サムスン電子が新スマートフォンGALAXY S6とEdgeを公開、ネットで生中継したプレゼンも話題に [2015年3月6日]

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 3月1日、サムスン電子はスペインのバルセロナでスマートフォン新機種を公開した。「GALAXY S6」と「GALAXY S6 Edge」の2種である。

 “All New GALAXY”というキャッチフレーズ通り、メタル素材のGALAXY S6とディスプレイの両面が折曲がったGALAXY S6 Edgeは、今までのGALAXYとは違う。韓国のネットユーザーの間では、斬新なGALAXY S6 Edgeの方が人気で、UIやメニューボタン(アイコン)も前よりずっと良くなったと好評だ。

 韓国で最も絶賛された機能は、「10分充電で4時間使えるという高速充電」と「0.7秒で立ち上がり夜景や暗いところでもうまく撮れる1600万/500万画素カメラ」。その他、「端末の背面にある心拍センサーを触るだけでセルフィー(自分撮り)が撮れる機能」、「5.1型のSuper AMOLEDディスプレイ」、「無線充電用の専用カバーを買わなくても端末を無線充電用のパッドの上に置くだけで充電できる機能」なども話題となった。




写真 サムスン電子が3月1日公開したGALAXY S6(上)とGALAXY S6 Edge。サムスン電子は「もっとも美しいスマートフォン」として紹介している。

 サムスン電子は何カ月も前から、「GALAXY S6はGALAXYという名前を除いて全て新しくした」、「スマートフォン作りを最初からやり直すという意味でプロジェクトゼロと呼んでいる」と説明し、「GALAXY S6」に対する自信を見せていた。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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MWC2015はお手頃価格スマートフォンに注目、サムスンに続いてLGも普及型モデルを公開 [2015年2月27日]

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世界最大規模のモバイル関連展示会MWC(Mobile World Congress)は、毎年大手メーカーが最先端の端末と通信技術を初公開する場である。3月2日開幕する2015年のMWCでは、サムスン電子のGALAXY 6のようなハイエンド端末はもちろんLG電子や中国メーカーのお手頃価格スマートフォンも注目を浴びている。

 直前に控えて話題になっているのは、何と言ってもサムスン電子の「GALAXY S6」である。GALAXY S6は、同社が「プロジェクトゼロ」と呼んでいた野心作である。「全てをゼロに戻して、スマートフォンを生まれ変わらせる」という意味を込めて、ゼロと呼んでいたそうだ。GALAXY S6の特徴は、iPhoneのようなバッテリ一体型(バッテリーを取り外せない)、薄いメタルボディーなど。詳細はMWCで公開される。

 一方LG電子は2月23日、MWCでお手頃価格のスマートフォンを公開すると発表した。年明けから、サムスン電子がインドや新興国向けお手頃価格スマートフォンを発売して話題になっていたが、LG電子も同じ戦略を採ることにしたようだ。韓国では、2万円以下の端末を中低価格端末と区分し、「普及型モデル」と呼ぶ。LG電子がMWCで新たに公開するLTE対応普及型モデルは「LG Magna」、「LG Spirit」、「LG Leon」、「LG Joy」の4種である。




LG電子は新しい「普及型モデル」スマートフォン「LG Magna」、「LG Spirit」、「LG Leon」、「LG Joy」をMWC2015で公開すると発表した


LG電子が公開したスペックを見ると、「LG Magna」は5インチディスプレイに800万/500万画素カメラを搭載、バッテリーは2540mAhで韓国メーカーの普及型モデルとしては最大容量だ。「LG Spirit」は4.7インチディスプレイに800万/100万画素カメラ。「LG Leon」は4.5インチディスプレイに800万画素カメラ、「LG Joy」は4インチディスプレイに500万画素カメラを搭載した(カメラの画素数は今後変更される可能性あり)。

 普及型モデルでも、デザインは重要。LG電子は、普及型モデルにもハイエンド端末のデザインを適用して、安っぽく見えないようにした、と強調した。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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「韓国スマートヘルスケア最前線」ウェルネス分野を医療機器規制から除外、市場育成重視 [2015年05月29日]

