親会社は時価総額30兆ウォン突破、LINE・ヤフー経営統合が韓国で好意的に受け止められる理由

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 2019年12月23日、Zホールディングス(ZHD、旧ヤフー)とLINEは両社の経営統合について、それぞれの親会社であるソフトバンクと韓国最大の検索ポータルサイトを運営するNAVERを含めた4社間で最終合意の締結に合意したと発表した。ZHDとLINEは、2019年11月18日に都内で記者会見を開き、経営統合の基本合意を発表していた。「統合して世界をリードするAI(人工知能)のテックカンパニーを目指す」「(GAFAなどに次ぐ)世界の第三極になるということだ」「互いの手を取り合ってさらなる高みを目指そうという大きな決断をした」といった両社社長の発言は韓国でも大いに話題になった(日本経済新聞 電子版の関連記事)。

 2019年11月28日にはNAVERも報道資料を発表した(同社のプレスリリース)。「LINE・Yahoo! JAPANの経営統合に関してお知らせします」というタイトルで、「LINEはフィンテック領域で緊密な連携を構築することでキャッシュレス時代の新しいユーザーエクスペリエンスを提供し、技術を基にした新規事業に進出して未来の成長に向けた相乗効果を図るため、Yahoo! JAPANや金融持ち株会社などを子会社とするZホールディングスと経営統合(business integration)することを決定しました。経営統合の結果、LINEとZホールディングスの親会社であるNAVERとソフトバンクが50:50でジョイントベンチャーを設立し、Zホールディングスの共同筆頭株主になります」「(経営統合により)日本及びアジア最大のユーザー基盤を確保できると期待しています」「グローバルプラットフォーム事業者と競争できる、AI基盤の新しいテック企業に位置づけられるものと期待しています」といった内容だった。

 LINEは親会社のNAVERと連携してメッセンジャーやモバイルコンテンツ、フィンテック、AI分野でグローバルビジネスを展開してはいるものの、LINEへの大規模投資によりNAVERの営業利益は減少していた。こうした分野はこの先もまだまだ投資が必要だ。韓国の証券業界では、経営統合によってNAVERの負担はより軽くなりLINEはより強力な資金源を確保できるとして、LINEの親会社であるNAVERの企業価値も上がったと評価されている。経営統合の発表以降NAVERの株価は上昇し、2019年12月20日時点で同社の時価総額は30兆ウォン(約2兆8000億円)を突破した。時価総額規模は韓国サムスン電子(Samsung Electronics)、SKハイニックス(SK hynix)に続き3位になった。

 NAVERが検索ポータルサイトとして正式にサービスを始めたのは1999年のこと。韓国の調査会社オープンサーベイによる2019年2月の調査では、韓国の10~50代のインターネットユーザーのうち74.4%が検索する際にNAVERを利用すると答えたほどである。AIを駆使した検索結果表示やショッピングレコメンドは好評で、広告も増えている。今ではサムスン電子や韓国LG電子(LG Electronics)と並ぶ大手企業であり、人々の生活に欠かせないあらゆる取引をネットであっせんするプラットフォームに成長した。韓国の就職情報サイトを運営するインクルートが2019年6月に国内の大学生を対象に調査した「最も就職したい企業」では1位にも選ばれている。ちなみに2位は有料放送向けコンテンツ制作会社の韓国CJ ENM、3位はサムスン電子だった。

 NAVERは最先端IT企業らしく、AIやロボット研究にも力を入れている。フランスにもAIの研究拠点を設けるなど、世界中の人材を集めている。2019年10月に行われた開発者向けカンファレンスでは、現在建設中の第2自社ビルをロボットと人間が共存する建物にしていると発表した。ビルへの入退出は顔認証で管理し、社員用無人店舗を配置し、人の移動を把握して空調を制御したり、自動運転ロボットが掃除や物品の運搬などを担ったりする、世界初の“ロボットフレンドリービル”になるとしている。

 NAVERのモバイルサービスも充実しているが、韓国内ではKakaoというライバルがいる。NAVERは検索ポータルサイトやパソコン向けサービスは韓国トップであるが、モバイルサービスとしてメッセンジャーアプリである「KakaoTalk」、モバイル決済の「Kakaopay」、モバイルバンキングの「kakaobank」などを提供するKakaoの営業利益は急速に伸びている。メッセンジャーアプリとしてLINEは日本では大流行したが、韓国ではすでに“国民アプリ”と呼ばれるKakao Talkがあり、囲い込み効果(ロックイン効果)によりLINEはほとんど普及しなかった。

