カカオとポータルサイトのダウムが合併、LINE親会社ネイバーとの競合に注目集まる [2014年5月30日]

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 日本にも進出した韓国内シェア1位のメッセンジャーアプリ「KakaoTalk」を提供する韓国カカオと、韓国内シェア2位のポータルサイト「Daum」を提供する韓国ダウムコミュニケーションが2014年5月26日に合併を発表した。8月の臨時株主総会で承認を得て、合併の手続きを完了する(ITproの関連記事:韓国のモバイルメッセージング大手Kakaoとポータル大手Daumが合併)。



写真●カカオの日本法人、カカオジャパンのホームページ
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 Webサービスに力を入れていたモバイルアプリKakaoTalkの提供会社と、モバイルサービスに力を入れていたポータルサイトDaumの提供会社が合併することにより、市場には大きな変化が起こりそうだ。

 合併後はダウムカカオという社名で、モバイル向けアプリとWebを融合したサービスを展開する。カカオとダウムの両社長は、5月26日の記者会見で「(合併により)IT、モバイルの新しい歴史を築きたい」「ゲーム、ショッピング、金融など多様な商業サービスがモバイルプラットフォームと連動し新しい市場を作っている。(合併後は)コミュニティ、情報、生活プラットフォーム事業者になる」と話した。

 韓国メディアは、カカオとダウムの合併を韓国インターネット業界史上最大の合併として大々的に報じた。両社の時価総額を合わせると、4兆ウォン(約4400億円)規模になる。

 韓国では特に、LINEの親会社で韓国シェア1位のポータルサイト「NAVER」を運営するネイバーとダウムカカオの競合に注目している。元祖メッセンジャーアプリでもあるKakaoTalkは韓国で必須アプリとして定着し、選挙運動や災害時や緊急連絡用にも利用されている。セウォル号沈没事故でも、被害者らは電話がつながらない家族にKakaoTalkで最後のメッセージを残していたりした。

 しかし海外市場ではLINEに先を越されてしまい、LINEが先行したメッセンジャーアプリ市場に割って入るのは非常に難しい状況だ。伸び悩むKakaoTalkは、パソコンからも利用できるWebサービスやモバイル決済といった新サービスを追加しながら、付加価値を付けようとしていた。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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韓国政府も3Dプリンター関連産業支援策を発表、地方自治体では無料教室も開催 [2014年5月26日]

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この5月、日本で3Dプリンターを使って殺傷能力のある銃を作ったとして男性が逮捕される事件があった。これは韓国でも大きく報じられ、「こんなこともできるのか!」と3Dプリンターの注目度を高めるきっかけになった。韓国では、日本より一足遅れて去年から3Dプリンターの活用度や経済効果が紹介されるようなった。

 韓国の経済産業省にあたる産業通商資源部と総務省にあたる未来創造科学部は、「3Dプリンティング産業発展協議会」と官民が協力する「3Dプリンティング発展推進団」を2014年6月に発足することにした。

 協議会は、省庁間の縦割りをなくして協力するための組織で、3Dプリンティング産業を取り巻く経済・社会環境を分析し、韓国ならではの革新的な技術を持つための政策的バックアップや規制緩和、技術開発ロードマップを作成する。一方、推進団は世界の3Dプリンティング産業の動向を研究し、3Dプリンターを使い付加価値を高められる分野は何があるかアイデアを出す役割をする。

 この二つの組織は、産業通商資源部と未来創造科学部が2014年4月末に発表した「3Dプリンティング産業発展戦略」を実現するために新たに組織された。

 日本の場合、経済産業省は既に2013年から3Dプリンターが生み出す付加価値とものづくりの方向性を考察した研究会を開いたり、3Dプリンターの整備などを行う大学または高等専門学校に対して補助金を出したりしている。経済産業省の、2014年度の3Dプリンター開発関連予算は40億円である。

 米国も2012年から3Dプリンターを使った製造業復興のためにと、政府が研究を支援している。中国も2014年の国家科学技術プロジェクトの一つとして3Dプリンティング技術革新センターを全国に設け、開発に乗り出すという。韓国も国を挙げて3Dプリンター関連産業を育成するということだ。

 韓国の産業通商資源部は、世界の3Dプリンティング市場規模は2012年の22億ドルから2021年には109億ドルに急成長すると見込んでいる。韓国でも3Dプリンターを使った成長工程の高度化や製造業のイノベーションにより、自動車・医療・電子分野をさらに発展できると期待はしているものの、韓国では産業用3Dプリンター設備のほとんどを輸入に依存していて、3Dプリンティング関連ソフトウエアのレベルもまだ低い。そのため、国が投資をして関連技術と企業を育てようとしている。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 日経パソコン

