韓国で進む、ドローンを使った国有地の無断占有パトロール

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 韓国企画財政部(国の予算を担当する省庁。部は日本の省にあたる)と韓国資産管理公社は、2016年夏からテスト事業としてドローンを使った国有地の無断占有パトロールを実施している。生産性が40倍以上になったとの報告もある。韓国企画財政部は、2017年1月末までにドローン30台を追加購入することを決めた。

 韓国の国有地は、国全体の約24%を占めている。国有地の多くは人が入る道がないほど険しい山林で、人が直接現場に出向いて無断占有を取り締まるには人件費も時間もかかった。そのため、こっそり国有地を無断占有して工場を建てたり、作物を栽培したりする人が後を絶たず、国有地が“先に使う人の勝ち”といった状態となり管理が行き届いてない地域もあった。

 2014年、400人近い調査員が直接国有地を訪問して調査した際に、国有地の無断占有率は15%前後であることが分かった。韓国資産管理公社は国有地の管理だけで毎月240人を投入していたが、手に負えない状況だった。

 ところがドローンを使ったところ、たった3台と操縦人員6人で240人分の仕事を数日でカバーできてしまった。韓国資産管理公社は2016年11月、「国有地無断占有予備調査」として、ドローン3台をレンタルして農村地域である慶尚南道(道は日本の県に相当)にある国有地83.4平方キロメートルを上空から撮影したところ、容易に無断占有している様子がわかり、無断占有は調査面積の10%に及ぶことも確認できた。その後調査員を無断占有している現場に派遣し、無断使用した地域住民に弁償金を請求できた。

ドローン30台で全国の国有地を調査していく

 ドローンを使った調査では、地上120~150メートルから2000万画素の画像を撮影し、その画像に地籍図を被せて国有地がどのような状態になっているかを確認する。

 ドローンの活躍が予想以上だったことから、企画財政部は2017年1月、国有資産の効率的な管理のため、9億ウォン(約9000万円)でドローン30台を購入する入札を実施した。撮影技術の高さから、海外メーカーが落札する可能性が高いとみられている。

 企画財政部と韓国資産管理公社は、ドローン30台を使って、3年間で全国の国有地全ての無断占有実態を調査する計画である。ドローンで撮影した国有地の画像データを韓国資産管理公社が分析し、分析結果を全国の国有財産管理機関に提供して取り締まってもらう。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

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2017.1.

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韓国の人気アプリ「配達の民族」で新手の詐欺、架空注文でポイント荒稼ぎ

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韓国の10~30代スマートフォンユーザーには必需アプリとまで言われる「配達の民族」で、新手の詐欺による被害が発生したことが明るみに出た。「配達の民族」は2010年6月に登場した出前アプリだ。2015年10月時点で2000万ダウンロードを突破し、韓国の出前アプリの中では市場シェア1位を占めている。

 「配達の民族」は、アプリを介して、色々な料理の出前や食材の配達を頼めるサービスである。出前を取っていないレストランの料理も、配達してくれる。現金支払いしかできないお店の出前でも、アプリ経由で決済すればクレジットカードや各種モバイルペイメントで支払える。現金を持っていなくても出前を頼めるところは、とても便利である。


画面●App Storeの「配達の民族」アプリ配布画面。韓国シェア1位の出前仲介アプリで、そのポイントを狙った新手の詐欺事件が発生し、話題になっている。自分が登録した加盟店に200個もUSIMを使いまわして大量に注文する架空取引をし、ポイントを貯めて換金した。この手の詐欺は韓国初の出来事である
(出所:アップル)

 またアプリ経由で注文すると、決済金額の一部がポイントとして貯まる(ポイントが貯まるパーセンテージは、会員レベルに応じて異なる)。1000ポイント以上貯まると、次回出前を利用した際の決済代金として使える。犯人グループが狙ったのは、このポイントだった。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

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2017.1.

