CES2015でサムスンの「Tizen OS」搭載スマートテレビが話題に、何が違う? [2015年1月9日]

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2015年1月6日、米国ラスベガスで世界最大の家電見本市、CES(Consumer Electronics Show)が幕を開けた。CESでは毎回サムスン電子とLGエレクトロニクスがテレビや冷蔵庫、洗濯機などの新商品を公開しているので、2015年はどんな製品が登場するのか韓国でも大きな話題になった。

 CES2015関連で韓国メディアが最も大きく取り上げたのは、サムスン電子の「SUHD TV」である。SHUD TVはサムスン電子が主導して開発した「Tizen OS」と、量子ドット(Quantum dots)ディスプレイを搭載した次世代スマートテレビである。サムスン電子の説明によると、SUHDのSはSmart、Stylish、Spectacular(圧倒的な)といった意味が込められている。UHDとはUltra High Definitionの略で、日本で言う4Kや8Kを意味する。

サムスン電子はCES2015で、サムスンが主導して開発したTizen OSを搭載したスマートテレビ「SUHDTV」を公開した

 SUHD TVは、4Kは65型、78型、88型と、ボタン一つで平面ディスプレイになったり曲面ディスプレイになったりするベンダブル105型がある。テレビのデザインも工夫し、映像に集中できるよう縁を最大限薄く、シンプルにしてある。このほか、サムスン電子はSUHD TVの一つとしてメガネなしで3D映像が観られる110型8Kテレビも公開した。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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原発管理会社へのサイバー攻撃で韓国は緊張状態、韓国軍は「サイバー作戦課」を新設 [2014年12月26日]

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 北朝鮮の公式ドメイン「.kp」を使うWebサイトが2014年12月22日の夜から23日午前にかけて、10時間ほどアクセスできなくなる事態が発生した。

 韓国政府は北朝鮮のWebサイトを不法・有害情報サイトに指定し、韓国のIPアドレスからはアクセスできないようにしている。IPを迂回して(韓国以外の国からアクセスしているように見せかけて)接続する方法もある。数年前、好奇心からか北朝鮮サイトを閲覧して会員登録までした韓国人がいたことが発覚し、問題になったこともある。

 しかし、マスコミや研究機関は北朝鮮の動向をモニタリングするために、アクセスできるようにしている。そのマスコミや研究機関でも、22日の夜から23日午前にかけてはアクセスできなくなったのだ。

 韓国と米国メディアは、北朝鮮のWebサイトにアクセスできなくなったのは、米ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)に対するサイバー攻撃事件と関連があると見ている。

 SPEは、北朝鮮のキム・ジョンウン第一書記の暗殺シーンを含んだコメディ映画、「ザ・インタビュー」を12月25日に全米で公開する予定だった。ところが、「Guardians of Peace」と名乗る者がザ・インタビューの公開中止を求めて11月末、SPEに対してサイバー攻撃を仕掛け、封切前の映画ファイルや役員らの電子メール内容などを盗み取り、インターネット上に公開した。

 この事件を捜査している米FBI(米連邦捜査局)は12月19日、「SPEをサイバー攻撃した勢力は北朝鮮政府と関連があると判断するに十分な情報を集めた」と発表した。これを受けて米オバマ大統領は、「北朝鮮をテロ支援国家に再指定するかどうか検討している」「(北朝鮮側のサイバー攻撃に対して)相応の対応をする」と語った。

 その後、冒頭で述べたように、北朝鮮の新聞社や航空会社といった主なサイトにアクセスできなくなる事態が発生した。そのため韓国や米国メディアは、「もしかして米国の政府機関、あるいは米国のハッカーが北朝鮮をサイバー攻撃したのではないか」と推測する報道をした。しかしどちらの場合も、誰が攻撃したのかを明確にするのは難しいそうだ。

