Windows XPサポート終了で銀行ATMが危ない!韓国金融監督院が注意 [2014年3月31日]

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2014年3月26日、韓国金融監督院はWindows XPのサポートが終了する4月9日以降、銀行をはじめ金融業界の業務用PCの使用を制限するとした。Windows XPを搭載したままのPCは、インターネットに接続できなくするよう注意したのだ。Windows XPを使い続けたことでハッキング事件が起きた場合、銀行にはいつも以上に厳しい処罰を下すことにした。

 金融業界で特に問題となっているのが、Windows XPを搭載したATM(現金自動預け払い機)である。韓国金融監督院の調査によると、ATMの94.1%がWindows XPのままだという。銀行、保険、証券会社内で使っている業務用PCの場合は、23.6%がまだWindows XPを使っている。韓国の複数のメディアによると、メキシコではWindows XPを搭載したATMにウイルスを埋め込み、携帯電話で攻撃するとシステムに異常をきたして現金が出てくるようハッキングを仕掛けた事件があったという。


 韓国金融監督院も、2017年までにATMのOSを全て入れ替えるようにするとしている。しかしポータルサイトのコメント欄には、「Windows XPのサポート終了について何年も前から知っていたはずなのに、なぜいまだにOSをアップグレードしないで銀行利用者を不安にさせるのか」と批判的なコメントが並んでいる。


 韓国では、店頭のレジにあるPOS(販売時点情報管理)端末もWindows XPを使っているものが多い。これらについても、Windows XPのサポート終了によってセキュリティ脆弱性が顕在化し、ハッキングが起こる可能性があると見られている。POS端末のOSアップグレードも急がなくてはならない。


 一般のパソコンユーザーに関しても、韓国ではいまだにWindows XPを使っている人が多いため、IT政策を担当する省庁の未来創造科学部は、Windows XPのセキュリティ脆弱性を補うためのプログラムを開発して無料で提供することになった。一般ユーザーにもWindows XPを使う場合は、セキュリティ対策をしっかりするよう注意を呼び掛けている。







趙 章恩=(ITジャーナリスト)



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LINEのおかげで韓国NAVERの株価が上昇、サムスンを超えるという声まで [2014年3月20日]

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韓国で今話題なのは、「NAVER」という韓国最大のポータルサイトを運営するNAVERの株価である。2014年3月19日の終値は1株83万3000ウォン(約8万3000円)。NAVERの株価は1年前ぐらいは1株40万ウォン(約4万円)前後だったが、2014年に入ってからじりじり上がり続けている。

 時価総額では、NAVERは財閥系大手企業と肩を並べるほどにまで成長した。サムスン電子、現代自動車、現代モービス(自動車部品)、SKハイニックス(半導体)に続いて5位になっている。


 韓国メディアは、NAVERの株価が上がり続けている理由を「LINEのおかげ」と断言している。世界で3億7000万人が利用している「LINE」を提供するLINEはNAVERの子会社。韓国メディアは「LINEのおかげでNAVERの株価が1株100万ウォン(約10万円)を突破するのは時間の問題になった」「LINEが大成功したことで、NAVERの株価がサムスン電子を超える可能性もある」と騒いでいる。


 外国人投資家もNAVER株買いに走り、韓国全体の株価が下落してもNAVERだけは上がっているほどだ。


 




NAVERの本社ビル「Green Factory」

 


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)



日経パソコン

 



2014年は“4K元年”に、韓国で高画質4Kコンテンツへの投資が盛んに [2014年3月14日]

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ソニーの「Xperia Z2」、韓国サムスン電子の「GALAXY Note3」、韓国LGエレクトロニクスの「LG G Pro2」など、4K(3840×2160)動画の撮影機能を売りにしたスマートフォンが登場している。韓国では、従来のフルHD(1920×1080)よりも4倍鮮明な4K動画撮影機能を女性が喜んで使う。日常生活や子供の成長を手軽に高画質で記録できるからだ。スマートフォンでも4K動画を撮影できるようになったことで、4Kという言葉も一層身近になってきた。

 4月以降に発売予定の「GALAXY 5」も、4K動画の撮影機能を搭載している。サムスン電子は投資家向け説明会で、2015年になればテレビのように4Kのディスプレイを搭載したスマートフォンが登場するだろうと話したこともある。韓国では4Kと言わずUHD(Ultra High Definition)という。サムスン電子やLGエレクトロニクスは、2014年が「UHD大衆化元年」になると見ている。


 韓国では、日本より遅れてこの4月から地上波テレビが4K実験放送を始める。3月11日、未来創造科学部(IT政策を担当する省庁)が地上波放送局に対し、700MHz帯域の4K実験放送を許可した。これでやっと6月のサッカー ブラジルワールドカップを4Kで中継できるようになった。9月19日から10月4日まで韓国仁川市で開催される、2014年アジア競技大会も4Kで中継する予定だ。


