韓国で「歩きスマホ」原因の交通事故2倍近く増加、危なくてもやめられないのは“中毒”のせい? [2014年1月24日]

.
日本では最近、「歩きスマホ」「ながらスマホ」をやめようというキャンペーン広告をテレビで流しているようだ。日本のスマートフォン普及率(
関連記事:スマホ契約者は全体の44.5%で増加の勢いに陰り、MM総研調査)に比べて韓国の普及率は高く、8割を超えている。それだけに、問題も深刻になっている。

 韓国では常にスマートフォンを握りしめていないと不安になる“中毒”状態の人が少なくない。LINE(ライン)やKakao Talk(カカオトーク)などでチャットをしながら歩くのは当たり前。スマートフォンにメッセージが届くと自動車運転中でもつい確認してしまうという人が実に多い。

 満員電車の中でもみんな手にスマートフォンを持っている。スマートフォンの角で背中を押されたり、頭にぶつけられたりして嫌な気分になることもある。さらにはスマートフォンで動画を観ながら歩く人までいる。耳はイヤホンでふさがり目はスマートフォンに釘づけ。これでは事故が起きない方がおかしい。

成人の95.7%が「歩きスマホ」経験

 韓国のあるテレビニュースでは、横断歩道で左右確認せずスマートフォンを見ながら歩いていた人が車とぶつかり飛ばされる映像を流した。「これでも歩きスマホしますか?」と訴えかけた映像は、視聴者に衝撃を与えた。筆者の場合、この映像を見て歩きながらスマートフォンで時間を確認することすら怖くてびくびくするようになったほどだ。

 韓国現代海上火災保険社と韓国交通安全公団が2014年1月公開した報告書によると、携帯電話・スマートフォンの使用が原因の交通事故は2009年437件から2012年848件と1.9倍に増加した。歩行者の「歩きスマホ」による交通事故は午前10時から午後6時の間に発生したケースが58.7%、運転者の「ながらスマホ」による交通事故は午後6時から深夜0時の間に発生したケースが38.6%と最も多かった。

 成人300人を対象にしたアンケート調査では、95.7%が「歩行中にスマートフォンを使ったことが1回以上ある」と答えた。その内21.7%は「歩行中のスマートフォン使用によって事故になりかけたことがある」と答えた。

2.5m前の自転車にしか気づけない

 韓国交通安全公団は最も事故が多い首都圏の横断歩道10カ所で2011年から3年間観察調査を行った。歩行者の4.3%が横断歩道でもスマートフォンを見つめたまま、2.4%は通話しながら横断していて、周りを確認しないまま横断していることが分かった。

 韓国交通安全公団は、歩きながらスマートフォンを使用することがどれほど危険なのかについても実験した。前方から自転車のベルが鳴ると、何も利用していない時は15m前で気付く。一方でスマートフォンを利用しながら歩くと、20代は10メートル前、40代は7.5m前で気付き、50代は2.5mとほぼ目の前に自転車が近づかないと気が付かなかった。また、何もせず歩く時、人間の目の視野角は120度だが、歩きながらスマートフォンをすると視野角は10度まで狭くなった。

 韓国では「歩きスマホ」の規制論が広がっている。米ニュージャージ州やユタ州のように歩きながらスマートフォンでメールを書くと罰金を科したり、日本のNTTドコモのように「歩きスマホ防止機能」を提供したりするべきだという意見もある。

学校や公的機関による“中毒”対策も

 また、歩きながらのスマートフォンをやめられないのは“中毒”であるとして、自治体とキャリアはスマートフォン中毒予防活動に力を入れている。ソウル市内の小学校では、登校・下校時に歩きながらスマートフォンを使わないよう指導。保護者らがボランティアで学校近くの横断歩道に立って指導している。

 ソウル市が運営する「インターネット中毒予防相談センター」では、スマートフォン中毒の予防と治療にも取り組んでいる。相談センターによると、スマートフォン中毒はSNS中毒でもあり、男性よりも女性がかかりやすいという。「SNSでメッセージが届いたらすぐ返事をしないといけない」という強迫観念を持つ人が多い。中毒治療は自分の行動を自覚させることから始めるという。

大手キャリアは“自制用”アプリ提供

 大手通信事業者(キャリア)のSKテレコムは「スマートセルフコーチ」というアプリを無料提供している。スマートフォンとアプリを1日何時間使用したのかをリポートし、何時から何時まではスマートフォンが機能しないように自らセットして、使用を自制できるようにする機能がある。自ら1日何時間スマートフォンを使ったのかを確認し、「使いすぎではないか」と自覚させるのが目的だ。


