「line.co.kr」をめぐる訴訟、LINEが他社のドメインを奪った?それともサイバースクワッティング? [2016年2月15日]

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 韓国では、「line.co.kr」の所有権をめぐる訴訟が大きな話題になっている。

 2月9日、ソウル中央地方法院(法院は裁判所にあたる)は、「line.co.kr」のドメインを2010年から所有しているA氏に対し、「line.co.kr」の所有権を認めないという判決を下した。

 韓国インターネット住所紛争調整委員会は2015年1月、LINEコーポレーションが紛争調整を申し込んだことから「line.co.kr」に対する審議を行った。同委員会は、「LINEコーポレーションがドメインの譲渡を願った際に、A氏は10万ドルを要求した。A氏がこのドメインを登録し保有、使用するのは、LINEコーポレーションのドメイン登録・保有・使用を妨害したり、第3社に販売したりして不当な利益を得る目的であることが明白」だと判断した。

 つまり同委員会は、A氏が自分のホームページを運営するためではなく、サイバースクワッティング目的で「line.co.kr」を所有していると判断し、強制的に所有権を抹消するという処置をとった。A氏は、所有権抹消を取り消すためLINEコーポレーションを相手に訴訟を起こしたが、ソウル中央地方法院は抹消処分は正しいという判決を下したのだ。A氏は裁判で「lineとは線という意味である。車線塗色業者(道路に車線を引く業務を担う)であり、先にドメインを登録した私の会社が使うのが正当である」と訴えた。


LINEの韓国語ホームページ
LINEのサービスが始まる1年前の2010年にline.co.krを登録した人のドメイン所有権を抹消する判決が出て、「大手企業がドメインを奪った」とネットが炎上した。しかし裁判所はサイバースクワッティングと判断した。

 サイバースクワッティング(cybersquatting)は文字通り、サイバー上に居座ることで、ホームページを運営する目的ではなく、企業に高い値段で転売する目的でドメインを先に登録することを意味する。韓国インターネット住所紛争調整委員会は、このような行為を厳しく取り締まっている。サイバースクワッティングとみなされた場合は、同委員会が審議を行う。所有者に弁明の機会を与え、正当な理由を説明できなかった場合は、所有権を抹消する処置を取っている。

 ドメイン紛争は韓国ではよくあることで、2015年11月には日本にも就航している済州航空のドメイン紛争が起こった。当時、韓国インターネット住所紛争調整委員会は、「jejuair.co.kr」の所有者に対し、ドメイン所有権を済州航空に移転すべきと判断した。

 韓国には「インターネット住所資源法」という名の法律もある。ホームページを運営する目的がないのに、ドメインを先に取得したり、ドメイン名で不当な利益を得ようとしたりすることを禁じている。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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日本のハッキング大会で韓国チームが優勝、専門教育センターの成果 [2016年2月8日]

2016年1月31日、東京電機大学東京千住キャンパスで行われた「SECCON2015」の決勝大会で、韓国の「Cykorkinesis」チームが、2位と大きな差を開けて優勝した。SECCONは、ハッキングと防御の技術を競いあうコンテスト。決勝大会には、世界から18カ国(チーム)が参加した。

 SECCONの目的は、世界の情報セキュリティ分野で通用する実践的情報セキュリティ人材の発掘・育成。世界に通用するセキュリティ人材を輩出し、日本の情報セキュリティレベルを世界トップレベルに引き上げることを目標としている。

 大会の後援は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、サイバーセキュリティ戦略本部、警察庁、総務省、公安調査庁、文部科学省、経済産業省など、セキュリティに関する主な政府機関が揃っている。協賛もカスペルスキー、トレンドマイクロ、一般財団法人日本情報経済社会推進協会など、セキュリティ専門企業・機関が名前を並べた。

韓国情報技術研究院ホームページ
日本で行われたセキュリティ技術を競う国際大会SECCONで優勝したのは韓国チームだった。政府省庁傘下機関である韓国情報技術研究院のセキュリティ専門家養成プログラム修了生が参加したチームであるのが特徴である。

