【AI時代に立ち向かう韓国】 超スマート社会の一歩は教育革命から #2 教育を変えたい教師たちの情熱から生まれたデジタル教科書

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幼稚園でのコーディング教育。2016年から通信事業者SKテレコムは幼児向けにロボット「アルバート」とスマートフォンを使ったコーディング教育を実施している。論理的思考を身につけるのが狙いだ

教育とAIの出会い

ここ数年日本では、ソサエティ5.0、AI-Readyな社会、人間中心のAI社会原則など、AIが社会に浸透することを前提にした政策や制度の変化について有職者が集まり議論する場が増えている。教育の現場でもAI時代の子育て、AIに置き換えられない人の育て方、AIを使いこなせる人材に育てるなど、AI時代の人材をテーマにしたイベントが数多く行われている。

世界の流れを見ると、パリにあるユネスコ本部では2019年3月、日本政府の支援により「持続可能な開発のためのAIの役割」をテーマに世界中から教育と技術の専門家と各国の政府関係者を集めて議論するイベントが行われた。毎年ユネスコが開催するモバイルラーニングウィーク期間中の目玉イベントとして、AIの開発・発展に伴う倫理的・社会的・法的課題について議論された。「教育におけるAI使用に関する機会と脅威は何か」に焦点を当てた複数のイベントが開催され、特にAIに仕事を奪われると不安が広がる中、教育現場でのAI利活用と学習強化、教育における公平なAIの使用、AI時代のスキル開発などがテーマとなっていた。

90年代後半、インターネットが一般家庭にも普及し、教育現場でもインターネットやパソコン、電子黒板、デジタル教材、VRコンテンツなどを使うICT利活用が進んだ。教育とICTの組み合わせは先進国の教育の質の向上に限らず、開発途上国の教育の機会と質を高める効果も大きかった。教育現場にICTが導入されたことで、学校のあり方、教室のあり方、教師の教授法なども大きく変わるしかなかった。では、今起きている教育とAIの出会いはどのような変化をもたらすだろうか。

すでに始まっているAI導入

韓国では教育現場のAI利活用がすでに始まっている。韓国政府は2019年下半期から小中高校でAIを使って学習アドバイスを行う「知能型学習分析プラットフォーム」と小学校低学年向けの「数学AI」を導入することにした。

これに先立ち2018年からは中学校で、2019年からは小学校で正規科目としてプログラミングを教えている。学校でプログラミングを教える目的はプログラミングができる人を育てたいというよりは、論理的に問題を解決していく考え方を身につける、コンピュテーショナルシンキング(computational thinking)ができる人を育てることである。これからはどんな場面でもAIの利活用が欠かせないと想定し、AIに問題を理解させ解決策を導く方法の基礎を学ぶのがプログラミングというわけだ。 2018年からは卒業後すぐ就職する学生が多い工業高校や商業高校でインダストリー4.0に関連する科目を新設、スマートヘルスケア、スマートファクトリー、自動運転などAIの登場によって起きている産業界の変化をある程度学べるようにした。

しかしある日突然学校にAIがやってきたわけではない。学校の情報化、教師の情報化、教育の情報化の地道な積み重ねでここまできたといえる。

社会全体に危機感をもたらしたAlphaGoショック

韓国では政府や有職者によるAI議論より前に、全国民が「AI時代到来!」と衝撃を受けた出来事があった。2016年3月の「AlphaGoショック」である。これをきっかけに、「AIの登場で韓国は今までとはまったく違う社会になる。しかも変化のスピードは予想以上に速い」「AI社会とは他人ごとではなく自分の身に起きていること」と全国民が身に染みて思い知らされた。

