韓国自治体のドローン活用事例、釜山市では海水浴場の救助活動に [2015年7月31日]

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韓国で、最も人気のある人気の夏の観光地といえば釜山。釜山市にある海雲台(ヘウンデ)海水浴場と広安里(クァンアンリ)海水浴場は、夏の間1日100万人を超える観光客が訪れる観光名所であり、安全管理の人手不足に悩まされていた。

 そこで登場したのが、ドローンである。海雲台海水浴場がある海雲台区と広安里海水浴場がある水営区(スヨン)は、中国DJIテクノロジー社のドローンを購入した。最初は人が入れない山の奥を撮影して山火事の予防や山林を守るために使っていた。2015年1月に海雲台区で発生した山火事では、ドローンを使って発火時点を見つけ、瞬時に火を消すことができた。

 ドローンは、区の観光案内や宣伝用動画制作にも役立った。夏からは海水浴場の安全管理のためにもドローンを活用することにした。両区がドローンを購入したのは、ヘリコプターを使うより断然費用がかからないからだ。区の中で使うには操縦者から半径2キロメートル、高さ1キロメートル飛ぶドローンで十分だった。それにドローンは、ヘリコプターと違って視野を確保するのが難しい夜間でも問題なく使える。


写真●海雲台海水浴場の安全管理アプリ

 一番積極的なのは海雲台区である。2014年末から区役所内にドローン運営チームを置き、ドローンにFullHDのカメラを取り付け、撮影した映像をリアルタイムで区の防犯カメラ管理センターに送信している。


次ページ: その海雲台区は、7月末から海雲台海水浴場で、救命用浮き輪を取り付けた直系1メートルのドローン2台を飛ばすこと…



趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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韓国でスピーカー付き冷蔵庫登場、音楽アプリが産んだ新市場 [2015年7月24日]

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 LG電子は7月、韓国市場向けにスピーカー付き冷蔵庫を発売した。その名は「ディオスオーケストラ」(ディオスはLG電子の冷蔵庫ブランド名)。980リットルと870リットルの二つのサイズが発売されたこの冷蔵庫は、冷蔵庫の一番上の部分にBluetoothスピーカーがついている。

 LG電子によると、韓国の主婦は1日平均4時間キッチンにいて、主婦の3分の2はキッチンで音楽やラジオを聴くという。このアンケート調査結果に基いて、主婦のライフスタイルに合わせた新製品を考案したところ、スピーカー付き冷蔵庫にたどり着いたそうだ。

 冷蔵庫のスピーカーはスマートフォンをはじめ、Bluetoothにつながるモバイルデバイスと連動する。冷蔵庫にスピーカーがついていれば、スペースを節約できる。食卓やシンクの上にワイヤレスポータブルスピーカーを置かなくても、音楽やラジオをきれいな音で楽しめるからだ。


写真●LG電子はBuletoothスピーカー付き冷蔵庫を発売した。スマートフォンと連動し、キッチンで音楽やラジオを聴きながら家事をする主婦が多いことに着目した(LG電子提供)。

 キッチン用に防水スピーカーを買う必要もなければ、スピーカーを置いたらシンクが狭くなって料理がし辛いといったこともなくなる。LG電子は、冷蔵庫にスピーカーがあれば、キッチンにいながら語学の勉強やオーディオブックも楽しめるので、主婦がより有益に時間を使えると宣伝している。


次ページ: 「ディオスオーケストラ」のスピーカーは、通常のスマートフォンのスピーカーの10倍以上の出力を持っている。冷蔵…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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伊ハッキングツール開発会社がハッキング被害、なぜ韓国で大騒ぎになったか [2015年7月17日]

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このところ、韓国のテレビ・ラジオ・新聞では、連日「ハッキング事件」が取り沙汰されている。複数の韓国メディアによると、7月6日イタリアのハッキングツールを開発するHacking Teamという会社がハッキング被害にあい、400GB分のデータがネット上に流出した。流出したデータの中には、顧客リストや顧客とHacking Teamとの間で交わした電子メールの内容も含まれていた。

