EV電池三国志、中国勢独走に韓国3社追随 日本は地盤沈下

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世界で電気自動車(EV)の販売が急拡大するのに伴い、EV搭載バッテリー市場の競争が激しくなっている。シェア首位を独走する中国勢に対し、韓国バッテリー3社はシェアを守りながらすぐ後ろを追いかける。日本は中韓の攻勢に対し、地盤沈下が目立ってきた。

 韓国のエネルギー市場専門の調査会社SNE Researchは2021年9月29日、2021年1月〜8月期の世界市場で登録されたEV搭載バッテリーのメーカー別シェアを公表した。首位は中国・寧徳時代新能源科技(CATL)であり、シェアは30.3%と前年同期から6.9ポイント増やした。2位は韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)である。シェアは24.5%で同1.5ポイント増だ。韓国勢はこの他、韓国SK on(韓国SK Innovationから21年10月に分社)がシェア5.4%で5位に、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)がシェア4.9%で6位に入った。韓国バッテリー3社が、中国勢の独走を追いかけている様子が見える。

 気になるのが日本勢のパナソニックだ。同社のシェアは前年同期から7.5ポイント減の13.3%とジリジリと中韓の勢いに押されている。SNE Researchによると21年1月〜8月期に登録されたEV搭載バッテリーの総量は162.0GWhであり、前年比約2.4倍に増えたという。同社は、EV市場において米Tesla(テスラ)の独り勝ち時代が終わり、群雄割拠の地殻変動が起きていると分析している。中韓勢はこの地殻変動の波をうまく捉えて成長につなげている。その一方、パナソニックはその波を捉えきれていないのかもしれない。

 韓国内でも、パナソニックとトヨタ自動車の共同出資会社であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)が、2022年までEVバッテリー生産費用を半分に減らす方針や、トヨタ自動車が2030年までにバッテリー開発と生産に1.5兆円を投資することについて大きく注目している。しかし韓国メディアでは、テスラとトヨタ自動車ばかりに集中するパナソニックについて、今後のEV搭載バッテリー市場のシェア拡大につながるのか疑問視する記事が目立つ。EV搭載バッテリーの生産費用を減らす工夫は、既に韓国勢も取り組んでいるからだ。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 10.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00045/

Galaxy ZとiPhone 13が火花、気になるサムスン電子の次の一手

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2021年9月14日(米現地時間)、米Apple(アップル)が「iPhone13シリーズ」を発表した。iPhone新機種のライバルとなるのが、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が21年8月に発表し人気を集めている折り畳みスマホ「Galaxy Zシリーズ」だ。最新ハイエンドスマホのライバル同士となる両者の間で、競争が過熱している。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 10.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00044/

サムスン対ソニー、業界初2億画素イメージセンサーで王手へ

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2021年9月2日、業界初をうたう2億画素モバイルイメージセンサー「ISOCELL HP1」と、5000万画素のイメージセンサー「ISOCELL GN5」のサンプル出荷を始めた。サムスン電子は多画素とピクセル微細化を武器に、イメージセンサー市場における業界首位ソニーグループの牙城を切り崩しにかかっている。

 ISOCELL HP1は0.64μmの画素2億個を、わずか1/1.22インチのサイズで実現した。つまり高画質でありながら小さいデバイスにも搭載できるほど小さいのが特徴だ。撮影する環境の明るさに応じて、複数のピクセルを1つに束ねて大きなピクセルとして扱い、受光面積を広げより鮮明に撮影する「Chameleon Cell」と呼ぶ独自の技術を採用した。明るい場所では0.64μmのピクセルのままで、夜景や室内など暗い場所を撮影する際はピクセルを最大16個組み合わせ、受光面積を広げた2.56μmのピクセルとして扱える。ピクセル4個を組み合わせて30フレーム/秒の8K映像を撮影できる技術も搭載した。

 ISOCELL GN5は、オートフォーカス機能を強化したイメージセンサーである。通常はピクセル1つにフォトダイオード(光を集める機能)があるが、ISOCELL GN5では2つのフォトダイオードを搭載する。上下左右の位相差を全て利用し、素早くオートフォーカス機能を利用できるのが特徴だ。