AlphaGoはGoogle DeepMindが開発したコンピュータ囲碁プログラムで、ハンディ―キャップなしで人間のプロ囲碁棋士に勝った最初のAIである。2016年3月、AlphaGoは世界トップレベルのプロ囲碁棋士である李世乭(イ・セドル)と対戦した。李世乭棋士はコンピューターには負けないと自信を見せたが、結果は4勝1敗でAlphaGoが勝利した。当時韓国ではAIが人間と囲碁対決をして勝つにはまだ時間がかかる、AIはまだそこまで優秀ではないと思われていたため、ショックが大きかった。

その後2017年に発表されたAlphaGoの新バージョンであるAlphaGo Zeroは、人間の対局データを学習するのではなく自分自身と対局して学習し、以前のAlphaGoよりさらに囲碁に強くなった。AlphaGo Zeroは人間から学習しないことで、逆に学ぶ知識を制約されなかったのが特徴といえる。人間がAIを学習させるのではなく、AIが自分で学習してどんどん進化していく様子を目の当たりにした韓国では、「このままではだめだ」という認識が子どもからお年寄りにまで広がった。

20年前にはデジタル教科書がスタート

AlphaGoショックの20年前にあたる1997年、韓国では「19世紀の教室で20世紀の教師が21世紀の子どもを教えている」という危機感から、情報化時代に合った教育の改革を求める声が大きくなった。そこで1997年から学校の情報化、教師の情報化、校務の情報化、教科書や学習資料の情報化などの取り組みが進んだ。当時は「サイバー学習教材」という名前でデジタル教科書の研究がスタート。2004年には小学校の社会と理科で初の「電子教科書」が完成、一部の学校で使用を開始した。デジタル教科書の目標はすべての子どもを包容する教育、地域や所得の格差などに関係なく、勉強したい意欲のある子どもに十分な学習機会を与えることだった。

韓国教育部(日本の文部科学省にあたる)によると、デジタル教科書とは「既存の紙の教科書の内容に用語辞典、マルチメディア資料、テスト、補習・深化学習資料など豊富な学習資料と学習サポートおよびマネージメント機能を追加し、EDUNET・T-CLEARなど外部資料とも連携できる教科書」である。

EDUNETは1996年に教育情報総合サイトとして教育部がオープンした総合学習情報サイトで、幼児・小学生・中学生・高校生・保護者・教師向けに入口を分けて情報を提供している。T-CLEARは2016年に教育部がオープンした教師に必要な教育課程、学習・評価・教育政策の資料をまとめて提供するサイトで、教師の間で学習資料を共有したり情報交換したりできるコミュニケーション機能もある。


EDUNETはデジタル教科書とデジタル教材を提供する政府のサイト

デジタル教科書はインターネットに接続していればどこからでもアクセスできるため、学校では備え付けのタブレットパソコンを使って学習し、自宅では家のパソコンから予習復習できる。デジタル教科書に自分が書き込んだ内容や先生のコメント、テスト結果、学習履歴なども読み込める。インターネットにつながってさえいればどこでも学習できることから、長期入院している子どもや、障害がある子どものためにも使われている。


総合教育行政情報システム(NEIS)のサイト。教育の情報化に先立ち韓国政府が真っ先に進めたのが教師の情報化と校務の情報化だ。NEISでは全国の学校と教育委員会、教育部(庁)の資料を連携、学生の成績や学校生活の記録を一括管理し、保護者と学生はいつでも自分の記録にアクセスできる。転校や進学の際に紙の資料を持ち運ぶ必要がなくなったうえ、校務の情報化で教師の書類作業が大幅に減り、授業準備に集中できるようになった

「教師は教える人ではなくコーチに」

2005年にはタブレット端末向けの小学校の算数の電子教科書が完成し、一部の学校で使用され始めた。だがこの時はまだ紙の教科書をPDFにして、ハイパーリンクをクリックすると写真やアニメが登場するといった程度のものだった。

2007年、教育部は教育環境の変化に伴う「デジタル教科書常用化推進方案」を発表。各自が自分の学習レベルにあった教科書を使い「自己主導学習」できるようにするためのデジタル教科書開発を後押しした。自己主導学習とは、日本でも2013年前後話題になった反転学習に近いものだ。