 優勝した「Cykorkinesis」は、2015年8月のDEFCON23、11月のTrendMicroハッキング大会、12月台湾で行われた2015 HITCON CTFでも優勝した強者で、2016年も世界で最も権威のあるセキュリティ技術コンテストDEFCONに出場する権利を獲得した。2位は台湾の217チーム、3位はアメリカの「Shellphish」、4位は日本の「katagaitai」、5位はルーマニアの「PwnThyBytes」だった。

 「Cykorkinesis」には、韓国情報技術研究院が運営するサイバーセキュリティ専門家養成プログラム修了生が参加しているのが特徴である。


次ページ: 韓国情報技術研究院は政府省庁の傘下団体で、情報化専門技術人材養成、知識情報セキュリティ産業高度化支援による国…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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北朝鮮の仕業?悪性コード入りメール急増、韓国政府が注意呼びかける [2016年1月29日]

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 1月25日、韓国の通信政策を担当する省庁の未来創造科学部(部は省にあたる)は、サイバーセキュリティ危機警報を「正常」から「関心」に一段階引き上げた。同部は、北朝鮮の水爆実験以降、ハッキングを試みる悪性コード入りメールが急激に増加しているとして、ネットユーザーに注意を呼び掛けた。サイバーセキュリティ危機警報は、「正常、関心、注意、警戒、深刻」の5段階となっている。

 韓国メディアは、「北朝鮮の仕業と思われるサイバー挑発が相次いでいる」と報道した。未来創造科学部は、「北朝鮮の仕業と断定するのは難しいが、北朝鮮の水爆実験以降サイバー攻撃が急増したことから、その可能性(北朝鮮の攻撃)もあるとみている」とコメントした。  悪性コード入りメールは、韓国の外交部、統一部といった主な政府省庁の職員やポータルサイトの管理人と詐称して、メールの添付ファイルを開けるよう誘導する。また最近は、政府が行う世論調査だと偽り、はい・いいえで選択して簡単に返事できるメールを送信。返事をした人にだけ、2回目の世論調査として悪性コード入りメールを送る手法も登場した。悪性コード入り添付ファイルを開けると、ハッキングが始まりパソコンの中にある資料を盗み取る。


写真●韓国インターネット振興院KRCERT
インターネットセキュリティを扱う政府系研究センターである韓国インターネット振興院KRCERTのホームページキャプチャー。左上の青いボックスに「関心」と書いてある。韓国政府は、サイバー危機警報を「正常」から「関心」に一段階引き上げた。北朝鮮の水爆実験以降、悪性コード入りメールが急増加したとしてネットユーザーに注意を呼び掛けた。

 中には、「北朝鮮の水爆実験に関する世論調査」という内容で政府関係者に送られた悪性コード入りメールもあったとか。いかにも政府機関が行いそうな世論調査のタイトルをつけてメールを見るよう誘導する。最も多いのは、会社員をターゲットにした「人事関係の知らせ」と偽った添付ファイルである。

 韓国の政府機関はサイバー攻撃に備え、政府省庁と公共機関に勤める職員と協力会社の社員に、省庁内では無料Webメールの使用を避け、スマートフォンにもキャリアが配布しているセキュリティプログラムをインストールし、疑わしいメールは開けないように呼び掛けた。



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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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職人気質でマーケティング下手のLG電子、スマートフォン「G5」で脱却できるか [2016年1月22日]

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中国メーカーの激安スマートフォンが韓国に浸透、スマートフォンの低価格競争が巻き起こっている中、久々にLG電子のハイエンドスマートフォンが注目を浴びている。しかし、LG電子のスマートフォン新機種はまだ発表前である。2月に公開するというニュースだけで、早くもSNSを賑わせている。それはなぜか。

 LG電子は1月上旬、バルセロナで開催される世界最大規模のモバイル展示会MWC 2016の前日である2月21日、MWCの会場でスマートフォンの新機種「G5」を公開すると発表した。サムスン電子は毎年海外の展示会でGALAXYの新機種を大々的に公開しているが、LG電子が展示会で新機種を発表するのはこれが初めて。LG電子は他のメーカーと比べられる展示会より、春に独自のイベントを開催して新機種を公開してきた。

