サムスンがイメージセンサーで狙うソニー超え、業界最小を武器に

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 韓国Samsung Electronics(サムスン電子)がイメージセンサーでソニーグループ(以下、ソニー)の牙城を崩そうとしている。サムスン電子は業界最小ピクセルサイズという5000万画素のモバイル向けイメージセンサーを新たに投入。積極攻勢をかけている。韓国メディアによると、現在倍近いソニーとサムスン電子のイメージセンサー市場のシェアの差が、今後5年以内に10%台に縮まるという見方も出ている。2030年にシステム半導体でも世界シェア1位を目指すサムスン電子にとって、イメージセンサーのソニー超えは避けて通れない道だ。

 サムスン電子は21年6月10日、業界最小という0.64μmピクセルサイズで5000万画素のモバイル向けイメージセンサー「ISOCELL JN1」の量産を開始したと発表した。

 イメージセンサーは、スマートフォン(スマホ)のカメラ機能に欠かせないキーデバイスだ。多数の画素で光を捉え電気信号に変換する。スマホのカメラ機能のほか、自動運転の“電子の眼”として車載分野でも今後、大きく伸びると期待されている。

 ソニーが圧倒的首位を維持するイメージセンサー市場に、サムスン電子は世界最高レベルの微細工程を生かした小型化で挑む。新たに量産開始したISOCELL JN1は、同社が19年9月に公開したピクセルサイズ0.7μmのイメージセンサー「ISOCELL Slim GH1」よりもさらに小型化した。

 センサーのモジュールの高さも従来比で10%薄型化した。スマホに採用した場合、本体からカメラ部分が突出するようなデザインにならないという。スマホ用の標準カメラのほか、前面カメラや望遠カメラなど幅広い用途に応用できるとする。

 イメージセンサーの小型化は、スマホデザインの自由度を高める一方で、受光量の低下というデメリットがある。サムスン電子はその課題を克服する数々の新技術をISOCELL JN1に投入した。例えば「ISOCELL 2.0」と呼ぶ技術は、イメージセンサーのピクセル間の素材改良によって、従来比で光感度を16%向上したという。暗い環境では、隣接する4つのピクセル(0.64μm)を1つの大きなピクセル(1.28μm)として扱うことで、より明るい写真を撮影できる「Tetrapixel」と呼ぶ機能も活用できるようにした。

 韓国では、21年8月にも製品発表と噂されるサムスン電子の新型折り畳み式スマホ「Galaxy Z Fold3」に、このISOCELL JN1が搭載されるのではないかと注目が集まっている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 6.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00037/

韓国通信3社の無人携帯ショップ、本人確認のDX化も後押し

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 韓国KTと韓国SK Telecom(SKテレコム)、韓国LG U+(LGユープラス)の通信3社が2020年後半から続々と開始した24時間365日営業の無人携帯ショップ。無人の携帯ショップ実現を、官民一体で進む本人認証アプリの活用などのデジタルトランスフォーメーション(DX)も後押ししている。

 携帯電話を契約するには、犯罪防止などの観点から本人確認が必要だ。日本の場合、第三者が入手できない運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどを本人確認の書類とすることが多い。この本人確認が、携帯ショップの業務を無人化する上で一つのネックになる。

 韓国では本人確認に使える身分証明書のデジタル化が進んでいる。韓国の通信3社は、これらの仕組みを活用し、手続きの手順を見直すことで24時間365日営業の無人携帯ショップを実現した。

 例えば無人携帯ショップでセルフキオスク端末を操作する際の本人確認には、韓国で普及する「PASS」と呼ばれる本人認証アプリを利用する。PASSは、通信3社が共同で運用するサービスであり、通信3社と契約する利用者の携帯電話番号のデータベースを活用することで、本人認証できる仕組みだ。現在韓国では3000万⼈以上が利⽤している。20年6月からはPASSと警察庁運転免許システムを連動し、運転免許証の顔写真をPASSのアプリに表示し身分証として使うモバイル運転免許確認サービスも始まった。