 ケーブルTVは4月から4K放送を商用化する。4K映像専用チャンネルを作り、4Kで撮影したドキュメンタリー番組や映画、スポーツ中継を24時間流すという。IPTVや衛星放送よりも早く、有料放送の中ではケーブルTVが初めて4Kを常時放送する形になった。


 ソウル市内の量販店に行くと、一番目立つ場所に、必ずサムスン電子とLGエレクトロニクスの4Kテレビが置いてある。4Kテレビは画面がくっきり鮮明すぎて3Dに見えてしまうほどだ。韓国ではやっと4K試験放送が始まったこともあり、ブラジルワールドカップを前にして買い替え需要を狙った4Kテレビの値下げ競争も始まった。


 まだまだ一般庶民が気軽に買える値段ではないが、LGエレクトロニクスの49インチ4Kテレビは290万ウォン(約29万円)にまで安くなった。昨年までは、55インチの4Kテレビが600万ウォン(約60万円)程度だったことを考えると、画面は少し小さいものの半額近くにまで値下がりしたことになる。









趙 章恩=(ITジャーナリスト)



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Bitcoinは大丈夫? 韓国ではまだビジネスチャンスありという雰囲気 [2014年3月7日]

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韓国でも日本のBitcoin取引所「Mt.GOX」の経営破綻や、日本政府がBitcoinを通貨ではなく貴金属のような「モノ」とみて、Bitcoinを売却して利益を得た場合に所得税を課税する方針を検討していることが大きな話題になっている。

 韓国では、2013年末にBitcoinが急激に値上がりしたあたりから、マスコミが頻繁に「Bitcoinとは何か」を取り上げ始めた。中国ではネットサービスの決済手段としてBitcoinを使えるようになった、世界各国に取引所があって匿名で取引できるので人知れずお金を貯められる、といったニュースも報じられ、人々のBitcoinへの関心を高めた。また、「Bitcoinはどうやったら手に入るのか」を解説するブログも増えた。

 それまでBitcoinは一般的にあまり知られていなかったものの、その後、たった4カ月で世界最大の取引所がハッキングによって経営破綻するとは、誰も想像していなかっただろう。








Bitcoinの相場は4カ月で半額以下に

 韓国にも、Bitcoinの取引所「Korbit」がある。2013年11月時点の相場は1Bitcoin当たり155万ウォン(約15万円)。それが、3月6日時点では70万ウォン(約7万円)まで値下がりした。海外の取引所が次々と経営破綻していることから不安が広がり、たった4カ月で半額以下にまで暴落した格好だ。

韓国の取引所Korbitでは2万人近い人が取引をしていて、2014年1月には米シリコンバレーの個人投資家から40万ドル(約4200万円)の投資を誘致した。個人投資家らは投資の理由として、「韓国でもBitcoin取引が活発になり、金融業界にも影響を与えるほど成長することを期待している」と明かしていた。

 日本や米国では「Bitcoinは大丈夫なのか?」と不安に思う声が広がっているが、韓国のKorbitは「Mt.GOXの経営破綻はMt.GOXの問題であり、Bitcoinに問題があるわけではない。銀行が破産したからといって貨幣に問題があるとは言わない。当分は混乱すると思うが、逆にBitcoinの投機がなくなり安定した決済手段になれる。Mt.GOXの破綻をきっかけに、Bitcoin関連業界が顧客資産を守るシステムに力をいれるようになる」と前向きにとらえていた。

Bitcoin専用のATMが登場

 ソウル市の大型コンベンションセンター「COEX」にあるコーヒーショップには、3月9日にBitcoin取引用のATMが取り付けられる予定だ。このATMは、韓国のコインプラグというベンチャー企業が開発したものだ。

 スマートフォン用アプリ「Bitcoin Wallet」をインストールするとQRコードが生成され、ATMのカメラにQRコードをかざすことでBitcoinを売ったり買ったりできる。ATMにお金を入れると「Bitcoin Wallet」にBitcoinが入り、Bitcoinを売るとATMからお金が出てくる。Bitcoinの無人取引所といった感じだ。

 1日3回まで取引できるという。COEXの周辺には大型ホテル、カジノ、空港ターミナル、高層ビル、商業施設が密集していて外国人も多い。IT関連展示会も頻繁に開催される場所なので、Bitcoin ATMを設置するにはぴったりの場所と言える。

 コインプラグは、「Bitcoin Wallet」を使ったオフラインでの支払いもBitcoinでできるようにしている。加盟店はまだほんのわずかだが、COEX近くのビジネスホテルやカフェで使えるようになった。


Bitcoin専用のオンラインショップも

 韓国では、Bitcoin専用オンラインショッピングモール「コインマーケット」も登場した。まだ品数が少なく、あまり人が利用しているようには見えないが、コインマーケットによると、Bitcoinを決済手段として利用すると加盟店にメリットがあるという。

 例えば、顧客がクレジットカードで支払うと加盟店にお金が入るまでの時間がかかるが、Bitcoinで支払ってもらうとすぐに現金に換金できるうえ手数料がない。また、クレジットカード決済加盟店になるには審査に時間がかかるが、Bitcoinはシステムをインストールするだけなのでクレジットカードより楽といった具合だ。