 LG電子が展示会で新機種を公開するというだけで、韓国では早速「G5はLG電子のかなりの自信作のようだ」と期待が高まっている。LG電子の技術力、デザイン力を見せつけるためのスマートフォン、という意味である。


写真●LG電子のスマートフォン新機種G5公開イベントの招待状
LG電子は2月21日、世界最大規模のモバイル展示会MWC2016会場でスマートフォン新機種G5を公開することにした。例年より2カ月ほど前倒しの新機種発表で、海外の展示会で新機種を公開するのも初めてである。LG電子は同じく2月公開が予定されているサムスン電子の新機種GALAXY S7と正面勝負することを選んだ。

 LG電子側もこれを否定せず、「Gシリーズが回を重ねるほど性能もデザインも高い評価を得ているので、他のメーカーと正面勝負できる展示会で新機種を公開してもいいという自信の表れ」だと説明した。サムスン電子も新機種GALAXY S7をもうすぐ公開する予定なので、「サムスン電子と正面勝負しても負けない自信がある」という意味にも解釈できる。

 G5の公開イベントの招待状には「Play begins」と書いてある。そのことから、韓国メディアは「G5は写真撮影や音楽、動画再生などエンタメ機能を強化したようだ」と評価している。LG電子のスマートフォンの売り上げが落ちていることもあり、G5にすべてをかけた様子だった。


次ページ: LG電子はG5のスペックを2月21日まで公開しないとしているが、既に韓国メディアでいくらか情報が公開されてい…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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サムスンとLGの関心は「IoT」と「車」?韓国メディアが見たCES2016 [2016年1月15日]

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 毎年新年早々IT・家電業界を賑わす米ラスベガスの家電展示会CESは、韓国でも大きな話題になる。韓国メディアはCES2016の中で、サムスン電子とLG電子の「IoT」に注目した。両者がIoTをベースに家電・スマートフォンだけでなく、車にも関心を持っているという報道が続いた。

 2016年1月6~9日、CESの会場でサムスン電子は高画質テレビ、IoTでつながる家電、スマートフォンやウェアラブルといったモバイルデバイスを展示した。ユーザーの生活を楽にする、家族をつなげる、といったところに焦点を当てた展示だった。サムスン電子側は「リアルライフに溶け込んだIoT」であると強調した。


LG電子のCES2016ブース(LG電子提供)
LG電子はOLEDテレビ112台で夜空の星を再現した。LG電子側は、LGの新しいテレビは映像だけに集中できるようディスプレイの本質にこだわり、最高の性能を提供していると宣伝した。CES2016ではLG電子の家電だけでなく、フォルクスワーゲンとのスマートカー開発も注目を浴びた。

 サムスン電子は「Quantum Dot Display」(量子ドットディスプレイ)の65型と78型4Kテレビも展示した。「Quantum Dot Display」はもっとも最近開発されたディスプレイ技術で、ナノ単位(10億分の1)の微細な粒子がどのディスプレイよりも純粋なカラーと明るさを表現するとして注目されている。

 このテレビには、太陽の光や稲妻の光といった自然界の光をディスプレイで再現する「High Dynamic Range」技術や、視聴のじゃまになる反射光を吸収し見やすくする「Ultra Black」という技術を搭載している。部屋が明るくても暗くても、それに合わせて最適で最高の画質で映像を見せるディスプレイ、とサムスン電子は紹介した。

 デザインにも気を使っており、テレビの縁(ベゼル)がほとんど見えない曲面ディスプレイになっている。映像だけが空中に浮かんでいるように見えて、とても面白い。

 サムスン電子はIoTでテレビの使いやすさも強化した。テレビのリモコン一つで複数のサービス事業者のVODを検索して視聴したり、家の中の家電を動かしたりできる。冷蔵庫の中にカメラを、冷蔵庫のドアには21.5型の高画質タッチスクリーンを搭載して、中身を一目で把握できるようにした。冷蔵庫内の温度や稼働状況も、タッチスクリーンから確認できる。冷蔵庫のカメラの映像は、スマートフォンでも確認できる。

