サムスンが1.2兆円投資しOLEDテレビに再参入、LGと対決か同盟か

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が巨額投資する次世代ディスプレー「QD-OLED」が、2022年1月初めに米ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市「CES 2022」でデビューした。現在、大型で高価格帯を主とするテレビ向けのOLED(有機EL)パネルは、韓国LG Display(LGディスプレー)の独壇場であり、サムスンは新たなQD-OLEDパネルでLGディスプレーの牙城に挑む。一方で韓国内では、サムスンがLGディスプレーのOLEDパネルも採用するのでは、という観測が浮上している。背景には低価格の液晶パネル市場で中国勢が台頭し、韓国2社が有機ELを採用したプレミアムテレビ市場に活路を見いだしているという事情も見える。

CES 2022で正式デビュー、次世代ディスプレー「QD-OLED」

 サムスン電子副会長のHan Jong-hee氏はCES 2022の記者説明会で、QD-OLEDパネルを採用したテレビを発売することを正式に明らかにした。22年上半期中の発売を見込み、年間100万台を生産するという。説明会では、55型と66型のテレビ向けQD-OLEDパネルと34型のモニター向けQD-OLEDパネルを展示した。QD-OLEDテレビ自体は展示しなかったものの、同社が発売を計画する65型のQD-OLEDテレビは、CES 2022の「Best of Innovation Award」を受賞した。

 QD-OLEDは、サムスンが19年から25年までに生産施設構築と研究開発に13.1兆ウォン(約1.2兆円)もの巨額を投資する次世代ディスプレーだ。QD-OLED のQDは、電気・光学的性質を持つナノメートルの大きさの半導体粒子のこと。QD-OLEDでは、光の三原色の中で青色素子を発光源とし、ナノスケールの半導体粒子をカラーフィルターの代わりに使って、RGBで残る緑や赤を生成する。同社はQD-OLEDテレビを「現存する最高画質のテレビ」になるとする。

 実際、サムスンのQD-OLEDパネルは22年1月10日に、スイスの検査・認証機関であるSGSにより、色彩再現力が高く視野角による画質低下が少ないという認証を獲得している。

 実はサムスンにとってテレビ向けの大型OLEDパネルは再参入に当たる。サムスンは12年に、55型の大型OLEDテレビを公開した。しかしその後、製造工程に課題が判明し、大型のOLEDパネルから撤退。より低価格な液晶(LCD)をベースにした「QLED」テレビを主力としてきた。今回のQD-OLEDテレビの発売は、サムスンにとって満を持しての再出発となる。

液晶パネルは中国勢が席巻、韓国勢はプレミアムテレビに活路

 現在のテレビ市場は、価格優位性があるLCDを採用したテレビがまだ市場の主役だ。低価格なLCDパネル生産で市場を席巻しつつあるのが京東方科技集団(BOE)や華星光電(CSOT)といった中国勢だ。

 中国勢の価格攻勢によってLCDパネル生産の収益性が悪化しはじめた韓国勢は、同事業を縮小していく考えを示す。サムスンがOLEDテレビ事業を再開する背景には、収益が悪化するLCDパネルの生産ラインをQD-OLEDパネルに転換し、1台1500ドル以上といわれる大型のプレミアムテレビ市場に活路を見いださざるをえないという事情がありそうだ。

 収益性が悪化するLCDパネルに対し、OLEDパネル市場は今後、伸びが期待できる。実際に英調査会社のOmdiaは、22年のOLEDテレビの出荷量を当初予測の650万台から800万台へと上方修正した。サムスンがOLEDテレビ市場に再参入することで、さらに市場拡大が期待できるとしている。

 現在、大型のOLEDパネル市場を席巻するLGディスプレーとサムスンが技術競争することによっても、OLEDテレビ市場を活気づけるとみられる。サムスンのQL-OLEDが青色素子を発光源にするのに対し、LGディスプレーのOLEDパネルは白色素子を発光源とする。

 サムスンの再参入を受けて立つLGディスプレーも21年末、輝度を過去製品から最大30%向上し、機械学習ベースのアルゴリズムで色彩表現力を高めた次世代ディスプレー「OLED EX」を発表した。画質だけでなくデザインも改良し、65型パネルのベゼルを6mm台から4mm台に縮めた。