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韓国において医療機器の認可を担当する省庁である食品医薬品安全処は、「融・複合ヘルスケア活性化対策」の一環として、ウェルネス(Wellness)分野のウエアラブル端末やモバイルデバイスを2015年6月からは医療機器と見なさないとの決定を下した。

 食品医薬品安全処は6月末までに、「健康管理用Wellness製品区分基準ガイドライン」を制定する。同ガイドラインでは、日常生活で健康を維持するために使うリストバンド型の体脂肪計や心拍計などを、医療機器管理対象から除外。患者の状態に応じて診断および処方するために使う機器でなければ、Wellnessに分類することとした。

 医療機器管理対象から除外されると、事前許可審査や医療機器製造、品質管理基準といった、医療機器向けの義務規定を守らなくても済む。結果として、製品開発から製品化まで最長4年ほどもかかっていた審査期間を、2カ月に短縮できるとする。ただし、電気用品安全管理法に従い、電気的安全性は検証する。Wellness製品として発売してから疾病の診断・治療などの医療目的の機能を追加できないように、事後管理を行う。

 Wellnessはwell-beingとhappiness、fitnessを組み合わせた造語で、健康な状態を意味する。治療目的ではなく健康な人が健康を保つために使う機器に関しては、安全確認以外の手続きを簡素化し、開発から発売までの期間を短縮できるようにするわけだ。

韓国Inbody社が開発した、手首にはめるだけで体脂肪を測れるウエアラブル端末「InbodyBand」。今回の規制緩和により、韓国では体脂肪や心拍数、呼吸などを測れる個人向けウエアラブル端末市場の拡大が見込まれる


産業界の声や米国の動向が後押し

 朴槿恵大統領が主宰する「規制改革長官会議」では、技術の進展に規制が追いつかず、企業の足を引っ張っている事例として医療機器を取り上げ、2013年ごろから規制緩和の取り組みを進めてきた。同会議は「クリエイティブなアイデアの迅速な市場投入」を支援することをうたう。

 海外では心拍数や体脂肪量などの生体情報を簡単に測定し、個人が自ら健康管理に使えるウエアラブル端末やモバイルデバイスが増えている。こうした中、韓国だけが規制を厳しくしていては、世界から取り残されてしまうとの懸念が産業界から相次いでいた。特に、健康維持に使うWellness製品はそもそも製品区分の定義が曖昧であり、医療機器として審査するうちに製品の発売が大幅に遅れることもしばしばあった。そのため、ウエアラブル端末やヘルスケア関連のベンチャー企業が、拠点を米国に移す事例も増えている。

 高齢化が急速に進む中で、健康で長生きするにはフィットネスや医療にお金を惜しんではならないとの意識も高まっている。Wellness市場は今後大きく成長すると見込まれており、人体に害を及ぼすリスクの低い製品については積極的に規制を緩和して市場を盛り上げようという算段だ。FDA(米国食品医薬品局)は2015年1月、Wellness分野のガイドライン(General Wellness:Policy for Low Risk Devices, Draft Guidance)を発表。世界に後れを取るまいとする韓国政府の決定に影響を与えた。

迅速な製品化を促す

 食品医薬品安全処は、ICTと医療の融合によるイノベーションを促す上で、「医療機器統合情報バンク」を早期に構築する考え。製品企画から研究開発、臨床、製品化、認許可に至るそれぞれの段階で、専門チームが省庁の枠を超えて戦略的に企業を助ける仕組みを整える。医療機器輸出のための主要国認許可情報や通関手続きなども一カ所でまとめて管理し、全省庁で共同利用できるようにする。

 従来、韓国では医療機器の研究開発を支援する省庁と製品の認可を担当する省庁が分かれていた。支援策や規制もばらばらだったためか、韓国保健産業振興院の2013年の調査によれば、医療機器の研究開発後の製品化率はわずか5%にすぎなかったという。

 食品医薬品安全処は、韓国の医療機器やヘルスケア向けウエアラブル端末がグローバル市場を占有できるよう、「安全面にかかわらない規制に関しては今後も改善を続ける」としている。


By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
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韓国でも期待高まるスマートウォッチ──「Apple Watchなら使い道なくても買う」、「デザインはLG電子が上」 [2015年2月20日]