スマートフォン利用時間を自ら制限できるアプリ「スマートセルフコーチ」。SKテレコムが提供

 今やスマートフォンは仕事の必需品でもあり、会社からの連絡などに歩きながらついつい返事をすることもある。くれぐれも事故にならないよう、横断歩道や駅のホームでの歩きスマホは注意しよう。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140124/1119023/

2年ぶり韓国に戻ってきたソニーのスマホ、サムスンにはない色や防水機能が脚光浴びる [2014年1月17日]

.
 ソニーコリアは2014年1月16日、韓国でAndroidスマートフォン「Xperia Z1」(日本では発売中、
関連記事)と腕時計型端末「スマートワッチ2」(SmartWatch 2、関連記事)を発売すると発表した。17日から予約受付を開始している。実はソニーのスマホが韓国で販売されるのは、2011年9月の「Xperia Ray」以来のことである。サムスン電子やLG電子といった韓国メーカーのスマホにはない機能やカラーバリエーション話題になっている。


「Xperia Z1」の国内発売を知らせるソニー韓国法人のWebサイト

 韓国のユーザーがXperia Z1の特長として注目するのは、やはり約2070万画素の高性能カメラである。韓国ではソニーの一眼レフカメラが「コンパクトなのに高性能」「(一眼なのに)自分撮りに向いている」「きれいに撮れる」といったことから高く評価されている。ソニー製のカメラに対する期待値は高く、韓国メーカー製スマホよりも優れていそうだと期待されている。

 また韓国メーカーのスマホにはない防じん・防水性能やFMラジオ機能も話題だ。韓国のスマホは防水を強調するモデルはなく、FMラジオ受信機能のあるスマホも最近は見なくなった。ネットラジオ用アプリをインストールすれば無料でラジオを聴けるので、スマホ本体にラジオ受信機能を付けなくなったという事情もある。

キャリアに縛られないハイエンド機という側面

 ネットでの反応を見ると、カメラや防水に加えて意外な話題になっているのが、「パープル」の端末があることだ。韓国のスマホにはないきれいなパープル色が魅力になっている。韓国のスマホのカラーバリエーションはホワイト、ブラック、ピンク、ブルーぐらい。別売りのカラフルなフリップカバーを付けることで自分だけのカラーを楽しんでいるが、端末自体の色を選択できれば、本体の防じん・防水性能をそのまま生かせる。

 Xperia Z1の端末価格は74万9000ウォン(約7万4000円)と高めである。だが、ソニーショップでスマホを買って好きなキャリアを選択することができる。大手通信事業者(キャリア)よりも通信料金が安いMVNO(仮想移動体通信事業者)の端末として使えるところも魅力がある。韓国ではこれまで、Xperia Z1のようなハイエンドのスマホはキャリアの代理店でしか買えなかったからだ。サムスンの「GALAXYシリーズ」以外の選択肢が増えたことを喜ぶ人も多い。

サムスンは腕時計型端末を対抗値下げ

 Xperia Z1と同時に、腕時計型端末のスマートワッチ2も韓国で正式発売されることになった。価格は21万9000ウォン(約2万1000円)。これに対抗してか、サムスンは2014年1月から腕時計型端末の「GALAXY Gear」を値下げした。39万6000ウォン(約3万9000円)から29万6000ウォン(約2万9000円)への大幅値下げである。GALAXY Note 3とGALAXY Gearを一緒に購入するとさらに安くなるキャンペーンも行っている。GALAXY Gearとスマートワッチ2の価格競争に発展する可能性もある。


韓国で正式発売されることになったソニーの「スマートワッチ2」

 スマートワッチ2の長所は、さまざまなデバイスと連動できるところだ。サムスン製端末としか連動できないGALAXY Gearとは異なり、スマートワッチ2はAndroid 4.x以降であればソニー以外の端末とも連動させて使うことができる。韓国ではLG電子のスマホとスマートワッチ2を連動させて使っているユーザーが多かったが、今後はソニー製品同士で組み合わせて使えるようになるわけだ。GALAXY Gearはバッテリーが1日ぐらいしか持たないが、スマートワッチ2は低電力設計で3日以上使えるというところも便利だ。

 スマートワッチ2のデザインは韓国でも好評で、正式発売前から個人輸入で購入する人も少なくなかった。すでに2013年10月から「ソニーのスマートワッチ2買った!」という自慢レビューがたびたび投稿されていた。