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スタートアップ支援に乗り出す韓国キャリア、通信以外のビジネスを狙う

 韓国の最大手キャリアKTが、2016年から支援したスタートアップの技術を採用して、2017年から新しいサービスを始めた。KTのユーザーが決済や会員情報変更など本人確認が必要な時に、パワーボイス社の音声認証技術を使って本人確認ができるというものである。

 今までは、携帯電話にSMSで認証番号を送信してそれをもう一度入力するか、指紋認証で本人確認をしていた。パワーボイスの持つ技術の特徴は、録音された声では音声認証ができないことである。本人の生の声でないと認証に成功しないので、なりすまし犯罪を防止できる。生体認証の世界標準といえるFIDO(Fast Identity Online)の認証も取得した。

 使い方は簡単だ。スマートフォンに「KT認証アプリ」をインストールして、韓国語で「声の認証」と7回繰り返し話すと、音声情報が登録される。その後は、本人確認の時に音声認証を選択して「声の認証」と話すだけでよい。


写真●韓国最大手キャリアのKTが開始した音声認証。KTはスタートアップを支援し、社外から新しい技術を取り入れることに積極的になっている。会員向けにスタートアップであるパワーヴォイス社の技術を搭載した音声認証を提供、決済や個人情報変更など本人確認が必要な時により楽に認証できるようにした。
(出所:韓国KT)

 時間を短縮するため、スマートフォンのIDとパスワードの自動入力機能を利用する人も多いが、セキュリティ上は好ましくない。KTはフィンテックの利用率が増えていることから、決済の際に手間をかけずセキュリティを高めるため、生体認証の一つとして音声認証を始めた。

自動運転やIoT関連スタートアップとの提携も

 またKTは、スタートアップのカビー社と協力して、先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance System)を開発している。カビーのシステムは、画像認識や各種センサーを利用し、一人ひとりの運転スタイルに合わせて車の衝突やスピード違反を防止して、車線からはみ出ることがないよう安全運転をサポートする。日本では既に、バスや自動車に導入されているが、韓国では最近導入が始まったばかりである。

 KTはカビーのシステムをロッテのレンタカー1000台に搭載し、そのレンタカーを借りてKTの業務用車両として使うことにした。KTは通信以外の収益源を作るため、自動運転に投資していた。その流れでカビーに投資し、技術開発にも協力するようになったのである。韓国政府は2017年から、全車両に先進運転支援システムの搭載を義務付けることを検討している。KTはスタートアップと組むことで、よいビジネスチャンスを見つけた。

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章恩(ITジャーナリスト)

 

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2017.1

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こんなところまで?ハッキング被害続出の韓国

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米国では、先日の大統領選挙に関して、ロシアがヒラリー・クリントン候補のメールをハッキングした疑いがあるというニュースが流れ、物議をかもしているようだ。

 韓国でもハッキング事件は後を絶たない。つい最近も、北朝鮮によるものとみられる国防ネットワークのハッキングが発生した。芸能人のSNSのパスワードを盗んで勝手に書き込みをした事件や、民間企業が学校の入札システムをハッキングして最安値を調べていた事件もあった。

 中でも深刻なのは、国防関連のハッキングである。韓国国防部(部は日本の省に当たる)は2016年12月中旬、8月に国防ネットワークへの不正侵入があり韓国軍の情報が盗まれた事実と、それが北朝鮮によるものと推定していることを公表した。どのような情報が盗み取られたかは、明確に公表しなかった。

 このハッキングは、「国防統合データセンター」という国防用のデータセンターの管理者がセキュリティルールを守らなかったことが原因だった。本来は、内部ネットワークとインターネットにつながる外部ネットワークを分離し、内部ネットワークだけ使えるパソコンとインターネットにつながるパソコンに分け、機密文書は内部・外部ネットワーク全てをシャットアウトしたパソコンで扱わなくてはならない。そしてパソコンの中には一切データを保存せず、すべて外付けハードディスクに保存して管理するというルールがあった。