 サムスン電子は、多画素化とピクセル微細化を武器にイメージセンサー市場を猛烈な勢いで攻めている。19年5月に6400万画素、19年8月に1億800万画素のイメージセンサー開発を発表するなど、いずれも業界初をうたう多画素化を更新し続けている。ピクセル微細化についても、15年7月に1.0μmピクセル、17年10月に0.9μmピクセル、19年9月に0.7μmピクセル、21年7月に0.64μmピクセルと、次々と小型化を進めている。サムスン電子は25年に、人間の目に匹敵する約6億画素のイメージセンサー実現を目指す考えだ。

 サムスン電子によると、1億画素以上のイメージセンサー市場は年平均32.4%で成長しているという。イメージセンサー市場全体の年平均成長が7%程度であるため、今や多画素イメージセンサー市場が成長の中心だ。同社によると21年に5200万個、25年には1億6000万個の1億画素以上イメージセンサーがカメラに搭載される見込みという。

 多画素イメージセンサーのニーズが増えている背景には、スマートフォン(スマホ)に搭載するカメラの数が増え続けているという事情がある。サムスン電子の最新スマホ「Galaxy Z Fold3」はカメラが5つもある。多画素化と小型化は、カメラ性能が競争軸となっているスマホ市場にとって欠かせない要件となっている。

 イメージセンサーの市場は、自動運転用や医療用、防犯用、スマートファクトリー、スマート家電などにも広がっている。特に自動運転車には、1台につき平均8つ以上の高画質カメラを搭載しているといわれる。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 9.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00043/

GMのEVに相次ぐ発火、原因名指しのLGに巨額賠償の試練

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米GMは2021年8月20日、同社の電気自動車(EV)「Chevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)」のリコール(回収・無償修理)対象を広げると発表した。バッテリーの発火事故が相次ぎ、GMは20年11月と21年7月にもリコールを発表。今回の追加リコールで同車種の直近生産分まで対象を拡大した。原因が明らかになるまで同車種を販売中止にするという。GMが名指しで欠陥の原因と指摘したのが、Bolt EVが採用する韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)のバッテリーセルだ。GMは同社と韓国LG Electronics(LG電子)にもリコールの費用負担を求める考えで、LGは試練に立たされている。

 3回にわたるリコールで、リコール対象はBolt EVの全モデル、合計約14万台に広がった。GMは米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)に対して発火原因を「バッテリーセルの製造上の欠陥」と報告したという。セルの負極タブと分離膜が破裂する可能性があり、充電中に発火するおそれがある。LGエナジーソリューションとGMが共同調査にあたっている。

 リコールに伴う費用は18億ドル(約2000億円)に膨れ上がったとみられる。GMはリコール費用をLGにも求める考えだ。LG電子とLGエナジーソリューションは21年4〜6月期の決算において、リコール対策費用としてそれぞれ2346億ウォン(約220億円)、910億ウォン(約90億円)を充当した。

 ただしリコール対象が広がったことで、用意した額に収まらない可能性も出てきた。調査結果次第で、GMとLG側でリコール負担の比率も変わる。LGエナジーソリューションのバッテリーセルを巡っては、韓国・現代自動車(Hyundai Motors)も発火のおそれがあるとしてリコールを決めた。その際のリコール負担比率はLGが7割、現代自動車は3割だった。韓国内では、GMとLGの負担比率も同じような割合になるとみている。

 GMのリコール対象拡大を受けて、LGエナジーソリューションの親会社である韓国LG Chem(LG化学)の株価は大幅下落した。LGエナジーソリューションは21年6月、新規株式公開(IPO)に向けて韓国取引所に上場予備審査を申し込んでいた。しかしGMのリコールを受けて、審査の延長を依頼したという。LG化学は、LGエナジーソリューションの上場によって10兆ウォン(約9000億円)以上の資金を確保し、米国や欧州、中国といったメジャーなEV市場にバッテリー生産工場を増設する計画だった。しかしGMのリコール拡大で、その目算は狂ってしまった。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 9.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00042/

サムスンが折り畳みスマホで反撃、迫るシャオミ 首位死守へ

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2021年8月11日、新製品発表イベント「Samsung Galaxy Unpacked 2021」をオンライン開催し、折り畳みスマートフォン(スマホ)の新機種などを発表した。長らくスマホの世界販売シェア首位を維持してきたサムスン電子だが、ここに来て中国・小米科技(Xiaomi、シャオミ)が同社の地位を脅かすようになってきた。サムスン電子はスマホで今後も競争力を維持できるのか。