2007年に韓国のデジタル教科書見学で訪れたソウル市と仁川市の小学校では、小学校5年生が社会科のデジタル教科書を使って自宅で予習し、授業中は予習したことをグループで討論、討論の結果をその場でパワーポイントを使ってプレゼン資料にまとめ発表していた。先生は参考になる資料を紹介したり討論を導いたり、子どもたちの発表内容を聞いて質問する役になっていた。授業内容や子どもたちのプレゼン資料、学校で行われていることはすべて「学級SNS」という担任教師・学生・保護者だけが参加できるSNSに掲載、保護者もコメントを書き込むなどして積極的に子どもの教育に参加しているのも印象的だった。デジタル教科書で授業をしていた先生が「これから教師は教える人ではなくコーチのような存在にならないといけない」と言っていて、とても新鮮だった。

教師の情熱と使命感が学校教育を変える

さらに、全国の小学校教師らがデジタル教科書開発のためボランティアで研究グループに参加したり、どのように討論を導いたらいいのかアイデアや経験をSNSで共有したり、デジタル教科書と一緒に使うとよい著作権フリーのマルチメディア資料を教えあったりするのも驚きだった。

「学校教育も時代に合わせて変わらないといけない。今のままではだめ」という教師の情熱がなければ、韓国の学校情報化もデジタル教科書も、AI導入も実現できなかったのではないかと思わずにいられない。韓国で教師は最もなりたい職業の一つであり、採用試験の倍率は地域と科目によって差はあるが、2019年度新規教師採用試験では最高43倍を記録したほどである。定年まで安泰の職業なので保守的で変化を恐れると思われがちだが、実際は違った。ものすごい競争を経て教師になったからか、使命感に燃えていたのだ。

次回は教育現場でのAI導入、AI時代に向けたクリエイティブな人材育成を目指して学校では何をしたのか、何をしなくなったのか、について紹介する。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

HUAWAVE

2019.3.

 

-Original column

https://huawave.huawei.com/articles/detail/85

トップ若返りの韓国LGグループが投資加速、AIチップを開発、スマート製造でグーグルと協力

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 4代目となるク・グァンモ(具光謨)氏が持ち株会社LG社の会長に就任してからちょうど1年を迎えた韓国LGグループ。

 2019年5月15日に公正取引委員会が公開した韓国の公示対象企業集団(財閥)資産総額ランキングによると、2018年末時点でLGグループは財界4位、資産総額129.6兆ウォン(約11.91兆円)である。

 ちなみに1位はSamsungグループ(414.5兆ウォン、38.08兆円)、2位はHyundai Motorグループ(223.5兆ウォン、20.53兆円)、3位はSKグループ(218.0兆ウォン、20.03兆円)、5位はLotteグループ(115.3兆ウォン、10.59兆円)だった。ク氏は1978年生まれで、韓国の財界ではもっとも若い会長である。そのため韓国では若き会長がリードする「新しいLG」が注目されている。

 従来、LGグループは控えめで保守的とみられていた。控えめすぎる広報が逆に話題になるほどで、SNSでは見かねたユーザーが韓国LG Electronics社製品を宣伝する「#仕事せよLG広報チーム」が流行したこともある。

 ところが、ク氏が会長に就任してから雰囲気が変わり始めた。広報にも積極的で、国内外でのAI(人工知能)とロボット研究に集中投資しながらシリコンバレーにベンチャーキャピタル会社を設立し、さらに自動運転、モビリティーサービス、次世代Liイオン2次電池、VR(仮想現実)、車両用AIセンサ、マイクロLEDなどの先端技術を保有する海外スタートアップに投資した。韓国内ではク氏が大規模な吸収合併で同グループの競争力を高めようとしているという報道もある。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.6.