 顧客リストには、米FBIをはじめ世界各国の情報・捜査機関と並んで韓国の陸軍部隊と思われる名前が載っていた。韓国の陸軍と思われる顧客は、2012年から2014年までハンキングツール購入費と維持費で68万6400ユーロ(約9500万円)を支払っていたという。

 韓国メディアは、この陸軍部隊は韓国の国家情報機関ではないか、韓国の情報機関は誰を監視するためにハッキングツールを購入したのかなど、真相を追求すべきだと報道した。7月10日付けの世界日報によると、Hacking Teamは、自社のハッキングツールは現存するあらゆるICTセキュリティシステムを破って監視できる、痕跡を残さず特定人物を監視できる、と宣伝していたという。

 7月14日、韓国の国家情報機関である国家情報院のイ・ビョンホ院長は、国会で行われた政府情報委員会会議で、Hacking Teamから流出した顧客リストにあった韓国の陸軍部隊名は国家情報院のことだと認めた。


写真●イタリアのハッキングツール開発会社「Hacking Team」のホームページ
ハッキングツールを販売する会社がハッキングされ、ウィキリークスに顧客情報などが流出。韓国の情報機関も顧客だったことから、何のために購入したのかと騒ぎになっている。

 イ院長は、「2012年、Hacking Teamからハッキングツールである『リモートコントロールシステム(RCS)』を購入したことがある」「(韓国メディアが報道したように)イタリアのHacking Teamに、メッセージアプリをハッキングできるかと問い合わせたことはあるが、北朝鮮の情報を集めるためで、一般市民を監視する目的は一切ない」「ハッキングツールは20人をハッキングできる分購入し、18回線は海外で北朝鮮の工作員を対象に使用、2回線は研究用として韓国内で運用している」と説明したという。イ院長の発言内容は、政府情報委員会会議に参加した与野党の議員から外部へ伝わった。

 7月15日、国会情報委員会の幹事を務める与党のセヌリ党イ・チョルウ議員が韓国のYTNラジオの番組に出演。国家情報院のハッキングツール購入は問題になるようなことではない、と以下のように説明した。

 「米FBIや外国の捜査機関もハッキングツールを購入した。国家情報院によると、2010年スマートフォンが急速に普及し、スマートフォンを経由したハッキングに備え、2012年1月ハッキングツールを購入してどのように防御すればいいのかを研究する目的で購入したと説明しているのは、問題になるようなことではない。国民のみなさんは、過去国家情報院が盗聴などをしたからまた一般市民を監視するのではないかと心配しているようだが、時代は変わった。国民の信頼を失っては情報機関の役割は果たせない。国家情報院のハッキングツールは、市民を監視するためではない」


次ページ: 一方同ラジオ番組で、同じく国会情報委員会に参加している野党の新政治民主連合のムン・ビョンホ議員は、セヌリ党イ…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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韓国全世帯の61%が有料IPTVに加入、動画以外のサービス追加でユーザーは伸びる? [2015年7月10日]

 韓国では、ケーブルテレビに加入しないと地上波テレビも受信できない難視聴地域が多い。そのため、ほとんどのマンション管理会社がその地域のケーブルテレビに団体加入していて、一世帯月400円程度の安い料金で、地上波とケーブルテレビ合わせて20~40チャンネルほど視聴できる。

 ここ最近は、ケーブルテレビと変わらない多チャンネルで、より高画質、付加サービスが多いIPTV(インターネット経由で視聴する有料放送)を利用する世帯も増えている。

 IPTVは、2006年サービスを開始した。KT、SKテレコム、LGU+キャリア3社が提供するIPTVは月1000円前後なので、ケーブルテレビよりは利用料が高いが、テレビ用アプリや地上波のドラマ、バラエティー番組の再放送VODを、一定期間後無料で視聴できることから人気を集めている。

 IPTVの加入件数は、2015年6月時点で1130万を突破した。韓国の世帯数は約1800万なので、全世帯の63%以上が有料IPTVを利用していることになる。キャリア3社のIPTV売上も好調で、2013年の1兆1783億ウォン(約1296億円)から、2014年には1兆5323億ウォン(1686億円)に増加した。

