけだ。肉や魚、揚げ物などたくさんの料理を手間暇かけて作り、お酒と一緒にテーブルに並べないといけない、ただの“しきたり”に変わってしまった。


 茶礼の伝統がいつの間にか消え、お茶を飲む習慣もなくなってしまった。帰宅後、急須にお茶とお湯を入れて一服、なんていうのは、本当にお茶が大好きでしょうがないマニアか健康管理のため意識して飲んでいる人ぐらいかもしれない。


 韓国の最大手化粧品メーカーAmorepacific社はチェジュで栽培した高級な緑茶を大衆向けに商品化している。緑茶成分入り化粧品もヒットさせた。O`sullocという緑茶カフェをソウル市内で展開している。東西食品のコーヒーミックスに対抗して、30年以上にわたって緑茶を広めようとしている。しかし、コーヒーミックスの強烈な甘さに多くの韓国人が慣れてしまったせいか、思うようにいかないという。



ランチは200円でも、コーヒーは500円



 とはいえ、最近は、食堂に置いてあるコーヒーミックスの自動販売機を利用する人が少なくなったように感じる。一方、食後は必ずコーヒーショップに立ち寄って、食事よりも値段の高いコーヒーをテイクアウトすることがステータスのようになっている。「スターバックス」や「カフェベネ」といったロゴ入りのカップを誇らしげに持って歩くのだ。


 自動販売機が紙コップに注いでくれるコーヒーミックスは1杯20円もしない。缶コーヒーでも、高くて80円ぐらいだ。にもかかわらず、である。


 話が横にそれるが、韓国のお昼と言えば、会社の人とみんなで仲良く出かけるのがこれまでの風景だった。しかしこのごろは物価が値上がりしすぎたせいか、一人黙々とカップラーメンを食べたり、コンビニで売っている200円ぐらいの安い弁当で済ませたりする人が増えている。


 韓国のビジネスパーソンが日本に出張に来ていちばん驚くのがランチタイムの「ビニール袋集団」である。ランチタイムになると一人ですっと席を立ち、一人でコンビニに行き、手にビニール袋を提げて会社に戻る。自分の机に座ったまま、一人で食べる。5~6年前まで、韓国企業の東京支店に勤務している人たちは必ずと言っていいほど、こう絶叫していた。「一人でビニール袋を提げて帰ってくるランチタイム!」「一緒に働いている仲間なのに一緒にご飯を食べないなんてさびしすぎる!」「日本人は冷たい!」。



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By
趙 章恩

2011年6月30


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110628/221169/

[日本と韓国の交差点] 日本でも欧州でも話題のK-POP、人気の秘訣は国家支援にあり?

韓流ブームが起こった国では韓国製品の輸入が始まる

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.韓国のお茶の間で楽しんだドラマを日本で見るとすごく新鮮に感じる。日本語吹き替えになっているせいか、俳優の演技がとても上手に見える。オリジナルでは「バルヨンギ」(足でする演技)、つまり大根役者と酷評される俳優も、吹き替えを担当する声優さんの演技によって、名役者に生まれ変わっている。吹き替えで見ると、オリジナルで見るより面白いのだ。「韓国ドラマが日本で人気なのは声優さんのおかげなのでは?」と思ってしまった。

 最近は日本の街角で少女時代やBigbang、KARAの歌をよく聞くようになった。日本のCMにも出演しているのを見ると、「がんばってるね~」と思い、うれしくなる。ただ、その一方で、「プロダクションに徹底的に管理されているのはかわいそう。休みもないのでは」と複雑な気持ちになってしまう。


 「韓国のアイドルが日本各地でコンサートや握手会を開いて数万人のファンを集めた」という記事も頻繁に目にするようになった。韓国でも日本のアイドルが人気だ。ジャニーズやAKB48の韓国ファンクラブは熱烈な活動をしていることで有名だ。つい先日も、AKB48の総選挙の際に、韓国のファンがソウルの映画館に集まって生中継を見ながら応援していたほどである。


 韓国のアイドルを好きになり、韓国のことをもっと知りたくなったという日本のファンが増えている。これと同様に韓国でも、日本のアイドルが好きになって日本に興味を持ち、日本語を勉強したという人が大勢いる。「国際交流促進」「観光立国」なんて難しいことを言わなくても、アイドルや音楽を好きになれば、交流は自然に生まれる。