 NAVERはKakaoのように銀行事業を保有していないが、LINEと連携して「NAVER Pay」を日本のLINE Pay加盟店でも利用できるようにし、銀行に比べ破格的に安い手数料で日韓国際送金ができるようにした。海外でも使えることから、NAVER PayはKakaopayより遅れてサービスを始めたものの2019年11月末時点で、韓国で最も利用者が多いモバイル決済サービスになった。

 2019年11月1日には、韓国の証券会社、未来アセット大宇より8000億ウォン(約750億円)の投資を受けて「NAVER FINANCIAL」という子会社を立ち上げた。NAVERのモバイル決済を担当する企業だ。同社とLINEが協力し、2020年からは台湾、タイなどにあるLINE Pay加盟店でもNAVER Payを利用できるようにするという。当分の間、NAVERの成功はLINE Payの成功にかかっている、というような状況が続くかもしれない。

 韓国では、経営統合によってLINEはGAFAと競争できるAIテック企業を目指し、まずフィンテックで日本市場のトップになり、それからアジア市場シェアを広げるのではないかとみられている。というのも、NAVER FINANCIALが設立されてすぐLINEの経営統合が発表されたからだ。経営統合により、最大のライバルだったソフトバンクグループのPayPayとの競争がなくなり、日本でのマーケティング費用を減らせる。既にGAFAが市場を掌握したといっても過言ではないコンテンツサービス分野に比べて、モバイル決済のようなフィンテック分野はこれから普及する領域であり、成長の余地が残っている。決済を中心にオンラインとオフラインをつなげる、中国の「Alipay(支付宝)」や「Wechat Pay(微信支付)」のような“スーパーアプリ”になれる可能性がまだある。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2019. 12.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00950/00014/

現代重工はロボット事業を独立させ強化、ロボット規格の認証機関を韓国内で創設との声も

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

2019年12月17~19日、韓国ソウル市内にあるCOEX展示場では、2017年に設立された大統領諮問委員会「4次産業革命委員会」と科学技術情報通信部(部は省に当たる)が主催した「4次産業革命フェスティバル2020」が開催された。

 同イベントでは、第4次産業革命は既に本格的に始まっているとして、韓国政府が2018年からキャッチフレーズにしている「5G基盤D・N・A(Data・Network・AI)強化」戦略の動向を紹介する展示とカンファレンスが行われた。

 カンファレンスで印象的だったのは、4次産業革命委員会委員長のチェ・ヨンジン氏による韓国政府への政策提言だ。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 1.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00045/

「半導体の日」 国産化に向け一致団結する韓国 悲願の脱メモリーに向けサムスンは5G後に期待

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日本政府が韓国に対し半導体材料3品目輸出管理を強化してから4カ月近く過ぎた。日本の財務省が2019年10月21日に発表した2019年9月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、対韓国の輸出額は15.9%減の4027億円。9.4%減だった2019年8月よりさらに減少幅が広がった(日本経済新聞の関連記事)。主に韓国に対して輸出管理を厳格化したことで輸出額が減少したとみられるが、「日本の対韓輸出管理強化は徴用工裁判の報復だ」として韓国で広がった不買運動の影響も出ているようだ。

 日韓関係は相変わらず難しい状態が続いている。2019年10月24日、安倍総理と韓国の李洛淵(イ・ナギョン)国務総理(首相)との会談が行われたが、韓国では会談内容があまり評価されなかった。韓国メディアのほとんどが会談を「日本も韓国も話したいことだけ話した。歩み寄りがない」と評価、「韓国の対話提案を日本が拒絶」、「李総理が安倍総理に渡した文在寅の大統領の親書には首脳会談を希望する内容が書かれていたが、日本側は11月まで保留するとした」など、日韓関係は改善の兆しが見えないと強調する報道をした。

