韓国勢にとってもPC事業は悩みの種、ソニーのVAIO売却はサムスン・LGにも影響か [2014年2月14日]

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ソニーがパソコン「VAIO」事業を日本産業パートナーズに売却するというニュースは韓国でも大きな話題になった。韓国にもVAIOファンは多く、以前は米アップル(Mac)やサムスン電子のマシンよりもVAIOの人気が圧倒的だった。韓国のノートパソコンにはない薄さとスタイリッシュなデザインで、カフェでVAIOを開いているだけで視線を感じたものだ。

 日本旅行の土産としてVAIOを買って帰る人も多く、ノートパソコンは「VAIO」と「その他」の2種類しかないというぐらいVAIOの人気は絶大だった。筆者もVAIOファンの1人として、この5年間ぐらいでVAIOならではの薄さや軽さ、液晶画面の見やすさといった特徴が失われているようで残念に思っていた。

スマホ登場後、アップル・サムスンが優勢に

 2009年スマートフォンが登場してから、韓国でもiPhoneの影響からMacBookが流行するようになった。ハイエンドスマートフォン+中国メーカーの“激安”ノートパソコンの組み合わせで使う人も増えた。文書作成にはパソコンが便利だが、それ以外のネット検索やメール、ゲーム、動画・音楽鑑賞、仕事までもがスマートフォンで片付けられるようになった。デスクトップパソコンは買わず、安いノートパソコンがあればいいと考える人が増えた。

 最近は韓国メーカーのサムスンやLG電子のノートパソコンもラインアップが充実している。かつては韓国メーカーのノートパソコンと言えば“武器”としか言いようのない分厚くて重い黒い塊のようなものが多かった。だが、今ではデザイン重視のモデルも充実するようになった。


韓国でもパソコンの出荷台数は減少傾向

 短期的には、2014年4月のWindows XPのサポート終了により、Windowsのアップグレードを兼ねた法人のパソコン買い替え需要が伸びているようだ。だが、中期的には世界市場でパソコンの販売台数が減り続けている。

 米ガートナーの調査によると、2013年世界市場でのパソコン出荷台数は3億1590万台で2012年に比べ10%ほど減っている。またシェアの上位を占めているのは中国Lenovo、台湾ASUS、Acerといった“低価格モデル”に強いメーカーだ。韓国IDCによると、韓国内のパソコン出荷台数も2011年670万台、2012年576万台、2013年511万台、2014年490万台(推定)と減り続けている。

 韓国では「サムスンとLGのパソコン事業は大丈夫なのか」という特集を組む新聞や雑誌が増えた。政府の中小企業保護方針により、2015年から公共機関は中小企業製のデスクトップパソコンを購入することになった。年間4200億ウォン規模(約420億円)という最も大口の顧客である公共機関に納品できなくなれば、サムスンとLGはデスクトップパソコンを製造しなくなる可能性が高い。その分事業部門の規模も縮小するしかない。サムスン、LG両社でも、パソコン事業部の縮小によるリストラが噂されている。

サムスンもパソコン事業再編へ

 サムスン電子のパソコン事業はタブレットとプレミアムノートパソコンを中心に再編するという。収益性を上げるためにネットブック(低価格ノートパソコン)は生産せず、タブレットにもノートパソコンにもなるWindows 8のコンバーチブルパソコンと16万円以上する15~16型のプレミアムノートパソコン、7~10型のタブレットに集中するという報道もあった。

 プレミアムノートの場合、ノートパソコンからスマートフォンの遠隔操作できるようにし、ノートパソコンのキーボードから文字入力してスマートフォン用SNSを操作できるようにした。サムスンは「パソコン事業の縮小というより、ユーザーの需要に合わせて『選択と集中』を進めているだけだ」と説明する。


LGは13.3型980gの軽量PCに注力

 LGはマグネシウム素材を使用し、13.3型で980gしかしない軽量ノートパソコンに力を入れている。




LG電子のノートパソコン最新モデル「Gram」。980gという軽さが売りだ。


 カラーもピンク、シルバー、ブルー、ホワイトとかわいく大学生を主なターゲットにしている。LGのノートパソコンは世界展開せず韓国市場だけをターゲットにしているので、細く長く続けられるのではないかとの見方もある。LGはすでにパソコンの生産量を減らし、社員もスマートフォン事業部門に異動させている。

 韓国の市場調査会社などは、スマートフォンとタブレットの普及が進んでも、パソコンの需要が無くなることはないと見ている。それでもパソコンメーカーの事業縮小や組織再編はしばらく続きそうだ。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)


日経パソコン
 

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韓国でもGoogleストリートビュー問題、個人情報無断収集で政府が約2000万円の課徴金 [2014年2月7日]

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韓国では2014年1月に、2000万人近いクレジットカード使用者の住民登録番号(国民ID)を含む個人情報と口座番号、クレジットカード使用限度額といった金融情報が盗まれる事件があった。個人情報を暗号化せず保管したクレジットカード会社も責任があるとして、政府は問題のクレジットカード3社を営業停止処分にした。だが、盗まれた情報はすでに第三者の手に渡ってしまったようだ。ネット上では「詐欺電話やスパムSMSが多すぎて仕事ができないほどだ」と被害を訴える人が後を絶たない。

 韓国の企業は「“ビッグデータ”で顧客にぴったりの情報を提供するため」だとして、ありとあらゆる個人情報の収集に同意するよう強要する傾向がある。銀行、クレジットカード、保険、携帯電話、ショッピングサイト、ゲームサイトなどで会員登録すると、約款の最後に「個人情報の利活用に同意する」という項目がある。これに同意しないとサービスを利用させてくれない。

 今回の個人情報流出事件をきっかけに、「企業が顧客に対して個人情報利活用を無理矢理同意させる慣行を無くすべきだ」という世論が盛り上がっている。韓国政府は個人情報保護に関する規定を再検討するようになった。個人情報を集めるだけ集めて、管理は疎かにしている企業が多すぎるからだ。