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差すだけでスマートTVになるChromecastが韓国で発売、ユーザーは歓迎もTV業界は懸念 [2014年5月16日]

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グーグルコリアは、2014年5月16日より韓国の量販店で「Chromecast(クロームキャスト)」を正式発売すると発表した。韓国では、Chromecastさえあれば自宅の安価なテレビが色々な機能を持つスマートテレビに大変身すると宣伝している。

 Chromecastは、USBのような形をしたメディアストリーミング機器(写真)。テレビのHDMI端子に差し込むだけでインターネットとスマートフォンやタブレット端末に接続し、各種動画をテレビで視聴できるようにしてくれるものだ。インストールが要らないので、誰でも簡単に使えるメリットがある。


写真●グーグルコリアのChromecast販売案内画面
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 Chromecastがあれば、YouTubeをはじめとしたネット動画サイトはもちろん、Google Playで購入した映画をスマートフォンやタブレット端末ではなくテレビの大画面で視聴できる。コンテンツパートナーとしてグーグルコリアは、モバイル向けにドラマの再放送VODや映画VODを提供している韓国の大手動画配信サイト「TVing」(ケーブルテレビ会社のCJ Hellovisionが運営)と、「Hoppin」(キャリアのSK telecomの関連会社であるSK planetが運営)と提携した。

 スマートフォンやタブレット端末から動画アプリを立ち上げて観たいコンテンツを選択し、Chromecastのアイコンをタッチすると、すぐにテレビにコンテンツが映し出される。同じWi-Fiネットワークにつながっているスマートフォンやタブレット端末がリモコンになる。ユーザーは、IPTV(通信事業者が運営する有料インターネットテレビ)やデジタルケーブルテレビのような有料放送を申し込まなくても、好きなときに好きなドラマや映画を安価な費用でテレビで観られる。

 Chromecastは、接続ケーブルでテレビとスマートフォンをつなげて動画を観るのとどう違うのか。スマートフォンで選択した動画を、Chromecastを使って再生した場合、スマートフォンで他の作業をしても、画面をロックしても、テレビからは動画が流れ続ける。スマートフォンのバッテリーも消耗しない。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 日経パソコン

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韓国メーカーより安いのにカメラがすごい! ソニーの「Xperia Z2」イベント [2014年5月9日]

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2014年5月8日、ソウル市内でソニーのスマートフォン「Xperia Z2」とウエアラブル端末「スマートバンド SWR10」の発表イベントが行われた。5月19日の韓国における正式発売を前に、韓国メディアに端末を公開するイベントだった。


ソウル市内で行われたソニーの「Xperia Z2」とスマートバンド発表イベントの様子(ソニーコリア提供)。
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 従来機の「Xperia Z1」は2014年1月に韓国で発売され、高性能カメラと防水機能が大きな話題になった。(関連記事:2年ぶり韓国に戻ってきたソニーのスマホ、サムスンにはない色や防水機能が脚光浴びる

 Xperia Z2は2月、スペイン・バルセロナで開催されたMWC(Mobile World Congress 2014)で公開された。3月末には韓国でも公開イベントを行う予定だったが、延期せざるを得なかった。

営業停止処分と“自粛ムード”の影響受ける

 韓国大手携帯通信事業者(キャリア)3社の過剰な端末購入補助金競争により、政府がキャリア3社に対して45日間の営業停止処分を下すという異例の事態が発生したからだ。営業停止になると、新規加入や番号ポータビリティを受け付けられなくなる。3月末から順番を入れ替えて営業停止となるため、3社そろって正常営業に戻るのは5月中旬になる。

 それに4月16日に韓国南西部の珍島(ジンド)近海で発生したセウォル号沈没事故の影響で、韓国は“自粛ムード”が続いた(関連記事:セウォル号沈没事故、SNSは奇跡を信じる黄色いリボンで埋め尽くされた)。4月16日以降予定していたコンサートや各種イベントは次々とキャンセルになった。

 5月1日から6日まで、「お釈迦様誕生日」や「子供の日」などで連休があったため、ようやく少しずつテレビでもバラエティー番組やドラマを放映するようになった。ソニーも発表イベントのタイミングを見計らい、ようやく5月8日に「Xperia Z2」を韓国でお披露目したというわけだ。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 日経パソコン