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PPAPより稼いでいる? 動画スター目指す韓国の子供たち

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 12月10日、韓国のケーブルテレビ局向けの番組や映画を制作するCJ E&M社のスタジオで「キッズクリエイターコンテスト」が開催された。内容は、幼児から小学生までの子供を対象にしたユーチューバ―オーディションのようなものだった。

 1次審査では、各自が企画・出演・制作した動画番組を審査した。そして2次審査では、カメラの前でいつものように番組を進行する様子を見せてもらい、面白い動画が作れそうな子供を選ぶ。そして動画スターになれるよう、映像企画と制作、動画スターになるためのノウハウなどを教え、プロモーションもCJ E&M社が支援する。

写真●キッズクリエイターコンテスト告知サイトのキャプチャー
韓国の番組制作会社CJ E&M社とポータルサイトのNAVERが開催したキッズクリエイターコンテスト。子供を対象にしたユーチューバ―コンテストのようなオーディションで、900人を超える応募者の中から10人の子供を選び、投稿動画の制作技術や企画を教えて動画スターに育てるという企画である

 「キッズクリエイターコンテスト」では、予選に参加した951人の中から1次審査で50人が選ばれた。1次審査に寄せられた動画は、子供がおもちゃの遊び方を紹介する動画、子供が料理をする動画、子供が身の回りの道具で科学実験をする動画が多かった。予選に参加した子供は、27カ月の幼児から小学校6年までと年齢も幅広かった。

 2次審査(オーディション)では最終的に10人が選ばれた。2次審査で選ばれた10人は、CJ E&M社が運営する動画サイトDiaTVや、コンテストのスポンサーだったポータルサイトNAVERで自分のチャンネルを作って動画を流せる。最近、韓国語版のYouTubeでは、子供が主人公の子供向けチャンネルが人気を集めていることから、韓国企業も動画スターになれそうな子供を発掘し、子供目線で情報を提供する子供チャンネルを強化するのが狙いである。グーグルコリアによると、韓国語版YouTubeのキッズ関連コンテンツ視聴時間は、毎年3.5倍増加している。

 今の小学生は、生まれたときから携帯電話やモバイルインターネットがある世代である。テレビと同じぐらい動画サイトを見て育っているので、テレビ番組と動画サイトの番組を区別せず面白いものを観て楽しむようだ。

 複数の韓国メディアによると、YouTubeにある子供向けチャンネルで有名なところは、広告収入だけで月数千万ウォン(数百万円)に及ぶ。「このおもちゃを紹介してほしい」とスポンサーがつくこともあるので、かなりの収入になる。広告収入はYouTubeが45%、制作者が55%の割合で配分するという。

 中でも韓国で知名度が高い子供向けチャンネルは、「ライムチューブ」、「マイリンTV」、「マリヤと友達」である。

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韓国小中学校でのソフトウエア教育本格化、大学の教育学部でも義務教育に

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韓国の教育政策を担当する教育部(部は日本の省にあたる)は2016年12月2日、「ソフトウエア教育活性化基本計画」を確定した。2014年2学期から一部小中校で行っていた週1時間のソフトウエア教育を、全学校で2018年から義務化する(中学校は2018年から、小学校は2019年から)。そのために人的・物的インフラを整える。ソフトウエア教育を強化することで、韓国のソフトウエア産業の競争力を確保するというのが主な内容である。

 世界的に人工知能やビッグデータ分析の重要性が高まっていることから、韓国では文系もソフトウエアの基礎を理解すべきとして、小中高校からソフトウエア教育を始めることにした。2014年2学期から、一部の学校でソフトウエア教育(実際にはコーディング教育)を実施したところ、ロボットのソフトウエアをコーディングして動かしてみる、モバイルゲームを作ってみる、といった授業内容が子供たちにとても喜ばれた。