追い打ちをかけたGoogleの「Wi-Spy」

 韓国の国内が企業の個人情報収集に敏感になっている最中に、米Googleが韓国で個人情報を無断収集していた件に関する結論が出た。韓国の通信政策を担当する省庁の放送通信委員会は2014年1月末、米Google本社に対して「情報通信網利用促進及び個人情報保護等に関する法律」の違反だとして、2億1230万ウォン(約2123万円)の課徴金を科した。

 2009~2010年にGoogleが韓国でストリートビュー撮影をした際に、撮影車両で無線LAN(Wi-Fi)経由でやり取りされていたデータを解読し、個人情報(メールアドレスとパスワード、氏名と住民登録番号、メール内容、SNSの書き込み内容、写真、クレジットカード情報、端末のMACアドレスなど)60万件以上を無断で収集し、ハードディスクに入れてGoogle本社に送ったことが問題になった。ネットで誰が何をしていたのかを無断でのぞき見して、プライバシーを侵害したとも言える。


米欧の問題が韓国にも飛び火

 ストリートビューの撮影車両がWi-Fiから個人情報を収集したことは、米国内やドイツでも問題になっていた。米国では連邦通信委員会(FCC)がグーグルに2万5000ドルの罰金を科し、2013年3月に38州と700万ドルで和解している。ドイツでは14万5000ユーロの罰金を払った。海外ではWi-Fiから個人情報を集めたということで「Google Wi-Spy」事件と呼ばれている。

 Google米国本社は、韓国における個人情報の無断収集を認めた。Google側は「個人情報の無断収集は意図しなかったことで、収集した個人情報を閲覧・使用したことはない」と説明した。

 韓国放送通信委員会が海外企業の本社に対して課徴金を科したのは、これが初めてである。放送通信委員会は2011~2012年にAndroidスマートフォンから位置情報を収集したり、個人情報を過度に収集したりしないようグーグルに勧告したことがある。だが、この時はGoogle韓国法人に対してだった。

企業への不信感が募る

 韓国では、「個人情報を守りたくても個人の力ではどうにもならないのではないか」と不安視する意見が増えている。Wi-Fiから送信されるデータを横取りして解読するとか、企業が暗号化もせず個人情報を保管して盗まれるとか、そんな事件が起きてしまうと、個人のセキュリティ意識が高くても、個人情報を守りきれない。

 それに個人情報が流出したとしても、個人情報を悪用した犯罪に遭って被害が発生したという証拠が無ければ、補償はされない。自分の個人情報が出回っているのに不安を感じながら生活していくしかない。個人情報を活用して生活を便利にする“ビッグデータ”が拡大すればするほど、個人情報に関する不安も募る。

 韓国では、企業が個人情報をきちんと守ってくれるはずだと信じた利用者が、何度も裏切られる事態になった。これから「マイナンバー」制度が始まる日本では、個人情報をきちんと保護しながら適切に利活用する方策を探ってほしいと切に願う。その際に、韓国の事件も反面教師にしてもらいたい。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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「韓国スマートヘルスケア最前線」「ヘルスケアアプリ=医療機器」にあらず、規制緩和で開発や特許出願が加速 [2014年03月03]

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韓国では、朴槿恵大統領が2014年の新年政府会議でヘルスケア産業に力を入れるよう強調したことから、関連企業の株価が一斉に上がるほど盛り上がっている。

事前審議なしで販売できるアプリを分類

 朴大統領が注文したのは、ヘルスケア産業拡大の壁になっている規制をなくすこと。「海外では遠隔健康管理市場の潜在力を高く評価し、一歩先に市場を開拓しようと動いている。潜在力の大きい世界市場で韓国企業が活躍するためには、先に韓国内の市場を活性化させ、世界市場に進出できるよう備えるべき」(同氏)。

 早速、IT政策を担当する未来科学創造部は、ヘルスケア向けアプリケーションソフトウエア(以下、アプリ)をより多くの会社が開発して普及させられるように動いた。食品医薬品安全処と共同で、2014年1月に「モバイル医療用アプリケーション安全管理ガイドライン」を発表した。

 これまで韓国では、ヘルスケアアプリは医療機器と同じだとして、食品医薬品安全処の事前審議と販売許可が必要だった。今回発表したモバイル医療用アプリケーション安全管理ガイドラインでは、事前審議なしで販売できるアプリとそうでないアプリを分類する判断基準、販売許可審査と品質管理などについて細かく明記した。

これによって、医療機器ではなく普通のアプリとして販売できるようになったのは、例えば次のようなアプリだ。すなわち、一般的な医療情報提供アプリ、患者の医療情報記録アプリ、自己診断型アプリ、遠隔診療のためのテレビ電話アプリ、である。さらに、食品医薬品安全処が持っている公共情報を開放して、民間企業がヘルスケアアプリ開発のために使えるようにもした。

Samsung Electronics社のアプリケーションマーケット「Samsung Apps」には、800件を超えるGalaxy向けヘルスケア・フィットネス・アプリが登録してある

 未来科学創造部は、ITと医療機器の融合に関しても規制を緩和するという。現在はスマートフォンやウエアラブル端末を使ったスマートヘルスケアも医療機器と同じく厳格に審査をしているため、優れたアイデアがあってもビジネスにするには難しい点が多すぎるからだ。

遠隔医療分野の特許出願が急増

 大統領の発言を起点に、ヘルスケア分野の規制がどんどん緩和され、市場を大きくするための支援策も発表されている中、ヘルスケア関連特許出願も増えている。

韓国特許庁医療技術審査チームによると、ICTと医療を融合したヘルスケア関連特許の出願は毎年増えているが、最近は特に遠隔医療分野の特許出願が増えているという。韓国では医療法の改訂により、2015年から医師が自宅にいる患者を遠隔診療できるようになったからだ。

 遠隔医療分野の特許は、医療機器に関する特許で、医師の臨床的判断を必要としない方法だけ特許を出願できる。患者にセンサーを装着してモニタリングし、異常があった場合は遠隔地にある病院に知らせるといったビジネスモデルや、緊急事態に陥る前に患者の状態を予測して病院に知らせる診断サーバーの技術などが目立つ。

 韓国特許庁は、「スマートヘルスケアは韓国の次世代成長分野なので、市場が活性化すれば特許紛争や知的財産権争いになる可能性がある。特許動向を把握して前もって知的財産権を確保する努力が必要だ」として、特許にも気を使うよう注意した。