 PASSに登録していない利用者は、セルフキオスク端末に名前や携帯電話番号など個人情報を入力すると、入力した電話番号にSMS(ショートメッセージサービス)で暗証番号が送られてくる。この暗証番号をセルフキオスク端末に入力することで本人確認が完了する。韓国では、放送や通信に関する監理、許認可業務を担う放送通信委員会が、通信3社を本人確認機関に指定しているため、このようなスムーズな手続きが可能になっている。

 なおSKテレコムは20年、韓国の⾏政安全部(部は省にあたる)と連携し、スマートフォン(スマホ)を使って家族関係証明書(旧⼾籍 )、住民登録謄本(住民票の写し)、出⼊国事実証明など各種証明書を発⾏し、アプリ経由で提出できるサービスも始めている。アプリ経由でこれらの証明書を提出できるためセキュリティーも高められる。

 24時間365日営業の無人携帯ショップの登場によって、従来型の携帯ショップはやがて淘汰されてしまうのだろうか。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 6.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00036/

韓国通信3社が続々開始、24時間無人携帯ショップの実態は?

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 1年以上続く新型コロナウイルスの感染拡大の中で、韓国の携帯ショップが激変している。韓国KTと韓国SK Telecom(SKテレコム)、韓国LG U+(LGユープラス)の通信3社が、24時間365日営業の無人携帯ショップを続々とスタートしているからだ。通信各社は、オンライン手続き後、スマートフォン(スマホ)とSIMカードを即日配送するサービスも強化している。韓国でいち早く進む携帯ショップのデジタルトランスフォーメーション(DX)は、オンライン専用プランの登場で曲がり角を迎えている日本の携帯ショップの今後も示唆する。

自動販売機からスマホが出てくる

 韓国の通信3社の中で真っ先に24時間365日営業の無人携帯ショップをオープンしたのは、韓国の携帯電話シェア1位のSKテレコムだ。20年10月、韓国ソウル市内に「T Factory」という名前の無人店舗を設置した。

 契約までの手順は以下の通り。まず店舗の入り口で、利用者の顔や携帯電話番号、氏名など本人確認をして登録する。以降は店舗に顔認証で入場できるようになる。顔認証と新型コロナウイルス対策の発熱チェックを同時に行う入場ゲートを通ると、人工知能(AI)が料金プランの相談や各種手続きを行うタッチパネル式のセルフキオスク端末が置いてある。

 セルフキオスク端末を操作し、購入したい端末機種やカラーを選択。続いて機種変更/MNP(モバイル番号ポータビリティー)/新規加入という加入形態を選び、電話番号を確認。料金プランや端末代金の分割払いの回数、家族割など各種割引プランを選択する。最後にもう一度本人認証し、個人情報を確認して約款に同意すると手続きが終了する。セルフキオスク端末の隣にある自動販売機からスマホが出てくる。

 SKテレコムのホームページにてオンライン経由でスマホやプランを契約し、T Factoryで受け取るといった購入方法も可能だ。新規加入もしくは機種変更の場合は、5分以内で全ての手続きが完了する。セルフキオスク端末は英語表示も可能であり、韓国に住む外国人の利用も増えている。利用方法が分からない時はセルフキオスク端末の「スタッフ呼び出し」ボタンをタッチすると、24時間いつでもスタッフとテレビ電話がつながり、韓国語または英語で対応してくれる。

 韓国の通信事業者は、スマホの新機種が発売されると第1号契約者を盛大に迎えるイベントを実施する。コロナ禍において、その様子も様変わりした。SKテレコムは21年1月、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の新スマホ「Galaxy S21」発売時に、第1号契約者がT Factoryを訪問し、1人でセルフキオスク端末を操作して、自動販売機からスマホを受け取る様子をアピールした。

 T Factoryには、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)など5G(第5世代移動通信システム)を活用したサービスを体験できるスペースや、植物に囲まれたカフェなども併設されている。そんなT Factoryは、Z世代(90年代後半から12年頃に生まれた世代)から50代まで幅広い顧客が利用し好評という。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 6.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00035/