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セウォル号沈没事故、SNSは奇跡を信じる黄色いリボンで埋め尽くされた [2014年4月25日]

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修学旅行中の高校2年生325人と教師14人など、乗員乗客476人を乗せて仁川港から済州(チェジュ、韓国の南にある島)に向かっていた客船が韓国の南西部にある珍島(ジンド)付近の海で沈没した。4月16日の事故から8日目を迎える23日の昼時点で死者は150人を超え、150人以上がまだ行方不明のままである。テレビや新聞では懸命の救助活動が行われているというが、事故直後に自力で脱出した人以外、誰一人救助されていない。

 「客室に残ってください」という案内放送をして船長が真っ先に船を捨てて逃げ出したことも知らず、高校生たちは案内放送に従い、客室に戻って救助を待っていたとみられる。高校生325人の中で助かったのはたったの75人。事故後の取材で、セウォル号の沈没を真っ先に海洋警察に通報したのは船長ではなく高校生、親と離ればなれになり泣いている子供を助けたのも高校生だということが分かった。

 多くの高校生が取り残されたまま、船が沈んでいくのをテレビの生中継で見ていた韓国国民の多くが「心的外傷後ストレス障害」状態に陥り、何もしてあげることができなかったと自分を責めている。

 事故後、SNSやブログのプロフィール写真を黄色いリボンの絵に変える人が増え始めた。黄色いリボンは「愛する人が無事家に帰ってくることを願う」というメッセージが込められている。








ボランティア活動をする大学生サークルが呼びかけている黄色いリボンキャンペーン。セウォル号沈没事故犠牲者の冥福を祈り、生存者が見つかる奇跡が起きますように、というメッセージが込められている。
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 「セウォル号の中にまだ生存者がいるという希望を捨ててはいけない、奇跡が起きることを祈っている」という意味を込めて、プロフィール写真を黄色いリボンに変えているのだ。Twitterを利用するK-POPアイドルや著名人らもプロフィール写真を黄色いリボンの画像に変え、生存者捜索費用に使ってほしいと寄付をしている。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

 

 

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「韓国スマートヘルスケア最前線」「いつどの病院に行っても主治医がいる」、韓国病院間で医療データをシェアできるプラットフォーム実証実験が開始 [2014年07月17日]

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韓国のICT政策を担当する省庁の未来創造科学部は2014年7月7日、「勤労福祉公団病院対象医療システム革新実証実験」に着手したと発表した。これは病院間で医療データを交流(シェア)できるプラットフォームを構築する実証実験である。

 例えば、A病院で治療していた患者が急に症状が悪化して近隣のB病院に駆け込んだ場合、B病院は同プラットフォーム経由でA病院にある診療記録を閲覧し、素早く対処できるようにする。

経営が違う病院間でもデータシェア

 韓国では既に2000年代初めから、大学病院や大型病院を中心にグループ病院間の電子的医療データ交流は行っていた。しかし経営が違う病院間でプラットフォームを作り医療データを交流するのは初めてのことである。

 今までは、患者が病院を変えようとすると、前の病院にお願いして手数料を支払い診療記録のコピーをもらって持参するか、初診扱いで検査をし直すしかなかった。今回のプラットフォームを使うことで、患者がいつもとは違う病院に行っても、病院側がすぐ患者の診療記録や処方箋を閲覧して治療を続けられる。

 未来創造科学部は今回の医療データ交流実証実験により、慢性疾患患者のケアをしやすくなると見ている。糖尿や高血圧といった慢性疾患の高齢者が自宅を離れて子供の家を訪問している間、一時的に違う病院に通う場合や、慢性疾患患者が急に意識を失って倒れた場合、どの病院に行っても医療データ交流でその人の診療記録を確認できれば、二重に検査することがないので患者は医療費を節約でき、病院側は追加で必要な検査だけすればいいのですぐ治療を行える。

 未来創造科学部は、まず勤労福祉公団が経営する「勤労福祉公団病院」2カ所と、産業災害(日本でいう労働災害)指定病院6カ所を対象に実証実験を行うことにした。勤労福祉公団は、雇用労働部(部は省)の傘下にある政府機関で、企業が加入する産業災害保険や雇用保険業務を担当している。勤労者が業務上の災害で治療やリハビリが必要となった時は、勤労福祉公団病院または産業災害指定病院を利用する。