 中身を見て足りない食品を近くのスーパーやインターネットショッピングに注文したり、冷蔵庫のディスプレイに写真やメッセージを映したり、音楽を流したり、ラジオを聴いたりできる。冷蔵庫のドアには、スピーカーも付属。タッチパネルから家の中の照明、空調を制御したり、他の家電を操作したりもできる。


次ページ: また、スマートウォッチの「GEAR S2」を使ってマンションの玄関ドアや車のドアを開けたり、ヘルスデータを記…



趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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郵便局が主導するMVNO料金競争、ついに「基本料金0ウォンで音声通話50分無料」 [2016年1月8日]

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 韓国でも日本と同様、全国どこでも郵便局がある。韓国の郵便局は、日本の総務省にあたる未来創造科学部(部は省)が運営する政府機関である。韓国の郵便局は郵便の他に預金、保険、地域特産品の販売など、日本の郵便局と変わらない事業をしている。インターネットの普及で郵便を送る人が減少している中、韓国の郵便局は一つ新規事業を手掛けることにした。全国の郵便局が、MVNOの販売窓口になったのだ。これで、全国どこでも手軽に購入できるようになった。


写真●韓国郵便局のMVNO販売サイト
韓国ではMVNOの加入を手軽にできるよう、全国の郵便局が販売窓口になっている。MVNO加入は、郵便局窓口でも郵便局のサイトからも申し込める。キャリア3社より断然料金が安く、月々の料金が0ウォンで音声通話は50分無料で使えるプランもあるため、加入者が増えている(出所:韓国インターネット郵便局)。

 1月4日、MVNOのエネクステレコムは、月々の基本料金0ウォンで音声通話を50分無料で使える新しい料金プランに、郵便局で加入できると発表した。端末代は別途支払わないといけないが、自分の端末を持っていれば実質無料で携帯電話が使える。携帯電話からは音声通話しか利用しない、ネットはタブレットやPCで利用する、という人には嬉しいプランである。


次ページ: 音声通話50分を使い終わった場合は、音声通話は10秒18ウォン(約2円)、SMS1件20ウォン(約2.2円)…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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テレビが売れない時代でも大丈夫?IPTVやケーブルTVでは4K放送が人気 [2016年1月4日]

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 韓国では、米の調査会社IHS iSuppliが発表した2015年の世界のテレビ出荷台数が話題になっている。HISは、2015年の出荷台数を、2014年の2億3492万台より700万台以上減の2億2700万台と推測した。なんでもスマートフォンで済ませることができる時代なので、もうテレビは売れないのだろうか。薄々と感じてはいたが、数字で見るとインパクトが違う。

 特に、テレビとスマートフォンはサムスン電子とLG電子を支える製品であるだけに、これから韓国企業は大丈夫なのか、と懸念する声もある。サムスングループによると、2014年まで10年連続サムスン電子が世界のテレビシェア(売り上げベース29.2%)で1位を占めている。2位はLG電子(同16.7%)である。2015年もサムスン電子とLG電子が1、2位をキープはしているが、シェアは減少している。ソニーと中国ハイセンスやTCLのテレビが、急速に売り上げを伸ばしているからだ。サムスン電子とLG電子は、UHD(Ultra High Definition、4K・8K)など画質勝負で、価格競争ではなくプレミアム競争で生き残る戦略だという。

 LG電子は、LCDではなくOLEDでUHD画質を提供して差をつけようとしている。サムスン電子は、SUHDといってサムスン電子独自の技術を搭載したUHDテレビに集中している。SUHDは既存のサムスン電子テレビよりも2.5倍明るく、明暗がくっきりしているので、3Dテレビに近い立体感がある。


写真●サムスン電子のSUHDテレビ(サムスン電子提供)
韓国では4K・8KのことをUHD(Ultra High Definition)という。サムスン電子は独自技術のUHDテレビであるSUHDテレビを販売している。同社の既存のテレビよりも2.5倍明るく、明暗がくっきりしていて立体感が出るのが特徴だ。