 章恩(ITジャナリスト)

 

<NIKKEI X TECH>

2022. 1.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00051/

サムスン絶好調、半導体でIntel超え ファウンドリーでTSMC追撃

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 世界的な半導体不足が続き、2021年は半導体チップ生産を請け負うファウンドリー(受託生産)市場がこれまでにない好況となった。メモリー半導体で世界シェア1位、ファウンドリー市場で世界シェア2位の韓国Samsung Electronics(サムスン電子)も絶好調だ。同社の21年7~9月期の業績は、売上高が73兆9800億ウォン(約7兆1000億円)と四半期ベースで過去最高を更新した。営業利益は15兆8000億ウォン(約1兆5000億円)であり、実にその約6割を半導体事業が稼ぎだした。

 米国の市場調査会社IC Insightsによると、21年の半導体企業の世界売上高ランキングにて、サムスン電子が米Intel(インテル)を抑えて世界1位になる見通しという。サムスン電子が実際トップに立てば、18年以来、3年ぶりの首位奪還になる。

サムスン電子は、半導体ファウンドリー市場で世界首位の台湾TSMC(台湾積体電路製造)を追撃する姿勢を見せる。

 同社は21年11月末、長らく懸案となっていた米国への投資を正式に決めた。約170億ドルを投資し、米テキサス州テイラー市に同州オースティン工場に次ぐ第2のファウンドリーを建設する。テイラー市の工場は、2024年下半期の稼働目標とする。

 韓国の平沢(ピョンテク)や華城(ファソン)、器興(キフン)にあるサムスン電子の半導体工場でも生産ラインや事務棟の増設を進めている。同社は生産能力を今の2倍以上に高め、幅広い企業からの受託生産に応えたい考えだ。

グーグル、エヌビディアなどに次ぎ、STマイクロからも受注

 サムスン電子から見ると、TSMCの背中はまだ遠い。台湾の市場調査会社である集邦科技(TrendForce)によると、21年7~9月期の半導体ファウンドリー市場シェアはTSMCが53.1%(前期52.9%)で圧倒し、サムスン電子は2位の17.1%(前期17.3%)だった。TSMCも24年までに1280億ドルという巨費を投じて、米アリゾナ州や日本の熊本市に生産拠点を確保する考えを示す。

 サムスン電子は、徐々にではあるがTSMCの牙城を切り崩しつつある。

 韓国メディアによると、サムスン電子は、米Google(グーグル)や米NVIDIA(エヌビディア)、米Qualcomm(クアルコム)、米IBMに次いで、米STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)から、MCU(Micro Controller Unit)の生産を受注したという。

 STのMCUは、iPhoneが採用する部品の一つだ。16nm世代プロセスの工程で生産する。既に2年先までの生産計画が埋まっているという。

 小型で高性能なMCUは、スマホやクルマなどで需要が広がっている。先端工程ではないものの、顧客の細かい要求に沿って生産する必要がある。世界のMCUのほとんどをTSMCと台湾聯華電子(UMC)という台湾勢が生産している。サムスン電子がファウンドリー市場でTSMCとの競争に勝つためには、MCUは非常に重要な品目になる。

 サムスン電子は、米Tesla(テスラ)からの受託生産も決まっている。7nm世代プロセスの工程で生産した自動運転用のチップを、22年1月からテスラに納入する。このチップは、テスラのEV(電気自動車)トラック「Cybertruck」に搭載されるといううわさだ。テスラは、ファウンドリーとの長期的な協力関係を築くために、TSMCではなくサムスン電子を委託先として選択したといわれている。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

<NIKKEI X TECH>

2021. 12.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00050/

Netflixと韓国通信事業者が泥沼訴訟、インフラコスト巡り平行線

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ネットワークへの投資は通信事業者だけが負うべきなのか――。韓国では、ネットワークのコスト負担を巡って、米Netflix(ネットフリックス)と通信事業者の間で泥沼の訴訟合戦が繰り広げられている。欧州でも巨大IT企業に対し、通信インフラコストの一部負担を求める声が大きくなってきた。韓国における訴訟の行方と論点を紹介する。