 教育熱の高い韓国らしく、ソウルの富裕層の間では子供を「コーディング塾」に通わせ、学校のソフトウエア授業で高い点数を取るための競争が始まってしまったのは残念だが、それぐらい韓国ではソフトウエア教育が重視されるようになった。

 その背景には、韓国は内需が小さく輸出中心の経済で、今まで輸出しやすいハードウエアばかり重視しソフトウエアはおろそかにしていたことから、押し寄せる人工知能の波に乗り遅れたという反省がある。ソフトウエア教育を通じて「Computational Thinking」ができる人材を養成するという目的もある。Computational Thinkingは、ソフトウエアを組み立てるように論理的に思考し、問題を効率よく解決できる思考能力を意味する。

「教師の教育」も強化

 「ソフトウエア教育活性化基本計画」で大きな変化が生じるのは、小中学校だけではない。教育部は「幼稚園および小・中・特殊学校等の教師資格取得のための細部基準」を改訂し、小学校教師になるための基本履修科目にソフトウエア教育を明記。ソフトウエアの授業ができる程度にならないと小学校教師になれなくなった。中学校の情報科目教師になるための履修科目も細分化し、ソフトウエアの授業ができるようレベルアップすることにした。

 中学校は情報科目の時間に、小学校は担任教師がソフトウエア教育をすることになっている。そのため、韓国全国の教育庁(自治体ごとにある教育を担当する政府機関)は2014年から小学校教師の30%に当たる6万人と、中学校の情報科目担当教師を対象にソフトウエア教育研修を実施してきた。2016年からは情報科目の教師採用を増やし、教師が情報科目を複数専攻する研修も実施することにした。

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韓国の大統領スキャンダルでスタートアップが危機?

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大統領スキャンダルが韓国のIT業界にも大きな影響を及ぼしている。国政に介入し、国家予算を牛耳って不正蓄財した朴槿恵大統領の友人チェ・スンシル氏が、IT分野にも手を出していたからである。

 退陣を求められている朴槿恵大統領の重点事業の一つに、「創造経済革新センター」というものがある。スタートアップを育成して地域経済活性化に役立てることを目標に、全国17カ所にインキュベーションセンターの役割をする建物を建てた。運営費は国と自治体が負担する。スタートアップを公募し、費用の負担なく無料で入居させ、各種技術開発に必要な設備も無料で利用できるようにした。

 創造経済革新センターごとに、映像コンテンツ開発、ドローン開発などとメインテーマを設定し、そのテーマに合わせてそれぞれ大手財閥企業とパートナーシップを結んだ。大手企業は入居したスタートアップ向けに講演会を開いたりアドバイスをしたり、大手企業が必要とする技術をスタートアップと一緒に研究したりと、スタートアップの相談役を務めるようにした。


画面●創造経済革新センターのホームページ
スタートアップ育成のため2015年から全国17カ所で運営している創造経済革新センター。センターごとに大手企業とパートナーシップを結んでスタートアップを支援、地域経済の発展にもつなげるはずのセンターだが、大統領スキャンダルと大きくかかわっていることが発覚した。

 創造経済革新センターの趣旨は立派だが、チェ氏はここも自分の利益のために利用した。創造経済革新センターの役員は、大多数がチェ氏の息のかかった人だった。センターに入居して成功した模範事例としてマスコミが取り上げていたスタートアップは、チェ氏の前夫の弟が副社長を務める会社だ。この会社の代表は結局、投資金詐欺容疑で身柄を拘束された。実態がないにも関わらず、チェ氏との関係から模範事例に仕立てられ有名になったのだ。

 センターのホームページ構築事業は、入札ではなく、チェ氏の知人が設立した会社が全国17センター分を全て受注した。センターが主催するイベントや展示会も全て、チェ氏の知人が経営する会社が受注した。そのほかにも、まるでセンターがチェ氏のビジネスのために存在したかのような疑惑が次々に浮上している。