 IPTVは、主に月々の利用料と有料VODへの課金で収益を上げている。しかしキャリア3社は、2015年下半期からVODだけでなく動画以外の付加サービスでIPTVの差別化を図っている。KTとSKテレコムは、2015年にIPTVサービスを運営していた子会社を、本社に吸収合併した。

 特にIPTVに力を入れているのが、IPTVシェア1位のKTと3位のLGU+である。


写真●キャリアのLGU+は、IPTVから野球中継全試合を一つの画面で観られる画面5分割機能を提供し人気を集めている(LGU+提供)

 KTは、4Kセットトップボックス経由で、3つの4Kチャンネルを利用できる。4Kで制作した地上波とケーブルテレビの番組、やハリウッド映画、米国ドラマを視聴できる。4Kチャンネルを提供するIPTVは、まだKTしかない。人気歌手のライブ実況を、KTが独占して生中継するチャンネルも人気だ。映画館とKTのIPTVで、同時封切する映画も増えている。


次ページ: KTのIPTVはメッセージアプリのカカオトークと提携し、6月からカカオトークをリモコンにしてIPTVを操作で…



趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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PCモニターもテレビも売れず「TVモニター」だけ売れる状況で、サムスンとLGの対応は? [2015年7月3日]

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調査会社IDCによると、世界のモニター出荷台数に占める「TVモニター」の割合は、2014年の5.8%から2015年は6.5%に11%ほど成長する見込みである。TVモニターとはTV受信チューナーを内蔵したモニターのことで、テレビとしてもPCのモニターとしても使える。IDCのデータによると、TVモニターが売れる一方で、パソコン用のモニターとテレビの販売台数は減少し続けている。

 特に、韓国でその傾向が強く表れている。韓国最大手ディスカウントショップEMARTでは、2015年上半期TVモニターの売れ行きが好調で、前年同期比30%ほど販売台数が増えたという。一方でテレビの販売台数は前年同期比17%ほど減少、パソコン用のモニターは3月の新学期ですらあまり売れなかったそうだ。オンラインショッピングモールの「11番街」や「オークション」では、大手ディスカウントショップには置いていない中小企業の安いTVモニターを販売しているが、2015年上半期の販売台数は前年比1.5倍になっているという。

 EMART関係者によると、韓国では景気沈滞により消費減少でテレビの買い替え需要がなかなか生まれない中、セカンドテレビとしてTVモニターを購入する人が増えているそうだ。


写真●サムスン電子のTVモニター。消費沈滞、独身世帯の増加などからテレビより安いTVチューナー内蔵モニターがよく売れている。

 また、一人暮らし世帯の増加により、色々な用途で使えてテレビの半額程度で画質は変わらないTVモニターを買う人が増えているようだ。韓国統計庁によると、全世帯に占める一人暮らし世帯の割合は、2012年で25.3%と4分の1を超え、2015年には27.1%、2025年には31.3%になる見込みである。スマートフォンの影響もある。2013年あたりから、韓国のシンクタンクはスマートフォン利用率の増加に伴い、テレビの視聴時間が減少している、テレビの保有率が減っている、という調査結果を何度も発表している。



次ページ: 韓国で特に売れているTVモニターは、サムスン電子とLG電子が世界市場のほとんどを占めている。IDCのデータに…



趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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スマートフォン連絡帳で園と保護者がリアルタイムコミュニケーション、政府への報告も便利に [2015年6月26日]

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子供がオリニジプ(保育園)・幼稚園に到着してから家に帰るまで、園の中で何をどうしているのか、親は気になるものだ。共働き家庭が多い韓国では、園から届く紙の連絡帳は不便だった。夜遅く帰ってきた親は、連絡帳をちゃんと読み先生に返事を書く時間すらなかった。翌日までに準備する物が書いてあっても、親が連絡帳を手にした時点でもうほとんどのお店は閉まっている。

 今韓国では、園と保護者をリアルタイムでつなぐ「スマート連絡帳」が人気だ。こうした不便がなくなるためだ。

 スマート連絡帳とは文字通り、園内での子供の一日の生活記録と園から保護者への連絡事項を、スマートフォン・タブレットPC・パソコンで確認できるようにしたサービスである。スマート連絡帳は、園と保護者だけが利用できるようになっていて、園は子供の状態や写真、連絡事項を随時アプリに掲載する。保護者は会社にいながら子供の様子を確認し、準備する物があれば帰宅途中に用意できる。