 韓国外交部(部は省)は会談結果について、「韓日両国は重要な隣国として韓日関係の厳しい状態をこのまま放置できないという点で認識を共にした。李洛淵総理は韓日関係の閉塞を早期に打開するため、両国外交当局間対話を含む多様なコミュニケーションと交流を促進させていくことを促した」、「李洛淵総理は、これまでやってきたように今回も韓日両国が知恵を集めて難関を克服できると信じている、と述べた」と説明した。

 2019年10月30日に、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官(外相)は国会外交統一委員会全体会議で文大統領の親書の内容と会談の成果を聞かれ、「首脳間の対話はいつでも開かれているという立場と、難しい懸案を克服して韓日首脳が会えることを望んでいるという希望を表した」、「韓日関係を両国とも重視しており、厳しい状況が続いてはならないという点を明示的に導き出したところに成果がある。外交当局間の持続的協議により、懸案を解決するため努力し続けようと共感していることを確認できた点も成果である」と述べた。その後、2019年11月4日には、タイ・バンコク郊外で安倍晋三首相と文在寅大統領が東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓3カ国による首脳会議に先立ち短時間の対話を持ったが、目立った進展はなかったとみられる(日本経済新聞の関連記事)。

 日韓関係はまだ改善の兆しが見えない中、産業界では「国産化」によって日本の対韓輸出管理強化を乗り越えようという意志を再確認するイベントが多数行われた。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2019. 11.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00950/00010/

創立50周年迎えたサムスン電子、「システム半導体世界一」実現に挙国体制へ

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2019年11月1日、韓国サムスン電子(Samsung Electronics)は創立50周年を迎えた。そもそもは1969年に設立した「サムスン電子工業株式会社」がその始まりだが、1988年にサムスン半導体通信と合併した11月1日を記念日として毎年式典を行っている。韓国では、サムスン電子にとって半導体が非常に重要であることを示すために設立日を11月1日にした、とみられている。

 1983年にDRAM事業を開始、1992年から1位をキープし続けており、2019年7~9月期には世界市場シェアの47%を占めている。NAND型フラッシュメモリーでも2002年以降世界シェア1位を獲得しており、家電やスマートフォン(スマホ)でも世界市場ランキング上位の座を守ってきた。

 同社は「システム半導体世界1位」獲得に向け、2019年からより一層力を入れている。「半導体ビジョン2030」を発表し、2019年10月29日には“5G、AI、IoT、自動運転分野でも世界市場をリードする”として米カリフォルニア州サンノゼコンベンションセンターで「Samsung Developer Conference 2019」を開催した。この日に初公開したのが、縦型の谷折り式折り畳みスマホの映像とAIスピーカー「Galaxy Home Mini」の実物だった。

 また、IoTプラットフォーム「SmartThings」、AIアシスタント「Bixby」の開発者向け新規機能を公開した。同社はAI投資と世界中からの人材確保に乗り出していることをアピールするため、自社ホームページ内にグループ会社のAIニュースだけをまとめた特設ページも運営している。同社はスマホや家電などを年間5億台以上販売しているだけに、顧客の生活と密接なAIサービスを提供できると自負している。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2019. 11.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00950/00011/

システム半導体世界一目指すサムスンが独自CPUコアを断念した理由

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2019年11月5日、韓国メディアは一斉に韓国サムスン電子(Samsung Electronics)がシステム半導体事業の競争力強化のため、米国テキサス州オースティンにある「Samsung Austin R&D Center」で行っていたカスタムCPUコアのアーキテクチャー開発プロジェクト、コードネーム「Mongoose」を中止したと報道した。同社の独自CPUコア開発中止は2019年10月から噂されていたが、現実となった。

 韓国メディアの分析によれば、サムスン電子は2010年から170億米ドル(約1兆8500億円)を投資して進めてきた独自のCPUコア・アーキテクチャー開発の成果が期待を下回ったため、人工知能(AI)時代の核心技術といわれるGPU(Graphics Processing Unit)とNPU(Neural Processing Unit)に集中すべく、独自CPUコアを断念する“選択と集中”を行ったとみられる。同社はMongooseプロジェクトに向けて、2012年には米国の半導体メーカーAMDの元副社長やCPU設計者をスカウトしていたが、開発は思うようにいかなかったようだ。サムスン電子自身も「システム半導体の競争力強化のため、CPUコアの独自開発ではなくGPU、NPUに集中する」とコメントしている。同社では、NPUの研究人員を現在の200人規模から2030年までには2000人に増やすと、2019年6月に発表している。