医療観光地区を指定した大邱市

 自治体もより積極的に動き始めた。ヘルスケア産業育成に力を入れている大邱(テグ)市は、ヘルスケア関連企業が入居している先端医療複合団地に続き、2017年末の完成を目標に医療観光地区を指定した

医療観光地区にはヘルスケアリゾート施設を建てる。外国人観光客が3カ月以上滞在しながら治療に専念できる長期滞在型病院、高級ホテル、テンプルステイ(お寺での修行体験)・韓方エステ(韓国の漢方)といったヒーリング施設、医療観光客向けのショッピングセンターが含まれる。

 大邱市は医療観光地区に韓国の病院だけでなく海外の有名病院も誘致する計画だ。システム半導体・スマートセンサー・ソフトウエア融合といった、スマートヘルスケア産業の発展には欠かせない技術開発を支援するための施設も建てる。

産業拡大への動きが続々

 医療政策を担当する省庁の保健福祉部は、「2020 HEALTH Korea 健康な国民、幸せな社会」をキャッチフレーズに、「2014年保健医療技術研究開発事業投資方向」をまとめた。2020年には健康寿命75歳(75歳までは病気をしないで健康で過ごすこと)の達成を目標に、国民の健康維持とヘルスケア市場拡大という二つの側面から投資を進める。産・学・病院が連携して、研究結果を企業が生かせるよう、国の支援で研究インフラを構築することに力を入れる方針だ。

 韓国産業通商資源部(経済産業省に当たる省庁)は2014年2月17日、「スマートヘルスケア政策諮問団」を新設した。諮問団は病院、大学、研究所など多様な分野の専門家が参加していて、ソウル大学病院長が諮問団委員長を務める。諮問団は、スマートヘルスケア関連実証実験企画とヘルスケア産業標準化のための細部政策立案、保健医療分野の投資活性化戦略について意見を提示する役割を担う。

 この他、Samsung Electronics社やLG Electronics社、通信キャリアも新しいヘルスケアサービスを手掛けようとしている。中堅医療機器メーカーとIT企業の提携も増えている。2014年は、韓国のヘルスケア市場に大きな変化がありそうだ。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2014年3月3
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「GOM Player」ウイルス問題、韓国では「違法ダウンロード動画用の“過去のソフト”」との認識 [2014年1月31日]

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2014年1月、日本のマスコミは一斉に、韓国のGRETECH(グレテック)が提供するフリーの動画プレーヤー「GOM Player日本語版」をアップデートするとコンピュータウイルスに感染する恐れがあると報じた。

 実は韓国国内ではGOM Playerのアップデートでウイルスに感染したという被害は報告されていない。このため、韓国マスコミは日本を狙ったサイバー攻撃なのではないかと見ている。

日本語版インストーラーに落とし穴

 GRETECHが自社Webサイトに掲載した説明によると、経緯はこうだ。2013年12月27日から2014年1月16日にかけて断続的に米ニューヨークにある「GOM Playerアップデートサーバー(app.gomlab.com)」に不正アクセスがあった。GOM Playerをアップデートすると第三者サイトに誘導され、GOM Player日本語版のインストールプログラム(GOMPLAYERJPSETUP.EXE)を装ったマルウエア(ウイルス)がダウンロードされる可能性があったという。

 安全にアップデートするためには、「プロパティ」からデジタル署名を確認して、署名者がGRETECHになっているかどうか確認するべきだとしている。ウイルスが仕込まれている場合は、デジタル署名の署名者が不明になっていることが多い。

韓国でも人気のプレーヤーだが……

 GOM Playerは韓国でもユーザーが多い動画プレーヤーだ。2005年までにダウンロード2000万件を突破し、2008年には韓国ネットユーザーの65%が利用、全世界で1億人が使っているとGRETECHは宣伝していた。日本でも人気があるので、GOM Player日本語版が悪用されたのかもしれない。

 韓国では、GOM Playerはスマートフォンが普及する以前の、デスクトップパソコンが主流だった時代に人気があった。「動画=GOM Player」と言っても過言ではないほどの空前のブームだった。

 人気の秘訣は、GOM Playerはどの種類の動画でも再生できるという使いやすさにあった。韓国のテレビ局はドラマの再放送をストリーミング配信する一方で、高画質動画ファイルをダウンロード販売している。どのテレビ局の動画ファイルでもGOM Playerなら問題なくきれいに再生できることから、「動画=GOM Player」という地位を確立した。

 もう1つ、“裏”の人気の秘訣がある。P2P・ファイル共有ソフトなどを使って違法ダウンロードした動画を再生するのにぴったりだったのだ。GOM Playerには字幕検索機能がある。違法ダウンロードした動画と字幕を組み合わせて再生するのに“便利”だったというわけだ。

スマホ普及で動画プレーヤーとしての人気は下火に

 ブームが去った後の韓国では、GOM Playerは動画プレーヤーとしてよりも、動画コンテンツ流通プラットフォームとして事業を拡大した。今では「GOMTV」が人気を集めている。映画やドラマなどの動画を有料販売したり、「eスポーツ」(プロゲーマーによるネットワークゲーム対戦、関連記事)の独占中継をしたりして人気を集めている。

 韓国では2010年以降、動画再生機器としてパソコンよりもスマートフォンが主流になった。GOM Playerより一足先にモバイル環境に適した動画プレーヤーが続々と登場したことで、GOM Playerの名前を耳にすることもあまりなくなった。

 最近は通信環境が充実し、ストリーミングでも高画質動画を視聴できるようになった。わざわざ動画をダウンロードして動画プレーヤーを利用する機会は減った。韓国のテレビ局は、YouTubeに公式チャンネルを作り、人気のバラエティー番組を無料で視聴できるように公開している。ファイル共有ソフトから動画を違法ダウンロードしなくても楽しめるようにもなった。米国などと同様に、韓国でも「動画=YouTube」の時代になったのだ。

日本の特定施設を狙ったサイバー攻撃?