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今年4月出荷予定のアップルのスマートウォッチ「Apple Watch」。心待ちにしているのは、日本人だけではない。韓国のアップルユーザーも「Apple Watchはとにかく買う。使い道がなくても買う」、「Apple Watchはアプリが豊富だし、持っていると生活が楽しくなりそう」、「Apple Watchは女性にも似合うデザインだから買いたい」と、既にネットで盛り上がっているのだ。

 3月2日に開幕する世界最大級のモバイル関連展示会「Mobile World Congress2015」では、Apple Watchに対抗して韓国のサムスン電子、LG電子もスマートウォッチを公開するという。韓国メディアは「Apple Watch に勝てるデザイン」だとして、LG電子の新作スマートウォッチ「Urbane」を押している。LG電子は、2月16日スマートウォッチ新作「LGウォッチUrbane」を公開した。

写真●LG電子は2月16日、スマートウォッチ新作「LGウォッチUrbane」を公開した

 「Urbane」の見た目は、高級なクラシック時計そのもの。スマートウォッチには見えない。Urbaneは「優雅な」、「上品な」という意味で、高級感を出すことに重点を置いたようだ。他のスマートウォッチが四角いフレームなのに対し、LG電子は前作「Gウォッチ」に続いて丸いフレームを採用したので、時計にしか見えないのかもしれない。

 Urbaneの大きさは45.5×52.2×10.9(mm)と、デザインが好評だったGウォッチ(46.4×54.6×11.1mm)よりもさらに大きさ、厚さ、縁の幅を小さくしてスリムになった。メタルボディーで傷に強い。ディスプレイは、1.3インチのOLED(有機発光ダイオード)で、245ppiだ。天然革のストラップがついているが、他の時計メーカーのストラップも使えるよう標準型の22mm幅になっている。女性が身につけるにはちょっとごつい感じはするが、男性ならスーツにもカジュアルにも似合うデザインだ。アップルが「Apple Watchはかしこいアクセサリー」と宣伝しているせいか、韓国メーカーもスマートウォッチのデザインには力を入れている。


次ページ: Urbaneは、AndroidOS4.3以上のスマートフォンと連動し、Gウォッチに搭載していた心拍数測定やフ…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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大画面スマートフォンさえあればいい、タブレットPCが売れない時代に [2015年2月17日]

米市場調査会社のIDCが2月初めに公開したデータによると、2014年10~12月の世界タブレットPC出荷台数は7610万台で、前年同期比3.2%減少した。IDCは2010年からタブレットPCの出荷台数を調査しているが、台数が減少したのは初めてのことだという。

 IDCが分析したタブレットPC出荷台数減少の原因は、「大画面スマートフォンの普及によりタブレットPCの需要が減った」、「タブレットPCはスマートフォンと違って買い替え周期が長い」ことだった。IDCの調査によると、タブレットPCの平均買い替え周期は2.6年、タブレットPCユーザーの37%は3年以上買い替えなしで使っていた。IDCは、大画面スマートフォンの影響でタブレットPC市場は10インチ以上モデルが中心となり、8インチ以下モデルは減少すると展望している。

 メーカー別にみると、中国のレノボを除いて、米アップルも韓国サムスン電子もタブレットPCの世界市場でシェアを減らした。2014年10~12月では、アップルが28.1%で1位、サムスン電子が14.5%で2位、レノボが4.8%で3位だった。前年同期比で見ると、アップルは5ポイント、サムスン電子は2.7ポイント、それぞれシェアが減少したが、レノボは0.5ポイント増加した。安価な中国メーカーのタブレットPCは、増加傾向にあることが分かる。

 米アップルにしても、iPhone6 PlusとMacbookはとても好調だが、iPadの販売台数は減少し続けている。アップルが公開したデータを見ると、2014年10~12月のiPad販売台数は2142万台で、前年同期の2604万台より減少した。



サムスン電子の超高画質10.5インチタブレットPC「GALAXY TAB S 広帯域LTE-A」。販売価格は約8.8万円。サムスン電子は2015年より値段を安く抑えたタブレットPCを発売するという。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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イスラム国関連書き込みモニタリング強化、韓国ではテロ防止法と人権保護が対立 [2015年2月6日]