K-POPがフランスに浸透



 6月10日と11日、韓国のアイドル5組――少女時代、東方神起、シャイニー、スーパージュニア、f(x)、――がフランスの有名なコンサート会場「Le Zenith de Paris」で3時間半にわたってコンサートを行った。1万4000人のK-POP(韓国の歌謡曲)ファンが集まった。韓国の歌手がヨーロッパで大規模な公演をするのはこれが初めてだという。フランスのメディアもこれを紹介した。


 韓国の新聞やテレビニュースは「コンサートの売り上げは20億ウォン突破」「ヨーロッパ中からファンが殺到」「韓流がヨーロッパも飲み込んだ」「世界を魅了した少女時代」と大々的に報道した。韓国のアイドルがフランスに入国する際には、空港に大勢のファンが集まったという。好きなアイドルの名前をプリントしたTシャツを着ていたり、韓国語で書いたメッセージボードを手にしていたり、したそうだ。


 フランスに住んでいる韓国人らも、ブログやポータルサイトの掲示板に写真を投稿し、「フランス人が韓国のアイドルを見てこんなに熱狂するとは! びっくりした!」とコンサートの様子を伝えていた。少女時代や東方神起は北米でもコンサートをしているが、観客のほとんどは現地に住む韓国人だという。しかしフランスのコンサートは違っていた。ネットに投稿されたコンサート会場の写真や動画を見る限り、韓国人はほとんどいない。「フランスに来てくれてありがとう」と韓国語で書かかれたボードを持って、韓国語で一緒に歌う10~20代の外国人ばかりだった。


 K-POPの人気を裏付ける出来事はこれだけではない。コンサートは1回だけの予定だったが、2回に増えた。チケットは予約開始後、即座に完売してしまった。このため、ルーブル美術館前のピラミッド広場に300人ほどのK-POPファンが集まり、コンサートの回数を増やしてほしいと抗議したからだ。抗議と言ってもいたって平和的。スーパージュニアの歌を歌ったり踊ったりしての抗議だった。


 さらに、5月8日にパリで開催された「韓国文化祭り」の目玉は、フランス人K-POPファンによるのど自慢だった。2011年1月には、フランスのテレビ局France2TVが、ヨーロッパ内の韓流ブームを紹介する特番を放映したという。


 フランスと言えば、Japan Expoが盛大に開催され、日本のアイドルやアニメが大好きな人が多い国という印象がある。だが、K-POPや韓国ドラマの人気もじわじわ広がっているようだ。



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By 趙 章恩

2011年6月24



-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110623/221082/

[日本と韓国の交差点] 韓国は国を挙げて再生エネルギーにまい進

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政府も企業も個人も、エコで安全な電力環境を目指す


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韓国貿易投資振興公社(KOTRA)が5月26日に発表した「2011グローバル消費トレンド」によると、今年注目すべき分野は、海外オンラインショッピング(海外のショッピングサイトに直接注文して海外配送してもらうサービス)、節電・節水関連商品、低価格商品、WELL-BEING食品(オーガニックや希少価値のある健康食材)、お祭り・イベント、ペットのファッション用品、キャリアウーマン向け商品、オーダーメイド販売だという。

 中でも、「エコ」と「安全」に焦点を当てた製品が2011年のトレンドであると分析している。CO2排出量規制が厳しくなっていることと、東日本大震災をきっかけにエネルギー政策が変化していることが背景にある。


 KOTRAは、できるだけ節電・節水商品を買おうとする世界の動きも紹介している。例えば、日本ではLED電球に買い替える家庭が急激に増えていることを伝えている。値段が高くても、緊急時に懐中電灯として使えるからだ。オーストラリアや南アフリカでは、太陽光を利用してお湯を温める温水システムの需要が大幅に伸びているとのこと。


 韓国でも同じように、LED電球や省エネコンセントなどの節電商品が注目されている。特に2011年は電気代の値上がりが予想されているだけに、日本と同じ節電ムードになっている。エアコンの代わりに扇風機を使う。冷蔵庫にビニールシートを張って熱が入るのを防止する。こうした工夫があちこちで目に入る。