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00031/

韓国で絶好調のGalaxy S10 5G、発火被害を訴えるユーザー登場

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 2019年4月3日、韓国で世界初のスマートフォン向け5G(第5世代移動通信システム)サービスが始まった。5月23日時点で通信キャリア3社の5G加入件数は60万件を突破した。6月末には100万件を突破する見込みである。韓国サムスン電子(Samsung Electronics)の発表によると、4月23日時点で、同社のスマートフォン「Galaxy S10」シリーズの販売台数は韓国だけで100万台を超え、そのうち5Gに向けた「Galaxy S10 5G」は23万台を占めた。


絶好調の「Galaxy S10 5G」
産業用途や自動運転などに注目が集まる5Gサービスだが、韓国では一般ユーザーを対象とするスマートフォン向けサービスが人気。対応端末であるサムスン電子のGalaxy S10 5Gも絶好調だ(写真:Samsung Electronics)

5Gの好調、その理由は?

 韓国内での5Gのサービス提供範囲は、現時点では首都圏と大都市中心である。そのため、5G加入件数は伸び悩むのではないかと思われていたが、予想を裏切った。要因はいくつか考えられる。通信キャリア間の競争により5Gの料金プランがLTEとそれほど変わらないことに加えて、野球中継やeスポーツ中継、アイドルの360度高画質VRストリーミング番組など、5G加入者だけが利用できる目玉コンテンツが話題になった。さらに、Galaxy S10 5Gに続いて韓国LG電子(LG Electronics)の5G向けスマートフォン「LG V50 ThinQ」が登場し、サムスン電子とLG電子の間で割引と特典の競争が始まったことなどが後押しし、加入件数が急増したものとみられる。

 メーカーと通信キャリアによる販促キャンペーンには、かなり力が入っている。例えば、サムスン電子は同社の対応スマートフォンをセットするタイプのヘッドマウントディスプレー(HMD)「Galaxy Gear VR」、ワイヤレスイヤホン「Galaxy Buds」などの周辺機器をプレゼントする。一方、LG電子はスマートフォンを2画面化できる補助ディスプレー付きカバーと、1年間1回までのディスプレー破損無償修理を提供する。

 通信キャリア3社は、2年以上の長期契約を結ぶユーザーに、端末購入補助金または約定割引(毎月料金25%割引)を提供する。通常の端末購入補助金は3~4万円程度だが、5Gではシェア獲得競争が勃発したおかげで、最も高い“使い放題プラン”(約1万3000円)を2年契約した場合、約7.8万円の端末購入補助金がもらえる。約14万円のGalaxy S10 5Gを半額以下で買えることになる。しかも、通信キャリアとは別に販売代理店が端末購入補助金の15%以内の金額を追加支援金として出すことができるので、交渉次第でさらに安くなる。

 こうした、LTEのままスマートフォンを買い替えるより5G新規加入の方が“断然お得になる”という事情もあり、5G加入件数は右肩上がりで増え、Galaxy S10 5Gの販売台数も伸び続けているというわけだ。

Galaxyからの発火報道

 ところが、2019年4月30日、韓国の公営放送KBSはGalaxy S10 5Gが自然発火したと主張するユーザーがいると放送した。

 済州島に住む20代の男性は、KBSの取材に対し「購入して6日目にGalaxy S10 5Gから火が出て爆発した」と答えた。午前11時ごろ、自宅の庭にあるテーブルに端末を置いて他の作業をしていたところ、端末の周辺から焦げる臭いがし始めた。端末を手に取ってみたもののあまりの熱さに地面に落とし、その後発火したという。

 同日午後4時ころ、近所のサービスセンターを訪問して発火した端末を預けた。サービスセンターではソウルで検査をすると言われたためだ。そして2週間後、2次電池周辺にユーザーの過失とみられる破損があったため、交換も返品もできないと言われたという。KBSの取材に対し、サムスン電子側は端末の内部的な原因で発火したのではなく、外部から強い衝撃を受けた痕跡があったと説明した。2次電池部分に強い衝撃が加わると、圧力によって発火することがあるとする。