 韓国では2013年8月と10月にGOM Playerのセキュリティ脆弱性が報告されたことがある。韓国インターネット侵害対応センター(http://www.krcert.or.kr/)が告知した脆弱性は、「GOM Playerでウイルスにかかったファイルを再生するように仕向けることがあるので、GOM Playerの公式ホームページから最新版にアップデートしましょう」というものだ。アップデートするとウイルスに感染するという内容ではなかった。今回のGOM Player日本語版の問題とは異質のものだろう。

 韓国企業であるGRETECHが提供するソフトが日本で問題になったことから、韓国内でも今回の事件は注目を集めている。韓国マスコミの報道では、「GOM Player日本語版のアップデートを実行した全てのユーザーが感染するのではなく、特定のIPアドレスを持つパソコンだけが感染するようになっている。このことから、日本の政府機関や一部の企業を狙って標的を絞ったサイバー攻撃の可能性がある」という見立てもされている。

 こうした「標的型攻撃」では、防御側がセキュリティ対策を万全にしても、攻撃側は常に脆弱性を探してしつこくサイバー攻撃を仕掛ける。防御側は常に過剰なほどセキュリティ対策を徹底するしかない。GRETECHは同じ問題を繰り返さないように徹底的に調査して、日韓問わずユーザーが信頼してソフトウエアを利用できる環境を整えてほしいものだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140130/1119744/

韓国で「歩きスマホ」原因の交通事故2倍近く増加、危なくてもやめられないのは“中毒”のせい? [2014年1月24日]

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日本では最近、「歩きスマホ」「ながらスマホ」をやめようというキャンペーン広告をテレビで流しているようだ。日本のスマートフォン普及率(
関連記事:スマホ契約者は全体の44.5%で増加の勢いに陰り、MM総研調査)に比べて韓国の普及率は高く、8割を超えている。それだけに、問題も深刻になっている。

 韓国では常にスマートフォンを握りしめていないと不安になる“中毒”状態の人が少なくない。LINE(ライン)やKakao Talk(カカオトーク)などでチャットをしながら歩くのは当たり前。スマートフォンにメッセージが届くと自動車運転中でもつい確認してしまうという人が実に多い。

 満員電車の中でもみんな手にスマートフォンを持っている。スマートフォンの角で背中を押されたり、頭にぶつけられたりして嫌な気分になることもある。さらにはスマートフォンで動画を観ながら歩く人までいる。耳はイヤホンでふさがり目はスマートフォンに釘づけ。これでは事故が起きない方がおかしい。

成人の95.7%が「歩きスマホ」経験

 韓国のあるテレビニュースでは、横断歩道で左右確認せずスマートフォンを見ながら歩いていた人が車とぶつかり飛ばされる映像を流した。「これでも歩きスマホしますか?」と訴えかけた映像は、視聴者に衝撃を与えた。筆者の場合、この映像を見て歩きながらスマートフォンで時間を確認することすら怖くてびくびくするようになったほどだ。

 韓国現代海上火災保険社と韓国交通安全公団が2014年1月公開した報告書によると、携帯電話・スマートフォンの使用が原因の交通事故は2009年437件から2012年848件と1.9倍に増加した。歩行者の「歩きスマホ」による交通事故は午前10時から午後6時の間に発生したケースが58.7%、運転者の「ながらスマホ」による交通事故は午後6時から深夜0時の間に発生したケースが38.6%と最も多かった。

 成人300人を対象にしたアンケート調査では、95.7%が「歩行中にスマートフォンを使ったことが1回以上ある」と答えた。その内21.7%は「歩行中のスマートフォン使用によって事故になりかけたことがある」と答えた。

2.5m前の自転車にしか気づけない

 韓国交通安全公団は最も事故が多い首都圏の横断歩道10カ所で2011年から3年間観察調査を行った。歩行者の4.3%が横断歩道でもスマートフォンを見つめたまま、2.4%は通話しながら横断していて、周りを確認しないまま横断していることが分かった。

 韓国交通安全公団は、歩きながらスマートフォンを使用することがどれほど危険なのかについても実験した。前方から自転車のベルが鳴ると、何も利用していない時は15m前で気付く。一方でスマートフォンを利用しながら歩くと、20代は10メートル前、40代は7.5m前で気付き、50代は2.5mとほぼ目の前に自転車が近づかないと気が付かなかった。また、何もせず歩く時、人間の目の視野角は120度だが、歩きながらスマートフォンをすると視野角は10度まで狭くなった。

 韓国では「歩きスマホ」の規制論が広がっている。米ニュージャージ州やユタ州のように歩きながらスマートフォンでメールを書くと罰金を科したり、日本のNTTドコモのように「歩きスマホ防止機能」を提供したりするべきだという意見もある。

学校や公的機関による“中毒”対策も

 また、歩きながらのスマートフォンをやめられないのは“中毒”であるとして、自治体とキャリアはスマートフォン中毒予防活動に力を入れている。ソウル市内の小学校では、登校・下校時に歩きながらスマートフォンを使わないよう指導。保護者らがボランティアで学校近くの横断歩道に立って指導している。

 ソウル市が運営する「インターネット中毒予防相談センター」では、スマートフォン中毒の予防と治療にも取り組んでいる。相談センターによると、スマートフォン中毒はSNS中毒でもあり、男性よりも女性がかかりやすいという。「SNSでメッセージが届いたらすぐ返事をしないといけない」という強迫観念を持つ人が多い。中毒治療は自分の行動を自覚させることから始めるという。

大手キャリアは“自制用”アプリ提供

 大手通信事業者(キャリア)のSKテレコムは「スマートセルフコーチ」というアプリを無料提供している。スマートフォンとアプリを1日何時間使用したのかをリポートし、何時から何時まではスマートフォンが機能しないように自らセットして、使用を自制できるようにする機能がある。自ら1日何時間スマートフォンを使ったのかを確認し、「使いすぎではないか」と自覚させるのが目的だ。


スマートフォン利用時間を自ら制限できるアプリ「スマートセルフコーチ」。SKテレコムが提供

 今やスマートフォンは仕事の必需品でもあり、会社からの連絡などに歩きながらついつい返事をすることもある。くれぐれも事故にならないよう、横断歩道や駅のホームでの歩きスマホは注意しよう。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140124/1119023/