2月3日、韓国の通信政策を担当する省庁の未来創造科学部(部は日本の省に当たる)は、サイバーテロ防止のための討論会を開催し、「大統領官邸を中心にサイバーテロ対策室(コントロールタワー)を新設する」、「情報セキュリティ予算は、現在の5倍以上に増額する方針である」、といった内容を発表した。

 未来創造科学部の情報セキュリティ予算は、年間2500ウォン(約270億円)。これを1兆2500億ウォン(約1350億円)以上に増額し、サイバーテロに備えるべきだと主張している。サイバーテロとは、政府機関や国家重要施設のハッキングやサイトにアクセスできなくするDDoS攻撃をはじめ、インターネット回線を乗っ取りシステムの誤作動を起こして事故を誘発する行為、テロを扇動する書き込みを繰り返す行為、などを指す。

 韓国が、サイバーテロを初めとする「テロ」に敏感になっている背景には、イスラム国の存在がある。

 イスラム国武装勢力による日本人人質殺害は、韓国にも大きな衝撃を与えた。日本と同じく米国の同盟である韓国も、いつテロのターゲットになるか分からないという不安が広がった。日本人人質事件が発生する直前の1月初めには、18歳の韓国人青年がトルコで行方不明になった。この青年はシリアに密入国、イスラム国武装勢力に加担した可能性がある、というニュースが流れた。

 韓国警察の捜査によると、18歳の青年はSNS経由でイスラム国関係者と接触していたという。青年のパソコンからは、イスラム国の旗や武装勢力の隊員と見られる写真と動画が多数見つかった。この青年とイスラム国の接点は、Twitterで始まった。2014年10月には、Twitterでイスラム国武装勢力の組織員になりたいとつぶやき、他のTwitterユーザーから連絡先をもらっていた。

 イスラム国武装勢力は、Twitterを使って自分達のメッセージを伝えようとしている。関係ないハッシュタグをつけて、イスラム国に関心がない人の目にもつくようにしていることはよく知られている。この青年は、Surespotという個人情報を登録する必要がなくメッセージの記録も残らないSNSアプリを使い、Twitterで知り合ったイスラム国関係者とシリアに密入国する具体的な話をしたと見られる。

 韓国メディアは、非行少年が高校を中退して引きこもり、学閥社会の韓国になじめず色々なことに対する不満からイスラム国の「英雄になろう」という誘いに負け、武装勢力に加担したのではないかと分析する。イスラム国がSNSで巧みに世界中の若者を洗脳し誘惑していることから、国会や政府関係者の間では、「イスラム国が発信する動画やメッセージを、韓国からは見られないようにする」のはもちろん、こうした「テロ勢力に賛同するような書き込みや検索を繰り返す人の通信記録を、収集して監視する必要があるのではないか」という話にまで発展している。それがテロ防止法だ。

 テロ防止法を制定すると、国家情報院という韓国政府の情報機関が「テロ関連国内外の情報収集・作成・配布」、「危険人物の情報収集」、「テロ団体指定と解除」、「テロ団体の構成員と疑われる者に対する出入国・金融取引・通信利用の情報を収集」などができるようになる。もちろん、韓国内ではテロ防止法に反対する意見もある。「通信の秘密保護といったプライバシー侵害になる恐れがある」、「テロの範囲が明確でないため、情報機関が権限を乱用する可能性がある」、という理由だ。


次ページ: 市民団体らは「TwitterやSNSを使っていれば、意図しなくてもイスラム国やテロ組織のメッセージを目にする…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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韓国公正取引委員会、ブログ利用した「広告でないような広告」を取り締まり、ソニーコリア、エバー航空などに課徴金 [2015年1月30日]

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韓国公正取引委員会は1月22日、ブログを利用して“広告ではないようにみせかけた広告”を掲載したとして、「表示・広告の公正化に関する法」を違反した20社を摘発したことを明らかにした。

 何が問題になったのか。実は摘発された20社は、訪問者数の多いブロガーが、実際にその商品を購入して使ってみたところとてもよかった、という内容のポスティング(書き込み)をさせていた。その際、ブロガーに対して金品を提供していながら、それを隠していたのだ。