韓国政府は再生エネルギー産業の育成にまっしぐら



 韓国政府は数年前から、再生エネルギーやスマートグリッドの実証実験を始めている。だが、太陽光パネルがどうとか、電気自動車がどうとか、街の灯りを風力発電に変えようとか、そういう話を大人から子供までが自然にするようになったのは、ここ最近のことである。やはり東日本大震災の影響が大きい。原発に頼りすぎないエネルギー政策の必要性を切実に感じるようになった。


 子供向けの「グリーンエネルギー体験展」「エコ生活体験展」といった催しも4月あたりから頻繁に開催されるようになった。ソーラー発電や風力発電、スマートグリッドの仕組みを説明する企画だ。節電やエコな生活というのは「習慣」の問題なので、子供のころから慣れさせるのがいちばんという考えからだ。これらの催しは、サーカスのように地域を転々としながら、幼稚園などを訪問して回っている。


 韓国の李明博大統領は、就任当時から「低炭素緑色成長」をキャッチフレーズに、再生エネルギー分野に力を入れてきた。2010年10月には「世界5大新再生エネルギー強国跳躍方案」――ソーラー発電と風力発電を第2の半導体事業にするために2015年までに40兆ウォンを投資する――も発表した。


 エネルギー関連産業の支援を管轄している知識経済部によると、2008~2010年の間に、韓国の再生エネルギー産業は大きく成長した。関連企業数(製造業)は2.2倍(2010年末時点で215社)に増え、雇用者数は3.6倍(同1万3380人)に達した。売上高は6.5倍(同8兆1282億ウォン)、輸出高は5.9倍(同45億8000万ドル)、民間投資額は5倍(同3兆5580億ウォン)に増加した。中でも大きく伸びたのは、太陽光発電と風力発電産業だ。韓国内の薄膜ソーラー電池の特許出願件数は、2005年には12件だったものが2010年には122件に増えている。


 知識経済部は、「2015年には、再生エネルギー関連の輸出を400億ドルに拡大する」という目標を間違いなく達成できると見込んでいる。目標達成のためエネルギー管理公団は、以下の支援措置を講じている――太陽光と風力発電関連海外市場の調査、プロジェクトの発掘、事業妥当性の分析、海外設備認証の獲得、輸出金融・海外投資諮問。


 韓国の企業は、中国を警戒している。国を挙げてソーラー発電と風力発電に大々的な投資をしているからだ。中国のエネルギー産業の成長は、世界市場における韓国企業のプレゼンスを低めかねない。そんな事態を防ぐべく、政府は、輸出支援に力を入れている。


 韓国政府は2011年から、テストベッドを増やしている。海外に向けて、韓国の再生エネルギーの技術力を宣伝するためだ。例えば韓国政府は2009年からチェジュの島半分を使ったスマートグリッド実証実験を行っている。サムスンとLGが「太陽電池を新規事業として集中的に育成する」との方針を2010年に発表したことを受けて、韓国政府はチェジュ以外の地域も指定して実証実験の規模を拡大する方針だ。


 知識経済部は2011年5月、太陽光と風力発電、燃料電池のテストベッドとして、全国6つの自治体コンソーシアムを新たに発表した。自治体と大学、研究機関、企業がコンソーシアムを組んでテストベッド事業に応募した。地方都市の産学官連携クラスター構築を通じて、中小企業の新製品事業化と輸出を支援し、競争力を高めることを目標としている。その他にも、大手企業と中小企業の協力拡大、雇用拡大、地元へ新規企業誘致などを狙っている。



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By 趙 章恩

2011年6月16


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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110614/220779/

[日本と韓国の交差点] デマに耐え切れずまた自殺が…

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「知る権利」もあれば「忘れ去られる権利」も必要



韓国でまたもや、ネット上のデマを苦にして有名人が自殺した。故ソン・チソン アナウンサーは「野球の女神」と呼ばれ、美貌と実力を備えた女子アナとして大活躍していた。野球選手をインタビューした本の出版も目前に控えていた。そんな彼女が、ネット上で広がった根拠のない噂に耐え切れず、5月23日、19階から布団をかぶって飛び降りた。