 Mt.GOXの経営破綻後も、韓国のベンチャー業界はBitcoinからビジネスチャンスが生まれることは間違いないと信じている様子だった。ただ問題は、日本や米国でこんな騒ぎになっているにも関わらず、Bitcoinを取引する個人が増えるかどうかだ。もう少し慎重になってもいいのでは?と余計な心配をしたくなった。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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MWC2014でサムスンは“コピー”警戒、Xperia Z2は動画好きの注目浴びる [2014年2月28日]

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2014年2月24日から27日までスペインのバルセロナで世界最大のモバイル展示会「Mobile World Congress 2014(MWC2014)」が開催された。今年は展示場の面積がさらに広くなり、1800社あまりが参加した。

 毎年MWCのメインブースを飾るのがサムスン電子。2014年はZTE、Huawei(ファーウエイ)など中国勢の展示面積がかなり大きく、韓国では「サムスンが中国に包囲された」と報じた記事もあった。MWC2014には、サムスン、LG電子、大手キャリアのKT、SKテレコムなどに加えて、アプリケーションを開発する中小企業も、韓国政府未来創造科学部(IT政策担当省庁)の支援で出展した。


「MWC2014」のサムスン電子ブース(同社提供)

3位争いを演じるソニーの「Xperia Z2」が注目集める

 韓国内の注目はソニーの展示内容にも集まっている。韓国メディアは新作スマートフォン「Xperia Z2」を詳しく紹介していた。ソニーとLGは共にスマートフォンの世界シェア3位を争うライバル同士。そのせいか、韓国ではサムスンとアップルの競争、LG電子・ソニー・中国勢の競争とグループ分けする見方が多いようだ。

 韓国メディアは、Xperiaの画質とカメラが優れている点、ソニーピクチャーズの映画6本を無料で視聴できる点を魅力と見ていた。未来創造科学部の調査によると、韓国スマホユーザーが最も利用するコンテンツは動画で、モバイルデータトラフィックの45.1%を動画が占めるほどだ。

 動画好きユーザーが多い韓国では、やはり大画面スマホが人気だ。だが最近のスマホはどれもそこそこディスプレイが大きいので、今後は画面の鮮明さや、ソニーのような映画無料試聴などのコンテンツが新たな争点になると見られる。


サムスンの「GALAXY S5」がひっそり“登場”

 MWC2014の目玉として報じられたのは、やはりサムスンの「GALAXY S5」だ。

 海外のメディアからは「すごいインパクトのある機能はない」と評価されたものの、サムスン側は「スマホ本来の機能を充実させた」と説明した。心拍センサー搭載でウエアラブル端末と連動して健康管理できる機能、白黒画面に切り替えてバッテリーを最大限長持ちさせる機能、既存より0.3秒早いオートフォーカスでシャッターチャンスを逃さないカメラ、Wi-Fi(無線LAN)とLTEを組み合わせてダウンロード速度を向上できる機能など、「スマホがさらに便利になった」と言える機能が付いている。

 サムスンはウエアラブル端末の「GALAXY Gear 2」と「GALAXY Gear Fit」も公開した。GALAXY Gear Fitは前作のGALAXY Gearより小さく薄くなり違和感なく着けられる。GALAXY S5と連動したメール・スケジュール確認、ヘルスケア機能を持つ。OSはAndroidではなくTizen(タイゼン)を採用したというのも特徴だ。

 GALAXY S5と新しいGALAXY Gearの発売日は4月11日の予定だ。発売までまだ時間があるため、競合他社が製品を“コピー”できないようGALAXY S5はMWC2014の一般展示場には公開せず、メディアとパートナー会社にだけ公開する慎重ぶりだった。韓国メーカーも先進国メーカーの製品を“コピー”しながら技術開発を進めたが、今では“コピー”されないよう守る側になった。GALAXY Gear 2とFitは一般公開された。

KTはNFCサイネージ、SKテレコムは「状況認知」訴求

 大手キャリアのKTはMWC2014会場内に「NFCメディアポール」を設置した。NFCメディアポールは会場案内をするデジタルサイネージで、スマホをかざすと展示場内のイベントやコンファレンスの日程と資料、マップを自分のスマホに取り入れることができる。

 NFCメディアポールを設置したおかげで、MWC会場内では前回に比べて紙のパンフレットやイベントチラシが減った。来場者から「荷物が増えないので楽になった」という良い評判を得たそうだ。

 一方、SKテレコムは「状況認知プラットフォーム(Context Platform)」という機能を展示した。スマホのセンサー、カメラ、GPS、Wi-Fiなどの機能を活用して、ユーザーが置かれた状況を把握して今何をすればいいかスマホが提案をするというもの。今日何をしたかを記録するライフログ機能もある。