2年ぶり韓国に戻ってきたソニーのスマホ、サムスンにはない色や防水機能が脚光浴びる [2014年1月17日]

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 ソニーコリアは2014年1月16日、韓国でAndroidスマートフォン「Xperia Z1」(日本では発売中、
関連記事)と腕時計型端末「スマートワッチ2」(SmartWatch 2、関連記事)を発売すると発表した。17日から予約受付を開始している。実はソニーのスマホが韓国で販売されるのは、2011年9月の「Xperia Ray」以来のことである。サムスン電子やLG電子といった韓国メーカーのスマホにはない機能やカラーバリエーション話題になっている。


「Xperia Z1」の国内発売を知らせるソニー韓国法人のWebサイト

 韓国のユーザーがXperia Z1の特長として注目するのは、やはり約2070万画素の高性能カメラである。韓国ではソニーの一眼レフカメラが「コンパクトなのに高性能」「(一眼なのに)自分撮りに向いている」「きれいに撮れる」といったことから高く評価されている。ソニー製のカメラに対する期待値は高く、韓国メーカー製スマホよりも優れていそうだと期待されている。

 また韓国メーカーのスマホにはない防じん・防水性能やFMラジオ機能も話題だ。韓国のスマホは防水を強調するモデルはなく、FMラジオ受信機能のあるスマホも最近は見なくなった。ネットラジオ用アプリをインストールすれば無料でラジオを聴けるので、スマホ本体にラジオ受信機能を付けなくなったという事情もある。

キャリアに縛られないハイエンド機という側面

 ネットでの反応を見ると、カメラや防水に加えて意外な話題になっているのが、「パープル」の端末があることだ。韓国のスマホにはないきれいなパープル色が魅力になっている。韓国のスマホのカラーバリエーションはホワイト、ブラック、ピンク、ブルーぐらい。別売りのカラフルなフリップカバーを付けることで自分だけのカラーを楽しんでいるが、端末自体の色を選択できれば、本体の防じん・防水性能をそのまま生かせる。

 Xperia Z1の端末価格は74万9000ウォン(約7万4000円)と高めである。だが、ソニーショップでスマホを買って好きなキャリアを選択することができる。大手通信事業者(キャリア)よりも通信料金が安いMVNO(仮想移動体通信事業者)の端末として使えるところも魅力がある。韓国ではこれまで、Xperia Z1のようなハイエンドのスマホはキャリアの代理店でしか買えなかったからだ。サムスンの「GALAXYシリーズ」以外の選択肢が増えたことを喜ぶ人も多い。

サムスンは腕時計型端末を対抗値下げ

 Xperia Z1と同時に、腕時計型端末のスマートワッチ2も韓国で正式発売されることになった。価格は21万9000ウォン(約2万1000円)。これに対抗してか、サムスンは2014年1月から腕時計型端末の「GALAXY Gear」を値下げした。39万6000ウォン(約3万9000円)から29万6000ウォン(約2万9000円)への大幅値下げである。GALAXY Note 3とGALAXY Gearを一緒に購入するとさらに安くなるキャンペーンも行っている。GALAXY Gearとスマートワッチ2の価格競争に発展する可能性もある。


韓国で正式発売されることになったソニーの「スマートワッチ2」

 スマートワッチ2の長所は、さまざまなデバイスと連動できるところだ。サムスン製端末としか連動できないGALAXY Gearとは異なり、スマートワッチ2はAndroid 4.x以降であればソニー以外の端末とも連動させて使うことができる。韓国ではLG電子のスマホとスマートワッチ2を連動させて使っているユーザーが多かったが、今後はソニー製品同士で組み合わせて使えるようになるわけだ。GALAXY Gearはバッテリーが1日ぐらいしか持たないが、スマートワッチ2は低電力設計で3日以上使えるというところも便利だ。

 スマートワッチ2のデザインは韓国でも好評で、正式発売前から個人輸入で購入する人も少なくなかった。すでに2013年10月から「ソニーのスマートワッチ2買った!」という自慢レビューがたびたび投稿されていた。

 2年ぶりに韓国に戻ってきたソニーのスマホ。GALAXYの本拠地である韓国でもヒットできるか、注目したい。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140116/1118043/

CES2014で韓国勢は4KテレビやInternet of Thingsに注力、高解像度12.2型タブレットも [2014年1月10日]

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2014年1月7日から10日まで、米ラスベガスで世界の家電やデバイスのトレンドを把握できる2014 International CES(Consumer Electronics Show)が開催された。今年のCESはウエアラブル端末やスマートカーの展示が増えたこともあり、展示面積が歴代最大の200万平方メートルを超え、来場者数も歴代最大を記録しそうだという。

 韓国からはサムスン電子とLG電子を筆頭に、KIA自動車、サムスン電機、ヘルスケアや小型家電を得意とする中小企業など約40社が参加・出展した。

サムスンは超大型4Kテレビで壁を形成

 サムスン電子は「Smart Living & Beyond」をテーマに、スマートフォンやウエアラブル端末にインストールしたアプリで家の中の家電を操作するスマートホーム、サムスンの技術力を象徴する世界初の105インチの曲面(Curved)4KTV、85インチの曲面にも平面にもなる(Bendable)4KTVを目玉として展示した。

 リモコン1つでテレビの両側が曲面になったり平面になったり、映像や視聴環境に合わせて角度を調整できる。サムスン電子は大型4KTVを並べて、グランドキャニオンをイメージしたウォールを作ったりもした(写真)。


サムスン電子のブース。大型4KTVを並べグランドキャニオンをイメージしたウォールを作った。(写真提供:サムスン電子)

 4KTVは日本メーカーとサムスン・LGが激しく競争する分野であるが、今年は中国勢も4KTVを展示するようになった。韓国勢は少しでも気を緩めると日本には先を越され中国には追いつかれてしまう状況で、緊張している様子だ。

サムスンはIoT時代にも備え

 サムスン電子米国法人のティム・ベクスター副社長は、「2014年はすべてのものがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)の時代になる」としている。サムスンの「スマートホーム」は、サムスンが持つ半導体とディスプレイの技術、幅広い家電ラインアップを生かしたサービスであり、IoTで便利になる未来の家庭を一足先に実現したものだと説明した。サムスンのスマートホームは、家電の制御、管理(家電が自ら不具合をチェックしてどこを修理すればいいのか教える)、家中の防犯、という3つの機能を提供する。