 彼女は自殺する2週間ほど前、自身のTwitterに「神様助けてください。飛び降りるのは怖いし、首を吊ると痛すぎます。お願い。もう楽にさせてください」とつぶやいた。そのつぶやきを見た同僚アナウンサーが警察と消防署に連絡して救助隊が出動したこともあった。


 その後ファンが声援を送り続けたのが効いたのか、「もう大丈夫」というつぶやきがあった。



有名アナウンサーと野球選手の恋愛をめぐるデマ騒動



 だが、自殺をほのめかすつぶやきがあった同じ日、彼女は自分のHOMPY(Facebookのようなソーシャルネットワークサイト)に「信じてもらえないかもしれないが…」という書き出しで始まる、メッセージを書き込んだ。「7歳年下の野球選手と自分は恋愛だと思っていたのに、相手に弄ばれただけだった」という赤裸々な内容だった。もちろん実名入りだ。


 かなり衝撃的な内容だったため、あちこちのソーシャルネットワークサイトにコピーされ、各種メディアがこぞって報道した。


 HOMPYに登場した野球選手は2軍行きとなった。それからネットでは日に日に噂が膨らみデマが独り歩きするようになった。HOMPYやTwitter上の故ソン アナウンサーの書き込みは削除されたが、既にコピーが広まり、あちこちで悪質なコメントが付加された。「そんな話を書き込むなんて恥知らず」といった批判が続いた。


 故ソン アナウンサーはHOMPYの文章は自分で書いたものではないと否定し、「その野球選手とは1年半も前から交際している。ファンには心配かけて申し訳なかった」とインタビューで答えた。


 ところが今度はその野球選手が、HOMPYに書かれたことをほぼ認めながらも「交際したことはない」と否定した。ネットでは故ソン アナウンサーを「妄想癖があるのではないか」「精神状態がおかしいのではないか」と攻撃した。


 故ソン アナウンサーをネット上で擁護する人もいた。「男女が交際すれば別れることもある。なぜ女性だけがだらしがないと非難されるのか」。だが、彼女は物議をかもしたとして番組を降番させられた。メディアも「読者の知る権利」を振りかざし、ネット上の噂を元に連日、報道した。故ソン アナウンサーは(上記の)インタビューで「(Twitterを)個人的な空間だと思って書いたのに、こんなにことが大きくなるとは思っていなかった」「(ネットで出回っている内容は事実と)違うといっても誰も信じてくれない」とも話していた。「デマを広げた人を探してほしいとサイバー捜査隊に依頼したけどもういい、許す」という発言もしている。


 誰も味方になってくれない。後ろ指を指される。そのことに耐え切れなくなったのか、彼女は母親が目を離した隙に布団をかぶって飛び降りた。



事実であるかに関係なく~ウケそうな書き込みが増える



 韓国ではネット上のデマや悪質なコメントに耐え切れず芸能人が自殺する事件が繰り返し起きている。有名な事件としては、2007年1月に人気歌手のユニが、2008年10月には国民的女優チェ・ジンシルさんが自殺した。当事者がどんなに「違う」「そうでない」と釈明しても、ネットでは「友達の友達から聞いた話」「芸能界に詳しい知人から聞いた確かな情報」というデマが広がるばかりだった。


 ソーシャルネットワークは、ネットを使って、より便利に友達とコミュニケーションするための道具であった。それがいつの間にか、面白いことを書いて目立ちたい、自分のHOMPYに訪問する人を増やしたい、Twitterのフォロワー数を増やしたい、リアル社会での自分は何でもない人だけどネットの世界では注目されたい、といった欲望を満たすための場になった。それがエスカレートして、事実であるかどうかに関係なく、人々がクリックしてくれそうなことばかり書き込まれるようになった。


 故チェ・ジンシルさんの場合は、警察が、あるデマを広げた発信元を逮捕した。ところが逮捕された20代の女性は、チェさんに電話をかけて「たかがそれぐらいのことで、なんで怒ってるんですか」と笑いながら話したという。



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By 趙 章恩

2011年6月8


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110606/220480/

[日本と韓国の交差点] 仁寺洞で白昼の戦争!?

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露店があると人が集まる? 露店は不法だから撤去すべき?