 しかし、韓国の地上波放送局側は、UHDにあまり乗り気ではないように見える。UHDを受信できるテレビがそれほど普及していないのに、莫大な製作費をかけてUHDでドラマやバラエティを制作する気にならない、というのだ。サムスン電子やLG電子は、UHDコンテンツが増えればUHDテレビを購入する人も増え、UHDを中心に映像産業が活性化すると関連省庁に訴えている。コンテンツが先か、テレビの普及が先か、まさに卵が先か鶏が先かの論争である。

 それでは視聴者の反応はどうかというと、IPTVやケーブルテレビ、衛星放送など、有料放送加入者を中心にUHDチャンネルを受信できる付加サービスに加入する人が増えている。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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サムスンどうする?韓国に中国産激安スマートフォンがやって来た [2015年12月18日]

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 2015年12月16日、韓国のキャリアでシェア3位のLGU+が、中国ファーウェイのスマートフォン「Y6」の販売を開始した。Y6の定価は15万4000ウォン(約1万7000円)、今まで韓国で販売されたスマートフォンでは最も安い。

 サムスン電子やLG電子のスマートフォンは、約定割引してもらっても端末価格が7万円以上はするので、破格的な安さといえる。ソニーのXperiaが在庫処分のため古い機種を2万円以下で販売したことはあるが、定価が2万円しないスマートフォンは初めてである。韓国産では、LG電子のシニア向けスマートフォン「ワイン」シリーズが最も安く定価が約2万6000円する。しかし安いからといって話題になることはなかった。安いスマートフォンは使い物にならない、という先入観があるからだ。

 毎月約3300円以上の料金プランを選択すれば、約定割引が適用され実質無料になる。韓国でスマートフォン端末が実質タダになるのは今までなかったことなので、韓国では「Y6」は一体どんな端末なのかと騒ぎになっているほどだ。


 Y6は5インチのHDディスプレイに、800万画素カメラ、重さ155グラム、1GBのRAM、8GBの保存容量、2200mAhのバッテリーを備えている。自分撮りが大好きな韓国人にとって、最も重要なのはカメラである。Y6のカメラは360度パノラマ撮影、顔認識機能、写真を撮りながら音声を録画できる機能、写真加工機能などの付加機能もある。

 Y6の特徴は、インターネット接続なしで利用できるFMラジオを内蔵していることと、通常の音声電話だけでなくインターネット電話(VoIP)が使えるデュアル通話機能があることだ。

 LGU+のインターネット電話料金プランに加入すると、携帯電話番号に加えて070で始まるインターネット電話専用の番号がもらえる。インターネット電話のいいところは、自宅にある電話の子機のようにスマートフォンを使えることや、インターネットさえつながれば通話ができるので、ユーザーが海外にいても韓国の電話番号にかける通話に国内電話料金が適用されることである。LGU+は、海外に行くことが多い人や、業務用にスマートフォンから通話をたくさんするビジネスマンにお勧めの端末、と宣伝している。


次ページ: 韓国では、低価格スマートフォンのラインアップが増えている。シェア1位のキャリアであるSKテレコムは2015年…




趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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韓国のWeb広告はPCよりモバイル中心、コンテンツと広告の区分があいまいな時代に [2015年12月11日]

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 韓国では、ビジネスでもKAKA TALK、LINEといった無料メッセージアプリを積極的に使う。IDを教えていないのに、取引先の人が突然KAKAO TALKで話しかけてきたことが何度もあった。相手からは「電話代もかからないし、メールより早く用事が伝わるし、KAKAO TALKを使った方が効率的でしょう?」と言われた。仕事相手とはメールか電話、家族や友達とはメッセージアプリ、という具合に使い分けていた筆者は、もう時代から遅れつつあるのかもしれない。

 韓国では、毎日起きている間ずっとスマートフォンを握り、メッセージアプリで検索し買い物し、仕事も片付ける人が増えているせいか、モバイル広告市場もぐんぐん伸びている。KAKAO TALKの親会社KAKAOとLINEの親会社NAVERは、モバイル広告の収入が順調に増え、売り上げも好調に伸びている。