 Samsung Austin R&D Centerの人員約290人は解雇または米国内にある他の研究所へ配置換えするが、携帯機器向けのシステム半導体を生産するオースティン半導体工場は何も変わらないようだ。同社は2018年末にオースティン半導体工場の生産能力を拡大するため、2億9100万米ドル(約318億円)の追加投資を行っている。

 独自CPUコア開発中止の報道を受けて、韓国内では「(同社の携帯機器向けシステム半導体である)Exynosはどうなるのか」と話題になった。結論から言うとExynosは続く。これまで、ExynosのCPUにはイギリスの半導体設計専門会社であるアーム(Arm)のアーキテクチャーをベースにカスタムした独自コアを搭載していたが、それをやめるということだ。

 Samsung Austin R&D CenterのCPUプロジェクトの成果は、同社が2015年11月に公開した「Exynos 8 Octa 8890」に初めて搭載された。当時のサムスン電子の説明によると、同製品はアームの64ビットコア「ARM v8」アーキテクチャーをベースにカスタムしたコアを搭載したLTEモデム内蔵の統合チップで、従来品に比べ30%の性能アップと、10%の消費電力削減に成功したとしていた。同社は、Exynosの性能は米クアルコム(Qualcomm)の携帯機器向けシステム半導体「Snapdragon」に負けないとアピールし、自社スマホ「Galaxy」シリーズの韓国向け端末にはExynosを搭載してきたものの、不穏な空気は既に漂っていた。

 2019年8月に発売された「Galaxy Note10」の場合、韓国向けは「Exynos 9825」、その他の国向けには「Snapdragon 855」が搭載されている。米国の複数のスマホ性能比較サイトが「同じGalaxy Note10でもSnapdragon 855を搭載した端末の方がアプリの駆動速度もグラフィック性能も優れている」という結果を発表したのだ。一般ユーザーが使って気が付くレベルの差ではないと考えられるが、専門家などによる比較では違いが明らかになった。2つのCPUはいずれもArm Cortexプロセッサーをベースにしているが、Snapdragon 855は「Cortex-A76」4つと「Cortex-A55」4つを組み合わせており、Exynos 9825はサムスン電子のカスタムコアである「M4(Mongoose 4)」コア2つに「Cortex-A75」2つ、「Cortex-A55」4つを組み合わせている。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2019. 11.

-Original column

対韓輸出管理発動後3カ月、自動車部品や電池はどうなるのか?

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日本政府が対韓輸出管理強化を始めてから3カ月が経過した。日本政府は2019年7月から半導体・ディスプレー材料3品目の対韓輸出管理を厳格化し、2019年8月からは韓国を輸出管理上の優遇対象国から除外する処置をとっている。これに対し韓国は2019年9月18日に戦略物資輸出入告示を改訂し、日本を戦略物資輸出の優遇対象国から除外した。

 2019年10月1日、韓国産業通商資源部(部は省)貿易投資室長のパク・テソン氏は「日本の対韓輸出規制発表3カ月経過に関する立場」を発表した。日本は政治的目的で韓国のみを差別する輸出制度を運営しており、WTO二国間協議で解決したい、というのが主な内容だった。「日本政府は韓国には個別輸出許可しか認めておらず、世界4大輸出統制体制に加入していない国より韓国を差別する制度を運営しています」、「これは善良な意図の民間取引を阻害してはならないという国際輸出統制体制の基本精神と原則に逆らうものです。このような処置は輸出制限のようなもので、我が国だけを特定した一方的で不当な差別処置です。そのためWTO規範に完全に合致するという日本政府の立場に韓国政府は全く同意できません」、「(韓国政府は)政治的目的で輸出統制制度を悪用する事例が再発しないよう、9月11日にWTOへの提訴の手続きを開始しました。今後行われるWTO二国間協議を通じて問題が解決するよう、日本政府の転向的な立場の変化をもう一度促求(「促す」の意味)します」。