 2年ぶりに韓国に戻ってきたソニーのスマホ。GALAXYの本拠地である韓国でもヒットできるか、注目したい。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140116/1118043/

CES2014で韓国勢は4KテレビやInternet of Thingsに注力、高解像度12.2型タブレットも [2014年1月10日]

.
2014年1月7日から10日まで、米ラスベガスで世界の家電やデバイスのトレンドを把握できる2014 International CES(Consumer Electronics Show)が開催された。今年のCESはウエアラブル端末やスマートカーの展示が増えたこともあり、展示面積が歴代最大の200万平方メートルを超え、来場者数も歴代最大を記録しそうだという。

 韓国からはサムスン電子とLG電子を筆頭に、KIA自動車、サムスン電機、ヘルスケアや小型家電を得意とする中小企業など約40社が参加・出展した。

サムスンは超大型4Kテレビで壁を形成

 サムスン電子は「Smart Living & Beyond」をテーマに、スマートフォンやウエアラブル端末にインストールしたアプリで家の中の家電を操作するスマートホーム、サムスンの技術力を象徴する世界初の105インチの曲面(Curved)4KTV、85インチの曲面にも平面にもなる(Bendable)4KTVを目玉として展示した。

 リモコン1つでテレビの両側が曲面になったり平面になったり、映像や視聴環境に合わせて角度を調整できる。サムスン電子は大型4KTVを並べて、グランドキャニオンをイメージしたウォールを作ったりもした(写真)。


サムスン電子のブース。大型4KTVを並べグランドキャニオンをイメージしたウォールを作った。(写真提供:サムスン電子)

 4KTVは日本メーカーとサムスン・LGが激しく競争する分野であるが、今年は中国勢も4KTVを展示するようになった。韓国勢は少しでも気を緩めると日本には先を越され中国には追いつかれてしまう状況で、緊張している様子だ。

サムスンはIoT時代にも備え

 サムスン電子米国法人のティム・ベクスター副社長は、「2014年はすべてのものがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)の時代になる」としている。サムスンの「スマートホーム」は、サムスンが持つ半導体とディスプレイの技術、幅広い家電ラインアップを生かしたサービスであり、IoTで便利になる未来の家庭を一足先に実現したものだと説明した。サムスンのスマートホームは、家電の制御、管理(家電が自ら不具合をチェックしてどこを修理すればいいのか教える)、家中の防犯、という3つの機能を提供する。

 サムスンのウエアラブル端末「GALAXY Gear」とBMWとのコラボも登場した。GALAXY Gear専用アプリ「iRemote」から、BMWの電気自動車i3のバッテリー充電状況確認や車内の温度調節を行い、GALAXY Gearに行きたい場所の住所を言うと音声認識で車内のナビゲーションが自動的に道案内を始めるといったことができる。


サムスン電子とBMWが提携し、GALAXY GearからBMWの電気自動車の充電状況を確認したり、空調を制御できるようにした。(写真提供:サムスン電子)

12.2型高解像度タブレットも投入

 サムスン電子はCESでタブレットPCの新機種4種も公開した。世界最大12.2インチで鮮明なディスプレイ(解像度2560×1600ドット)が売りの「GALAXY NOTE Pro」は、Quad Viewと呼ぶ機能で、画面を4分割して同時に4つの機能を使えるようにした。「GALAXY Tab Pro」は12.2インチ、10.1インチ、8.4インチの3種で、スペックはGALAXY NOTE Proそのまま。Sペン(電子ペン)を外してより薄く軽くなった。サムスン電子米国法人は、2014年は特にタブレットPCの販売に力をいれると強調した。

 今年はサムスン電機が初めて部品ではなく完成品としてワイヤレス充電パッドを展示したことも話題になった。A4WP(Alliance for Wireless Power)が公式認証した磁気共鳴方式のワイヤレス充電方式を採用している。1つの充電パッドで2台のスマートフォンを同時に充電でき、充電パッドの上にコインや鍵など金属物質を置いても安定的に充電できる。この他に厚さ3mmの超薄型充電パッドも展示した。

LGはヘルスケアに注力

 LG電子もサムスン電子と同じように105インチの曲面4KTVと77インチのBendable(OLED)4KTVを目玉にした。その一方で、ヘルスケア機能があるウエアラブル端末「LifeBand」と「心拍イヤホン」を初公開した。

 LifeBandを腕にはめ心拍イヤホンを耳に付けると、運動量と耳の血流をチェックしてカロリー消費量、心拍数、血圧を測ってくれるという。LG電子のLifeBandは、サムスン電子のGALAXY Gearとは違って腕にはめても邪魔にならないおしゃれなデザインを追及したという。ソニーの「SmartBand」に近いかもしれない。