 ソニーの韓国支社であるソニーコリアは、タブレットPC1モデルとノートPC5モデルを広告でないように広告するポスティング29件が摘発され、是正命令を出されたのに加えて、2700万ウォン(約290万円)の課徴金を課された。台湾企業のエバー航空は、ハローキティのラッピング飛行機や機内のサービスに関して16件のポスティングが摘発され、ソニーコリアと同じく是正命令と課徴金2700万ウォン。韓国企業のボリョン製薬は、日本から輸入販売している美白サプリや目薬など56件のポスティングが摘発され、是正命令と課徴金1300万ウォン(約140万円)の処分となった。





韓国でもっとも利用者数が多いNAVER Blogのパワーブログリスト NAVERは訪問者数が多く影響力のあるブログを選定し「パワーブログ」コーナーで紹介している。

 この他に、オンラインゲーム会社、歯科病院、成形外科、化粧品会社、家具会社、モバイル決済代行会社など17社は、是正命令または警告処分となった。20社がブロガーに渡したポスティングの対価は、1件当たり3~15万ウォン(約3300~1.6万円)だった。

 韓国公正取引委員会は、「レビューや口コミは消費者の選択に大きな影響を与えるため、対価をもらって商品の宣伝をした書き込みは広告と明記する必要がある。広告であることを隠して読む人を騙すのは、事実上の詐欺行為である」と説明した。


次ページ: ほとんどのケースでは、摘発された会社が直接ブロガーにポスティングを依頼したことはない。広告代理店にSNSマー…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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サムスン電子、Tizen OS搭載「Z1」、「GALAXY A5」など低価格スマホで市場拡大狙う、インドに続き韓国でも普及型モデル発売 [2015年1月23日]

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1月14日、サムスン電子がインドで約92ドル(約1万円)の低価格スマートフォン「Samsung Z1」を発売し、大きな話題になっている。

 「Samsung Z1」はTizen OSを搭載したスマートフォンで、4インチの画面に1.2GHzデュアルコアプロセッサー、メモリー768MB、カメラは310万画素とスペックは低仕様だが、とにかく値段が安いのが売りだ。カラーは、ホワイト、ブラック、ワインレッドの3色がある。Tizen OSはアプリの実行速度が速く、インターネットのWebページを読み込む速度も速いため、データ使用量とバッテリーの消耗を極力抑えられるのも特徴だ。モバイルインターネット速度が速くないインドでも、十分コンテンツを楽しめるようにしたのだ。

インドで発売した約92ドル(約1万円)の低価格スマートフォン「Samsung Z1」

 Z1にはインドの消費者向けに音楽、ラジオ、テレビチャンネル、映画などを楽しめるコンテンツアプリも搭載してあり、初めてスマートフォンを利用するユーザーもすぐ直観的に使えるようにした。サムスン電子側の説明によると、インドでは、ユーザーはエンターテインメントを楽しむデバイスとしてスマートフォンを利用しているため、音楽やテレビチャンネルをどれだけ利用できるかもスマートフォン選びの重要なポイントになるという。人口12億の新興国インドのスマートフォンユーザーはこれから爆発的に増加すると見られるため、サムスン電子がスマートフォン世界市場シェア1位を守るためには、インド市場を確保しなければならない。

 2014年6月にサムスン電子が公開した「Samsung Z」を見る限りでは、Tizen OSを搭載したスマートフォンはハイエンド端末になるはずだった。サムスン電子が主導したOSだけに、高性能なところをアピールしたかったはず。だがサムスン電子は、新興国市場を狙うために低価格スマートフォンが必要になり、アンドロイドより安く提供できるTizen OSを搭載することにしたようだ。

 韓国では、「スマートフォンユーザーは、自分が初めて購入したブランドのスマートフォンを使い続ける傾向がある。初めて購入したのがサムスン電子のスマートフォンなら、機種変更してもサムスン電子を選択する割合が高い」という調査結果があり、新興国でもこのルールが通用するのではないかとみている。インドでは、とにかく安く提供することを優先し、人生初のスマートフォンをサムスン電子製にする戦略だ。

 また、スマートフォンが普及して間もないインドなので、Tizen OSのスマートフォンを販売することで、Z1にプリインストールされているサムスン電子のコンテンツアプリやアプリマーケットの知名度がGooglePlay並に上がるのではないか、という期待もある。