 「スマート連絡帳」が登場したのは、2013年あたりから。園児の健康状態を5段階で表示し、写真を投稿したり保育士がコメントを書いたりできるシンプルなものだった。最近は、NFCタグを使った子供の位置確認サービス、園が保護者に送った子供の写真をまとめて紙のフォトアルバムに制作できるサービス、保護者が教育専門家に育児相談できる付加コンテンツサービスなど、差異化するスマート連絡帳が増えている。


写真●スマート連絡帳「Kidsmentory」。保護者はリアルタイムで子供の写真や園内の活動内容を確認でき、保育士は時間をかけずに連絡帳を作成できるようにしたアプリ。韓国では私立幼稚園の6割がスマート連絡帳を利用している。

MERS拡散で生活にも変化が、Googlemaps・SNSで情報共有盛んに [2015年6月19日]

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韓国で、MERS(中東呼吸器症候群)感染者が増え続けている。韓国政府が感染者の情報を隠したことで初期防疫に失敗し、2次・3次・4次感染が発生したこと。政府が情報を隠したため、自分が感染者と接触したとは知らず風邪だと思い込み、病院をはしごして他の患者に感染させたこと。韓国は入院患者を看護師ではなく家族が面倒をみないといけないため、何人もの家族が付き添いとして病室にいたことで大量感染したこと。集団で病院にお見舞いに行く習慣によってまたまた大量感染──。この悪循環が止まらない。

 最初の感染者が発生したのが5月20日、MERSによる死亡者が発生したのが6月1日。しかし韓国政府がMERS感染者のいる病院名や感染者の移動経路などを全て公開したのは、6月7日になってからだった。

 5月20日から6月7日までは、市民の力でMERSの2次・3次感染が発生した病院を突き止め、SNSで情報を共有するしかなかった。韓国政府はSNS上のMERS関連情報はデマであり書き込んだ人を処罰するとしたが、市民の不安は止められなかった。

 6月3日には、Google Mapsに2次感染・3次感染が発生した病院の位置と感染者の移動経路を表示した情報共有サイトが登場した。実際に院内感染が発生した病院にいた人らが、情報を提供した。1週間で約340件の情報提供があり、500万人が閲覧した。市民によるMERSサイトは、ソウル市や保健福祉部(部は省)がMERS対策サイトをオープンしたことで、6月10日に閉鎖した。



写真●地上波テレビ局のKBSは、自社サイトでMERS感染経路を分析したデータを公開した。一目でわかりやすく予防に役立つとしてSNSでリンクする人が増えている。

次ページ: 感染を恐れて、免疫力の弱い小さい子供やお年寄りがいる家庭が、人がたくさん集まる場所には出かけなくなった。その…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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アプリのおかげで自営業者、タクシー運転手の売上も増加、O2Oの効果実感 [2015年6月12日]

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 韓国ではすっかり生活の一部として根付いたアプリの中に「出前アプリ」と「タクシー配車アプリ」がある。文字通り電話ではなくアプリ経由でいろいろな料理を出前できるアプリ、自分の居場所と目的地を入力してタクシーを配車してもらうアプリである。ユーザーの立場からすると、電話より自分の好みや現在位置を正確に伝えられるので、より満足度の高いサービスを利用できるメリットがある。

 お店の立場からすると、アプリを利用することでチラシを配らなくてもアプリを見てお店にオーダーしてくれるので、営業費用を節約できる効果があるという。最近韓国のテレビ番組では、オンラインのユーザーをオフラインに引き寄せるO2O(Online 2 Offline)戦略の効果を実感したお店をよく紹介している。

 路地裏の小さい鶏料理専門店が、出前アプリを使ったことで出前注文が6倍増え、アプリ会社に手数料を払っても月々の売上が4倍も増えたといった事例が紹介されていた。アプリ会社側も手数料を取るだけでなく、どうすればアプリ上で注文を増やせるかコンサルティングをしてくれるので、リストラで行き場のない中高年が自営業者として再出発するのに助かっているという内容だった。