 KAKAOの場合、ポータルサイトDAUMにPCからアクセスする割合は減少傾向にあるが、モバイル広告収入が2015年7~9月の間29%も増加したことで持ちこたえた。NAVERの場合、今年初めて広告の割合がPC向け6割、モバイル向け4割になった。これまでは、PC向けが8割を占めていた。NAVERの2015年7~9月広告全体の売り上げは5870億ウォン(約650億円)で、前年同期比17.9%増加した。

 キャリアのKTが運営する研究所の予測によると、韓国の広告市場はモバイルの割合が急増していて、2019年にはモバイル広告がPC向け広告を上回りそうだ。

 KTの研究所が発表したデータによると、韓国のモバイル広告は2015年末時点で約9000億ウォン(約990億円)、2019年末には3兆3000億ウォン(約3600億円)にのぼる見込みである。この調子でいけば、2019年にはオンライ広告の52%がモバイル広告、48%がPC向け広告(2019年推定3兆1000億ウォン、約3400億円)と、割合が逆転するとみられている。

 もう何年も前から「韓国は不景気」だと言われるが、モバイル広告を含めオンライン広告はそれほど影響を受けていない。スマートフォンからシニア層もゲーム、動画、漫画、音楽などを利用し始めているので、スマートフォンが全世代の生活に根付けば根付くほど、モバイル広告も拡大していく。


画像●スマートフォンの急増に伴いモバイル広告市場も拡大している
韓国ではスマートフォンの待ち受け画面に広告を受信するアプリも流行っている。広告を見た回数に応じてポイントをもらい、提携したお店で使える(出所:キャッシュスライド)。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
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韓国初、店舗なし、ビッグデータで金利決めるモバイル銀行誕生 [2015年12月4日]

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 11月30日、ソウル市内でモバイル銀行「韓国カカオ銀行」と「Kバンク銀行」の事業説明会が行われた。日本や米国では、既に店舗なしでインターネットとATMだけを利用するインターネット銀行が存在するが、韓国ではこれが初めての店舗なし銀行となる。いずれも出資企業のサービスをうまく活用し、サービス開始から3年内に黒字化することを目標にしている。

 韓国カカオ銀行は韓国投資金融持株会社、Kakao Talk、国民銀行が主な株主となり、資本金3000億ウォンで設立した。Kバンク銀行はウリ銀行、GSリテール(スーパーマーケット・コンビニ)、韓化生命保険、DANAL(モバイルペイメントソリューション)、KT(通信)が主な株主となり資本金2500億ウォンで設立した。両方とも金融委員会より予備認可をもらった段階で、2016年上半期中に正式認可をもらい、認可日から6カ月以内に営業を開始する。本格的なサービス開始は、2016年秋になりそうだ。

 無店舗モバイル銀行の特徴は、自分が登録したIDが口座番号になり、モバイルメッセンジャーアプリを経由してお金を振り込んだり、光熱費を支払ったり、貯金口座を作ったりできること。現金やクレジットカードを持っていなくても、スマートフォンさえ持っていればお店などで口座にあるお金から支払える決済サービスも提供する。振り込みやATM手数料などは、原則として無料で利用できる。

 モバイル銀行は24時間いつでも利用できる銀行なので、電話相談、ネット相談も24時間稼働する。面白いのは、人が答えるのではなく、人工知能が対応するという点である。人工知能が処理できなかった複雑な質問にだけ、人が対応する。

 さらに、ビッグデータ分析で貸出金利を決める。店舗を持たないので運営費があまりかからないことから、一般的な銀行よりは高い貯金金利を提供する計画である。貸出金利も、お金を借りたい人・預けたい人のバランスを常に分析して金利を決めるという。個人向け担保なし貸出の場合、信用金庫などは20%以上の金利を取る。だが、モバイル銀行は支店運営費用、営業費用などがかからないので、その半分の10%台。敷金など引っ越しのための少額貸出にも応じるという。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
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