サムスン電子が単月で首位陥落、シャオミが初の1位に

 サムスン電子が今回発表したのは、折り畳みスマホの「Galaxy Z Fold3 5G」(以下Fold3)と「Galaxy Z Flip3 5G」(以下Flip3)、スマートウオッチの「Galaxy Watch4」と「Galaxy Watch4 Classic」、そしてワイヤレスイヤホンの「Galaxy Buds2」だ。

 イベント後、韓国内外のメディアやレビューサイトでは、今回のサムスン電子の新製品を高く評価した。韓国内では同年8月12日から、発表したスマホを3日間レンタルできる体験イベントが始まり、同17日午前中からサムスン電子のオンラインショップで特典付き先行販売がスタートした。開始直後にアクセスが集中し、サイトにつながりにくくなるトラブルが続き、午後になってやっとアクセスできたと思ったら製品は売り切れになっていた。韓国内での幸先は好調だ。

 もっとも今回の発表の直前に当たる21年8月5日、長らくスマホ世界市場でシェア首位を維持してきたサムスン電子に陰りが見えてきたことが明らかになった。香港の調査会社Counterpoint Technology Market Research(カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ)が、21年6月の世界スマホ販売シェアで、シャオミがサムスン電子を抑えて初の1位になったと発表したからだ。

 確かに近年、スマホ世界市場でサムスン電子は、米Apple(アップル)とシャオミの板挟みで中途半端なポジションになっていた。韓国メディアはサムスン電子に対し、「(サムスン電子のスマホ主力ブランドである)Galaxyは、アップルよりもブランド力が落ちる。同スペックのスマホを比較すると、サムスン電子の製品のほうがシャオミよりも4割近く価格が高い」と手厳しい評価をしていた。

 かつてない危機にさらされるサムスン電子は、今回の新製品発表でなんとか競争力維持を示した格好だ。

 Fold3とFlip3は、折り畳みスマホGalaxy Zシリーズの3世代目に当たる。2世代目の機種から耐久性をぐんと向上し、低価格化した点がポイントだ。ヒンジ部分を含め端末を密封するような仕組みで水深1.5mの淡水で最大30分耐えられるIPX8クラスの防水機能と、前機種より頑丈なアルミニウムと強化ガラスを採用した。

 ディスプレーの保護フィルムを従来のTPU(熱可塑性ポリウレタン)素材から、より強度を持つPET(ポリエチレンテレフタレート)素材に切り替えた。耐久性を約80%向上させると同時にタッチ感も改善した。折り畳み機構の耐久性も向上し、外部検証機関による20万回の折り畳みテストを実施し、問題ないことを確認したという。

 なんといっても韓国のGalaxyファンが喜んだのは、Fold3で、同社の折り畳みスマホとして初めて「Sペン」によるペン入力に対応した点だ。

 これまで折り畳みスマホでSペンによるペン入力に対応するのは難しかった。電子ペンの動きをデジタル信号に変換する入力装置デジタイザーを折り畳みディスプレーに配置すると損傷の恐れがあったからだ。Fold3では、デジタイザーを折り畳みディスプレーの両側に入れ、アルゴリズムで信号を計算し2つのディジタイザーを一体化して作動させることでこのような課題を克服した。前機種であるFold2までは、無駄に高額なスマホと評価を下していた韓国のレビュアーたちも、Fold3は「折り畳みスマホを見直すきっかけになった」という意見が目立つ。

 コンパクトな折り畳みスマホであるFlip3は、カメラ機能を改善し、端末カラーの選択肢を増やした。カバーディスプレーを大型化し、メインディスプレーを開かなくてもメッセージを8行まで確認できるようにした。韓国で利用者が増えているモバイルペイメント「サムスンペイ」にも対応している。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 8.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00041/

KOTRA 韓国 IT EXPO 11月9日~18日 オンライン開催

KOTRA 韓国 IT EXPO 11月9日~18日 オンライン開催

『製造業からBTSまで、韓国のニューノーマルとDX 』
セミナーVOD公開

KDDI総合研究所特別研究員・ITジャーナリスト
趙章恩(チョウ・チャンウン) 氏

迅速に柔軟に非接触型社会へ変わり始めた韓国。IT強国としていち早くDXに取り組んだ韓国は、 産業全般においてコロナ禍を跳ね除け、逆に成長を成遂げた企業も多く存在します。 例えば、BTSの世界進出や、ビルボード1位もニューノーマルを 見据えたDXが影響しています。韓国企業のDX事例と今後の展望を解説します。