ネットワーク使用料を支払う義務を巡りネットフリックスとSKBが訴訟

 ネットフリックスは2020年4月、韓国SK Telecom(SKテレコム)の子会社でインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)である韓国SK Broadband(SKB)を相手に訴訟を起こした。

 ことの経緯はSKBが、ネットフリックスに対して同社のインフラを使うことへの対価となる「ネットワーク使用料」を求めていたことにある。SKBはネットフリックス利用者のトラフィックが急増する中、他の利用者の安定したインターネット環境を守るため、ネットフリックスのサーバーがある東京と香港をつなぐ国際ネットワーク区間容量を増速せざるを得なくなったという。

 これを受けてネットフリックス は、「特定サービスにネットワーク使用料を要求するのは、(すべてのインターネットトラフィックは公平に扱われるべきだとする)ネットワーク中立性原則に反する」とし、交渉に応じたりネットワーク使用料を支払ったりする義務がない点を確認するために訴訟を起こした。21年6月に出たソウル中央地方法裁判所の一審判決は、交渉義務がないことを確認する請求は却下、その他請求は棄却という、ネットフリックスに不利な判決となった。

 ソウル地裁の一審判決の主な内容は以下の通り。(1)ネットワーク中立性は「通信事業者が自社ネットワーク上に流れる合法的なトラフィックを不合理に差別することを禁じる原則」であり、ネットワーク使用料の議論とは直接的関連がない、(2)原告(ネットフリックス)は被告(SKB)を通じてインターネットに接続するという有償役務を提供してもらっていることから、原告は被告に有償役務への対価を負担するものと認定する、(3)どのように対価を支払うかは2社間交渉で決めるべきである――、といった具合だ。

 韓国には大手通信事業者が3社あり、その内、SKテレコム以外の韓国KTと韓国LG U+はネットフリックスと提携関係にある。実はこの2社、ネットフリックスとネットワーク使用料の対価を巡る交渉を終えているもようだ。KTとLG U+は、ネットフリックスとSKBの訴訟についてコメントを控えている。

 韓国のネットサービスの業界団体であるOTT(Over The Top)協議会は、両社の訴訟について「1社でもネットワーク使用料を払わない場合は、その分をコンテンツに余分に投資できるため、全ての会社が公正に払うようにすべきだ」という意見を述べた。韓国の大手インターネット企業である韓国NAVER(ネイバー)と韓国Kakao(カカオ)も、「(ネットフリックスのような)グローバル企業も平等にネットワーク使用料を支払い、公正なインターネットビジネス環境になることを期待する」とコメントした。

 韓国ではかねて、韓国内のコンテンツプロバイダーが通信事業者に対してネットワーク使用料を支払ってきたという経緯がある。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 12.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00049/

北米投資加速する韓国バッテリー3社、原材料中国依存のリスク

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韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション、LGES)と韓国SK on(韓国SK Innovationから分社)、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)という韓国バッテリー3社が米国内の生産拠点拡大を加速している。バイデン米大統領は2021年8月、30年までに米国で販売する乗用車と小型トラックの50%以上を電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にする目標を盛り込んだ大統領令を発令した。米国で生産したバッテリーセルを搭載したEVは追加控除が認められる見込みであり、韓国バッテリー3社は今こそが北米に生産拠点を拡大するチャンスとみる。欧米の自動車大手と相次ぎバッテリー生産のための合弁会社設立に動く中、韓国内ではバッテリー生産の原材料を中国に依存するリスクがささやかれている。

LGはGM、ステランティスと合弁、25年に年150GWhの生産能力

 EV向けバッテリーで韓国最大手のLGエナジーソリューションは、米国におけるバッテリー生産拠点を順調に拡大している。同社は既に韓国の現代自動車(Hundai Motor)や米GMなどから多くのEV向けバッテリーを受注している。22年1月には新規株式公開(IPO)を計画し、IPOで調達した資金を生産設備に投資する。

 GMと韓国LG Chem(LG化学)の共同出資で設立した「Ultium Cells LLC」は、米オハイオ州と米テネシー州にそれぞれ年間35GWhのバッテリー工場を建設。24年に年間70GWhのバッテリー生産能力を確保する計画だ。LGエナジーソリューションは、GMとの間に起きたリコール問題も乗り越えた形で、両社は良好な関係を保っている。