世界覇権へ先手、韓国が「K-半導体戦略」 49兆円投資

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 韓国産業通商資源部(部は省に当たる)は2021年5月13日、韓国半導体産業の競争力強化を目指す国家戦略「K-半導体戦略」を発表した。30年に世界最高の半導体供給網を構築するというビジョンのもと、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)など民間企業が合計で510兆ウォン以上(約49兆円)を投資する。21年5月21日に開催された米韓首脳会談でも韓国は、半導体と電気自動車(EV)向けバッテリー分野で米国と包括的提携を結んだ。現代の戦略物資といえる半導体の世界覇権に向けて、韓国が大きな一歩を踏み出した。

 K-半導体戦略の発表の場には文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領も出席した。文大統領は「半導体産業は企業間競争から国家間競争の時代に移った」「半導体強国を目指し、政府も企業と一心同体になるべきだ」と説明。「世界で自国中心の供給網再編が始まり、激しい競争へと突入している。我々が向かうべき方向は明確だ。先制投資で外部の影響に揺るがないよう国内産業のエコシステムをさらに固め、世界の供給網を主導する。この機会を我々がものにすべきだ」と続けた。

 K-半導体戦略は、19年に発表した「システム半導体戦略」、そして20年発表の「AI半導体戦略」に次ぐ韓国の半導体国家戦略である。その戦略からは、これまで以上に、韓国が世界の半導体強国になろうという本気度が見えてくる。

 同戦略では、半導体設計から素材や部品、装備、製造に至るまで、韓国が半導体製造の中心地に躍り出るように、企業の連帯や協力の活性化、人材や市場、技術確保に至るまで力を入れる。その結果、韓国が世界の半導体需要に対応できる安定供給基地となることを目指し、半導体輸出を20年の992億米ドル(10兆8000億円)から、30年には2000億米ドル(21兆8000億円)へと倍増させる。

水や電気も、半導体関連のインフラ支援

 K-半導体戦略では、半導体関連の民間投資を呼び込むために、税から金融、インフラなどあらゆる分野で半導体企業を支援する。

 例えばサムスン電子の半導体工場がある韓国・平沢(ピョンテク)市や、韓国SK hynix(SKハイニックス)の工場がある韓国・龍仁(ヨンイン)市などでは、韓国政府が10年分の半導体工場向け用水を確保する。素材や部品、装備に特化した生産団地への送電線路設置費用については、韓国政府と韓国電力が半額を負担する。

 21年から24年の半導体関連投資については、税額控除率を上げて企業の負担を減らす。具体的には、現在、大企業が30%、中小企業が40%の税額控除率である半導体研究開発について、40〜50%に上げる。半導体施設投資については、これまで大企業の場合に3%だったところ、10〜20%に上げる。

 こうした優遇措置の結果、半導体大手のサムスン電子やSKハイニックスなど半導体企業153社は、K-半導体戦略の発表に合わせて、工場の増設や設備高度化、メモリー製造施設増設などのために30年までに510兆ウォン(約49兆円)以上を投資することを公表した。21年は41兆8000億ウォン(約4兆円)の投資となる。

 サムスン電子は、30年までに半導体の研究開発と平沢市の半導体工場に171兆ウォン(約16兆6000億円)を投資する。19年に発表した当初計画よりも38兆ウォン(約3兆7000億円)増額した。

 SKハイニックスは、30年までに半導体関連で約230兆ウォン(約22兆5000億円)以上を投資する。生産拠点がある韓国・利川(イチョン)市とは別に、龍仁市に半導体クラスターを造成するため約120兆ウォン(約11兆8000億円)を投資し、利川市と清州市の工場設備増設のために約110兆ウォン(約11兆円)を投じる。龍仁市には素材や部品などの装備特化団地を造成し、50社が入居する予定である。