テスラに採用か、サムスンが車載向けイメージセンサーで攻勢

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 韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2021年7月13日、車載向けイメージセンサー「ISOCELL Auto 4AC」を発表した。同社は18年、ドイツで開催された国際自動車部品展示会にて車載向けイメージセンサー「ISOCELL Auto」のブランド名を公開していたものの、製品自体を発売したのは今回が初だ。

 サムスン電子のイメージセンサー事業はこれまで、市場規模が大きいモバイル向けを主力にしてきた。ここにきて、先進運転支援システム(ADAS)と自動運転の開発により車載向けイメージセンサーの市場が急成長していることからラインアップ拡大を決めたようだ。

 ISOCELL Auto 4ACは、車内から外部の状況を確認できる、サラウンド・ビュー・カメラと前方後方カメラ用のセンサーだ。センサーサイズは1/3.7インチで120万画素。トンネルの前後など明暗差の大きな環境化でも映像を鮮明に捉えられる、サムスン電子独自の「コーナーピクセル(CornerPixel)」機能を初めて採用したセンサーでもある。

 具体的には、暗い環境用の3.0マイクロメートル(μm)フォトダイオードと明るい環境用の1.0μmフォトダイオードを1つのピクセルエリアに配置することで、どのような環境でも映像を捉え、安全な走行をサポートするのが特徴だ。例えば暗いトンネルを抜けた時のように、急に明るくなっても映像に残像が残らず鮮明なHDR映像をリアルタイムで捉える。

 センサーの露出時間を長めに調整することで、映像がちらつく「LEDフリッカー」現象も緩和した。LEDライトや信号から出る交通情報も認識しやすくなる。撮影された画像の画質を改善するイメージ・シグナル・プロセッサー(ISP)も内蔵した。

 韓国メディアによると、サムスン電子のイメージセンサーは、北米の自動車メーカーの新型電気自動車(EV)に採用されたと報じており、それは米Tesla(テスラ)のEVトラック「Cybertruck」ではないか、というのがもっぱらのうわさだ。サムスン電子は、どの自動車メーカーに採用されたのか明かしていない。

 サムスン電子システムLSI事業部センサー事業チームのチャン・ドクヒョン副社長は「ISOCELL Auto 4ACは長年蓄積したモバイルイメージセンサーの技術力に安定性の高い車載向け先端技術を組み合わせた画期的な製品」「今後サラウンド・ビュー・カメラや前方後方カメラだけでなく、自動運転やイン・キャビン・カメラなど車載向けイメージセンサーのラインアップを広げていく予定」とアピールした。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 8.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00040/

韓国が次世代電池覇権に3.8兆円投資、「K-バッテリー発展戦略」

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韓国政府は2021年7月8日、30年に次世代2次電池の分野で世界トップを目指す「K-バッテリー発展戦略」を発表した。「K-バッテリー、世界をチャージする」というキャッチフレーズのもと、韓国をグローバル企業が協力できる次世代電池の研究開発と製造の先導基地とする。K-バッテリー発展戦略に合わせて韓国電池メーカー3社と素材・部品企業は30年までに合計40兆ウォン(約3.8兆円)を投資する計画を明らかにした。

 「半導体が頭脳だとするとバッテリーは心臓。電動化や無線化などといった産業の未来トレンドをリードする核心産業である」「バッテリーを第2の半導体へ確実に成長させ韓国の未来をつくる」「今後10年の投資が世界バッテリー市場での韓国を決める。圧倒的1位になるため官民の力量を全て注ぎ込む」――。韓国政府はK-バッテリー発展戦略についてこのように意気込んだ。

 韓国政府による経済政策としては21年5月に公表した「K-半導体戦略」が記憶に新しい。現在の韓国経済の輸出を支える半導体に加え、電池分野は今後、飛躍的な市場拡大が予想される。韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と韓国SK innovation(SKイノベーション)、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)という韓国電池メーカー3社は現在、車載向け電池市場で約4割の世界シェアを占めるなど、既に世界で大きな存在だ。しかし電気自動車(EV)メーカーのバッテリー製造内製化の動きや、主要国のバッテリー自国内生産強化などが続き、これまで以上に厳しい競争が予想される。韓国政府は、バッテリー強国の立場をさらに万全なものにするため、今回の国家戦略をまとめたようだ。