 実際、バイデン米大統領が21年11月17日(米国時間)、米ミシガン州にあるGMのEV工場「Factory ZERO」を訪問した際のエピソードにもそれがうかがえる。バイデン氏は、Ultium Cells LLCが生産した200kWhのハイニッケルバッテリー「NCMA(ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム)」を搭載したEVピックアップトラック「Hummer」に試乗。急発進するなどして記者らの前で「いい車だ」と絶賛した。NCMAバッテリーは、ロングセルでバッテリーパック内部のセル配列を既存の3段から2段に単純化したのが特徴だ。構造の単純化で物理的容量が増えエネルギー密度を10%以上向上したという。

 LGエナジーソリューションは21年10月、欧州の自動車メーカーであるStellantis(ステランティス、旧FCA) とも合弁会社設立に合意。年間40GWh規模のバッテリーセルとモジュールを生産する工場を米国に建設する計画を発表した。22年夏に着工し、24年1~3月期からステランティスが米国やカナダ、メキシコで生産する次世代EVに、このバッテリーを搭載する計画である。

 LGエナジーソリューションは単独でも米ミシガン州にバッテリー工場を追加建設する。そのため同社のバッテリー生産能力は25年に、北米だけで年間150GWh規模のバッテリー生産能力に達する見込みだ。

SKはフォードと合弁、米国で年150GWh規模の生産能力を確保

 韓国バッテリー2番手、SK onも負けてはいない。同社と米Ford Motor(フォード)は21年9月に合弁会社「BlueOvalSK」を設立。27年までに約114億ドル(約1兆2800億円)を投資し、米テネシー州と米ケンタッキー州に年間129 GWh 規模のバッテリー生産工場とEV生産工場を建設する計画を発表した。

 SK onは米ジョージア州に単独投資したバッテリー生産工場を持つ。この工場のバッテリー生産能力が年間21.5GWhであるため、同社は米国内で年間約150GWh規模のバッテリー生産拠点を確保した形になる。SK onは全世界でバッテリー生産能力を23年に85GWh、25年に220GWh、30年に500GWh以上に伸ばす計画を打ち出している。旺盛な米国投資によってこの目標を上回りそうだ。

 SK onは21年12月から、ニッケル含有量を高めたバッテリー「NCM9:1/2:1/2」の量産を開始する。22年上半期出荷するフォードのピックアップトラック「F-150 Lightning」に搭載するという。これまでの同社のバッテリー「NCM8:1:1」バッテリーよりもエネルギー密度を約20%高め、その分走行距離が長くなる。韓国バッテリー3社は、ニッケルの含有量を90%以上にするコバルトフリーに近いバッテリーの開発を競ってきたが、SK onがその口火を切った。

 SK onを含む韓国SKグループは30年まで米国に520億ドル(約6兆円)を投資する計画だ。同社はこれまで、韓国バッテリー3社の中で最も米国におけるバッテリー生産量が多かった。しかしLGエナジーソリューションの追い上げとサムスンSDIの新たな米国投資によって、同社の米国内の立場が揺らぐ懸念がある。そのため追加投資の可能性もありそうだ。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 11.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00048/

サムスン陥落、米国の半導体「機密事項」要求に 顧客情報など除く

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半導体不足の実態把握に向けて、米商務省が世界の半導体メーカーに対して2021年11月8日(米国時間)を期日として自発的に情報提供を求めていた件で、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)や韓国SK Hynix(SKハイニックス)が資料を提出したことが分かった。顧客との秘密保持契約を守れる範囲内で資料を提出したようだ。一足先に提出した台湾TSMC(台湾積体電路製造)も同じく顧客の詳細情報は除いたようだ。米国がこの情報をどのように活用するのかが次のポイントになる。

 米商務省は21年9月、世界の半導体メーカーや、半導体の大口購買者である完成車メーカーなどを対象に、生産能力や生産工程、リードタイム、在庫、製品別の主な顧客、顧客別の売り上げなどの自発的な情報開示を求めた。長引く半導体不足を解消し、サプライチェーン(供給網)の透明性を図るためだ。ただし営業機密といえる情報まで開示を求めたため、世界に波紋が広がっていた。締め切り前日に当たる11月7日には67社の提出にとどまっていたが、締め切り日の11月8日にはサムスン電子などを含めて189社が情報を提出した。多くの企業がどこまで米政府に情報を提供するべきなのか、最後の最後まで悩んだようだ。