 サムスン電子は、既にインドで「普及型スマートフォン」としてGALAXY E5/E7を発売している。E5は500万画素カメラ搭載に5.5インチディスプレイで約4万円、E7は同じく5.0インチで約3.4万円である。


次ページ: 同社は韓国内でも今までの高価格路線を覆し、値段を抑えた普及型スマートフォンを発売した。1月22日に登場したG…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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韓国キャリアの「脱通信」O2O市場先占競争本格化、通信費以外の収入を狙え [2015年1月20日]

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数年前から「脱通信」、「融合」、「ライフスタイル全般をサポートする」といったキャッチフレーズを掲げている韓国のキャリア3社。モバイル決済やモバイルショッピング、モバイルクーポン、モバイル動画サービスなどの競争に続いて、2015年からは本格的にO2O市場の先占を狙った競争を繰り広げている。

 O2Oは「Online to Offline」の略で、スマートフォンのアプリケーションを利用してオフライン店舗に顧客を誘導したり、オフライン店舗のユーザーをオンライン誘導したり、顧客がスマートフォンを使ってオフライン店舗をより便利に利用できるようにしたりするビジネスである。

 韓国で最も有名なオンラインとオフラインをつなげるO2Oサービスと言えば、「出前アプリ」がある。地域とジャンルを選択すると出前してくれるレストランが数十件登場し、メニューを見ながらアプリ上で注文決済すると、自宅に料理が届く。

アプリで出前が当たり前に

 韓国では、ほとんどのレストランが出前をしている。以前は電話で出前を頼んだが、メニューや値段を電話で聞きながら注文するよりアプリの方が断然便利なので、今では出前はアプリ経由でするスタイルが定着した。一部の出前アプリは、手数料さえ払えば、遠い地域からの出前や高級ホテル料理の出前にも対応している。出前アプリは、食べ物に関する便利屋の役割を担っている。

 その他に、「ソーシャルコマース」がある。オフライン店舗が、自分達のサービスを利用できる商品券を、アプリを通じて安く販売する。ネイルやマッサージ、またはレストランのセットメニューなどの商品券を、通常の半額以下で限定販売するのだ。日本にも似たようなサービスはたくさんあるが、韓国の方が社会における認知度が高く、利用者も圧倒的に多いと感じる。


SKPlanetが運営するアプリ「Syrup」(左)とネットで話題のO2Oアプリ「YAP」 


O2Oに一番力を入れているキャリアは、SKテレコムである。グループ会社のSKPlanetが運営するアプリ「Syrup」を利用すると、ユーザーの位置情報に応じてBluetoothで近くのお店のクーポンや特売情報を配信し、スマートフォンユーザーをお店に誘導する。Syrupはクレジットカードやメンバーシップカードを保存する機能もあるので、スマートフォンさえあればあれこれカードを持ち歩かなくても、クーポンを使い割引された金額で決済してスタンプも貯められる。明洞や新村などソウル市内の主な繁華街にある店は、Syrupに対応している。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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「韓国スマートヘルスケア最前線」患者データ25億件が漏洩か、製薬会社に販売の疑い [2015年04月17日]

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ソウル放送(SBS)をはじめとする複数の韓国メディアは2015年4月8日、医療情報コンサルティングのグローバル企業である米IMS Health社の韓国法人IMS Health Koreaが、2008年以降に韓国人の診療記録と処方箋、計25億件を1件当たり1ウォン(約0.1円)で購入し、米国本社にわたす個人情報侵害を犯した疑いがあると報じた。韓国検察の個人情報犯罪政府合同捜査団が公表した捜査内容を基にした報道である。

 検察によれば、IMS Health Koreaの米国本社はこの情報を加工し、どの病院がどの疾患にどの薬をよく処方するのか、年齢別・地域別にどの薬がよく処方されたのか、といった統計資料にまとめて韓国の製薬会社に高い値段で販売していたという。