 勤労福祉公団は2012年から統合医療情報システムを構築していて、病院の情報化や電子記録に関しては最先端の技術を導入済みである。実証実験はまず8カ所の病院で医療データ交流プラットフォームの技術効果と経済性を分析してから、全国に5500カ所ある産業災害指定病院に拡大する。実証実験の期間は2014年7月から2015年3月までで、政府予算15億ウォン(約1.5億円)を投資する。

既存のシステムを変えないように…

 医療データ交流実証実験に当たり未来創造科学部が強調したのは、「医療機関が負担を感じないプラットフォームを作る」という点だ。

 つまり、既に病院ごとに構築された情報化システムと、それぞれ使っている医療記録の様式や微妙に違う書式・用語を変えることなく、医療データを交流できるようにする。病院側が新しいプラットフォームに合わせて情報化システムを変えるとか、書式や用語を一新するとか、そういう面倒なことをしなくてもプラットフォーム上で解決し、病院間で相互利用できるようにする。それができるかどうか、やってみたら効果があったのか、といったことを確認する実証実験である。

 また、医療データを交流する全過程において高度なセキュリティーシステムを適用する。患者が自ら自分の医療データを見てもいい人を指定する仕組みにする。xx地域のyy科の医療関係者、またはxx病院yy科の医療関係者だけ閲覧可能、という具合に自分のデータをどこまで公開するかを決め、誰がいつ閲覧したのかも全て記録を残す。

データ活用で患者に還元

 未来創造科学部は、医療データプラットフォーム上の情報を分析して患者に提供する、スマートケア実証実験にも取り組む。産業災害によりリハビリが必要な患者を対象に、ウエアラブル端末とスマートフォンを利用して家庭でもリハビリができるようするものだ。ウエアラブル端末で患者の生活全般の動きを記録し、プラットフォーム上の診療記録や処方箋のデータと合わせてスマートフォンから運動や服薬の指示を出す。患者はスマートフォンから自分の診療記録や検査結果などを閲覧することもできる。

 韓国では医療+ICTで社会問題を解決し、医療産業の競争力を上げるため、2009年から全省庁が連携して積極的に実証実験に取り組んでいる。今回の医療データ交流実証実験も、代表窓口は未来創造科学部になるが、雇用労働部、保健福祉部(保健医療政策を担当する省庁)、産業通商資源部(日本の経産省のような省庁)も参加している。世界各国で「データ」ビジネスが重要視されているだけに、医療データの分析や相互利用に関する実証実験は今後も増える見込みだ。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2014年7月17
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新発売の「GALAXY S5」、韓国メディアは日本で売れるかに注目 [2014年4月18日]

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 2014年4月11日、韓国サムスン電子のスマートフォン新機種「GALAXY S5」が世界125カ国で同時発売された(写真、日本は未発売)。韓国では一足早い3月27日、キャリア3社の長期加入者向け機種変更モデルとして登場。韓国での端末価格は、32GBモデルが86万6800ウォン(約83000円)となっている。








写真●GALAXY S5を販売している韓国のキャリアLGU+の代理店
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 GALAXY S5は、逆光でもきれいに撮れてシャッター速度が速くなった1600万画素カメラ、指紋認識、防水・防埃機能、心拍数測定センサー、LTEとWi-Fiを同時に使ってネットワーク速度を早くする「ダウンロードブースター」、バッテリーの持ちを長くする「ウルトラ省電力モード」搭載など、最新技術を搭載したプレミアムスマートフォンである。カラーもホワイト、ブラックのほか、エレクトリックブルー、カッパーゴールドという独特なブルーとゴールドもそろえた。

 心拍数測定センサーを搭載したことで、韓国では「GALAXY S5はスマートフォンなのか医療機器なのか」という議論も巻き起こったが、医療機器審査を担当する韓国の行政機関である食品医薬品安全処が「GALAXY S5は医療目的ではなく運動・レジャー目的で心拍数を測定するので医療機器でない」と判断したことで無事販売できた。食品医薬品安全処が医療機器と判断した場合、GALAXY S5はキャリアの代理店ではなく、医療機器ショップで販売することになったかもしれない。

 韓国のGALAXYファンの間では、「GALAXY S5は5.1インチなのでGALAXY Note3より画面が小さいのが気になったが、カメラ機能が素晴らしく画面もとてもきれい。ネットワーク速度が速くなる機能が気に入った」と好評を得ている。韓国人はスマートフォンで自分撮りしてSNSに書き込み、動画サイトを頻繁に利用するので、カメラ機能とネットワーク速度を重視するからだ。


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章恩(ITジャナリスト)

 

日経パソコン

 

 