 サムスン電子より先に情報を提出したTSMCなどが「顧客別の売上情報は秘密保持契約違反になるため提出できない。その代わりに自動車やパソコンなど産業別半導体売り上げを提出する」と米商務省に交渉したところ、これを受け入れたという報道もあった。その流れでサムスン電子とSKハイニックスも詳細な顧客情報を提供しなくて済んだようだ。

 複数の韓国メディアによると、サムスン電子は顧客情報のみならず顧客との価格交渉に影響を与えるチップの在庫量も記載せず、提出した情報は全て一般公開しないよう求めたという。米商務省は11月9日(米国時間)メーカーが公開を許可し、同省も問題ないと判断した資料の一部をWebサイトに掲載した(86 FR 53031 Notice for Risks in the Semiconductor Supply Chain_published 9-24-21_comments due 11-8-21、https://www.regulations.gov/document/BIS-2021-0036-0001/comment)。SKハイニックスやTSMCの回答文書の一部もここで公開されている。

 SKハイニックスは公開資料を通じて、「メモリーは他の半導体に比べ短期的需給変化に対応しやすい」「現在の半導体チップ不足の原因はメモリー半導体ではない」「メモリー半導体の需給は数年間安定的で、(メモリー半導体が主力の)SKハイニックスはどの製品も生産遅延なく、顧客社の電子システム生産に支障を来すような問題を起こしていない」「メモリー半導体の安定的供給のため米国顧客と緊密に協業している」「次世代技術開発と装備・工場建設投資で十分な生産能力を持続的に維持する」「(メモリーは供給問題がないため)過剰生産能力がない状況で超過生産を勧告するのは存在しない問題の解決策を強要すること」などと強調した。米政府が問題視している半導体不足は自動車に入るシステム半導体がメインであり、自社とは関連がないという点を明確にしたかったようだ。

 韓国からはサムスン電子とSKハイニックスのほかに、半導体シリコンウエハーを生産するSK Siltron(SKシルトロン)、韓国の現代自動車(Hundai Motor)の米国法人であるKia Georgiaも情報を提供した。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 11.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00047/

SamsungがAIを新分野に続々適用、分子の特性予測、素材開発、エネルギー効率など

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です


 2021年11月、Samsung Electronics社 副会長のJae-yong Lee氏は5年ぶりに北米に出張し、カナダトロントにあるコンピュータビジョンやマルチモーダルAIを主に研究するSamsung AI CenterやSamsung Electronics社の方向性を決める研究開発組織Samsung Research America社などを訪問した。AIの研究状況を確認し、研究員らに「格差を広げるだけでは巨大な転換期を乗り越えられない」、「誰も行ったことのない未来を開拓、ニューサムスンを作ろう」と強調した。

 トロントのSamsung AI CenterはSamsung Electronics社の7番目のAI研究センターとして2018年に、Samsung Research America社は2014年にそれぞれ設立した。Samsung Electronics社は2023年まで韓国内180兆ウォン、海外60兆ウォン、合わせて240兆ウォンを半導体、バイオ、次世代通信(5G・6G)、未来新技術(AI・ロボティクスなど)に投資する計画を発表済みである。今回の出張は米国内の新規半導体工場建設に関する調整のためではあるが、Lee副会長の日程からかAI・ロボティクス・6G分野のM&Aや新規事業を検討しているという報道もあった。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2021. 12.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00091/

Amazonが韓国キャリアと協業、Alexaとのデュアル搭載、英語ではAlexaが、韓国語では自社AIが対応

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2021年10月20日、韓国の通信事業者(キャリア)のSK Telecom社は「NUGU Conference 2021」を開催し、2022年1月より自社のAIアシスタントNUGUと米Amazon.com社のAlexaを同社のスマートスピーカー「NUGU Candle」で2カ国語(バイリンガル)デュアルエージェントとして使えるようにすると発表した(図1)。

 1つのスマートスピーカーから「Alexa」と呼んで英語で話しかけるとAlexaが反応し、NUGUの呼び出し名である「アリア」と呼んで韓国語で話しかけるとNUGUが反応する仕組みである。1台のスマートスピーカーからAlexaとNUGUの両方のサービスを利用できる。AlexaとNUGUのIDを連動するだけで使える。

本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2021.11 .