自動車とスマホの連動にも注目

 KIA自動車は、電気自動車用向けのスマートフォンアプリ「UVO EV eService」を体験できるようにした。
 


KIA自動車は電気自動車向け安全走行や自動車制御・管理を行えるアプリを体験できるようにした。(写真提供:KIA自動車)

 北米地域限定のサービスになるが、目的地を入力すると衛星データを分析して車の充電状態と現在の道路状況から車で走れる距離を示し、どこでどのタイミングで充電すればいいのか充電所を案内してくれるのはとても便利だ。安全な走行をサポートする車両・道路インフラ間通信機能(事故・渋滞確認・道路表示案内認識)、道路状況とドライバーの感情を分析してそれに合わせた音楽を流す機能、秘書機能(日程確認や情報検索)、音声認識・指を使う動作認識機能、ドライバーの健康チェック機能まである。スマートカーらしいサービスを利用できるように仕上がっている。

韓国勢のスマートフォン新製品は2月のMWCに持ち越し

 中国勢と違い、サムスン・LGはスマートフォンの新機種をCESでは公開しなかった。米ガートナーによると、2014年スマートフォンは新興国での需要は大きく伸びるため華為(ファーウェイ)、Lenovo(レノボ)、ZTEなど中国勢が得意とするローエンド市場は成長し、サムスン・LGが得意とするハイエンド市場は減少すると見込まれている。

 韓国勢のサムスン・LGは、新興市場向け機種も含めて、スマートフォンは全て2月の展示会MWC(Mobile World Congress)で公開するとしている。スマホ市場で人気が復活しつつあるソニーも加わって、日中韓の競争がどの分野よりも激しくなりそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140110/1117368/

韓国アプリアワード、位置情報やARなど応用した「生活便利アプリ」が受賞 [2013年12月27日]

.
 2013年も残りあとわずかとなり、韓国でも各分野で1年を振り返るイベントが行われている。アプリケーション業界でも、今年公開されたアプリで最も優秀な製品を選定する「スマートアプリアワード」の授賞式があった。韓国のアプリ開発専門家、2000人がデザインやユーザーインタフェース、技術、コンテンツ、サービスを評価し、革新的で優秀な製品を選ぶ。後援しているのは、韓国のICT政策を担当する省庁の未来創造科学部(部は省に当たる)だ。受賞すると、ダウンロードページに大々的に書き込んで宣伝するほど、自慢になるアワードでもある。

 「総合大賞」に選ばれたアプリは、KIA自動車の「KIA Motion」だった。写真と音楽を選択するだけで簡単に動画を制作でき、SNSで共有もできる。しかし韓国内では、「HONDAの動画制作アプリ『road movies』をそっくり真似たのが大賞だなんて」と選定に問題があるのではないかと疑問を投げかけるユーザーも少なくなく、「スマートアプリアワード」の信頼性が揺らいでしまった。

 一方で、部門別大賞や優秀賞を受賞したアプリには斬新な製品が多く、13年を代表できるアプリとして納得できた。

 例えば、「マーケティングイノベーション大賞」を取った韓国・新世界デパートのアプリは、AR(拡張現実)を利用してオンラインとオフラインをつなげるツールである。位置情報を利用してユーザーのいる場所から近い店舗のセール情報を提供し、デパートのARコーナーでアプリを起動すると、スマートフォンの画面にその都度、違う商品が登場し、画面の商品を割引価格で購入できる。

 冬はブーツを履くことが多いが、気に入った靴があっても履き替えるのが面倒だからと買わずに帰る客をつかまえるため、スマホで自分の足を撮影し、気に入った靴にカメラを当てて合成する「バーチャル試着」の機能が利用できる。衣装はスマホではなく、デパート内にあるバーチャル試着専用のブースを利用するようになっている。新世界デパートによると、バーチャル試着やバーチャルクーポンで楽しくショッピングができると口コミで広がり、アプリ公開から4カ月で40万人以上がダウンロードしたという。

「スマートアプリアワード総合大賞」を受賞したKIA自動車の「KIA Motion」の画面

 

スマートTVや他のデバイスと連動するアプリに期待

 「生活サービス部門大賞」は、位置情報を利用して各種料理の出前を注文できる「配達トン」が受賞した。アプリを起動すると自分の居場所から出前を注文できる料理のリストが登場し、メニューを見ながらお店に電話をして注文できる。