 この男性は、ポータルサイトNAVERにあるサムスン電子スマートフォンコミュニティに激しく燃えた端末の写真を投稿し(現在は削除)、「サムスン電子のサービスセンターが回収して検査すると言ったが、2週間後、端末自体の欠陥はないとしてそのまま返された。交換も払い戻しもしてくれない」、「サムスン電子側は外部損傷による発火というが、スマートフォンから変な臭いがしたので手に取って調べようとしたところ、あまりにも熱くて驚いて落とした時にできた損傷だ。高価なスマートフォンなので、傷がつかないよう大事に使っていた」と不満を漏らした。この男性とサムスン電子との話し合いはまだ続いているようだ。この男性の他にGalaxy S10 5Gの発火を訴える人は現時点ではいない。

参考文献
KBS NEWS
http://news.kbs.co.kr/news/view.do?ncd=4191134

よみがえるNote7の悪夢

 発火といえば、サムスン電子では2016年8月に発売したスマートフォン「Galaxy Note7」が相次いで発火事故を起こし、生産を中断した前例がある。当時テレビのニュースでも報道されており、Galaxy S10 5Gを購入したユーザーが「もしかして…」と不安になるのは当然かもしれない。


「悲運の名機」とも呼ばれる「Galaxy Note7」
特に期待を集めた機種だったため、発火事故のインパクトは大きかった(写真:Samsung Electronics)

 Galaxy Note7は発売から5日目に韓国で自然発火を訴えるユーザーが登場、相次いで燃えた端末の写真や動画がSNSに投稿された。さらに米国でも発火事故が発生した。2016年9月に米国消費者製品安全委員会(CPSC)がGalaxy Note7は電源を切って使用しないことを勧告、世界各国の航空会社が同機種の機内持ち込みを全面禁止にした。結局、サムスン電子は10月に生産中断を発表し、交換と払い戻しを行うに至った。

 SNSでは「Galaxy S10 5Gの発火事例はまだ1件しかない。自然発火というのは男性の主張にすぎず、様子を見るべきだ。Galaxy Note7のときは全国各地で発火事故が起きていた」と慎重な意見がほとんどだ。ただし、一部では「Galaxy Note7のときも、最初は“ユーザーの使い方がおかしい”と言っていたのに、生産中断になった」、「外部衝撃による発火だなんて、Galaxy S10 5Gは火打石なの? 誰でもスマートフォンを落としたりぶつけたりすることはある」と外部からの強い衝撃による発火という説明に納得できないという意見も出ていた。


もう1台の“問題機種”に注目

 もっぱら、韓国ではGalaxy S10 5Gより折り畳みスマートフォン「Galaxy Fold」の発売可否の方が話題になっている。2019年2月の公開当時は“画期的なスマートフォン”として脚光を浴びた。ところが、「ディスプレーの片方だけ電源が入らない」「ディスプレーの折り目から部品が出てきた」「端末を受け取って2日目で故障して使えなくなった」――。発売前にレビュー用端末を受け取った米国のマスコミ関係者らが、ディスプレー関連の不具合を次々に報道したのだ。


サムスン電子の「Galaxy Fold」
不具合により発売が延期されている(写真:Samsung Electronics)

 グローバルでの発売日は延期となり、韓国での発売も遅れている。韓国では5G対応スマートフォンとして5月末に発売する予定だったが、製品の品質安定化を理由に6月発売になった。しかし5月31日時点で「発売日程は数週間以内に発表する予定」としており、さらに延期される可能性が高い。

 韓国内ではたとえGalaxy Foldの発売が遅れても、発売後に大きな問題を起こさなければサムスン電子は安泰という見方が増えている。複数の韓国メディアが「米国政府を中心に始まった中国華為技術(ファーウェイ)への制裁で、恩恵を受けるのはサムスン電子」と報道しているのだ。Galaxy Foldと発売日競争を繰り広げるはずだったファーウェイの折り畳みスマートフォン「Mate X」は、米グーグル(Google)のスマートフォン向けOS「Android」を搭載できず、予定通り発売できるかどうか不透明という見方もある。結果として、サムスン電子が折り畳みスマートフォンでも優位になり、世界市場でのスマートフォン販売台数や5G装備でも世界1位をキープできるとして、楽観視されているのだ。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.6.