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00089/

LGが家電生産で5Gスマートファクトリー、総額8000億ウォンを投資

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 2021年9月16日、韓国LG Electronics社のスマートファクトリー「LG Smart Park」が稼働を開始した。1976年昌原市(チャンウォン)の国家産業団地造成と同時に設立したLG Electronics社の冷蔵庫、オーブン、浄水器、食器洗浄機などキッチン家電を生産する工場がスマートファクトリーに生まれ変わった。コンベアを利用した大量生産ラインを市場の需要に応えられる知能型自律生産ラインへ切り替えた。

 LG Electronics社は2017年、昌原市がある自治体の慶尚南道と「スマートファクトリー構築及び雇用に関する投資協約」を結び工場の再建設に着手した。慶尚南道はLG Smart Parkがある昌原国家産業団地の労働力に頼る古い製造業設備を時代の変化に合わせスマート化することを課題にしていた。昌原国家産業団地は2019年より中央政府から予算も割り当てられ「スマートグリーン産業団地」へ生まれ変わろうとしている。2019年から2022年まで1兆49151億ウォンの予算を使い、誰でも最先端技術を実際の工場と同じ環境でテストできる工程イノベーションシミュレーションセンターやデータセンター、スマートセンシングユニット製品化実証基盤が構築され、5G活用スマートファクトリー規制自由特区、スマートファクトリー専門人材養成など製造業のスマート化を支援するための事業が行われた。慶尚南道はLG Electronics社の協力会社を含む地域中小企業2000社のスマートファクトリー構築支援のため、2019年から2022年まで別途4000億ウォンの予算を確保した。2021年8月時点で1577社がスマートファクトリーを構築または構築中である。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2021. 10.

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00087/

韓国で調理ロボットの普及が加速、インフレやコロナ禍が後押し

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 ソウル市で調理の全工程をロボットが担当するレストラン・カフェが増えている。テストを終えて商用化した外食産業向けロボットの普及が急速に進み、フードテック(foodtech)に投資するスタートアップや企業も増えている。

 2021年8月7日付の米Wall Street Journalによると、米国ではレストラン業界の求人難を乗り越えるために調理ロボットの導入や自動化が進んでいるという。一方、韓国では非接触型サービスを好む顧客が増えていること、インフレ下で人件費を節減して少しでも値上げを抑えて顧客を確保するため、さらに厳しくなった労働法を遵守するために導入する事例が多い。

 ソウル市江南区住民の間でおいしいと評判の「Robert Chicken」は、鶏に衣をつけて揚げる調理を全て協働ロボットと自動化装置が行うフライドチキン専門店である。2018年に起業したフードテックのスタートアップRobo Arete社が、中小企業向け協働ロボット「Neuromeka」のロボットアーム「Indy7」を導入して調理自動化ソリューションとビジネスモデルを考案した。そこに、韓国で最大手のITサービス企業NAVER社の投資部門NAVER D2 Startup Factoryと投資組合WeVenturesが10億ウォンを投じたことでさらに有名になった。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2021. 9.

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00085/

Hyundai Motorが米Boston Dynamicsの買収完了、4足歩行ロボット「Spot」の事業化目指し協業拡大

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 2021年6月末、韓国のHyundai Motor社はYouTubeに「Hyundai x Boston Dynamics welcome to the family with BTS」というタイトルの動画を公開した。これは、買収を表明していた米Boston Dynamics社の手続きが完了し、ロボット事業を本格的に拡大することを告知するのが目的である。

 公開したのは、Hyundai Motor社のグローバルブランド広報大使であるボーイズグループ「BTS」とBoston Dynamics社の4足歩行ロボット「Spot」、2足歩行ロボット「Atlas」が一緒に踊る動画である。SpotはBTSのダンスを真似て動き、Atlasは息ぴったりの群舞を見せる。韓国の視聴者にとってBTSとロボットの組み合わせが新鮮で、SpotとAtlasの繊細な動きを見せて技術力をアピールしながら親近感も得た、と高く評価された。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2021. 8.

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00083/