 SKハイニックスは、工場の生産能力を2倍に拡大するため、韓国内工場増設と海外企業買収の両方を検討していることも明かした。SKハイニックスはメモリー事業の割合が98%を占める専門企業であり、ここに来て非メモリー事業を拡大しようとしている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 6.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00034/

サムスンによるNXP買収説が再び浮上、Xデーは5月末か

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 韓国Samsung Electronics(サムスン電子)による車載半導体大手オランダNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)の買収説が再び浮上している。サムスン電子は2021年1月、決算発表の場で3年以内に企業買収計画があることを明らかにした。それから韓国メディアは、買収先候補としてNXPのほか、米Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)、日本のルネサス エレクトロニクスなどの名を挙げていた。買収先の最有力候補として、なぜNXPの名が再浮上してきたのが。その事情に迫る。

Xデーは5月21日の米韓首脳会談か、韓国メディア

 サムスン電子がNXPを買収先の最有力候補と考えているだろう理由はいくつも浮かぶ。同社は2030年にメモリーだけでなくシステム半導体でも世界1位となる目標を掲げている。企業買収という大規模な投資をするならば、世界的に半導体不足に見舞われている車載半導体分野が適している。買収先としては、サムスン電子の主力工場がある米国内の車載半導体企業を優先するのが都合よい。NXPはサムスン電子の主力工場がある米国テキサス州オースティンに半導体工場を持つ。NXPが買収先として最有力に浮上するのは、こうした理由からだ。

 韓国メディアは、サムスンが買収を発表するXデーとして、21年5月21日開催予定の米韓首脳会談の前後と予想する。サムスン電子がこのタイミングで、テキサス州オースティンの半導体工場において、170億米ドル(約1兆8000億円)規模の新規投資計画を発表し、車載半導体関連でも企業買収計画を発表するのではないかとする報道も出ている。

 これに先立つ21年4月12日、米国のバイデン大統領は、世界的に不足する半導体の問題について世界の大手企業の幹部と協議している。そこにはサムスン電子の幹部も出席した。この協議について韓国メディアは、米中半導体覇権争いの中で、米国中心の半導体サプライチェーン再編のために米国内の生産施設にもっと投資してほしいというメッセージだと分析している。

 この4月の協議の直後にサムスン電子が何らかの形で米国の意向に沿う投資計画を発表するとみられていた。しかし発表はなかった。贈賄罪などで再収監された、サムスングループの経営トップでサムスン電子の副会長である李在鎔(イ・ジェヨン)氏の赦免につながるような世論を作るためにも、米韓首脳会談のタイミングのほうが都合よいのかもしれない。

 サムスン電子は米韓首脳会談前の21年5月13日になって突然、韓国メディアの予想を上回る規模の投資計画を発表した。韓国の文在寅大統領も出席した「K(Korea)-半導体ベルト戦略報告大会」で、 19年4月にまとめた「システム半導体ビジョン2030」達成のため従来計画に38兆ウォン(約3兆7000億円)を上乗せした171兆ウォン(約16兆5000億円)を投資すると発表した。追加した投資金はファウンドリーの最先端工程開発と生産ライン建設に使う。

 現在基礎工事中の韓国・平沢(ピョンテク)市の主力半導体工場第3ラインについて、稼働時期を23年から22年下半期に前倒しする。第3ラインの投資だけで50兆ウォン(約4兆8000億円)にのぼる見込みである。ただこの日も企業買収計画に関する発表はなく、米韓首脳会談に向けて、追加の発表があるのかどうかについて注目が続いている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021.5 .