 韓国メディアは、「国家間のサイバー攻撃は秘密裏にかなりの頻度で起きているため、北朝鮮の国家機関がSPEをサイバー攻撃し、米国が仕返しに北朝鮮をサイバー攻撃したとしてもおかしくない。国ごとにサイバー攻撃を仕掛けたり防衛したりする組織もある」と報道している。サイバー攻撃は米国や北朝鮮だけの問題ではないのだ。

 米国は2009年、戦略司令部傘下にネットワーク、ソフトウエア、暗号の専門家を集めた「米合衆国サイバー司令部」を設立し、米軍内にあるサイバー部隊の司令塔の役割を担っている。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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スマートフォンシェアが落ち続けるサムスン電子、2015年の戦略は? [2014年12月19日]

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韓国サムスングル―プは、2014年12月17日よりサムスン電子をはじめとする全系列会社の経営戦略会議を始めると発表した。何よりもサムスン電子のスマートフォンシェアがどんどん落ちている中、世界市場での競争力強化をどうするのかに焦点を当てると見られる。

 リサーチ会社の米ガートナーが発表した2014年7~9月期の世界携帯電話市場動向によると、スマートフォンの販売台数は前年同期比20.3%増の3億100万台に達し、シェア1位はサムスン電子だった(ITproの関連記事:[データは語る]2014年Q3の世界スマホ販売ランキング、上位5社に中国メーカーが3社)。

 ただし、サムスン電子のシェアは2013年7~9月期が32.1%だったのに対し、2014年7~9月期は24.4%に落ち込んだ。サムスン電子のスマートフォンは、世界で最も売れているスマートフォンであることに変わりないが、シェアが減少し、2014年第3四半期の中国市場ではシェア1位の座を中国シャオミ(小米科技)に譲ることになった。

 この1年で躍進したのはシャオミ、ファーウェイといった中国勢である。中国やインドといった新興国で好調なシャオミの世界市場シェアは、2013年7~9月期はわずか1.51%だったのが、2014年7~9月期には5.2%に成長した。サムスン電子が世界市場シェアを守るためには、ハイエンド端末だけでなく新興国向けの低価格端末にも力を入れないといけない。

 ガートナーによると、サムスン電子のフィーチャーフォン(従来型携帯電話)とスマートフォン両方の販売台数が減少していて、西欧、アジア市場で特に減少しているという。

 米アップルのシェアは増加しており、iPhone 6と同Plusが好調なことから、2014年10~12月期には史上最大の販売台数を記録すると展望している。アップルと中国勢がサムスン電子のシェアを奪い続ける中、サムスン電子もスマートフォンの実績を立て直す戦略を発表している。

 サムスン電子はまず、2015年にリリースするスマートフォンのモデル数を2014年に比べて25~30%ほど減らし、価格競争力を向上させるという。モデル数が多すぎると研究開発費やマーケティング費用、流通費用も相当かかるからだ。モデルを絞り、大量生産で価格競争力を改善する狙いだ。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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韓国で補助金規制の隙間を狙う日中のスマホ、ソニーXperiaがMVNO向けに初登場 [2014年12月15日]

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ソニーの「Xperia Z3 Compact」が、韓国のMVNO(仮想移動体通信事業者)向け端末として登場した。韓国のMVNOがXperiaを販売するのはこれが初めて。韓国の最大手MVNOであるCJハローモバイルは、2014年12月9日よりXperia Z3 Compactを補助金付きで販売している。CJハローモバイルは、韓国の財閥であるCJグループの総合有線放送事業者、CJハロービジョンが運営するMVNOである。

ソニーコリアのWebサイト
Xperia Z3 Compactが韓国MVNO向けに初登場。端末流通法の隙間を狙うプレミアムスマートフォンとして注目されている。

 端末流通法により韓国では、キャリア3社の補助金が規制され、端末価格が実質値上がりしている。こうした状況の中、端末流通法の対象でないMVNOは補助金を増やしてユーザー獲得に乗り出した。