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2016年に未来学校開校、進化したスマート教育で未来に向けた人材育成 [2014年4月11日]

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ソウル市教育庁は「未来学校」を2016年に開校するための準備を進めている。

 未来学校とは、未来社会で活躍する人材を育てるための学校である。ソウル市教育庁が考える未来社会が求める人材とは、「創意性」のある人。問題を自由でクリエイティブな想像力で解決できる人だという。今の学校教育や入試制度では想像力豊かな人を育てられないので、教える方法、評価する方法を全てひっくり返してみようという実証実験だ。


 未来学校は、さらに進化したスマート教育を行う学校でもある。(1)教師・学生・保護者はクラウドコンピューティングを活用してつながり紙は使わない、(2)タブレットPCをはじめ各種モバイル端末を使ってプロジェクト単位の研究・発表・討論を行う授業方式を導入する、(3)従来の中間・期末テストは一切行わない――といった特徴を持つ。


 授業中に何をしたのか、宿題で何を研究したのかといった子供の学びの過程がクラウドコンピューティングに蓄積され、それを分析してうまくできたところと補うところを評価するので、いつも学校でやっているようなテストは要らなくなるということだ。


 ソウル市教育庁は、今年から2年間20人の教師を選抜して未来学校教師研修を行い、カリキュラムの開発に集中している。電子黒板、無線LAN(Wi-Fi)、タブレットPCといったハードウエアばかり気にしたスマート教育を脱皮し、先生と教育の中身をスマートにするための研究を行っている。教室のインテリアをはじめ、授業設計、教える方法など全てを未来学校ならではの方式に変える計画だ。


 ソウル市教育庁は未来学校について、「教育のパラダイムを変え、子供達の創意力と想像力を育てる学校を作る」と表現している。2016年には、まずソウル市内に未来学校(中学校)を開校する。2014~2015年の研究予算は、69億ウォン(約6.7億円)だ。






趙 章恩=(ITジャーナリスト)



日経パソコン

 



「韓国スマートヘルスケア最前線」2020年に世界7大医療機器国を目指す韓国、「ITと医療を融合した機器に集中投資」 [2014年05月20]

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「保健産業を未来成長産業に育成する」――。

 朴槿恵政府が掲げた国政課題に従い、韓国では2014年4月から新たな医療機器産業育成政策として「2014~2018医療機器産業中長期発展計画」がスタートした。この計画は、医療機器産業を韓国経済をリードする主力産業に育成し、2020年までに韓国が世界7大医療機器国になることを目標にしている。

 保健福祉部(部は省)のデータによると、2013年末時点で韓国の医療機器生産額は前年比8.9%増の4兆2242億ウォン(約4647億円)、輸出額は前年比19.8%増の2.5兆ウォン(約2750億円)、世界市場に占めるシェアは1.2%、医療機器関連雇用は3.7万人に過ぎない。医療機器市場の貿易赤字は4074億ウォン(約448億円)で、輸出より輸入の方が多い。2020年までに世界7大医療機器国になるためには、医療機器輸出額13.5兆ウォン(約1兆4850億円)、世界市場シェア3.8%、医療機器関連雇用13万人以上を達成しないといけない。

病院を中心とした研究プラットフォームも

 2014~2018医療機器産業中長期発展計画における4大戦略は以下の通りである。

■中小企業も医療機器市場に進出しやすいよう規制緩和を行う
■韓国産医療機器の輸出を拡大するため、信頼とブランド価値を向上させる
■世界医療機器市場に進出するため戦略的にR&Dに投資する
■アイデアがあれば市場に参加できるオープンイノベーション・エコシステムを構築する

 規制緩和と輸出拡大のためには、医療機器政策を担当する保健福祉部(部は省)と産業通商資源部だけでなく、幅広い省庁の協力が必要となる。複数の省庁が縦割りをなくして協力できるよう、同中長期発展計画では保健福祉部・企画財政部・未来創造科学部(通信産業担当)・産業通商資源部・食品医薬品安全処・中小企業庁・特許庁が関わっている。2014年の上半期中に省庁合同で細部実行企画を決めることにした。

 韓国の医療機器業界が支援を求めていた臨床試験に関しても改善の兆しが見え始めた。韓国政府は、医療機器メーカーが病院のインフラを活用して研究や臨床試験ができるよう支援し、アイデア発掘から知的財産保護・臨床試験・認可・医療機器販売に至るまで専門的に医療機器メーカーをコンサルティングする「医療機器仲介・臨床試験支援システム」を構築することにした。2013年にインドネシアとベトナムにオープンした「海外医療機器総合支援センター」を通じて、海外輸出のための海外臨床試験費用支援、海外で認可をもらうためのコンサルティング提供、海外でのPR活動を強化することにした。