 サムスンのウエアラブル端末「GALAXY Gear」とBMWとのコラボも登場した。GALAXY Gear専用アプリ「iRemote」から、BMWの電気自動車i3のバッテリー充電状況確認や車内の温度調節を行い、GALAXY Gearに行きたい場所の住所を言うと音声認識で車内のナビゲーションが自動的に道案内を始めるといったことができる。


サムスン電子とBMWが提携し、GALAXY GearからBMWの電気自動車の充電状況を確認したり、空調を制御できるようにした。(写真提供:サムスン電子)

12.2型高解像度タブレットも投入

 サムスン電子はCESでタブレットPCの新機種4種も公開した。世界最大12.2インチで鮮明なディスプレイ(解像度2560×1600ドット)が売りの「GALAXY NOTE Pro」は、Quad Viewと呼ぶ機能で、画面を4分割して同時に4つの機能を使えるようにした。「GALAXY Tab Pro」は12.2インチ、10.1インチ、8.4インチの3種で、スペックはGALAXY NOTE Proそのまま。Sペン(電子ペン)を外してより薄く軽くなった。サムスン電子米国法人は、2014年は特にタブレットPCの販売に力をいれると強調した。

 今年はサムスン電機が初めて部品ではなく完成品としてワイヤレス充電パッドを展示したことも話題になった。A4WP(Alliance for Wireless Power)が公式認証した磁気共鳴方式のワイヤレス充電方式を採用している。1つの充電パッドで2台のスマートフォンを同時に充電でき、充電パッドの上にコインや鍵など金属物質を置いても安定的に充電できる。この他に厚さ3mmの超薄型充電パッドも展示した。

LGはヘルスケアに注力

 LG電子もサムスン電子と同じように105インチの曲面4KTVと77インチのBendable(OLED)4KTVを目玉にした。その一方で、ヘルスケア機能があるウエアラブル端末「LifeBand」と「心拍イヤホン」を初公開した。

 LifeBandを腕にはめ心拍イヤホンを耳に付けると、運動量と耳の血流をチェックしてカロリー消費量、心拍数、血圧を測ってくれるという。LG電子のLifeBandは、サムスン電子のGALAXY Gearとは違って腕にはめても邪魔にならないおしゃれなデザインを追及したという。ソニーの「SmartBand」に近いかもしれない。

自動車とスマホの連動にも注目

 KIA自動車は、電気自動車用向けのスマートフォンアプリ「UVO EV eService」を体験できるようにした。
 


KIA自動車は電気自動車向け安全走行や自動車制御・管理を行えるアプリを体験できるようにした。(写真提供:KIA自動車)

 北米地域限定のサービスになるが、目的地を入力すると衛星データを分析して車の充電状態と現在の道路状況から車で走れる距離を示し、どこでどのタイミングで充電すればいいのか充電所を案内してくれるのはとても便利だ。安全な走行をサポートする車両・道路インフラ間通信機能(事故・渋滞確認・道路表示案内認識)、道路状況とドライバーの感情を分析してそれに合わせた音楽を流す機能、秘書機能(日程確認や情報検索)、音声認識・指を使う動作認識機能、ドライバーの健康チェック機能まである。スマートカーらしいサービスを利用できるように仕上がっている。

韓国勢のスマートフォン新製品は2月のMWCに持ち越し

 中国勢と違い、サムスン・LGはスマートフォンの新機種をCESでは公開しなかった。米ガートナーによると、2014年スマートフォンは新興国での需要は大きく伸びるため華為(ファーウェイ)、Lenovo(レノボ)、ZTEなど中国勢が得意とするローエンド市場は成長し、サムスン・LGが得意とするハイエンド市場は減少すると見込まれている。

 韓国勢のサムスン・LGは、新興市場向け機種も含めて、スマートフォンは全て2月の展示会MWC(Mobile World Congress)で公開するとしている。スマホ市場で人気が復活しつつあるソニーも加わって、日中韓の競争がどの分野よりも激しくなりそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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韓国アプリアワード、位置情報やARなど応用した「生活便利アプリ」が受賞 [2013年12月27日]

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 2013年も残りあとわずかとなり、韓国でも各分野で1年を振り返るイベントが行われている。アプリケーション業界でも、今年公開されたアプリで最も優秀な製品を選定する「スマートアプリアワード」の授賞式があった。韓国のアプリ開発専門家、2000人がデザインやユーザーインタフェース、技術、コンテンツ、サービスを評価し、革新的で優秀な製品を選ぶ。後援しているのは、韓国のICT政策を担当する省庁の未来創造科学部(部は省に当たる)だ。受賞すると、ダウンロードページに大々的に書き込んで宣伝するほど、自慢になるアワードでもある。

 「総合大賞」に選ばれたアプリは、KIA自動車の「KIA Motion」だった。写真と音楽を選択するだけで簡単に動画を制作でき、SNSで共有もできる。しかし韓国内では、「HONDAの動画制作アプリ『road movies』をそっくり真似たのが大賞だなんて」と選定に問題があるのではないかと疑問を投げかけるユーザーも少なくなく、「スマートアプリアワード」の信頼性が揺らいでしまった。

 一方で、部門別大賞や優秀賞を受賞したアプリには斬新な製品が多く、13年を代表できるアプリとして納得できた。

 例えば、「マーケティングイノベーション大賞」を取った韓国・新世界デパートのアプリは、AR(拡張現実)を利用してオンラインとオフラインをつなげるツールである。位置情報を利用してユーザーのいる場所から近い店舗のセール情報を提供し、デパートのARコーナーでアプリを起動すると、スマートフォンの画面にその都度、違う商品が登場し、画面の商品を割引価格で購入できる。

 冬はブーツを履くことが多いが、気に入った靴があっても履き替えるのが面倒だからと買わずに帰る客をつかまえるため、スマホで自分の足を撮影し、気に入った靴にカメラを当てて合成する「バーチャル試着」の機能が利用できる。衣装はスマホではなく、デパート内にあるバーチャル試着専用のブースを利用するようになっている。新世界デパートによると、バーチャル試着やバーチャルクーポンで楽しくショッピングができると口コミで広がり、アプリ公開から4カ月で40万人以上がダウンロードしたという。