IoTから「Internet of Everything」へ

 SKテレコムの「状況認知プラットフォーム」を使えば、誰と最も頻繁に電話をしたか、モバイルペイメントを使ってどこで何を買ったのか、どんなアプリケーションを利用したか、今日はどんな予定が入っているか、といったことを分析してくれる。地下鉄に乗るとその人が好みそうな音楽を薦めてくれたり、出張先に到着するとすぐ道案内が始まったり、「今月はお金の使い過ぎだ」と警告したり、といったことができるという。

 SKテレコムは「これからはスマート2.0時代」「IoT(Internet of Things)からIoE(Internet of Everything)になった。状況認知プラットフォームはビッグデータと並んで重要なインテリジェンス機能だ」だと説明した。スマホがあれば生活が楽になることを実感できるようにしたいという。

 「誰よりも先にスマホの新機種を買って自慢したい」「新しいアプリを試したい」という人が多いお国柄の韓国だけに、例年、MWCのニュースは日本と同等かそれ以上に話題になる。MWC2014では新機種だけでなく、スマホを使って新しい体験ができる基盤技術にも注目が集まったようだ。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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電気代が日本の半額以下の韓国・釜山、マイクロソフトが1兆円規模の大型データセンター建設 [2014年2月21日]

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マイクロソフトは韓国南部の釜山地域に10兆ウォン(約1兆円)以上を投資し、2016年に敷地面積33万平方メートルのインターネットデータセンターを建設する計画だという。複数の韓国メディアが報じた。建設に関する指揮は米マイクロソフト本社が、投資はマイクロソフト中国法人が担当するという。

 マイクロソフトが韓国にデータセンターを置くのは、何といっても電気代が安いからだ。2012年時点でのOECD加盟国の産業用電気代比較を見ると(国際エネルギー機構調査)、米国67ドル/MWh、カナダ69.9ドル/MWh、オーストラリア60.9ドル/MWh、日本194.3ドル/MWh、韓国は82.4ドル/MWhだった。韓国の電気代は米・カナダ・オーストラリアよりは高いが、日本の半額以下である。

東南アジア域内でも韓国の電気代は格安

 韓国電力の調査では、韓国の産業用電気代は台湾やマレーシアよりも安かった。さらに、韓国ではソウル首都圏以外の地方都市にあるデータセンターには「知識サービス産業特例料金」を適用し、電気代を3%割引する制度がある。他国にデータセンターを置くより断然費用を節約できる。

 それに釜山地域は韓国第2の大都市なのでIT系の人材を雇いやすい。ソウル首都圏より地価が安いので大規模なデータセンターを建てても地代を抑えられる。

 マイクロソフトはすでに香港とシンガポールにデータセンターを持っている。「中国向けサービスを強化するために、電気代が安く地理的に中国と近く、規制もあまりない韓国にデータセンターを新設するようだ」と韓国メディアは分析している。米Facebookも、電気代の安さからアジア向けサービスを担当するデータセンターを韓国に建設することを検討しているという報道がある。


ソフトバンク進出で脚光浴びる

 釜山という立地は2011年12月ソフトバンクテレコムが韓国の大手通信事業者KTと合弁でデータセンターを置いたことで有名になった(関連記事)。当時のソフトバンクテレコムのプレスリリースには「日本と同等の高い品質のデータセンターサービスを日本の提供価格よりも約50%安価な価格設定で提供する」とある。

 釜山には32万平方メートルの広さで韓国最大規模の「釜山グローバルクラウドデータセンター」もある。2013年1月からLGCNS社が運営していて、7万2000台のサーバーを同時に運用できる。韓国は地震が少ない国ではあるが、万が一のため大地震にも耐えられる免震設備を用意し、津波や洪水被害を受けないように6mの高台の上に建てられた。

 韓国では企業がソウル一極集中しているため、地方都市は公務員か自営業ぐらいしか仕事がない。大規模データセンターが新しくできるとIT設備関連会社もデータセンター周辺にやってくるので、雇用が増える効果も期待される。

五輪開催地付近にもデータセンター誘致計画

 電気代の安さを売りに外資系データセンターを誘致しようと動き出した自治体もある。ソチ五輪の次の2018年平昌(ピョンチャン)五輪を開催する江原道庁(道は日本の県相当)はデータセンターを道内5カ所に建設し、データセンターとIT企業を集めたクラスターを作ると発表した。江原道には経済自由区域があり、法人税を減免してもらえる。江原道の経済自由区域にインターネットデータセンターを作れば、法人税減免と電気代3%追加割引の特典がある。

 江原道は韓国の北東部にありソウルに比べて平均気温が低い。年平均水温が5~6度と低い川もある。この川を冷却装置として活用することで電気代をさらに節約できると宣伝している。

 データセンターのエネルギー効率はPUE(Power Usage Effectiveness)という数値で表すが、これが1に近いほどエネルギー効率が高いとされる。韓国にあるデータセンターの平均PUEは2.3である。江原道は気候条件を生かしてPUEを限りなく1に近づけられるとして、データセンター誘致に積極的だ。釜山もアジアのデータセンターハブを目指しているので、韓国内での誘致競争が激しさを増しそうだ。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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韓国勢にとってもPC事業は悩みの種、ソニーのVAIO売却はサムスン・LGにも影響か [2014年2月14日]