 K-バッテリー発展戦略では、2次電池の革新技術を国家戦略技術に指定し、研究開発費用の最大50%、施設の設備投資の最大20%を税額控除とする。次世代2次電池については25年にリチウム-硫黄(Li-S)電池、27年に全固体電池の実用化を進める。廃バッテリーの回収から再利用までの全過程にかかわる産業を育成する。

LGはバッテリー生産ライン増設などに約1.4兆円投資

 韓国電池メーカー3社も、K-バッテリー発展戦略に合わせて積極的な投資計画を明らかにしている。

 LGエナジーソリューションと親会社のLG Chem(LG化学)は、生産技術や生産ライン増設、先端素材技術開発、両極材の生産能力拡大に30年までに15.1兆ウォン(約1.4兆円)を韓国内に投資する計画を発表した。電池の主要材料である両極材については、年産6万t規模の工場を21年12月に韓国・九尾市につくる。これにより同社の両極材生産能力は20年の4万tから26年には26万tに増える。同じく主要材料の分離膜の強化についてはスピードを重視し、M&A(合併・買収)や合弁会社を検討しているという。両極材や陰極バインダー、防熱接着剤、カーボンナノチューブ(CNT)といった分野は研究開発費を先行投資し、技術の差別化を図る。

 人材育成にも力を注ぐ。具体的には、「LG IBT(Institute of Battery Tech)」と呼ぶ次世代電池専門人材を育てる機関をつくる。この他、バッテリー素材ソリューションのポートフォリオ拡大と事業競争力強化のため多様な方策を検討していると明かした。LG化学は創業以来最大のイノベーションを巻き起こすとし、素材部門において数百人単位の公開採用を行った。資金確保のためLGエナジーソリューションの新規株式公開(IPO)も予定している。

 LGエナジーソリューションの21年1~3月期の売上高は4兆2540億ウォン(約4040億円)、営業利益は3410億ウォン(約324億円)といずれも四半期で最高を記録した。EV向けバッテリー出荷の拡大と原価節減で収益が回復した。

 ただ21年4~6月期はリコールによって赤字が予想される。同社は17年4月~18年9月まで中国で生産したエネルギー貯蔵装置(ESS)向けバッテリーに潜在的な危険要素が見つかったとして21年5月にリコールを始めた。リコール費用は4000億ウォン(約380億円)と想定される。もっとも21年7月以降は業績が回復しそうだ。半導体不足で減産していたEVの生産再開が、業績回復を後押しすると予想される。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2021. 7.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00039/

ファーウェイ排除で躍進のサムスン5G基地局、Open RANで加速

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2021年6月28日から7月1日まで、モバイル業界最大級のイベント「MWC2021 Barcelona」(MWC)が2年ぶりに開催された。例年、スマートフォンの新機種発表で大きな注目を集める韓国Samsung Electronics(サムスン電子)だが、今回のMWCではオンライン出展でスマートウオッチのGalaxy Watchに搭載するOS「One UI Watch」を公開したのみ。スマホ新機種の公開がなかったことから、韓国では21年8月11日にサムスン電子がオンライン開催するスマホ新機種発表イベント「Galaxy unpack」の予告編と言われるぐらいで、例年よりも注目度は少なかった。

 代わりにサムスン電子で目立ったのが、5G(第5世代移動通信システム)基地局などネットワーク分野だ。サムスン電子のネットワーク事業部はMWC直前の21年6月22日、単独オンラインイベントを開催した。「Samsung Networks : Redefined」をテーマに、基地局用の次世代チップ3種と次世代高性能基地局、5G仮想化基地局(vRAN)ソリューション、6Gに向けた投資状況などを発表した。

 ネットワーク事業部社長(President, Head of Samsung Networks)のチョン・キョンフン氏は、「世界市場で400万台を超える5G基地局を供給した。強力な仮想化技術と20年以上独自にチップを設計した経験で速いスピードで成長している」「全てのモノと人をつなぐ超連結時代の加速化をリードする」と強調した。