「スマートアプリアワード総合大賞」を受賞したKIA自動車の「KIA Motion」の画面

 

スマートTVや他のデバイスと連動するアプリに期待

 「生活サービス部門大賞」は、位置情報を利用して各種料理の出前を注文できる「配達トン」が受賞した。アプリを起動すると自分の居場所から出前を注文できる料理のリストが登場し、メニューを見ながらお店に電話をして注文できる。

 現金やクレジットカードを持っていなくても、アプリ経由であれば携帯電話料金との合算請求で注文でき、次の注文に使えるポイントも貯まるところが便利だとして話題になった。料理だけでなく、花やその他の代わりに買ってきてほしいものをお願いすることもできる。

 「公共サービス分野大賞」は安全行政部の「スマート安全帰宅」が受賞した。自分の目的地と居場所を保護者に伝えることができるアプリで、共働き家庭で子供の居場所を確認したり、子供の居場所をマップ上に表示したり、子供が帰宅経路から外れると保護者にメールで知らせるといった機能がある。国民の8割近くがスマホユーザーの韓国だけに、GPS機能のあるスマホを使って子供やお年寄りの安全を守れるアプリを省庁が無料で配布している。

 「公共サービス分野優秀賞」では、事故の内容と現場をより正確に早く消防や警察に通報できる「スマート救助隊」が受賞した。国土交通部が提供するアプリで、応急処置や生活安全情報といった付加コンテンツもあり、生活必需アプリとして定着している。

 市内の交通状況をリアルタイムに確認できる「ソウル交通ポータル」を、ソウル市が「公共サービス分野」で受賞した。道案内や道路の渋滞や事故確認、駐車場、バスの乗り換えや到着時間案内、地下鉄乗り換えや運行情報案内、ソウル市内各地の防犯カメラ映像確認、交通関連相談(ソウル市コールセンター)などのメニューがある。自家用車で出勤する人が多く、朝から晩まで渋滞するソウルではとても使えるアプリだ。

 韓国では各省庁も生活を便利にする無料アプリ配布に熱心で、企業もオンラインとオフラインをつなげるマーケティングツールとして面白いアプリを無料で提供している。「あると生活が便利」というより、「ないと何もできない」というほど、韓国ではスマホが生活に根付いてしまった。

 14年から韓国では4K放送が始まるほか、冬季オリンピックやワールドカップといったイベントもあるため、高画質スマートTVの普及が増えると見込まれている。スマホだけでなく、スマートTVや他のデバイスとも連動するアプリが今後、「スマートアプリアワード」に選ばれるのではないだろうか。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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氷点下7度で6泊7日の徹夜待ち、新型iPadとPS4の行列が大きな話題に [2013年12月20日]

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 2013年12月16日午前8時、ついに韓国でも「iPad Air(9.7インチ)」と「iPad mini Retina(7.9インチ)}が発売された。アップル輸入代理店やディスカウントショップ、量販店、キャリアのKTとSKテレコムの代理店前には、氷点下7度の寒波にも関わらず前日の午後から徹夜組が登場した。各店舗では第1号購入者と先着50人までiPad用のキーボードや液晶保護フィルム、専用のカバーを贈呈するイベントを行った。

 あまりにも寒いので、キャリアの代理店は早朝から暖かい飲み物を配ったり、店舗のオープン時間を前倒しにして建物の中で待てるようにしたりして徹夜組に配慮した。販売する店舗の数が多かったので来店客が分散し、長蛇の列というほどではなかったが、繁華街にある店舗には朝5時には200人以上が集まり盛り上がった。

 iPad AirとiPad mini Retinaは、オンライン販売も含めて初日で完売。現在は、注文してから5日ほど待たされるという。キャリアと量販店によると、韓国ではiPad mini Retinaより画面が鮮明で大きいiPad Airの方が売れているそうだ。iPad Airは、既存のiPadに比べてアプリの起動が数秒早くなり、高画質写真や設計図もつぶれることなくきれいに表示できるので業務用にも十分使える、と高い評価を得ている。

 韓国の大手オンライン書店のアラジンはiPad AirとiPad mini Retinaに大河小説全巻や世界文学シリーズ、ベストセラーの電子本をセットにして割引販売したところ、販売開始10分で売り切れ、今は5000人近く予約待ちしているという。新型iPadのおかげで、12月16日から電子本の売り上げも20%ほど増加したそうだ。

 12月17日はソニー・コンピュータエンタテインメント・コリア(SCEK)が「PlayStation 4」(PS4)を韓国で正式発売した。本体の値段は49万8000ウォン(約4万9000円)だ。イベント会場となったソウル市南の国際電子センターは、PS4のロゴで染まった。多くのファンであふれるPS4の発売会場を見渡してSCEK代表の川内史郎氏が涙する場面もあり、韓国のゲーム雑誌は「マリオ(スーパーマリオブラザーズ)激似の川内代表が感激して泣いた」と紹介していた。


「Killzone Shadow Fall」は韓国でも人気の「PlayStation 4」ソフトだ(PlayStationの韓国公式サイトより)

第1号購入者は「もう二度と並びません」ときっぱり

 PS4を1カ月間無料で体験できるブロガー28人も公開した。70倍もの競争から選ばれたブロガーだという。

 会場に6泊7日間も並んだ第1号購入者がいたことで、PS4はものすごい宣伝効果を上げた。韓国のテレビや経済新聞まで6泊7日も並ぶほどPS4はすごいものなのかと特徴や海外での人気ぶりを紹介したからだ。氷点下の真冬に6泊7日もの野宿を覚悟して並んだ第1号購入者のインタビューも韓国のメディアに大きく取り上げられた。

 「奥さんが応援してくれたおかげで挑戦した」という第1号購入者。6泊7日の間もっとも大変だったのは、「SCEKの負担になるほどの好意」だったそうだ。寒さで第1号購入者が体調を崩してしまっては大変だとSCEK側がテントと暖房を用意してくれたが、これが逆に目立って恥ずかしかったという。