 CJハロービジョンは月々約7000円の料金制度で24カ月間の契約をすると、補助金で端末価格から約3万3000円を割り引き、Xperia Z3 Compactを約2万7000円で購入できるようにした。Xperia Z3 Compactをキャリアの1社であるKTで購入・加入すると、補助金が少ないのでユーザーが負担する端末価格はMVNOよりも高い。

 キャリア3社から加入者を奪うMVNO目玉端末としてXperia Z3 Compactが選ばれた、というわけだ。もっと安い料金制度を選択すると補助金が減るので端末価格が高くなるが、それでもサムスン電子やLGエレクトロニクスのスマートフォンに比べると3分の2程度の価格で手に入る。

 Xperia Z3 CompactはLTE端末である。しかしMVNOは、料金が安い代わりに音声通話とインスタントメッセンジャーアプリしか使わない子供とシニア層が多く加入している。2014年10月時点でMVNO加入件数は430万件を突破し、全携帯電話加入件数の8%を占めているが、このうちLTE加入件数は31万件程度にすぎない。LTEで高速モバイル通信を使いたい人は、通常のキャリアを選択する。

 そのためCJハローモバイルは、Xperia Z3 Compactを先着100台だけ売ることにした。100台の売れ行きを見て台数を追加するという。MVNOもLTEでプレミアムスマートフォンのラインアップを増やすのか、それとも今まで通り激安端末と中古端末中心に低価格で勝負するのか、外国メーカーの端末を増やすのか、サムスン電子・LGエレクトロニクスだけにするのか、こうした戦略はXperia Z3 Compactの売れ行き次第というわけだ。

 ソニーは韓国ではキャリアと組まず、XperiaをSIMフリー端末としてソニーストアで販売していた。韓国でXperiaは防埃防水効果とカメラ機能が優れたプレミアムスマートフォンという位置付けである(関連記事:韓国メーカーより安いのにカメラがすごい! ソニーの「Xperia Z2」イベント)。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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動画を視聴不可に!地上波放送局とYouTubeの駆け引きにいら立つ韓国ネットユーザー [2014年12月5日]

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韓国の地上波放送局は、放送局ごとにYouTubeに公式チャンネルを持つ。歌番組やバラエティー番組のハイライト場面などを、短い動画クリップにしてYouTubeに提供している。韓国内はもちろん、海外からもYouTube経由で韓国のテレビ番組を楽しめるようにしている。

 「好きな歌手のライブ映像だけ観たい」「バラエティ番組の爆笑場面だけ観たい」といった視聴者も多く、高画質の暇つぶしコンテンツとしてMBCとSBSのYouTubeのチャンネルは非常に人気が高い。YouTubeを観て気に入った番組の全編を観たくなったら、放送局のホームページから有料でダウンロードするか有料のビデオオンデマンドを利用できる。

 ところが、韓国の地上波放送局のMBCとSBSは2014年12月1日より、YouTubeに動画クリップを提供しないことにした。正確に言うと、YouTubeの国・地域設定が韓国になっている場合だけ、MBCとSBSのチャンネルに登録された動画クリップを再生できないようにした。MBCとSBSは、韓国のネットユーザーはポータルサイト「NAVER」と「Daum Kakao」から放送局の動画クリップを利用するよう告知している。



YouTubeの国・地域設定を韓国にして地上波放送局のMBCがアップロードした動画クリップを再生しようとすると、12月1日からはYouTubeでは見られないという告知が出るようになった

 その理由は、YouTubeとの広告収入の配分にある。YouTubeの広告収入配分はYouTubeが45%、放送局が55%だ。これに対して放送局側は、コンテンツを提供する放送局がもっと広告収入を得られるようにすべきだとしてYouTubeと交渉した。しかし、その交渉はうまくいかなかった。