 

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https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02305/

韓国、2時間差で勝ち取った「世界初5G」、低遅延通信で注目高まる軍事テクノロジー

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2019年4月3日、韓国の通信事業者(キャリア)3社は一般ユーザー向けの5Gサービスを開始した。2018年2〜3月の平昌冬季五輪でのテストサービスを経て、2018年12月1日にスマートファクトリーなど企業向けサービスを開始し、2019年4月3日に一般ユーザー第1号加入イベントを開催、4月5日に一般ユーザーの全面的な加入受付が開始された。

 当初、一般ユーザー向けサービスは4月5日に韓国Samsung Electronics社(以下Samsung社)の「Galaxy S10 5G」の発売と同時にスタートする予定だったが、キャリア3社は突然、4月3日夜11時に有名人を対象にした第1号加入記念イベントを行った。

 米国の大手キャリア、Verizon社が米Motorola Mobility社のスマートフォンを使い、4月11日に予定していた一部地域での5Gサービス開始を、「世界初」のために4月3日に前倒しすると発表したからだ。このニュースが韓国のキャリア3社に伝わったのは3日の午後8時だった。「世界初」を譲れない韓国側は、Verizon社のサービスが始まる2時間前に5Gサービスを開始し、世界初の座を守った。

 5Gを利用できるスマートフォンはSamsung社のGalaxy S10 5Gしかないにもかかわらず、韓国の5G加入者は4月5日に6万人、21日には20万人を突破したほどで、関心度は高い。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.5.

 

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https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00029/

世界初5G商用化の韓国で進む製造業DX、造船世界一の現代重工業も本腰

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2019年3月27日から29日にかけて、韓国ソウルの展示会場COEXで「スマート工場・自動化産業展」が開催された。3回目となる今回は、「Digital Transforming in Manufacturing」をテーマに5G・IoT・ロボット・AI(人工知能)で製造現場がどう変わるのかに焦点を当てた展示だった。韓国Hyundai Heavy Industries(現代重工業)グループ、韓国Hanwha Precision Machinery社などを中心に490社が出展した。

 現代重工業グループでは持ち株会社の韓国Hyundai Robotics社、Hyundai Heavy Industries社、電気システム部門のHyundai Electric & Energy Systems社が参加し、スマートファクトリー総合プラットフォーム「H!-FACTORY」を初公開した。これは自動化設備を導入した工場の最適な運営を支援するプラットフォームであり、モジュール化設計により顧客のニーズに合わせて提供できるようになっている。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.4.

 

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韓国Samsungがロボットビジネスを再開、エンタメ用の人型から実務に向けた協働型へ

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 韓国Samsung Electronics社は、2019年2月19日に米国ラスベガスで開幕した北米最大規模のキッチン・バスルーム関連展示会「The Kitchen & Bath Industry Show(KBIS 2019)」で、「AI(人工知能)ホーム」をテーマにスマート家電とAIを搭載した家庭用ロボットを公開した。

 2019年1月に開催された「CES 2019」で公開したロボットの他に、家庭用ロボットとして調理を手伝うロボット「Samsung Bot Chef」、ロボット掃除機「Samsung Bot Clean」、冷蔵庫型でAIを搭載する野菜栽培機「Chef Garden」の3機種を展示した。

 最も注目を浴びたのはSamsung Bot ChefとChef Gardenである。Samsung Bot Chefはいわゆる“調理お助けロボット”で、調理台上部に6軸ロボットアームが固定されている(図1)。

 アームの先には3指のグリッパがあり、各種調理器具を把持して「切る」「水を注ぐ」「混ぜる」「調味料を入れる」といった作業をこなすという。「主婦の味方として、あるいは手や腕が不自由な人のアシスタントになることを願って開発した」(Samsung Electronics社)。レシピをダウンロードすれば順番通りに作業する機能もある。発売時期は未定だが、家庭のほか、レストランや食品工場でも使えるロボットを目指しているという。



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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2019.3.