 「登山のように、自分の足で苦難を乗り越えてPS4を手にしたかったのに、SCEKの好意でケーブルカーに乗って頂上に着いてしまった気分」だという第1号購入者は、PS5が出たらまた並ぶつもりかと聞かれ、「もう二度と並びません」ときっぱり。購入した第1号PS4はコレクション用で、もう1台を買ってゲームをするのだとか。

 韓国で人気のPS4ソフトは「Killzone Shadow Fall」。第1号購入者をはじめ、会場に集まった多くの人が「Killzone Shadow Fallをプレイするのが楽しみ!」だと話していた。12月20日からは韓国マイクロソフトがPS4のライバルである新型テレビゲーム機「Xbox 360」をPS4より安い34万8000ウォン(約3万4000円)で販売する。Xbox 360の次世代機といえる「Xbox one」は14年に発売予定だ。

 韓国のゲームユーザーは、「行列競争」で勝つのはPS4かXbox oneか、さらに実際の販売ではどうか、といった話題で持ちきり。ゲーム以外にも大いに楽しんでいる。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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「韓国スマートヘルスケア最前線」CESで目立った「ウエアラブル+ヘルスケア」、LG社も本格的に市場参入へ [2014年01月23]

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2014年1月7~10日に米国ラスベガスで開催された「2014 International CES」では、「フィットネステックゾーン」「ヘルスケアゾーン」が新設され、中国のZTE社やソニーのウエアラブル端末も注目を浴びた。これまでのウエアラブル端末は「こういうものも作れる」というメーカーの技術を宣伝するための展示のように見えたが、2014年はビジネスとして「ウエアラブル+ヘルスケア」「ウエアラブル+フィットネス」に一歩踏み出したメーカーが多い印象を受けた。

目立っていたLG社


 中でも目立っていたのが、韓国LG Electronics社だ。同社は、ヘルスケア機能を備えるウエアラブル端末「ライフバンドタッチ(lifeband touch)」と「心拍イヤホン(heart rate earphone)」を公開した。LG社はCESの会場で実施したプレス向け発表会で、2014年上半期中にライフバンドタッチを発売し、本格的にモバイルヘルスケア市場に進出すると宣言した。

 腕時計型のライフバンドタッチは、身体の活動量を測定するもので、歩数や歩いた距離などからカロリー消費量を計算して表示する。測定した情報は、LG社が提供するフィットネスアプリだけではなく、人気の高い他のダイエットアプリやフィットネスアプリと連動して使えるようにした。

 LG電子のライフバンドタッチはiOSとAndroid両方のスマートフォンと連動する。この点では、自社のスマートフォンにしか連動しない韓国Samsung Electronics社の腕時計型端末「GALAXY Gear」と差異化を図った。


 デザイン面の工夫も施している。柔らかく曲がるので、手首の骨に当たって痛かったりサイズが窮屈で長時間装着しているのが苦痛だったりという不便を可能な限り少なくしている。生活防水機能を備えており、手首の太さに応じてサイズも3種類用意した。有機ELディスプレーの画面をタッチすると、スマートフォンと連動して着信やスマートフォンに保存した音楽を再生する機能もある。

イヤホンで心拍測定

 一方、心拍イヤホンは、イヤホンを利用して耳の血流量から心拍数を測るというもの。音楽を聴きながら測定できる。運動効果を高めるためには一定の心拍数を維持した方が良いため、自分がちゃんと運動効果を出せるほど動いているかをチェックするためにはとても便利な機能といえる。

 心拍数を測定するイヤホンは、韓国の中小企業であるiriver社が2013年のCESで公開し、LG社よりも一足先に販売している。「iriverOn」という名前の製品で、心拍数の測定と同時にGPSを用いて歩いた距離や経路をスマートフォンに記録できるものだ。Bluetooth搭載イヤホンなので、電話の着信機能もある。運動記録用のアプリケーション(以下、アプリ)はFacebookのIDでログインするようになっているので、Facebookの友達同士で運動記録を共有し、励まし合うこともできる。


Samsung社の自転車連動端末にも注目

 Samsung Electronics社は、米国の自転車メーカーであるTrek社と提携し、自転車のペダルを漕ぐと「GALAXY NOTE3」を充電できるサービスを展示した。GALAXY NOTE3をTrek社の自転車のハンドルに装着すると、スマートフォンと自転車に取り付けたセンサーが連動して、自転車に乗って移動した距離、移動速度などをGALAXY NOTE3の画面から確認できるので、サイクリングがより楽しくなるという機能も展示した。この機能は、GALAXY Gearとも連動する。

 中小家電メーカーの韓国Moneual社は、ウエルネス分野のウエアラブル端末を展示した。「Babble」というベビーコミュニケーター端末で、耳が不自由な母親に赤ちゃんの泣き声を伝える。赤ちゃんの近くに丸い人形のような本体を置くと、赤ちゃんの声の音域を分析して、ぐずっているのか、楽しそうにしているのかといった状態を母親用の腕時計型端末に振動で伝える。

産業拡大を支援する韓国政府

 韓国保健福祉部(部は省にあたる)が2013年末に公開した「OECD Health at Glance 2013解説」によると、韓国の一人当たり医療費支出の増加率は2000~2009年の間で年平均9.3%とOECD平均(4.1%)の2倍に当たり、OECD加盟国の中で最も大きかった。過度な医療費負担により貧困層に転落した世帯の割合は0.36%と、OECD加盟国の中で5番目に高いという。韓国では家計に占める医療費の負担が徐々に大きくなっているため、健康を維持し、病気を予防できるようサポートするモバイルヘルスケアが益々注目を浴びるのは間違いないだろう。

 韓国政府は2013年医療法改定による医者と患者間の遠隔診療許可に続き、ヘルスケア用ウエアラブル端末の標準制定、ヘルスケア用バイオセンサー開発、モバイルヘルスケアのための医療情報システム改良、医療情報のビッグデータ分析などを支援している。2014年も韓国政府は世界に先駆け規制を緩和し、韓国の企業が多様なビジネスモデルでヘルスケア市場をリードできるようにするつもりだ。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2014年1月23
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