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00033/

アップルカー生産受託か、LGとマグナ合弁会社が注目される理由

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 米Apple(アップル)が開発中の電気自動車(EV)「アップルカー」の生産を誰が受託するのか――。当初、韓国Hyundai Motor(現代自動車)が有力視されていたが2021年4月14日、複数の韓国メディアが韓国LG Electronics(LGエレクトロニクス)とカナダの大手自動車部品メーカーMagna International(マグナ・インターナショナル)の共同出資会社「LG Magna e-Powertrain」がアップルカーの初期生産分を受注する可能性が高いと報じた。LGは報道にコメントしないものの、マグナはかねてアップルカーを生産したいという発言を繰り返している。

 LG Magna e-Powertrainの受託が有力視される理由の一つに、マグナ・インターナショナルが過去、アップルのEVプロジェクトである「Project Titan」に参加していた点がある。20年12月にマグナとアップルの交渉は終わったと報道されたが、LG Magna e-Powertrain ならばマグナとLGグループ両方のバックアップを期待できる。


 LG Magna e-Powertrainはモーターやインバーターなどの製造で高い技術力を持つLGエレクトロニクスと、世界3位の自動車部品会社でグローバルな販売網を持つマグナの共同出資会社だ。ガソリン車からEVへと自動車産業が転換期を迎える中、マグナがLGエレクトロニクスのモーター技術力に投資するため設立したと言われている。ドイツMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)や独BMW、トヨタ自動車などの車体生産受託を手掛けるオーストリアのMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)は、マグナ・インターナショナルの子会社である。

 アップルカーを巡っては、アップルと複数の完成車メーカーの交渉が報道されている。しかし生産委託先の選定に難航している様子がうかがえる。アップルにとっては、完成車メーカーではないLG Magna e-Powertrainのような企業のほうが、生産委託しやすいだろう。LG Magna e-Powertrainは21年7月設立完了を目指し、LGエレクトロニクスから1000人規模の人員移動や外部からの中途採用を進める計画だ。

 アップルカーの初期生産分は市場性を評価するための生産であるため、台数規模はそれほど大きくないとみられる。それでもマグナ・インターナショナルはこれまでアップルカーを生産したいと積極的にアピールしてきた。同社のSwamy Kotagiri CEO(最高経営責任者)は、イベントやメディアの取材で度々「マグナはアップルカーを生産する準備ができているかと聞かれたら『はい』と答える。喜んで生産する」「北米に工場を増設する意向もある」と話している。

 マグナは21年4月12日にイスラエルのEVプラットフォーム開発会社のREE Automotiveと戦略的提携契約を締結し、顧客が車両をカスタマイズできるモジュラーEVを開発すると発表した。マグナとREE Automotiveの協力体制は、アップルがアップルカーの生産を委託する企業を選ぶ際の魅力的な材料になりそうだ。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 4.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00032/

スマホ撤退の韓国LG、差異化裏目で顧客離れ 車載電装に活路

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韓国LG Electronics(LGエレクトロニクス)は2021年4月5日、同年7月31日に携帯電話事業部門の生産および販売を終了すると発表した。2画面スマホなど、独特の形状の製品を生み出すことで知られたLGエレクトロニクスだが、スマホ事業は長く赤字が続いていた。同社がスマホに代わって活路を見いだすのが車載電装事業だ。市場はスマホ事業撤退を歓迎しており、同社の株価は上向きに転じている。

 LGエレクトロニクスは撤退の理由として、「スマホ事業の競争深化および持続的な事業不振」、「内部資源の効率化による核心事業への集中および事業構造改善」、「選択と集中による全社事業ポートフォリオの改善」の3つをあげた。スマホ事業の技術資産とノウハウは、既存事業の競争力強化と新事業のために積極的に活用するという。事業終了で短期的には売上高が減少するが中長期的には財務構造の改善効果が期待されるとした。スマホ事業終了でもリストラはせず、スマホ事業の従業員は他の事業部や系列会社へ再配置し雇用を維持。取引先の被害補償についても今後発表するという。

累積赤字は約5兆ウォン、出遅れ挽回ならずついに撤退

 1995年に始まったLGエレクトロニクスの携帯電話事業だが、2015年4〜6月期から赤字となり、20年10〜12月期まで23期連続で赤字を記録していた。累積赤字は実に約5兆ウォン(約4860億円)にのぼる。