ソウルの観光名所として有名な仁寺洞(インサドン)は、美術品や、絵具や墨などの美術道具を売る街として朝鮮初期から栄えている。古書や骨とう品、高美術(朝鮮時代やそれよりも古い時代の絵や陶器といった美術品)を扱う高級なお店もあれば、伝統模様をあしらった携帯電話ストラップや小物入れなどが、手ごろな値段で買える露店(屋台)も並ぶ。浅草の仲見世のように、韓国の伝統文化を楽しみ、ショッピングもできる名所である。

 2002年には、全国で初めて文化地区に指定された。このため、店々の看板はハングルだけを使っている。お店も、芸術や伝統文化に関連のある業種を優先してきた。


 古い屋敷をそのまま店にした伝統茶室もたくさんあるので、落ち着いた場所でゆっくりおしゃべりしたい女性客に人気が高い。デートスポットとしても欠かせない。


 ちなみに、韓国の伝統茶室は、韓国の緑茶や自家製柚子茶、棗茶、スジョングァ(生姜とシナモンの味がする甘辛くて冷たい伝統茶)、シッケ(ご飯と飴を発酵させて作る甘くて冷たい飲み物で、干し柿を入れて飲む)、ミスッカル(豆や穀物を蒸して粉にしたもので、水に溶いて飲む。昔からの健康飲料)などを扱っている。餅や韓菓なども売っている。



仁寺洞の露天を区役所が“奇襲”



 いつも多くの人でにぎわうこの仁寺洞で5月24日、120人ほどの若い青年が手当たり次第に露店(屋台)を叩き壊し始めた。鐘路区役所から依頼を受けたという青年らは露店の商品まで全部踏み潰し、その残骸を回収していった。


 人通りの多い午後に起きた突然の出来事に、外国人観光客は悲鳴を上げながら逃げ惑った。強圧な取り締まりに抗議する一般市民、露店の人で辺りは騒然となった。


 これを受けて、TwitterやBlogではつぶやきが後を絶たなかった。


 「仁寺洞で白昼の戦争」
 「露店は不法営業。なので取り締まるのは分かる。だが、物を全部壊してめちゃくちゃにするのはかわいそう」
 「露店を擁護する人はおかしい。ちゃんと賃貸料を払って税金を納めるお店の人はバカだからそうしているのか? 歩行の邪魔になるし、露店は取り締まって当然」


 「露店は道路を無断占有している。通行の妨げになり、衛生上の問題もあるから撤去するべき」という意見と、「露店がある方が人間味があって人が集まる。街が栄える」という意見に分かれ、論争が続いている。



韓国人の生活に露店は欠かせない



 露店の中には、区役所の許可なく不法で営業しているところもある。だが、便利で楽しい場所であることも確かだ。韓国人の生活とは切り離せない――と言っても過言ではない。露店では1人2000~3000ウォン(150~250円)もあればお腹を満たすことができる。学生や庶民の強い味方でもある。


 多くの露天は早朝から深夜までほぼ24時間営業なので、いつでもショッピングを楽しめる。
食べたい時に、食べたいものが食べられる。


 韓国の露店でポピュラーな食べ物と言えば、トッボギ(米で作った白くて細い餅を唐辛子ソースで甘辛く炒めたもの)、スンデ(豚の腸詰)、おでん(具は薄いさつま揚げ1種だけ)、ギムパブ(ごま油とナムルが入ったのりまき)、焼き鳥(日本の焼き鳥の10倍ほど長い)など。


 3時のおやつと言うと、日本では甘いものを思い浮かべるようだが、韓国ではこの辛いトッボギなどの露店メニューが定番となっている。甘い野菜オムレツを入れたサンドイッチは朝食の定番だ。


 季節限定の露店メニューもある。冬には金魚焼き(タイ焼き)、ホットク(餅のような揚げパン。黒砂糖とピーナッツが中でとろける)、ホットケーキの中にゆで卵が丸ごと1個入った卵パンが人気だ。夏には、割り箸に刺した果物、漢方薬品を煎じた健康飲料、そうめんなどが人気を集める。


 明洞の露店で始まったクルタレは韓国の定番お土産となった。白い飴を薄い糸状に伸ばして、そのかたまりの間にゴマと黒砂糖などを入れたものだ。歯ごたえはさくっとしていて、とてもおいしい。最近は東京・大久保のコリアンタウンでも手に入るようになった。


 大学の前にあった露店が成功して全国チェーンに成長することもある。ハンバーガー、卵パンなどが有名になった。


 最近は日本のたこ焼き、お好み焼きが人気メニューに加わった。



近代化が大事か? 庶民の暮らしが大切か?