 日本の対韓輸出管理強化以降、韓国の半導体とディスプレー業界は不確実性を避けるため材料や生産設備の国産化や輸入先の多様化を急ぎ、予想より早く国産化が進んでいる。韓国サムスン電子(Samsung Electronics)に続いて韓国SKハイニックス(SK hynix)も、2019年10月1日から日本産の代わりに韓国ラムテクノロジー(RAM TECHNOLOGY)の液体フッ化水素(エッチング液)を生産ラインで使い始めたと発表した。

 韓国産業通商資源部によると、フッ化水素、フッ化ポリイミド、フォトレジストの3品目の対韓輸出管理強化が始まってから2019年10月2日までに、7件の許可が出たという。財務省の2019年8月の貿易統計によると、半導体製造に使うフッ化水素の韓国向け輸出は数量も金額もゼロだった。前年同月は3378トンだった(日本経済新聞 電子版の関連記事)。なお、フッ化ポリイミドとレジストの輸出量については、統計上の分類方法により正確には把握できないため不明である。韓国企業からすると、日本から材料を輸入したくてもいつ許可が出るかわからない状況が続いており、国産化に注力せざるを得ないというわけだ。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.10 .

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00009/

日本を「ホワイト国」から除外した韓国、焦る企業が少ない理由

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 韓国の産業通商資源部(部は省に当たる)は、2019年9月18日0時より改訂した戦略物資輸出入告示を施行したと発表した。同部は、「戦略物資輸出統制制度は国際輸出統制体制の基本原則に沿って運営されるべきであるため、基本原則に沿わない制度を運営するなど国際共助(国際協力)が難しい国に対する輸出管理を強化するため、戦略物資輸出地域区分を変更する改訂を行った」とした。

 主な改定は、告示第10条にある戦略物資輸出地域分類の新設である。改訂前は4大国際統制体制―ワッセナー・アレンジメント、原子力供給国グループ(NSG)、オーストラリア・グループ(AG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)―に全て加入している29カ国を「カ」地域とし、そうでない国を「ナ」地域に分類、「カ」地域は戦略物資輸出入優遇国として扱っていた(「カ」「ナ」は日本語の50音順のようなもの)。改訂後は、4大国際統制体制に全て加入した国であっても国際統制体制の原則に違背して制度を運営する国を「カの2」に分類し、「カの1(既存のカ地域)」よりは厳しく、「ナ」地域よりは優遇するという。「カの2」に分類されたのは日本のみ。これで「カの1」地域に分類されたのは米国、英国、ドイツ、フランス、オーストラリアなど28カ国になった。

 いわば「韓国による日本のホワイト国除外」である。ただし、韓国内では、産業通商資源部の告示改訂は日本企業にも韓国企業にもそれほど影響がないと見られている。既に損得は計算済みで、日本の経済に影響を与えたいというより、日本が韓国を信頼できないとしてホワイト国から除外するのであれば韓国も日本を信頼できないとそっくり同じ言葉を返し、「今までとは違う」「日本に引きずられない」「韓国は変わった」ということを日本に示すための「象徴的」意味を持つとみられているのだ。

 その根拠として、改定の内容を詳しく見ていこう。改訂により、韓国政府が指定した戦略物資1735品目のうち、武器転用などの恐れが比較的弱い「非敏感戦略物資」1138品目を日本に輸出する企業は、原則として包括許可を受けられなくなった。以前は輸出申請書の提出のみで3年間有効な輸出許可を得られたが、2019年9月18日からは輸出する度に申請書、戦略物資判定書、営業証明書、最終荷受人陳述書、最終使用者誓約書(最終荷受人と最終使用者が同じ場合は誓約書のみ)を提出し、許可をもらう必要が生じる。許可手続きにかかる期間も5日間から15日間になった。「敏感戦略物資」597品目はもともと「カ」地域の優遇国に輸出する場合でも個別に許可が必要だったので、改訂による変更はない。

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《日経Robo

2019. 10.