 韓国内ではLGエレクトロニクスがフィーチャーフォンに固執した点が赤字の決定的要因と分析されている。フィーチャーフォン時代は、LGエレクトロニクスが世界の販売台数シェアで3位だったほどで、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)よりも早くタッチセンサーや高画素カメラ、MP3プレーヤー機能付き端末を発売していた。

 しかし07年の米Apple(アップル)「iPhone」登場以降、韓国を含め世界市場ではスマホが主流になった。しかし当時、LGエレクトロニクスはフィーチャーフォンを発売し続け、スマホ市場への参入が出遅れた。

 出遅れを挽回しようと、デュアルディスプレーや超広角カメラ、フロントデュアルカメラ、回転式ディスプレー、高音質を実現するHi-Fi Quad DACなど、特徴的な機能を載せたスマホで差異化を図ろうとした。しかし独特過ぎる形状が多く、ハイエンドモデルでも普及モデルでも利用者が離れてしまった。

 21年1月には既に同社のスマホ事業売却説が報道されていた。韓国KBSによると、LGエレクトロニクスのスマホ工場がベトナムにあることから当初同社は、ベトナムの複合企業、Vingroup(ビングループ)かドイツの自動車大手Volkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)に売却しようとしたという。だがモバイル技術の知財はLGエレクトロニクスが保有するという条件だったことから、交渉が決裂したようだ。

 韓国内でライバルとなるサムスン電子は早速に、LGエレクトロニクスの5Gスマホ「V50」を販売代理店に持ってくると自社製「Galaxy S21」「Galaxy Z Fold2」といった最新スマホをさらに7万ウォン(約6800円)値引く販売施策を始めている。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021.4 .

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00031/

韓国電池3社、EV向け積極投資にもかかわらず株価急落のワケ

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電気自動車(EV)の電池製造を増産すべく、2021年1〜3月に大規模な投資計画を明らかにした韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と韓国SK innovation(SKイノベーション)、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)の韓国電池3社。だが各社の株価が21年3月に入り大幅下落している。生産能力の増強により、中国寧徳時代新能源科技(CATL)をはじめとする中国勢に対抗し、EV市場で主導権を狙うはずだった。だが大口納入先の方針転換と、米国際貿易委員会(ITC)の判決をめぐる訴訟リスクが影を落としている。

 LGエナジーソリューションの親会社であるLG Chem(LG化学)の株価(終値)は、米国における投資計画発表直後の21年3月15日には96万6000ウォンまで急騰したが、その後、急落した。同3月23日の終値は77万5000ウォンと15日から20%以上も下落している。同社の米国における投資計画は、25年まで5兆ウォン(約4840億円)以上を投資し、年産70GWh以上のバッテリー生産能力を追加確保するという大規模なプランだった。

 1兆2000億ウォン(約1160億円)を投資し、年産30GWh規模のハンガリー第3工場を新設すると21年1月に発表したSKイノベーションも、同3月に入り株価が下落している。21年2月2日に31万7000ウォンと高値を付けたが、同3月23日には20万2000ウォンまで急落した。

 ハンガリーのバッテリー工場に約1兆ウォン(約970億円)を新規投資し、生産規模を年産最大50GWh に拡大すると21年2月に発表した韓国Samsung SDI(サムスンSDI)も同様だ。21年2月26に67万4000ウォンだったのが、同3月23日には62万4000ウォンまで下落した。

VWグループが自前工場に転換、LGとSKに打撃

 韓国メディアや証券業界の分析によると、株価下落の理由は大きく2つある。まず世界第2位のEV販売台数をほこるドイツのVolkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)が21年3月15日、新たなEV向け電池の採用計画を発表した影響だ。

 VWグループはこの日、自社EV向けに、規格を統一した角形電池セル(Prismatic Unified Cell)を23年から導入することを明らかにした。30年には自社EVモデルの80%に搭載する計画で、EVシフトを推進させるため、自前で年産40GWhのEV用電池セル工場を欧州6カ所建設するという。年産40GWh×6カ所は相当な生産量だ。