 そこに韓国のポータルサイトNAVERとDaum Kakaoが、破格の提案をした。広告収入の配分を放送局90%、ポータルサイト10%にするので、YouTubeではなくNAVERとDaum Kakaoに動画クリップを提供してほしいという提案だ。放送局側はYouTubeではなく、広告収入の配分が大きい両ポータルサイトを選択した。

 ポータルサイトは、地上波放送局の番組動画クリップを確保することで訪問者数が増え、全体の広告収入が増えることを期待する。一方、地上波放送局は一つの動画クリップを海外向けはYouTube、韓国向けはポータルサイトと分けて使うことで、広告収入が増えると期待している。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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TIMEが2014年ベストイノベーションに選んだ自分撮り用スティック、韓国では取り締まりを強化 [2014年11月28日]

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日本を訪れる韓国人や中国人の観光客が、必ずといっていいほど手に持っているのが自分撮り用のスティックである。スティックの先にスマートフォンをセットし、取っ手にあるボタンを親指で押してシャッターを切る。スティックとスマートフォンは、Bluetooth通信でつながっているものが多い。

 従来は思いっきり腕を伸ばして自分撮りをしていたが、どんなにがんばっても顔だけドアップで、背景がまったく映らないのが悩みだった。三脚を持ち歩くのは重くて不便だし、人に撮ってもらうのもなんだか恥ずかしい。

 そんなときにスティックを使えば、自分がきれいに映る角度やズームを好きなように調整できる。より遠くから自分撮りできるので、誰かに撮ってもらったかのように背景も入り、顔だけ大きく映ることもない。集合写真も楽しくラクに撮れる。

 韓国では自分撮り用スティックを「セルフカメラ棒」、略して「セルカボン」と呼ぶ。ネットショップで検索すると数百件以上の商品が登録されてあり、値段も機能も豊富すぎて選ぶのが大変だ。日本でもAmazonで検索すると、スマホ自撮り棒、セルフィースティックという名前で販売していた。




韓国の大手ショッピングサイト「Gマーケット」で販売されている自分撮り用スティック(セルカボン)

 米TIMEは2014年11月20日、「The 25 Best Inventions of 2014」の一つに、この自分撮り用スティックを選定した。米国ではこのスティックのことを「The Selfie Stick」と言うそうだ。

 SNSが流行ると、欧米でも「Selfie(自分撮り)」が人気となり、自分撮りに必要な道具もヒットしているようだ。SNSに実物よりきれいな自分撮り写真を載せたがるのは、韓国も米国も変わらないのだろう。韓国の方が、自分撮りした写真だけ別人のようにきれいな自分撮り名人が多い気がするが、「自分撮り」を取り巻く市場が拡大していることは世界共通と言える。

 韓国のスマートフォンアクセサリー市場では、裏にクレジットカードを差し込んでおサイフケータイぽっく使えるスマホカバー以来のヒット商品で、中国産も数多く輸入されている。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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韓国で発生した“iPhone 6大乱”、違法な加入者奪い合いに規制当局が激怒 [2014年11月21日]

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2014年10月1日に始まった奨励金を規制する端末流通法(正式名称は「移動通信端末装置流通構造改善に関する法律」)により、韓国では、スマートフォンの端末価格が実質値上がりしてしまっている(関連記事:アップルの次はソニーとファーウェイに注目、韓国スマートフォン市場に変化)。

 そもそもこの端末流通法は、代理店や販売店ごとに奨励金(韓国では端末購入補助金という)が違うので端末価格が店によって異なり、同じ端末なのに安く買う人もいれば高く買う人もいるのは不公平だとして始まったものである。これによりキャリアは、端末と料金制度ごとに加入者がもらえる奨励金と端末価格をWebページに告知し、全ての代理店と販売店は告知通りに販売しないといけなくなった。






韓国KTの告知画面。端末流通法により韓国のキャリアはWebページに端末ごとにもらえる奨励金を明記しなくてはならなくなった。全国どの販売店でも同じ値段で端末を販売するのが目的だ