 早速国会では、未来創造科学部(情報通信政策を担当する省庁、部は省に当たる)が申請した創造経済革新センターの2017年度国家予算約558億ウォン(約50億円)の審査を保留した。国会では、事業成果がないまま巨額の予算を使っているとして、創造経済革新センターの成果を具体的に示すよう要求した。

 ソウル市は、自治体が負担することにしていた2017年度のソウル創造経済革新センターの運営予算20億ウォン(約1.8億円)を全額撤回した。全羅南道(道は日本の県にあたる)も、同地域にある創造経済革新センターの2017年運営予算10億ウォン(約9000万円)を全額撤回した。他の自治体でも同様の動きが出ている。

今までは、朴大統領のキャッチフレーズでもあった「創造経済」に誰も文句を言わなかったが、大統領スキャンダル以降は「創造経済という得体のしれないものに予算をつぎ込んでいた」と国会も自治体も自省する雰囲気になっている。

 大統領スキャンダルをきっかけに、創造経済革新センターを廃止するという話まで出ている。しかし問題は、チェ氏と何も関連がないスタートアップも大勢入居していることである。「センターに入居しているという理由だけで、チェ氏と関係があるのではないかと白い目で見られた」と嘆くスタートアップの代表もいたほどである。

 国会と自治体が創造経済革新センターに背を向けると、投資家やベンチャーキャピタルもセンターに入居しているスタートアップに関心を示さなくなった。

 未来創造科学部は、「センターに入居して3年目に当たる2017年から成果を見込めるスタートアップもいる。世界的にスタートアップが重視されている中、支援を断ち切ってはいけない。少なくとも2017年まではセンターの運営を続けるべき」と主張している。

 ただし韓国のIT業界は、今回の一軒を「災い転じて福となす」になる可能性もあるとみている。国と自治体の支援金がなくなると、本当に競争力があり需要があるセンターとスタートアップだけが生き残る。政府の支援金でスタートアップを立ち上げ、無料でセンターに入居し、政府の支援金が切れるとビジネスをやめて、また支援金がもらえる分野でスタートアップを立ち上げることを繰り返す「支援金ハンター」がいなくなることで、本物のスタートアップだけが残る可能性があるからだ。

 それにしても終わりが見えない大統領スキャンダル。これ以上純粋にがんばっているスタートアップに飛び火しないよう、早く解決してほしいものだ。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

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2016.11.

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中国の会社からプレステVRまで──韓国最大のゲームショー「GSTAR」に見られた変化

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 毎年、大学就学能力試験(韓国の大学入試のための共通試験)が終わる頃に開催される韓国のゲームショー「GSTAR」。2016年は11月17~20日、釜山のBEXCOで開催された。今年の観覧者数は、歴代最多の21万9267人。昨年の20万9617人を1万人近く上回った。参加企業は28カ国600社だった。

 GSTARはB2Cのゲームの新作公開と体験、eスポーツ大会、B2Bのゲーム販売と投資誘致をサポートするゲーム投資マーケット、ゲーム業界の求人のための合同会社説明会が一堂に会する韓国ゲーム業界最大のイベントである。例えばeスポーツ大会に関しては、韓国ではスポーツリーグのようにオンラインゲームの対戦をケーブルテレビなどが中継するほど人気があり、今回のGSTARでは「FIFA ONLINE 3アディダスチャンピオンシップ」や「League of Legends KeSPA Cup決勝戦」などが開催された。

NEXONが過去最大級の展示をした理由

 歴代最大のブースで新作ゲームを公開したNEXONは、新作ゲームだけで35種を展示した。内訳はPC向けオンラインゲームが7種、モバイルゲームが28種だった。この内19種はブースでプレイできるようになっていた。新作の数も歴代最多公開だったが、会場の4分の1をNEXONが占めたことで、韓国メディアの間で「GSTARではなくNEXSTARと呼ぶべきではないか」という話まで出たほどだった。