 VWグループのEVプラットフォーム「MEB (Modular Electric Drive Matrix)」向けの電池供給において現在、LGエナジーソリューションは欧州市場で1位、SKイノベーションが同2位である。韓国電池3社のうち、EV向け角型電池セルを生産しているのはサムスンSDIだけだ。LGエナジーソリューションとSKイノベーションの主力はラミネート型の電池セルである。EV向け電池は3〜4年先の分まで受注しているので今すぐ供給が切れるわけではないが、VWグループが角形電池セルに移行することで、韓国電池3社への影響は不可避だろう。だからこそ株価が急落したわけだ。

 VWグループは前述の発表会で、EV普及のためには電池製造費用を安く抑えることが重要と強調した。鍵を握るのは、VWグループが19年に株式20%を取得したEV向け電池を製造するスタートアップ、スウェーデンNorthvolt(ノースボルト)とみられる。ノースボルトは角型電池セルを生産しておりこの日、VWグループと140億ドル(約1兆5300億円)規模の受注契約を結んだことが明らかにされた。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 4.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00030/

EVリコール問題も意に介さず、韓国電池3社が打倒CATLへ積極投資

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韓国Hyundai Motor(現代自動車)の電気自動車(EV)「Kona Electric」が電池の発火でリコールとなった件で、費用分担は現代自動車が3割、電池のサプライヤーである韓国LG Energy Solution(LGエネルギーソリューション)が7割とすることで合意したと韓国メディアが報じた。費用総額は1兆4000億ウォン(約1360億円)前後と見込まれている。

 この件では、韓国国土交通部(韓国の部は日本の省に相当)がKona Electricで発生した火災事故の調査に乗り出し、電池セルの製造不良(負極タブの折り畳み)による火災発生の可能性を確認したと発表。電池を製造したLGエネルギーソリューションの責任が問われ、費用分担の割合が注目されていた。

 費用分担が報じられた2021年3月4日、LGエネルギーソリューションの親会社であるLG Chem(LG化学)と現代自動車はそれぞれ、リコール費用に基づいて20年の営業利益を下方修正した。責任や費用分担を巡って双方が争った時期もあったが、今回の合意で協力関係は継続することになり、今後は現代自動車からの発注量も増えるとみられている。

テスラ向けに米国の生産能力増強か

 それから約1週間後の同月12日、LGエネルギーソリューションはリコールのニュースを打ち消すがごとく大規模な投資計画を発表した。25年まで5兆ウォン(約4850億円)以上を投資し、米国に少なくとも2カ所の電池工場を新設することで、年産70GWh以上の生産能力を追加で確保する。さらに、米国での生産品目に、急成長しているEV用円筒型電池を加えることも明らかにした。従来は、エネルギー貯蔵システム(ESS)用ラミネート型電池を生産していた。

 米国でこれから生産する円筒型電池については、同月10日に英Reuters(ロイター)が「LGエネルギーソリューションは、米Tesla(テスラ)の『4680』電池セル生産のために米国と欧州で工場新設を検討している」と報じており、テスラ向けの可能性もある。ただし、LGエネルギーソリューションは投資計画の中で4680に関しては何も言及していない。4680は、テスラが20年9月に発表した、直径が46mm、長さが80mmの円筒型電池だ。既存の「2170」よりも大きく、EVの航続距離を伸ばせるという。

 米国に工場を新設するのは、バイデン米政権のEV転換政策に合わせて米国内での生産能力拡大を急ぐためである。米国は「Buy America」のスローガンの下、米国産EVを優遇する方針を打ち出している。米国産EVとして認められる条件に「電池セルが米国製であること」があり、北米市場で大手自動車メーカーやEVスタートアップ、ESSメーカーから大量に受注したことから、LGエネルギーソリューションは生産能力拡大を進めているという。米国では、テキサス州の大寒波で停電が続いて大混乱が生じており、ESSの需要増も見込まれている。