 ところが、10月末にiPhone 6/6 Plusが発売されてから、キャリア3社による加入者の奪い合いが再び始まった。iPhone 6/6 Plusの人気を利用して加入者を集めるために、違法と知りながらも、再び奨励金競争を始めたのだ。

 韓国メディアによると、キャリアが販売店に支給する奨励金は、通常のスマートフォンは1台当たり約1万~2万円だが、iPhone 6と同Plusだけは約6万円を支給し、できるだけ他社より安く販売して加入者を一人でも増やすようにしたという。

 韓国では、iPhone 6を巡る違法奨励金問題を「アシックス大乱」とも呼んでいる。日本のスポーツ用品メーカー、アシックスとは全く関係ない。アイフォンの「ア」と、6と16GBの「シックス」で「アシックス」というわけだ。韓国ではあまり人気のなかった16GBモデルに違法奨励金が集中したことからも、アシックスと呼ばれるようになった。

 アシックス大乱は、11月初めの夜に起きた。3キャリアの代理店の下にあるスマートフォン販売店が、スマートフォン口コミサイトに通常7万円近くするiPhone 6の16GBモデルを約2万円で販売すると夜遅くに書き残した。それを見た人が次々にTwitterで情報を広め、午前0時を過ぎだというのに数百人が集まり、スマートフォン販売店前に長蛇の列ができる騒ぎとなったのだ。

 この販売店は取り締まりを逃れるため、深夜の時間帯に口コミで集まった人にだけiPhone 6を販売した。その噂を聞いて他の代理店もこっそり深夜に違法奨励金をつけたiPhone 6を販売した。月9000円以上する最も高い料金制度を6カ月以上使うという契約を結べば、キャリアの公式奨励金に販売店側が独自の奨励金を上乗せしても儲かるという。加入者が支払う月々の料金の一部が、販売店の利益として入るからだ。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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「韓国スマートヘルスケア最前線」 Samsungが圧倒的存在感、7万人集めた医療機器展示会 [2015年03月23日]

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2015年3月5~8日、韓国ソウル市COEX展示場で「Korea International Medical & Hospital Equipment Show」(KIMES:国際医療機器・病院設備展示会)が開催された。KIMESは韓国で最も規模の大きい医療機器展示会で、31回目を迎える。今回は34カ国1145社が出展し、海外バイヤー3039人を合わせて約7万2000人が参加した。会場では、複数のイベントが同時開催された。医療機器業界の代表や総合病院院長、政府機関が参加した懇談会や学術フォーラム、セミナーなどである。

Samsung Medison社が出展した超音波診断装置のプレミアムモデル「RS80A with Prestige」
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 とりわけ大盛況だった催しが2つある。一つは、韓国の保健福祉部(部は省)と産業通商資源部の担当者が講師として参加した、医療機器育成案と規制緩和に関する説明会。もう一つは、中国およびロシアの政府関係者と専門家を講師に招き、両国の医療機器規制の変更内容を学び、輸出戦略を立てるためのセミナーである。

 この他、(1)患者の動線を考えた病院建築や空間デザイン、(2)患者空間と救急室のサービスデザイン、(3)医療分野での3Dプリンティング技術と臨床適用事例、(4)遺伝子・人工知能・ウエアラブルなど医療工学の未来技術、(5)保健医療ビッグデータ活用案と分析法、(6)医療分野でのSNS活用など、医療関係者を対象にしたセミナーも多数開催された。

 機器展示については、目玉はやはり韓国Samsung Electronics社と韓国Samsung Medison社の新製品だった。デジタルX線撮影装置や超音波診断装置など、新製品を含む9種類の医療機器を展示した。会場を訪れたSamsung Electronics社 医療機器事業部部長(社長)のチョ・スイン氏(Samsung Medison社長を兼任)は、「ITと映像技術を駆使し、使いやすい医療機器を世界中の病院に提供する」とコメントした。