 

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https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00024/

韓国で5G開始、スマートファクトリーに応用も、襲いかかるHuaweiショック

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毎年1月、世界中の家電メーカーやICT企業が米国ラスベガスに集まり、最新技術を展示する「CES」。2019年は基調講演から展示まで、5Gが最も大きなテーマだった。

 2018年12月1日に世界初の5G基地局を開設しBtoB向け5Gサービスを始めた韓国の通信事業者も「CES 2019」に参加し、5Gだからこそ利用できる自動運転、AI(人工知能)、ロボット、8K動画サービス、VRライブ中継などを公開した。韓国では2019年3月に韓国Samsung Electronics社が5G対応スマートフォンを発売する予定で、いよいよ一般ユーザーも5Gを使えるようになる。

 2019年1月22~25日にスイスのダボスで開催された「世界経済フォーラムIBC(The International Business Council)」に韓国の通信事業者、KT Telecom社のファン・チャンギュ会長が招待され、韓国の5Gサービス動向について講演した。ファン会長は「5Gは米国や中国ではなく韓国が主導している」と強調し、「5Gは4Gと違い、一般消費者向け(BtoC)より法人向け(BtoB)サービスがメインになる。医療、セキュリティ、エネルギーなど公共分野のサービスもレベルが向上するだろう」と述べた。また、「NTTドコモと5G分野での協力を強化し、韓国の5Gの成果を共有する。ベトナムが東南アジア初の5G商用化国となるよう協力する」といった計画を明かした。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.2.

 

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https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00022/

「5G世界初」の韓国 動画・ゲームで速度、品質実感 住宅地の通信不良に苦情も=趙章恩

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 韓国の大手キャリア(通信事業者)3社(KT、SKT、LGU+)は4月3日午後11時、一般ユーザー向け(BtoC)の5Gサービスを開始した。韓国では5Gサービスは、スマート工場などに活用する企業向け(BtoB)と、一般向けに分かれており、企業向けはすでに昨年12月に開始している。これに対して、一般向けサービス開始は4月5日の予定だった。突如予定を2日繰り上げた上、深夜のサービス開始となったのは、米国と「世界初」を争ったためだった。

 韓国時間で3日午後5時、米ベライゾン・コミュニケーションズが同11日に一部地域で開始予定だったスマホ向け5Gサービスを、「世界初」を目指し3日に前倒しすると発表した。そこで韓国政府とキャリア3社が協議し、米国でのサービス開始1時間前に当たる韓国時間3日午後11時に第1号加入者(著名人や30年以上の超長期契約者など)を集め、3社同時に開通セレモニーを行った。その後、事前予約者から順次開通作業を行っ…

残り2452文字(全文2869文字)

週刊エコノミスト

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

<<週刊エコノミスト>>

2019.5 .

-Original column

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190528/se1/00m/020/059000c

 

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サムスン電子DRAMに不良の疑い、韓国メディアが「AWSがリコール要請」と報道

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2019年3月28日、毎日経済新聞や朝鮮日報、中央日報などの韓国大手メディアが一斉に、「韓国サムスン電子(Samsung Electronics)が米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com、以下アマゾン)に供給したサーバー用DRAMに不良があり、アマゾンがリコールを要請したという『情報』がある」と報道した。アマゾンがアマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Service、AWS)のクラウドサーバーに搭載した、サムスン電子の10nm台後半プロセスのDRAMの不良率に関してクレームを言い、リコールを要請したという内容だ。



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