 LGエネルギーソリューションによれば、電池の需要は旺盛で、毎年3兆~4兆ウォン(2910億~3880億円)を投資して工場を新設していかないと生産が間に合わない状況だという。資金確保は問題ないとの見通しを示した。米国内での安定したサプライチェーンを構築することで、リコールを乗り越え米国のEVやESSの需要を取り込む。従来は受注してから投資していたが、今後は需要を見越して投資を先行する戦略に転換したという。

 LGエネルギーソリューションは、米General Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)との合弁会社である米Ultium Cells(アルティウムセルズ)でも追加投資を検討している。既に米国オハイオ州に年産35GWh規模の工場を建設しているが、次世代技術を適用した電池を生産する第2工場の建設も21年上期に決めるという。第2工場の稼働は、23年を予定している。GMは25年までEVの販売割合を最大40%に引き上げる計画を打ち出している。GMのEV向けに電池を安定供給すべく、第2工場の生産能力も同じく年産35GWh程度の規模になるという。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 3.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00028/

EV火災事故の原因はLGの電池か、韓国企業の争いでCATLに漁夫の利

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韓国Hyundai Motor(現代自動車)は2021年2月23日、中型クロスオーバー電気自動車(EV)「IONIQ 5」を公開した。グループで展開するEV専用プラットフォーム「E-GMP(Electric-Global Modular Platform)」を初めて適用した車種である。E-GMPは、米Apple(アップル)が開発中のEV「アップルカー」を巡る報道でも注目されていた。

 IONIQ5は、韓国内の事前予約初日に2万4000台ほど売れた。21年の販売目標である2万6500台を難なく達成できそうだ。同車は、世界のEV市場で現代自動車の実力を占う試金石とみられている。現代自動車は、セダン「同6」や大型SUV(スポーツ多目的車)「同7」も投入してEVのラインアップを増やす計画である。

LGの電池が火災事故の原因か

 IONIQ 5公開翌日の2月24日、韓国国土交通部(韓国の部は日本の省に相当)は自動車安全研究院と共同で実施した、現代自動車のEV「Kona Electric」の火災事故に関する調査の結果を発表した。電池セルの製造不良(負極タブの折り畳み)による火災発生の可能性を確認したという。同様に原因とみられていた電池セルの分離膜損傷に関しては、再現実験の途中であり、今のところ実験では火災が発生していない。

 国土交通部は、韓国で最初のKona Electricの火災事故が発生してから2カ月後の19年9月に調査を始めており、今回初めて結果を発表した。現代自動車は、リコール関連費用の総額(韓国内向け車両と輸出車両)を1兆ウォン(約954億円)と推定。最終的な費用は、電池のサプライヤーである韓国LG Energy Solution(LGエネルギーソリューション)と分担した上で計上するという。

 これに対し、LGエネルギーソリューションは直ちに反論した。「リコールの理由になった電池セルの製造不良は、再現実験では火災を引き起こさなかったので直接的な原因とはいえない」「BMS(電池管理システム)の充電マップについて、当社が提案したロジックを現代自動車が誤って適用したのを確認した」などと主張し、電池は火災事故の原因ではないという立場を取っている。

 現代自動車は火災事故の原因を電池と判断し、21年3月29日からKona ElectricやEVセダン「IONIQ Electric」、EVバス「Elec City」のBSA(Battery System Assembly)を交換すると発表した。対象車両は、LGエネルギーソリューションがLG Chem(LG化学)から分社する前の17年9月~19年7月に中国・南京の工場で生産された電池セルを搭載したもの。この電池セルには、両極端子に絶縁コーティングが施されていない。対象台数は、韓国内が2万6699台、国外が5万5002台である。現代自動車としては、火災事故の原因をLGエネルギーソリューションの電池ということにして、早くリコールを終わらせ、IONIQ 5の販売に力を注ぎたいようだ。

 リコールの原因や費用分担を巡る現代自動車とLGエネルギーソリューションの攻防はまだ続きそうだが、韓国ではこのリコールでSK innovation(SKイノベーション)が注目されている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 3.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00027/