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ソニーがパソコン「VAIO」事業を日本産業パートナーズに売却するというニュースは韓国でも大きな話題になった。韓国にもVAIOファンは多く、以前は米アップル(Mac)やサムスン電子のマシンよりもVAIOの人気が圧倒的だった。韓国のノートパソコンにはない薄さとスタイリッシュなデザインで、カフェでVAIOを開いているだけで視線を感じたものだ。

 日本旅行の土産としてVAIOを買って帰る人も多く、ノートパソコンは「VAIO」と「その他」の2種類しかないというぐらいVAIOの人気は絶大だった。筆者もVAIOファンの1人として、この5年間ぐらいでVAIOならではの薄さや軽さ、液晶画面の見やすさといった特徴が失われているようで残念に思っていた。

スマホ登場後、アップル・サムスンが優勢に

 2009年スマートフォンが登場してから、韓国でもiPhoneの影響からMacBookが流行するようになった。ハイエンドスマートフォン+中国メーカーの“激安”ノートパソコンの組み合わせで使う人も増えた。文書作成にはパソコンが便利だが、それ以外のネット検索やメール、ゲーム、動画・音楽鑑賞、仕事までもがスマートフォンで片付けられるようになった。デスクトップパソコンは買わず、安いノートパソコンがあればいいと考える人が増えた。

 最近は韓国メーカーのサムスンやLG電子のノートパソコンもラインアップが充実している。かつては韓国メーカーのノートパソコンと言えば“武器”としか言いようのない分厚くて重い黒い塊のようなものが多かった。だが、今ではデザイン重視のモデルも充実するようになった。


韓国でもパソコンの出荷台数は減少傾向

 短期的には、2014年4月のWindows XPのサポート終了により、Windowsのアップグレードを兼ねた法人のパソコン買い替え需要が伸びているようだ。だが、中期的には世界市場でパソコンの販売台数が減り続けている。

 米ガートナーの調査によると、2013年世界市場でのパソコン出荷台数は3億1590万台で2012年に比べ10%ほど減っている。またシェアの上位を占めているのは中国Lenovo、台湾ASUS、Acerといった“低価格モデル”に強いメーカーだ。韓国IDCによると、韓国内のパソコン出荷台数も2011年670万台、2012年576万台、2013年511万台、2014年490万台(推定)と減り続けている。

 韓国では「サムスンとLGのパソコン事業は大丈夫なのか」という特集を組む新聞や雑誌が増えた。政府の中小企業保護方針により、2015年から公共機関は中小企業製のデスクトップパソコンを購入することになった。年間4200億ウォン規模(約420億円)という最も大口の顧客である公共機関に納品できなくなれば、サムスンとLGはデスクトップパソコンを製造しなくなる可能性が高い。その分事業部門の規模も縮小するしかない。サムスン、LG両社でも、パソコン事業部の縮小によるリストラが噂されている。

サムスンもパソコン事業再編へ

 サムスン電子のパソコン事業はタブレットとプレミアムノートパソコンを中心に再編するという。収益性を上げるためにネットブック(低価格ノートパソコン)は生産せず、タブレットにもノートパソコンにもなるWindows 8のコンバーチブルパソコンと16万円以上する15~16型のプレミアムノートパソコン、7~10型のタブレットに集中するという報道もあった。

 プレミアムノートの場合、ノートパソコンからスマートフォンの遠隔操作できるようにし、ノートパソコンのキーボードから文字入力してスマートフォン用SNSを操作できるようにした。サムスンは「パソコン事業の縮小というより、ユーザーの需要に合わせて『選択と集中』を進めているだけだ」と説明する。


LGは13.3型980gの軽量PCに注力

 LGはマグネシウム素材を使用し、13.3型で980gしかしない軽量ノートパソコンに力を入れている。




LG電子のノートパソコン最新モデル「Gram」。980gという軽さが売りだ。


 カラーもピンク、シルバー、ブルー、ホワイトとかわいく大学生を主なターゲットにしている。LGのノートパソコンは世界展開せず韓国市場だけをターゲットにしているので、細く長く続けられるのではないかとの見方もある。LGはすでにパソコンの生産量を減らし、社員もスマートフォン事業部門に異動させている。

 韓国の市場調査会社などは、スマートフォンとタブレットの普及が進んでも、パソコンの需要が無くなることはないと見ている。それでもパソコンメーカーの事業縮小や組織再編はしばらく続きそうだ。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)


日経パソコン
 

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韓国でもGoogleストリートビュー問題、個人情報無断収集で政府が約2000万円の課徴金 [2014年2月7日]