韓国や日本、米国の通信事業者から続々と受注

 サムスン電子のネットワーク事業は、世界の通信事業者から5G基地局を立て続けに受注するなど絶好調だ。18年には韓国のSK TelecomとKT、LG U+という3社、米国のSprint(スプリント、現T-Mobile US)とAT&T、19年にはカナダVideotron(ビデオトロン)と日本のKDDI、20年には米国のU.S.CellularとVerizon Communications(ベライゾン・コミュニケーションズ)、カナダのTERUS(テラス)、ニュージーランドのSpark New Zealand、21年にはカナダのSaskTel(サスクテル)、日本のNTTドコモ、そして英Vodafone(ボーダフォン)といった具合である。

 中でも世界の通信事業者で売上高が1位のベライゾンとの契約は、66億4000万ドル規模(約7000億円)と、韓国通信装備分野における史上最大規模の単一輸出契約だとして話題になった。21年6月にボーダフォンから受注を決めたことで、北米とアジアが中心だったネットワーク事業を欧州にも広げた。

 ボーダフォンとの5G基地局契約は、基地局設備をオープンなインターフェースでつないでマルチベンダー体制で導入できる「Open RAN」技術に基づいたものだ。ボーダフォンは欧州初という大規模な商用Open RANを構築予定であり、サムスン電子はNECなどとともにそのパートナーに選ばれた。サムスン電子は、その中核となるOpen RANに準拠した仮想化基地局(vRAN)ソリューションなどを納入する。

 サムスン電子の仮想化基地局(vRAN)ソリューションは、汎用(はんよう)サーバー上でソフトウエアによる基地局機能を実現しながらも、ハードウエアベースの基地局とほぼ同じ性能を提供できるとしている。コンテナベースのアーキテクチャーを使用するため、ネットワークの効率的な管理と柔軟な展開を可能にするという。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 7.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00038/

サムスンがイメージセンサーで狙うソニー超え、業界最小を武器に

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 韓国Samsung Electronics(サムスン電子)がイメージセンサーでソニーグループ(以下、ソニー)の牙城を崩そうとしている。サムスン電子は業界最小ピクセルサイズという5000万画素のモバイル向けイメージセンサーを新たに投入。積極攻勢をかけている。韓国メディアによると、現在倍近いソニーとサムスン電子のイメージセンサー市場のシェアの差が、今後5年以内に10%台に縮まるという見方も出ている。2030年にシステム半導体でも世界シェア1位を目指すサムスン電子にとって、イメージセンサーのソニー超えは避けて通れない道だ。

 サムスン電子は21年6月10日、業界最小という0.64μmピクセルサイズで5000万画素のモバイル向けイメージセンサー「ISOCELL JN1」の量産を開始したと発表した。

 イメージセンサーは、スマートフォン(スマホ)のカメラ機能に欠かせないキーデバイスだ。多数の画素で光を捉え電気信号に変換する。スマホのカメラ機能のほか、自動運転の“電子の眼”として車載分野でも今後、大きく伸びると期待されている。

 ソニーが圧倒的首位を維持するイメージセンサー市場に、サムスン電子は世界最高レベルの微細工程を生かした小型化で挑む。新たに量産開始したISOCELL JN1は、同社が19年9月に公開したピクセルサイズ0.7μmのイメージセンサー「ISOCELL Slim GH1」よりもさらに小型化した。

 センサーのモジュールの高さも従来比で10%薄型化した。スマホに採用した場合、本体からカメラ部分が突出するようなデザインにならないという。スマホ用の標準カメラのほか、前面カメラや望遠カメラなど幅広い用途に応用できるとする。

 イメージセンサーの小型化は、スマホデザインの自由度を高める一方で、受光量の低下というデメリットがある。サムスン電子はその課題を克服する数々の新技術をISOCELL JN1に投入した。例えば「ISOCELL 2.0」と呼ぶ技術は、イメージセンサーのピクセル間の素材改良によって、従来比で光感度を16%向上したという。暗い環境では、隣接する4つのピクセル(0.64μm)を1つの大きなピクセル(1.28μm)として扱うことで、より明るい写真を撮影できる「Tetrapixel」と呼ぶ機能も活用できるようにした。

 韓国では、21年8月にも製品発表と噂されるサムスン電子の新型折り畳み式スマホ「Galaxy Z Fold3」に、このISOCELL JN1が搭載されるのではないかと注目が集まっている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 6.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00037/