 韓国人の生活と切り離せない露店であるが、取り締まりは昨日今日に始まった話ではない。仁寺洞の露店撤去をめぐる衝突も、ここ2カ月の間に、20回以上起きている。



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[日本と韓国の交差点]「競争社会」だからこそ必要なもの

ヒット番組から見る韓国人の心


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以前のコラムでも紹介したように、韓国ではオーディション番組が大変なブームになっている。ケーブルテレビ局のオーディション番組「
スーパースターK」が皮切りだった。現在は、地上波放送も同様の番組を数多く放映している。

 オーディション番組は、1回で完結するのど自慢大会とは異なり、最後の1人になるまで数カ月かけてサバイバル方式の競争を繰り返す。年齢・性別・国籍に関係なく誰でも参加できる。審査員の点数だけでなく、視聴者からの人気投票も勘案して生き残る人が決まる。


 韓国にはいろんな歌番組があるが、どれもあまり視聴率が高くない。パフォーマンスに順位をつけて出演者を脱落させるサバイバル番組だけが高い視聴率を集めており、ネットでも話題になる。歌番組だけでなくバラエティー番組でも、点数をつけて序列を決め、最下位になった人をからかったりする番組が増えている。


 なぜオーディション番組が人気なのか? ある放送関係者は「果てしない競争の中で生きる韓国人が最も共感しできるのが、緊張の連続であるサバイバル方式のオーディション番組だから」「歌好き、カラオケ好き、目立つのが大好きな韓国人にぴったりの番組だから」と分析する。また、あるブロガーは「視聴者の力が大きくなった。視聴者が制作に参加する番組ほど面白い。結末がどうなるか分からないからだ」と分析する。


 さらに、ある社会学者は、名門大学の学生の相次ぐ自殺とオーディション番組の人気をからめて、「韓国は勝利と懲罰しかない社会」と批判している。



視聴者投票、楽曲販売という新収益源をテレビ局にもたらした



 公営放送の韓国放送(KBS)も「スターオーディション 偉大な誕生」というスーパースターKにそっくりな歌のオーディション番組を始めた。違いがあるとすれば、視聴者の意見をより多く反映していることである。審査委員の点数のウエイトが30%、視聴者による人気投票のウエイトが70%だ。


 「偉大な誕生」の視聴者投票は、応援している出演者の番号を携帯電話に入力して送信する。1件送信するのに100ウォンがかかる有料サービスであるが、毎回170万件ほどの投票が集まる。この収益は通信キャリアと投票集計会社、テレビ局が分けることになっている。これはテレビ局にとってもキャリアにとっても新しい収益源だ。


 視聴者を刺激して投票を増やすそうとするためなのか? これに関連する演出らしきものも見られる。審査委員を悪役にし、視聴者の助け船がないと実力のある参加者が落ちてしまうかもしれないといった物語を作るのだ。


 「偉大な誕生」が注目された理由の一つも、これにあった。中国からやってきた朝鮮族の青年が物語の主人公だ。彼は毎週繰り返されるオーディションの中で、背が低い、顔がいまいち、歌うというよりモノマネではないか、中国語訛り(北朝鮮の人のような訛り)があるので発音がおかしい、などなど、審査委員からひどいことをずいぶん言われた。しかしどんなことを言われようと、他の出演者のように泣いたり反発したりしなかった。いつも目を細めて、恥ずかしそうも笑い「歌手になる夢をあきらめない」「応援してくれるみなさんのためにも、お父さんのためにもがんばる」と言い続けた。