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韓国では2014年1月に、2000万人近いクレジットカード使用者の住民登録番号(国民ID)を含む個人情報と口座番号、クレジットカード使用限度額といった金融情報が盗まれる事件があった。個人情報を暗号化せず保管したクレジットカード会社も責任があるとして、政府は問題のクレジットカード3社を営業停止処分にした。だが、盗まれた情報はすでに第三者の手に渡ってしまったようだ。ネット上では「詐欺電話やスパムSMSが多すぎて仕事ができないほどだ」と被害を訴える人が後を絶たない。

 韓国の企業は「“ビッグデータ”で顧客にぴったりの情報を提供するため」だとして、ありとあらゆる個人情報の収集に同意するよう強要する傾向がある。銀行、クレジットカード、保険、携帯電話、ショッピングサイト、ゲームサイトなどで会員登録すると、約款の最後に「個人情報の利活用に同意する」という項目がある。これに同意しないとサービスを利用させてくれない。

 今回の個人情報流出事件をきっかけに、「企業が顧客に対して個人情報利活用を無理矢理同意させる慣行を無くすべきだ」という世論が盛り上がっている。韓国政府は個人情報保護に関する規定を再検討するようになった。個人情報を集めるだけ集めて、管理は疎かにしている企業が多すぎるからだ。

追い打ちをかけたGoogleの「Wi-Spy」

 韓国の国内が企業の個人情報収集に敏感になっている最中に、米Googleが韓国で個人情報を無断収集していた件に関する結論が出た。韓国の通信政策を担当する省庁の放送通信委員会は2014年1月末、米Google本社に対して「情報通信網利用促進及び個人情報保護等に関する法律」の違反だとして、2億1230万ウォン(約2123万円)の課徴金を科した。

 2009~2010年にGoogleが韓国でストリートビュー撮影をした際に、撮影車両で無線LAN(Wi-Fi)経由でやり取りされていたデータを解読し、個人情報(メールアドレスとパスワード、氏名と住民登録番号、メール内容、SNSの書き込み内容、写真、クレジットカード情報、端末のMACアドレスなど)60万件以上を無断で収集し、ハードディスクに入れてGoogle本社に送ったことが問題になった。ネットで誰が何をしていたのかを無断でのぞき見して、プライバシーを侵害したとも言える。


米欧の問題が韓国にも飛び火

 ストリートビューの撮影車両がWi-Fiから個人情報を収集したことは、米国内やドイツでも問題になっていた。米国では連邦通信委員会(FCC)がグーグルに2万5000ドルの罰金を科し、2013年3月に38州と700万ドルで和解している。ドイツでは14万5000ユーロの罰金を払った。海外ではWi-Fiから個人情報を集めたということで「Google Wi-Spy」事件と呼ばれている。

 Google米国本社は、韓国における個人情報の無断収集を認めた。Google側は「個人情報の無断収集は意図しなかったことで、収集した個人情報を閲覧・使用したことはない」と説明した。

 韓国放送通信委員会が海外企業の本社に対して課徴金を科したのは、これが初めてである。放送通信委員会は2011~2012年にAndroidスマートフォンから位置情報を収集したり、個人情報を過度に収集したりしないようグーグルに勧告したことがある。だが、この時はGoogle韓国法人に対してだった。

企業への不信感が募る

 韓国では、「個人情報を守りたくても個人の力ではどうにもならないのではないか」と不安視する意見が増えている。Wi-Fiから送信されるデータを横取りして解読するとか、企業が暗号化もせず個人情報を保管して盗まれるとか、そんな事件が起きてしまうと、個人のセキュリティ意識が高くても、個人情報を守りきれない。

 それに個人情報が流出したとしても、個人情報を悪用した犯罪に遭って被害が発生したという証拠が無ければ、補償はされない。自分の個人情報が出回っているのに不安を感じながら生活していくしかない。個人情報を活用して生活を便利にする“ビッグデータ”が拡大すればするほど、個人情報に関する不安も募る。

 韓国では、企業が個人情報をきちんと守ってくれるはずだと信じた利用者が、何度も裏切られる事態になった。これから「マイナンバー」制度が始まる日本では、個人情報をきちんと保護しながら適切に利活用する方策を探ってほしいと切に願う。その際に、韓国の事件も反面教師にしてもらいたい。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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「韓国スマートヘルスケア最前線」「ヘルスケアアプリ=医療機器」にあらず、規制緩和で開発や特許出願が加速 [2014年03月03]

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韓国では、朴槿恵大統領が2014年の新年政府会議でヘルスケア産業に力を入れるよう強調したことから、関連企業の株価が一斉に上がるほど盛り上がっている。

事前審議なしで販売できるアプリを分類

 朴大統領が注文したのは、ヘルスケア産業拡大の壁になっている規制をなくすこと。「海外では遠隔健康管理市場の潜在力を高く評価し、一歩先に市場を開拓しようと動いている。潜在力の大きい世界市場で韓国企業が活躍するためには、先に韓国内の市場を活性化させ、世界市場に進出できるよう備えるべき」(同氏)。