機能てんこ盛りのデジタルX線

 Samsung Electronics社は、2015年2月に韓国と西ヨーロッパで発売したデジタルX線撮影装置「GC85A」と「GM60A」を披露した。優れた映像品質や、患者がいるところに移動して使える優れた患者接近性などを強調していた。


Samsung Electronics社のデジタルX線撮影装置「GC85A」
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 これらの新製品には、雑音を除去して画質を改善する画像処理技術「S-Vue」や、防水・防凍機能で耐久性を高めた超軽量の「S-detector」などを搭載している。節電機能も備える。待機状態では節電モードに切り替わり、稼働時の半分の電力しか使わないという。

 GC85Aはプレミアムモデルと位置付ける製品で、一度のボタン操作で撮影位置の調整、撮影ポジション設定などレントゲン撮影に必要な設定が流れ作業で行える。レントゲン技師の動きを最小限にとどめ、素早く撮れるのが特徴だ。撮影角度を自由に設定できるので、体が不自由な患者のレントゲンも安全に素早く鮮明に撮影できるようになった。体内に移植した金属製補形物による陰影を最小限にとどめ、血管や関節などが重なる部位も鮮明に高画質で撮影できるという。

超音波/CT/MRIの画像を重畳

 Samsung Medison社は、複数の機能を持ち合わせたプレミアムモデルを出展。2015年4月に発売予定だとした。

 出展した超音波診断装置「RS80A with Prestige」は、既存機種「RS80A」を改良したプレミアムモデル。映像品質を改善したことに加え、病変の正確な位置を探せるように、1~2秒という短時間で超音波画像にX線CT画像とMRI画像を重ねて比較分析できる「S-Fusion」機能を搭載した。同じ部位を写した異なる種類の診断画像を重ねるのは従来、時間のかかる作業だったという。

 この他、体内組織の硬さを素早く正確に測定し、医師の熟練度に関係なく客観的なデータで診断できるようにした「S-Shearwave」機能、リアリティーのある3D・4D映像で微細な突出部位までも確認できる「Natural Vue」機能なども搭載した。

 同社はこの他、大型病院向けプレミアム超音波診断装置「WS80A with Elite」、医療現場で使えるタブレット型超音波診断装置「PT60A」、ノートパソコン型超音波診断装置「HM70A」、手術室内で素早く撮影できる移動型X線CT装置「BodyTom」(Samsung Electronics社が買収したNeuroLogica社製)を出展した。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
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スマホをサイフにする決済サービスが続々登場、SNSのID利用した個人間送金が人気 [2014年11月14日]

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日本ではプリペイド電子マネー型のおサイフケータイが広く使われているが、韓国では後払いのモバイルペイメントが主流となっている。複数のクレジットカード情報をQRコードやバーコードにしてスマートフォンに保存し、決済する際に暗証番号を入力してスマートフォンの画面にバーコードを表示して読み取り機にかざす。クレジットカードを持ち歩かなくても決済できるようにしている。

 また、スマートフォンに事前に銀行の口座情報を登録しておいてスマートフォンをキャッシュカード代わりに使ったり、スマートフォンから決済する金額と暗証番号を入力するだけで口座引き落としの支払いができたりもする。もちろん、日本と同じようにチップに金融情報を保存し、スマートフォンをかざして支払うというサービスもある。

 韓国で最も人気の高い無料通話アプリ「KakaoTalk」を運営するダウム・カカオは、2014年11月11日より韓国の16の銀行と提携してSNS基盤のモバイル・ペイメント・サービス「Bank Wallet Kakao」を始めた。モバイルバンキングとモバイルペイメント機能を一つにまとめ、さらにKakaoTalkのID宛てにお金を送金できるサービスを追加した。KakaoTalkという韓国の人口の8割近くが利用しているほどの人気アプリを基盤にした金融サービスということで、韓国では大変注目されている。