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00008/

サムスン・ハイニックス・LGが進める国産フッ化水素採用、ホワイト国除外で意外な企業の株価急騰

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韓国サムスン電子(Samsung Electronics)は2019年9月4日、東京都品川で予定通り「Samsung Foundry Forum 2019 Japan」を開催した。同フォーラムは「世界でもっとも信頼されるファウンドリーになる」というキャッチフレーズで、同社が取引先企業に向けて半導体受託生産事業の新技術を紹介するイベントだ。2016年に始まり、2019年は5月に米国、6月に中国、7月に韓国、9月には日本で開催されており、10月はドイツでの開催が予定されている。日韓関係の悪化により参加者が減少するのではないかとみられたが、むしろ例年より増えたという。同社は7月に開催された韓国でのフォーラムで、どのようなリスクがあっても2030年にシステム半導体1位を達成するという意志を見せたが、東京でも同じだった。

 基調講演を行ったファウンドリー事業部 社長のチョン・ウンスン氏は、「サムスン電子は全世界でファウンドリーフォーラムを開催し、顧客パートナー社と透明で信頼できる協力関係を構築している。日本での活動も変わらない」とし、EUV(極端紫外線)7nmプロセスで製造したモバイル機器向けのアプリケーションプロセッサー「Exynos 9825」(「Galaxy Note10」搭載)、MRAMブロックを埋め込んだ「eMRAM」(embedded MRAM)、業界初となるEUV5nmプロセス、2020年に本格的稼働する予定の華城工場のEUV専用ライン、次世代技術とするGate-All-Around採用の3nm世代プロセスを主に紹介した(関連記事)。フォーラムでは8インチウエハー受託生産とパッケージングの新技術、自動車電装機器に関するEUVソリューションも紹介した。

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2019. 9.

 

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https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00002/

Galaxy Fold発売に沸く韓国、影で日本材料メーカー脱落か

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韓国サムスン電子(Samsung Electronics)は2019年9月6日に韓国で折り畳みスマートフォン「Galaxy Fold」を発売した。開くとスマートフォンとしては最も大きい7.3インチのディスプレー(QXGAに相当するHDR10+表示対応の「Dynamic AMOLED」)となり、畳んだ状態では前面の4.6インチのディスプレー(HDに相当する「Super AMOLED」)を利用する。ディスプレーの開閉を繰り返しても、使用中のアプリがそのまま表示され途切れることはない。韓国では「5G時代の新しい経験を提供する」と大々的に宣伝している。韓国では5G対応モデルのみを販売し、英国、フランス、ドイツ、シンガポール、米国などでは順次LTEまたは5G対応モデルを販売するという。

 Galaxy Fold は2019年2月初めに公開し、本来は同年4月に発売する予定だった。ところが、先行レビューアーらがディスプレーの表面に貼られた透明ポリイミドフィルムを、出荷時に貼られた傷防止用の一時的な保護フィルムと間違えて剥がしてしまうというトラブルが発生した。さらに「ディスプレーの曲げ伸ばしによるシワが気になる」「ヒンジ部分からホコリが入ってディスプレーが故障しやすそう」といった指摘も加わり、急きょ発売を取りやめ改良した。2019年9月中旬発売の予定だったが、前日の9月5日に端末を公開して予約を開始、6日から販売を開始した。

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2019.9 .

 

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https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00001/


米中貿易摩擦で漁夫の利得たサムスン、EUV7nm品採用のGalaxy Note10発売で攻勢

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半導体材料3品目、「フッ化ポリイミド」「レジスト」「エッチングガス(高純度フッ化水素)」の対韓国輸出管理の厳格化が始まって約1カ月半がたった。2019年8月8日に厳格化以降初めて、サムスン電子向けのEUVレジストについて輸出許可が出たのに続き、同月19日にもサムスン電子向けにEUVレジスト6カ月分の輸出許可が出たと、韓国の複数メディアが報じている。また、日本の材料メーカー各社が海外拠点を利用するなどして供給を続けようとしているとみられる(関連記事「対韓輸出管理で大きく動く韓国、大手企業に歩み寄る政府、規制も緩和、働き方改革にも特例」)。

 こうした流れの中、韓国サムスン電子(Samsung Electronics)は、「Galaxy史上もっとも偉大なパワー」をキャッチフレーズにしたスマートフォン(スマホ)、6.3インチの「Galaxy Note10」(以下、Note10)と6.8インチの「Galaxy Note10+」(以下、Note10+)の予約販売を2019年8月に韓国で始めた。グローバル市場ではLTEか5Gかを選択できるが、韓国市場では5Gモデルのみ販売する。

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2019.8 .

 

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https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00004/