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By 趙 章恩

2011年5月26


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110524/220096/

[日本と韓国の交差点] 韓国で原発反対運動が拡大し、住民の葛藤が深刻化

李大統領「エネルギー自立のために原発新設は仕方ない」


韓国のことわざの一つに「遠い親戚よりイウッサチョン」がある。イウッサチョンは「近所に住む人」と「いとこ」を合成して作った言葉。遠くの親戚より近所に住む他人の方が頼りになるという意味である。隣近所の人たちと身内のように親しくする、世話好きな韓国人の生活を象徴することわざだ。しかし、最近は田舎でしか見られない光景となった。

 都会では、庶民であればあるほど引っ越しの回数が多くなる。不動産投資のためにマンションを買い替える。賃貸契約が更新となる2年ごとに子供の教育のために引っ越しする(ソウル大学合格率の高い進学校に近い場所ほど不動産価格が高くなる)。失業のため、より安い賃貸を求めて転々とする。


 一方、田舎に行けば、自分が生まれた村から一歩も離れたことがないお年寄りがたくさんいる。彼らの関係は非常に密度が濃い。「隣の家の箸の数まで知っている」というほどお互いをよく知っており、悲しい時は一緒に泣き、うれしい時は一緒に喜ぶ。都会の生活に疲れ、こうした関係を求めて帰農する(中年になってから田舎に定着して農業を営むこと)人も年々増えている。



サムチョク市で原発誘致反対運動が激化

 江原道のサムチョク市は人口7万人、海と山がきれいなことで有名な土地だ。洞窟観光と水刺身(冷たい出汁に刺身と氷を入れて冷麺のように食べるもの)が名物である。イウッサチョンが助け合う古き良き時代の風習が残る静かな田舎でもある。ところが今、「原発誘致」の賛否をめぐって、イウッサチョン同士が賛成派と反対派に分かれ対立している。イウッサチョンの間にできた溝はそう簡単には埋まりそうにない。


 サムチョク市は2010年末、662万平方メートルの敷地に原発を誘致する申請書を韓国水力原子力に提出した。サムチョク市は「地元経済を発展させるために原発を誘致するべき」と主張している。


 これに対して住民らは「サムチョク原発誘致白紙化委員会」を結成し、「原発誘致に関する行政情報を公開してほしい」と市を相手取って訴訟を起こしている。住民らは自然豊かなサムチョク市のイメージが壊され、住民数が減り、特産物である米や水産物も売れなくなると反対している。


 去年までは、原発誘致に賛成する市民が7割近かった。だが、東日本震災後に様相が一変。サムチョク市の市民だけでなく、半径20キロ圏内にある他の市の市議会も、原発誘致反対声明を発表した。環境団体もこれに加勢している。



風力や太陽発電にまで、反対運動が飛び火

 1977年に韓国初の原発が建てられた慶尚道でも、原発周辺地域の市議会が次々に「原発寿命延長反対」「稼働中止」を求める決議案を採択している。釜山市は原子力安全対策委員会を発足させ、「WHOが公認する国際安全都市造成を目指す」としている。だが、原発がある限り、住民の不安が解消されることはない。


 4月に行われた江原道知事補欠選挙でも、原発誘致に対する姿勢が問われた。選挙直前に「原発誘致賛成」から「反対」に立場を変えた候補もいた。3人の候補は口をそろえて原発誘致反対を訴え、「どんなことをしてでも原発が地元には来ないようにする」と公約した。


 原発の怖さを知った韓国では、NIMBY(Not In My Back Yard、必要はあるが自分の地元には建設してほしくないという心理)と呼ばれる現象が起きている。原発だけでなく、風力発電、潮力発電、太陽発電などすべての発電所を「危険なもの」として建設に反対する運動だ。参加する住民らは「電力は必要だけど、うちの地元には建てたくない」と反対する。


 「環境破壊」「危険」に加えて、彼らが発電所誘致に反対するもう一つの理由は、既に原発を建設した他の地域で起きている問題と関連がある。原発を受け入れる代償としてもらえるはずであった支援金が、20年以上たった今でも、支払われていない。地元経済を活性化するための大学・企業誘致といった約束も守られていない。それどころか、環境が破壊されて、生業である農業や漁業ができなくなり、地元を離れるしかなかったという人も多数いる。「政府機関の言うことは信じられない」「いつ見捨てられるか分からない」といった不安も作用している。



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By
趙 章恩

2011年5月19


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110517/220020/