 韓国では結婚式やお葬式に出席できなくても、祝儀や香典を知人にお願いして代わりに出してもらう習慣がある。赤ちゃんの1歳の誕生日も会社の人を呼んで盛大なパーティーを開くので、出席できなくても招待されたら祝儀を送らないといけない。式場に祝儀や香典を届けるためバイク便を利用する人も多い。祝儀や香典を渡すから口座番号教えて、というのはなんとなく恥ずかしいからだ。

 これからはKakaoTalkのIDさえ知っていれば、本人に直接送金できるので、式場に祝儀や香典を届けるために苦労しなくてもいい。KakaoTalkのID宛て送金は手数料なし、1日10万ウォン(約1.1万円)まで利用できる。

 19歳以下の未成年者は、お金を送ることはできないが、受け取ることはできる。KakaoTalkのIDさえあれば子供にお小遣いやお年玉を送金できるので、来年のお正月が怖い。


Bank Wallet Kakaoの画面イメージ



趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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サムスン電子自慢のウエアラブル端末「Gear S」発売、キャリアは専用料金を開始 [2014年11月7日]

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韓国のKTとSKテレコムは2014年11月5日、サムスン電子のウエアラブル端末「Gear S」を販売開始した。

 「Gear S」はドイツで行われた展示会IFA 2014で公開した端末で、高級腕時計のような四角いフォルム、腕にフィットする約2インチの曲面スーパー有機ELディスプレイを搭載し、見た目もかっこいいと話題だったあのウエアラブル端末だ。

 OSはTizen。日本ではNTTドコモが2014-2015冬春モデルとして、10月23日にGALAXY Note Edgeとともに発売した(ITproの関連記事:全機種がVoLTEやハイレゾに対応、ドコモ2014冬春モデルの詳細)。

サムスン電子のウエアラブル端末「Gear S」

 韓国メディアは「サムスン電子の野心作」と高く評価していて、KTとSKテレコムは「Gear S」の発売と同時にウエアラブル端末専用料金プランを開始し、Gear Sを購入すると先着でプレゼントも贈呈するなど販売に力を入れている。 

 Gear Sの韓国内販売価格は29万7000ウォン(約3.3万円)だ。本物の腕時計と変わらない円形ディスプレイで注目されたLGエレクトロニクスのウエアラブル端末「G Watch R」が3.8万円ほどしたので、だいぶ値段を抑えた。韓国の口コミサイトでは、「予想した値段よりだいぶ安い」「この値段なら買ってみたい」という書き込みが多かった。

 Gear Sの発売と同時に始まったKTのウエアラブル専用料金は月8800ウォン(約980円)で音声通話50分、SMS送信250件、データ通信100MBを使える。KTのスマートフォンユーザーで月約9700円以上利用料を支払っている場合は、ウエアラブル専用料金制が無料になる。KTユーザーでGALAXYスマートフォンを使っているユーザーがGear Sを購入すると、11月まで1.2万円相当のGear Circleを無料で贈呈する。Gear Circleは韓国で10月29日に発売されたサムスン電子のイヤホンで、スマートフォンと連動し、電話やメール・メッセンジャーの受信内容を音声で知らせてくれる機能もある。

 SKテレコムのウエアラブル専用料金は月1万1000ウォン(約1200円)で音声通話50分、SMS送受信とデータ通信は無制限に使える。ただし、SKテレコムのスマートフォン加入者だけが利用できる料金プランになっている。Gear Sを購入した先着1万人には、プリペイドカードのチップを搭載した(おサイフケータイ機能)腕バンドを無償で贈呈する。またウエアラブル専用料金に加入するとGear S専用の電話番号をもらえるが、スマートフォンの電話番号とGear Sの電話番号、どちらにかけてもユーザーが設定した一つのデバイスで受診する機能も無料で使える。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
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