 NEXONがここまで大規模な展示をしたのは理由があった。

 2016年上半期、NEXONを立ち上げた創業主のキム・ジョンジュ会長が、検察上層部にNEXONの株を不正に譲渡し大儲けさせたとか、現在退陣を求められている朴槿恵大統領の元秘書の妻が所有するビルを時価の3倍近い高値で買ってあげたといったことが検察の捜査で発覚した。その影響で、キム会長はNEXONの取締役を辞任した(NEXONは日本に本社がある)。「ベンチャー神話1世代」と言われ尊敬されていたキム会長だったが、韓国内では「実は権力層に賄賂を渡して癒着していたおかげでNEXONも成功できたのではないか」という視線を向けられるようになってしまった。

 NEXONのイメージも当然下落した。そこでNEXON KOREAはGSTARで大々的に新作を公開することで負のイメージから脱皮を狙った、というのが韓国メディアの共通した見方である。実際にNEXON KOREAのパク・ジウォン代表理事も、GSTAR会場で「上半期には社内で色々とよくないことがあったが、これを克服するためゲーム会社の基本であるゲームに集中する」とコメントした。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

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2016.11.

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韓国で100万人が集まった大統領抗議集会に移動通信キャリアも大忙し

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 2016年11月12日、ソウル市中心部にあたる光化門周辺で行われた朴槿恵大統領の退陣を求める第3回目の抗議集会には、100万人を超える人が集まった。警察は26万人と推算したが、韓国メディアが「ソウル市が提供する地下鉄・バスの乗り降り乗客数(交通カード利用分)」をオープンデータから推算したところ、集会が行われた時間帯に少なくとも100万人以上が光化門周辺にいたことが分かった。

 光化門はオフィス・官庁街で、明洞や景福宮、清渓川など観光名所から歩いて行ける距離にある。ソウル市の中心部ではあるが、人通りが多くはない地域だ。12日は全国各地の農民会や労働組合などの団体も、集会に参加すると予告していたので大混雑が予想されていた。

 韓国のキャリア(携帯電話事業者)3社は、12日に光化門周辺にある基地局の収容容量を通常の2~3倍に増やし、移動基地局もキャリアごとに2~5台ずつ配置した。基地局は日々の流動人口を分析して設置する位置と容量を決める。そのため、いつもより人が集まると、一つの基地局に信号が集まり過ぎてなかなか電話がつながらない現象が発生する。基地局がパンクしないように補い、つながりにくくなる現象を防ぐため、キャリアはイベントがある日は移動基地局を設置してトラフィックをカバーするのだ。

 移動基地局は、年末年始のカウントダウンが行われるイベント会場、夏の海水浴場、お正月・お盆連休のサービスエリアなどによく登場する。キャリア3社によると、12日は2002ワールドカップ街角応援の時よりも移動基地局の台数を増やしたそうで、ここ20年間で最大規模のトラフィック対策を実施したという。

 移動基地局は大型トラックに機材を積んだものなので、かなり場所をとる。基地局は電源と、有線設備が必要だからだ。キャリア3社は2015年より、災害時のことも考えてより小型の移動基地局開発に力を入れるようになった。

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2016.11.

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中国人が韓国のショッピングモールで爆買い!「光棍節」を狙え

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 11月11日は中国の光棍節、いわゆる「独身者の日」である。数字の1が4回並ぶことから、90年代に大学生の間で恋人がいない人を慰めるイベントが行われたのがその由来だとか。それがなぜか今では、米国のブラックフライデーのように中国のオンラインショッピングサイトが大々的にセールをする日になった。

 チョコレート会社がバレンタインデーはチョコを贈る日と宣伝したように、光棍節を中国版ブラックフライデーにしたのは中国最大のオンライン流通事業者であるアリババだ。2009年11月11日、アリババは独身者のために24時間限定のセールを実施した。これが大ヒットし、今では11月11日になると中国のオンラインショッピングサイトが破格的なセールを開催して大いに盛り上げる。