 早速、IT政策を担当する未来科学創造部は、ヘルスケア向けアプリケーションソフトウエア(以下、アプリ)をより多くの会社が開発して普及させられるように動いた。食品医薬品安全処と共同で、2014年1月に「モバイル医療用アプリケーション安全管理ガイドライン」を発表した。

 これまで韓国では、ヘルスケアアプリは医療機器と同じだとして、食品医薬品安全処の事前審議と販売許可が必要だった。今回発表したモバイル医療用アプリケーション安全管理ガイドラインでは、事前審議なしで販売できるアプリとそうでないアプリを分類する判断基準、販売許可審査と品質管理などについて細かく明記した。

これによって、医療機器ではなく普通のアプリとして販売できるようになったのは、例えば次のようなアプリだ。すなわち、一般的な医療情報提供アプリ、患者の医療情報記録アプリ、自己診断型アプリ、遠隔診療のためのテレビ電話アプリ、である。さらに、食品医薬品安全処が持っている公共情報を開放して、民間企業がヘルスケアアプリ開発のために使えるようにもした。

Samsung Electronics社のアプリケーションマーケット「Samsung Apps」には、800件を超えるGalaxy向けヘルスケア・フィットネス・アプリが登録してある

 未来科学創造部は、ITと医療機器の融合に関しても規制を緩和するという。現在はスマートフォンやウエアラブル端末を使ったスマートヘルスケアも医療機器と同じく厳格に審査をしているため、優れたアイデアがあってもビジネスにするには難しい点が多すぎるからだ。

遠隔医療分野の特許出願が急増

 大統領の発言を起点に、ヘルスケア分野の規制がどんどん緩和され、市場を大きくするための支援策も発表されている中、ヘルスケア関連特許出願も増えている。

韓国特許庁医療技術審査チームによると、ICTと医療を融合したヘルスケア関連特許の出願は毎年増えているが、最近は特に遠隔医療分野の特許出願が増えているという。韓国では医療法の改訂により、2015年から医師が自宅にいる患者を遠隔診療できるようになったからだ。

 遠隔医療分野の特許は、医療機器に関する特許で、医師の臨床的判断を必要としない方法だけ特許を出願できる。患者にセンサーを装着してモニタリングし、異常があった場合は遠隔地にある病院に知らせるといったビジネスモデルや、緊急事態に陥る前に患者の状態を予測して病院に知らせる診断サーバーの技術などが目立つ。

 韓国特許庁は、「スマートヘルスケアは韓国の次世代成長分野なので、市場が活性化すれば特許紛争や知的財産権争いになる可能性がある。特許動向を把握して前もって知的財産権を確保する努力が必要だ」として、特許にも気を使うよう注意した。

医療観光地区を指定した大邱市

 自治体もより積極的に動き始めた。ヘルスケア産業育成に力を入れている大邱(テグ)市は、ヘルスケア関連企業が入居している先端医療複合団地に続き、2017年末の完成を目標に医療観光地区を指定した

医療観光地区にはヘルスケアリゾート施設を建てる。外国人観光客が3カ月以上滞在しながら治療に専念できる長期滞在型病院、高級ホテル、テンプルステイ(お寺での修行体験)・韓方エステ(韓国の漢方)といったヒーリング施設、医療観光客向けのショッピングセンターが含まれる。

 大邱市は医療観光地区に韓国の病院だけでなく海外の有名病院も誘致する計画だ。システム半導体・スマートセンサー・ソフトウエア融合といった、スマートヘルスケア産業の発展には欠かせない技術開発を支援するための施設も建てる。

産業拡大への動きが続々

 医療政策を担当する省庁の保健福祉部は、「2020 HEALTH Korea 健康な国民、幸せな社会」をキャッチフレーズに、「2014年保健医療技術研究開発事業投資方向」をまとめた。2020年には健康寿命75歳(75歳までは病気をしないで健康で過ごすこと)の達成を目標に、国民の健康維持とヘルスケア市場拡大という二つの側面から投資を進める。産・学・病院が連携して、研究結果を企業が生かせるよう、国の支援で研究インフラを構築することに力を入れる方針だ。

 韓国産業通商資源部(経済産業省に当たる省庁)は2014年2月17日、「スマートヘルスケア政策諮問団」を新設した。諮問団は病院、大学、研究所など多様な分野の専門家が参加していて、ソウル大学病院長が諮問団委員長を務める。諮問団は、スマートヘルスケア関連実証実験企画とヘルスケア産業標準化のための細部政策立案、保健医療分野の投資活性化戦略について意見を提示する役割を担う。

 この他、Samsung Electronics社やLG Electronics社、通信キャリアも新しいヘルスケアサービスを手掛けようとしている。中堅医療機器メーカーとIT企業の提携も増えている。2014年は、韓国のヘルスケア市場に大きな変化がありそうだ。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2014年3月3
-Original column

「GOM Player」ウイルス問題、韓国では「違法ダウンロード動画用の“過去のソフト”」との認識 [2014年1月31日]