電算化代行業者などが横流し

 診療記録と処方箋は、重要な個人情報だ。ある患者がいつどのような疾患でどの薬を処方されたのかといった内容が、名前や国民ID(住民登録番号)とともに記載されている。日本のケースに置き換えれば、2015年秋に始まるマイナンバーと名前入りの電子カルテ、電子レセプトを多国籍企業が安く買い取り、米国にある本社がその情報を使って日本人の年代別・性別の病歴や主に使う薬などを分析。その情報を日本の製薬会社に高い値段で売っていたことに相当する。

 韓国メディアによれば、診療記録と処方箋をIMS Health Koreaに販売したのは、韓国5000カ所以上の病院の診療記録を電算化(電子医務記録)して健康保険審査評価院に送信する代行業者と、全国の薬局に電子処方箋関連プログラムを納品している大韓薬師会傘下の財団法人である薬学情報院だという。ここで健康保険審査評価院は、日本における診療報酬支払基金のような役割をする機関で、医療機関などから届いた医療費の請求が適正かどうかを審査し、医療費を支給する。

 この代行業者は2015年1月に、検察の取り調べを受けた。その結果、この代行業者は、患者の電子医務記録を健康保険審査評価院に送信する過程で、診療記録を外部サーバーにも同時に保存するようにしていたことが明らかになった。この手法で数億件に及ぶ電子医務記録を無断で手に入れ、IMS Health Koreaに販売していたという。

「個人は特定できないデータ」と反論

 病院側は、患者の電子医務記録が外部サーバーにも保存されていたことをまったく知らなかったとしている。薬学情報院も同じく、電子処方箋を無断収集した疑いで検察が2013年12月に取り調べを行い、2014年7月には役員らを起訴している。その際、薬学情報院が無断で収集した個人情報を購入したとしてIMS Health Koreaも捜査の対象になったが、当時は証拠不十分でIMS Health Koreaの関係者が起訴されることはなかった。

 韓国の医療法は「誰であろうと正当な事由なく電子医務記録に保存した個人情報を探知、漏えい、変造、棄損してはらない」、さらには「患者の診療記録と個人情報を他の医療機関と共有する必要がある場合は患者の同意を得ること」と規定している。個人情報保護法でも「健康などに関する情報、その他情報主体の私生活を顕著に侵害する恐れがある敏感情報に関しては、情報主体の同意なくこれを収集・利用・提供してはならない」と規定している。

 IMS Health Koreaは2015年4月13日、検察の捜査に反論する声明を出した。「ビジネス相手の国の法律は守っている。診療記録や処方箋などは暗号化して個人を特定できない状態で買い取り、製薬会社に販売したレポートも統計資料であり個人情報は含まれていない。60年以上、100カ国を超える国で保健医療の市場調査サービスを提供してきた。統計データには匿名を保証する情報を利用しており、患者個人を識別する情報はまったく使っていない」という立場を示した。

 「誰がいつどのような病気でどのような治療をしてどのような薬を飲んだのか、個人を識別できるデータを購入して米国本社にわたした」と主張する検察と、それを否定するIMS Health Koreaの攻防が続いている。

患者や医師が6億円超の損害賠償請求

 今回のケースでは、個人の医療情報が患者も病院も知らないうちに収集され、海外に売られていたことは確かだ。韓国内では、医療分野の個人情報管理に大きな欠陥があるのではないかと不安が広がっている。検察はIMS Health Koreaの代表に対し、違法に収集した個人情報を利用して得た不当利益の規模を調べる予定だと通達している。

 IMS Health Koreaと、同社に患者の診療記録を販売した薬学情報院は、既に患者と医師合わせて2193人から個人情報侵害で訴えられた。2014年の夏から現在に至るまで、約6億2000万円規模の賠償金をめぐる損害賠償訴訟が続いている。

 原告の患者と医師は、次のように主張している。「薬学情報院からIMS Health Koreaにわたったデータには、患者の住民登録番号から抽出した生年月日が記載してある。情報主体の同意なく無断で個人情報を収集したわけだ。さらに『住民登録番号や医師免許番号などは暗号化して販売した』との主張は、『1はA、2はB』といった具合に数字を特定の文字に入れ替えただけにすぎず、意味がない」。医療データの売買や暗号化をめぐって原告と被告の主張がぶつかり合う中、検察のIMS Health Koreaに対する捜査再開は、損害賠償訴訟に影響に与える可能性がある。


By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
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