 タクシーアプリに関しても、ユーザーもタクシー運転手も無料で使える配車アプリのおかげで、タクシー運転手は短時間に効率良くたくさんの客を乗せられるようになり、アプリを使う前に比べ1日の売上が3000円ほど伸びたという事例もテレビで紹介していた。今までは電話でタクシー会社に連絡をして予約していたが、「カカオタクシー」の方が運転手会員数が多く、すぐタクシーが来るので便利だという。


次ページ: 韓国で最も人気の高いタクシー配車アプリはカカオタクシーである。2015年3月にサービスを開始してから、アプリ…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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「韓国スマートヘルスケア最前線」「肥満率3割」のペット向けヘルスケアに脚光 [2015年07月24日]

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韓国の大手通信キャリアが2015年に入って力を入れている事業の1つに、「伴侶動物(ペット)」市場の開拓がある。各社が提供するIPTV(インターネット経由で視聴する有料放送)には、ペット専用のテレビチャンネルやラジオチャンネルがある。家族が出かけ、ペットだけが家に残されることが多い韓国の事情に合わせて、“ペットのストレスを軽減する”内容となっている。2015年3月には、韓国Samsung Electronics社が英国のドッグショーで犬のための“スマートホーム”として、約370万円の「ドリームドッグハウス」を出展して話題を集めた(ITproの関連記事)。

 韓国では日本とは異なり、全国どのマンションでも、犬や猫などのペットを飼うことが基本的に許されている。少子化の影響で、ペットを子供代わりに大事に育てる人も増加中だ。

 韓国愛犬協会の統計によれば、犬や猫を飼っている世帯は2014年末時点で全世帯の約20%。そしてペットを飼っている人の多くにとって、悩みの種はペットの「肥満」であるという。

 ソウルに住んでいると、犬を散歩させている人をあまり見かけない。一戸建てよりもマンションが多いため、マンションの団地内をちょっと歩かせるぐらいだ。月に何回かは犬のためのプールやテーマパークに連れて行って遊ばせる飼い主もいるが、韓国愛犬協会によれば、韓国のペット(犬・猫)の3割は肥満で健康管理が必要な状態という。


ペットの健康を管理


GPSにWiFi、測位モジュールまで

 こうした背景から、韓国の通信キャリアはペットのヘルスケア市場に着目している。例えば業界最大手のSK Telecom社は、ペットを肥満にさせないためのヘルスケアサービスとして、「Tペット」を提供中だ。

 これまでも、首輪にGPS機能を搭載し、ペットの位置情報や散歩経路を記録するサービスはいくつか存在した。これに対しTペットは、GPSにWiFi、携帯電話基地局の測位モジュールの3つを組み合わせ、位置と移動経路をより詳細に表示・把握できる。GPSに動作認識センサーと通信モジュール機能を加えたデバイス(3.7cm×3.7cm、18g)を首輪に付け、アプリケーションと連動させて使う。

 インターネットにつながるため、ペットと飼い主が互いに離れていても、ペットの状態や運動した時間、消費カロリー、睡眠時間などの行動パターンを1日中チェック可能だ。そして、もっと運動させるべきか休ませるべきか、この時期にペットの健康管理で気を付けることは何か、といったことをアドバイスしてもらえる。ペットの動きや運動量はすべてアプリケーションに自動で記録される。ペットの運動データを蓄積することで、アドバイスの精度はさらに高まっていく


留守番中のペットを家族の声で安心させる

 Tペットで利用するデバイスは、欧米のペットヘルスケアサービスが提供するデバイスよりも小さく軽いため、小型犬にも利用できる。防水機能を備えており、デバイスを付けたままペットが雨などに濡れても大丈夫だ。1回の充電で約36時間の連続使用が可能。バッテリー残量に応じて飼い主のスマートフォンにメッセージを送信する。

 このデバイスはスピーカーも内蔵しており、家族の声を録音してアプリケーションから送信すると、首輪から声が聞こえる仕組みとなっている。ペットだけを家に残して外出した時や、ペットが迷子になってしまった時などに、家族の声を聞かせて安心させる効果があるという。音声は1回20秒まで録音でき、4件まで登録できる。