 さらに、病院を中心に医療機器メーカー、研究所、大学などが連携して共同研究できる「融合研究プラットフォーム」を作り、これをオープンイノベーション型に発展させようとしている。医療機器メーカーが良いアイデアと要素技術を持っていても、これを臨床試験にまでつなげられず途中であきらめてしまうケースが多かったことから、臨床試験までたどり着けるようにする仲介研究と臨床試験の費用も支援額を増やすことにした。

Samsung社に“追い風”の政策

 規制緩和に関しては、医療機器の品目許可(認可)と医療技術評価にかかる時間を最大限短縮することにした。2014年4月8日には食品医薬品安全処が「医療機器品目及び品目別等級に関する規定」を改訂し、運動・レジャー目的の心拍数計測機能があるスマートフォンは医療機器ではないと規定した。

 Samsung Electronics社が韓国で2014年4月に発売したスマートフォン新機種「GALAXY S5」は、この規制緩和のおかげで無事、心拍数計測機能付きで発売できた。今までは心拍数計測機能付きモバイル端末は医療機器に分類され、キャリアの代理店ではなく医療機器専門店でしか販売できなかった。

 この規制緩和に関しては、一部のメディアが「これはSamsung Electronics社のための改訂ではないか」「Samsung Electronics社が国のルールを牛耳る」、と報道したことから議論になっている。

 この影響で、保健福祉部が医療機器融合人材を養成するために、Samsungグループが財団のソンギュンクァン大学を医療機器特性化大学院に指定し、4年間で約20億ウォン(約2.2億円)を支援することにしたことも、「政府がSamsung社の肩を持つ」と見られてしまった。

 Samsung Electronics社は、病院や医療機器、モバイル端末製造、IT技術開発などのグループ会社を持ち、そのシナジー効果で韓国の医療機器とヘルスケア産業をリードしている。しかし、「韓国政府の医療機器育成政策=Samsung社支援」と反発があるのも事実だ。保健福祉部は、「韓国はITに強みを持っているだけに、ITと医療を融合した医療機器に集中投資する。医療機器を韓国経済の軸になる産業に育てる」としている。今後、中小企業やベンチャーの支援もさらに拡大する必要がある


By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2014年5月19
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サムスンとアップルの訴訟第2幕、グーグル対アップルという側面も [2014年4月7日]

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先週韓国で最も話題になったのは、なんといっても米カルフォルニア連邦地方裁判所で韓国サムスン電子と米アップルの2回目の訴訟が始まったことである(
関連記事)。

 現地時間2014年3月31日に陪審員選定からはじまったサムスン電子とアップルの2回目の訴訟では、アップルがサムスン電子に対し、20億ドル(約2060億円)の損害賠償を要求している。サムスン電子のGALAXY NEXUS、GALAXY S IIIといった10種類のスマートフォンとタブレット端末がアップルの特許を侵害したとして、1台当たり33~40ドルの賠償金を要求したものだ。


 1回目の訴訟はサムスン電子の負けだった。9億2900万ドル(約956億8700万円)をアップルに損害賠償すべきという判決が出た。今回アップルは2倍以上の賠償金を求めている。


 今回、サムスン電子が侵害したとアップル側が主張する特許は、「テキスト自動完成機能」「メールやテキストに書いてある電話番号をタップするだけで電話をかけられる機能」「指を横にスライスして画面のロックを解除する機能」「音声認識機能Siri」「データ同期化」の5種である。


 アップルはサムスン電子に対して損害賠償のほかに、GALAXY NEXUS、GALAXY S IIIといった10種類の端末の米国内での販売を禁じることも求めている。ただ、端末は2年以上前の古い機種なので、仮に販売禁止という判決が下ったとしても販売面に対する影響はほとんどなさそうだ。






アップルが自社の特許を侵害したとして米国内での販売禁止を求めているサムスン電子のGALAXY NEXUS(左)とGALAXY S III(右)



 サムスン電子もアップルのiPhone 5とiPad miniがサムスン電子の特許2種、「デジタル画像と音声を記録・再生する方法」と「遠隔画像転送システム」を侵害したとして694万ドル(約7億1482万円)の損害賠償を求めている。







趙 章恩=(ITジャーナリスト)



日経パソコン