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2014年1月、日本のマスコミは一斉に、韓国のGRETECH(グレテック)が提供するフリーの動画プレーヤー「GOM Player日本語版」をアップデートするとコンピュータウイルスに感染する恐れがあると報じた。

 実は韓国国内ではGOM Playerのアップデートでウイルスに感染したという被害は報告されていない。このため、韓国マスコミは日本を狙ったサイバー攻撃なのではないかと見ている。

日本語版インストーラーに落とし穴

 GRETECHが自社Webサイトに掲載した説明によると、経緯はこうだ。2013年12月27日から2014年1月16日にかけて断続的に米ニューヨークにある「GOM Playerアップデートサーバー(app.gomlab.com)」に不正アクセスがあった。GOM Playerをアップデートすると第三者サイトに誘導され、GOM Player日本語版のインストールプログラム(GOMPLAYERJPSETUP.EXE)を装ったマルウエア(ウイルス)がダウンロードされる可能性があったという。

 安全にアップデートするためには、「プロパティ」からデジタル署名を確認して、署名者がGRETECHになっているかどうか確認するべきだとしている。ウイルスが仕込まれている場合は、デジタル署名の署名者が不明になっていることが多い。

韓国でも人気のプレーヤーだが……

 GOM Playerは韓国でもユーザーが多い動画プレーヤーだ。2005年までにダウンロード2000万件を突破し、2008年には韓国ネットユーザーの65%が利用、全世界で1億人が使っているとGRETECHは宣伝していた。日本でも人気があるので、GOM Player日本語版が悪用されたのかもしれない。

 韓国では、GOM Playerはスマートフォンが普及する以前の、デスクトップパソコンが主流だった時代に人気があった。「動画=GOM Player」と言っても過言ではないほどの空前のブームだった。

 人気の秘訣は、GOM Playerはどの種類の動画でも再生できるという使いやすさにあった。韓国のテレビ局はドラマの再放送をストリーミング配信する一方で、高画質動画ファイルをダウンロード販売している。どのテレビ局の動画ファイルでもGOM Playerなら問題なくきれいに再生できることから、「動画=GOM Player」という地位を確立した。

 もう1つ、“裏”の人気の秘訣がある。P2P・ファイル共有ソフトなどを使って違法ダウンロードした動画を再生するのにぴったりだったのだ。GOM Playerには字幕検索機能がある。違法ダウンロードした動画と字幕を組み合わせて再生するのに“便利”だったというわけだ。

スマホ普及で動画プレーヤーとしての人気は下火に

 ブームが去った後の韓国では、GOM Playerは動画プレーヤーとしてよりも、動画コンテンツ流通プラットフォームとして事業を拡大した。今では「GOMTV」が人気を集めている。映画やドラマなどの動画を有料販売したり、「eスポーツ」(プロゲーマーによるネットワークゲーム対戦、関連記事)の独占中継をしたりして人気を集めている。

 韓国では2010年以降、動画再生機器としてパソコンよりもスマートフォンが主流になった。GOM Playerより一足先にモバイル環境に適した動画プレーヤーが続々と登場したことで、GOM Playerの名前を耳にすることもあまりなくなった。

 最近は通信環境が充実し、ストリーミングでも高画質動画を視聴できるようになった。わざわざ動画をダウンロードして動画プレーヤーを利用する機会は減った。韓国のテレビ局は、YouTubeに公式チャンネルを作り、人気のバラエティー番組を無料で視聴できるように公開している。ファイル共有ソフトから動画を違法ダウンロードしなくても楽しめるようにもなった。米国などと同様に、韓国でも「動画=YouTube」の時代になったのだ。

日本の特定施設を狙ったサイバー攻撃?

 韓国では2013年8月と10月にGOM Playerのセキュリティ脆弱性が報告されたことがある。韓国インターネット侵害対応センター(http://www.krcert.or.kr/)が告知した脆弱性は、「GOM Playerでウイルスにかかったファイルを再生するように仕向けることがあるので、GOM Playerの公式ホームページから最新版にアップデートしましょう」というものだ。アップデートするとウイルスに感染するという内容ではなかった。今回のGOM Player日本語版の問題とは異質のものだろう。

 韓国企業であるGRETECHが提供するソフトが日本で問題になったことから、韓国内でも今回の事件は注目を集めている。韓国マスコミの報道では、「GOM Player日本語版のアップデートを実行した全てのユーザーが感染するのではなく、特定のIPアドレスを持つパソコンだけが感染するようになっている。このことから、日本の政府機関や一部の企業を狙って標的を絞ったサイバー攻撃の可能性がある」という見立てもされている。

 こうした「標的型攻撃」では、防御側がセキュリティ対策を万全にしても、攻撃側は常に脆弱性を探してしつこくサイバー攻撃を仕掛ける。防御側は常に過剰なほどセキュリティ対策を徹底するしかない。GRETECHは同じ問題を繰り返さないように徹底的に調査して、日韓問わずユーザーが信頼してソフトウエアを利用できる環境を整えてほしいものだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140130/1119744/