 アリババの2015年光棍節の売り上げは、たった1日で日本円にして約1.5兆円と桁違いの規模である。光棍節の後で配送される宅配便の数だけで10億個近いというからすごい。どのサイトも目玉商品を出してセールをするので、財布のひもがどんどん緩んでしまうのだ。アリババは、2016年の光棍節の売り上げは2.3兆円を超えると見込んでいる。

 市場調査会社ニールセンによると、2015年の光棍節にオンラインショッピングを利用した人へ2016年の光棍節もオンラインで買い物をしたいか聞いたところ、ほぼ100%が「はい」と答えたという。

 中国人観光客の多い韓国でも、11月11日は中国人向けにセールをする日になった。実店舗のデパートや免税店はもちろん、韓国の大手オンラインショッピングサイトのInterpark、GMarket、11番街なども光棍節で最大8割引きの商品を出すなどして盛り上がる。


Interparkのグローバルサイト
韓国の大手オンラインショッピングサイトは、中国や日本にいながら韓国のオンラインショッピングサイトで注文、自宅で受け取れるサービスを提供している。11月11日の中国版ブラックフライデー光棍節に合わせて、韓国のサイトもセールを開催中だ

 韓国の大手ショッピングサイトはほとんどが外国語サイトも運営していて、中国・日本・米国など世界70カ国に配送している。中国や日本にいながら韓国のショッピングサイトで注文し、自宅で受け取れるのだ。韓国から中国まで商品を届けるための国際配送料も半額に値引きするなど、今年は送料の値引き競争も激しかった。関税庁も、国際配送に必要な「電子商取引輸出届け出」を簡素化する方向で協力。郵政事業本部は、オンラインショッピングサイトの国際郵便料金を最大8%割引するなどして便宜を図った。

 韓国の有名ブランドがアリババの光棍節特設コーナーに商品を提供する事例も増えている。韓国の大手スーパーであるEMARTは、アリババの海外ブランド販売サイト天猫(Tmall)に、スーパー全体を出店した。

 アリババで光棍節に買い物をする主な顧客は26歳から35歳の中国人で、韓国ドラマやKPOPのファン層と重なる。光棍節には韓国の芸能人が身に着けた商品を購入したがるケースが多いことから、韓国のスーパーや有名ブランド品は特設コーナーの中でも人気が高い。特に網紅(ワンホン)と呼ばれる有名ブロガーたちが購買に与える影響力が非常に強く、韓国企業は網紅を韓国に招待して製品をプレゼントするなど、大事にしている。光棍節を前に、韓国の化粧品会社はこぞって網紅を招待し、ソウルの高級ホテルを提供し観光地を案内しながら製品説明会を行った。網紅が「今年の光棍節は○○ブランドの化粧品を買うべき」と一言SNSで書き込むだけで、売り上げが大幅に違うからだ。

 韓国統計庁の「2016年9月オンラインショッピング動向」によると、韓国のインターネットショッピングサイトの海外直接販売額(海外ユーザーが韓国のサイトに注文して海外へ配送するケース)は、2016年7~9月の3カ月間で5512億ウォン(約513億円)と、前年同期の1.5倍に成長した。内訳は、中国からの注文が79.3%(4371億ウォン)を占めるほど圧倒的に多く、前年同期比で14.6%も増えた。次が米国、日本の順に多かった。

 中国人は、韓国のオンラインショッピングサイトでも爆買いをしているようだ。海外から注文が多かったのは韓国の化粧品、ファッション用品、家電、食品の順だった。オンラインショッピングに国境はないので中国のユーザーが利用してくれるのはうれしいことだが、中国を頼りすぎてしまわないように気を付けないといけないだろう。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

2016.11.

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