 デバイス価格は約7000円で、毎月約650円のペット専用インターネット料金プランへの加入が必要だ。加入した飼い主は、SK Telecom社のグループ会社が運営するインターネットショッピングモールで、ペットフードやペット用品を割引で購入できる。

 Tペットを紹介する韓国メディアの記事のコメント欄には、「ペットまでインターネットに加入させてヘルスケアをする時代が来るとは!」といった、驚きの声が数多く書き込まれている。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
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「韓国スマートヘルスケア最前線」いよいよ本腰? Samsungがモバイルヘルスで相次ぎ提携 [2015年07月22日]

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2015年7月9日、WIPO(World Intellectual Property Organization)のウェブサイトに、韓国Samsung Electronics社の「モバイルデバイスを使った体脂肪測定方法及び装置」に関する特許出願のドキュメントや図版が公開された。特許は2014年3月に出願されたものである(関連サイト)。

 「METHOD AND APPARATUS FOR MEASURING BODY FAT USING MOBILE DEVICE」と題するこの特許は、モバイルデバイス(スマートフォン)のケースが備える4つの電極を手で握ると、身体に電流を流し、インピーダンス(交流における電圧/電流比)から体脂肪率を測るというものである。体重計のような形をした通常の体脂肪計は、手や足裏部分に電極がついており、ここから身体に電流を流して体脂肪率を測る。今回の技術はこの機能をスマートフォンで提供する。

糖尿病管理アプリを年内に

 Samsung社は2015年6月、米医療機器大手のMedtronic社と長期協業契約を結び、「モバイル糖尿病管理アプリ」を開発中であることも発表している。Medtronic社は、血糖値をリアルタイムにモニタリングできるインシュリンポンプのメーカーとして知られる。国際糖尿病連合(IDF)によれば、糖尿病患者は全世界に約3億8700万人。「糖尿病と共に生きる人々が日常をもっと楽しめるようにするために提携した」と、両社はプレスリリースでコメントしている。

 この協業では、Medtronic社のインシュリポンプとSamsung社のスマートフォンやウエアラブル端末をつなげ、患者が自分の血糖値を常に確認できるようにする。血糖値が高すぎたり低すぎたりといった危険な状態になるとアラートを表示し、医師にも患者の状態を伝える。患者は血糖値を毎日測って自ら記録しなくても、血糖値のデータを自動的に蓄積可能だ。このデータを医師と共有し、正確な診断と処方をできるようにする。

 開発する糖尿病管理アプリは、Android OS向けに2015年内に米国でサービスを開始する予定だ。Medtronic社は、iOS向けの糖尿病管理アプリを公開済み。血糖値を測るべき時刻をアラームで教え、海外にいる時は時差を自動的に計算して血糖値測定時間や薬を飲む時刻を教えてくれる。

WIPOのウェブサイトの該当特許
[クリックすると拡大した画像が開きます]
測定方法(WIPOウェブサイトから)


イスラエルや中国の企業とも

 Samsung社は2015年に入ってから、モバイルヘルスケア関連の企業と相次ぎ提携または出資している。1月にはイスラエルEarlySense社に1000万米ドル(約12億円)を出資。EarlySense社は非接触のバイタルセンシング技術を持ち、Samsung社はこの技術を高く評価して出資を決めたという。

 同年4月には、イスラエルMybitat社との協業を発表。家の中で高齢者の動きをモニタリングし、異常があれば家族などの関係者に知らせるIoTヘルスケアプラットフォームを開発する。

 6月には8000万人の顧客を持つ中国最大手の保険会社、平安保険と提携。スマートフォンとウエアラブル端末を使ったヘルスケアソリューションとヘルスケアアプリを開発し、中国でサービスを提供する計画だ。

 Samsung社はかねてモバイルヘルスケアに力を入れていながら、これといった成果がないと韓国メディアは評価してきた。今回の特許申請やMedtronic社との提携を受け、各社は「いよいよSamsungが動きだした」、「Samsungは自前主義を捨て、世界中の企業と手を結んでモバイルヘルスケア事業を拡大しようとしている」などと大きく報じた。Samsung社の姿勢の変化に、高い注目が集まっている。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
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