 現金やクレジットカードを持っていなくても、アプリ経由であれば携帯電話料金との合算請求で注文でき、次の注文に使えるポイントも貯まるところが便利だとして話題になった。料理だけでなく、花やその他の代わりに買ってきてほしいものをお願いすることもできる。

 「公共サービス分野大賞」は安全行政部の「スマート安全帰宅」が受賞した。自分の目的地と居場所を保護者に伝えることができるアプリで、共働き家庭で子供の居場所を確認したり、子供の居場所をマップ上に表示したり、子供が帰宅経路から外れると保護者にメールで知らせるといった機能がある。国民の8割近くがスマホユーザーの韓国だけに、GPS機能のあるスマホを使って子供やお年寄りの安全を守れるアプリを省庁が無料で配布している。

 「公共サービス分野優秀賞」では、事故の内容と現場をより正確に早く消防や警察に通報できる「スマート救助隊」が受賞した。国土交通部が提供するアプリで、応急処置や生活安全情報といった付加コンテンツもあり、生活必需アプリとして定着している。

 市内の交通状況をリアルタイムに確認できる「ソウル交通ポータル」を、ソウル市が「公共サービス分野」で受賞した。道案内や道路の渋滞や事故確認、駐車場、バスの乗り換えや到着時間案内、地下鉄乗り換えや運行情報案内、ソウル市内各地の防犯カメラ映像確認、交通関連相談(ソウル市コールセンター)などのメニューがある。自家用車で出勤する人が多く、朝から晩まで渋滞するソウルではとても使えるアプリだ。

 韓国では各省庁も生活を便利にする無料アプリ配布に熱心で、企業もオンラインとオフラインをつなげるマーケティングツールとして面白いアプリを無料で提供している。「あると生活が便利」というより、「ないと何もできない」というほど、韓国ではスマホが生活に根付いてしまった。

 14年から韓国では4K放送が始まるほか、冬季オリンピックやワールドカップといったイベントもあるため、高画質スマートTVの普及が増えると見込まれている。スマホだけでなく、スマートTVや他のデバイスとも連動するアプリが今後、「スマートアプリアワード」に選ばれるのではないだろうか。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131226/1116583/

氷点下7度で6泊7日の徹夜待ち、新型iPadとPS4の行列が大きな話題に [2013年12月20日]

.
 2013年12月16日午前8時、ついに韓国でも「iPad Air(9.7インチ)」と「iPad mini Retina(7.9インチ)}が発売された。アップル輸入代理店やディスカウントショップ、量販店、キャリアのKTとSKテレコムの代理店前には、氷点下7度の寒波にも関わらず前日の午後から徹夜組が登場した。各店舗では第1号購入者と先着50人までiPad用のキーボードや液晶保護フィルム、専用のカバーを贈呈するイベントを行った。

 あまりにも寒いので、キャリアの代理店は早朝から暖かい飲み物を配ったり、店舗のオープン時間を前倒しにして建物の中で待てるようにしたりして徹夜組に配慮した。販売する店舗の数が多かったので来店客が分散し、長蛇の列というほどではなかったが、繁華街にある店舗には朝5時には200人以上が集まり盛り上がった。

 iPad AirとiPad mini Retinaは、オンライン販売も含めて初日で完売。現在は、注文してから5日ほど待たされるという。キャリアと量販店によると、韓国ではiPad mini Retinaより画面が鮮明で大きいiPad Airの方が売れているそうだ。iPad Airは、既存のiPadに比べてアプリの起動が数秒早くなり、高画質写真や設計図もつぶれることなくきれいに表示できるので業務用にも十分使える、と高い評価を得ている。

 韓国の大手オンライン書店のアラジンはiPad AirとiPad mini Retinaに大河小説全巻や世界文学シリーズ、ベストセラーの電子本をセットにして割引販売したところ、販売開始10分で売り切れ、今は5000人近く予約待ちしているという。新型iPadのおかげで、12月16日から電子本の売り上げも20%ほど増加したそうだ。

 12月17日はソニー・コンピュータエンタテインメント・コリア(SCEK)が「PlayStation 4」(PS4)を韓国で正式発売した。本体の値段は49万8000ウォン(約4万9000円)だ。イベント会場となったソウル市南の国際電子センターは、PS4のロゴで染まった。多くのファンであふれるPS4の発売会場を見渡してSCEK代表の川内史郎氏が涙する場面もあり、韓国のゲーム雑誌は「マリオ(スーパーマリオブラザーズ)激似の川内代表が感激して泣いた」と紹介していた。


「Killzone Shadow Fall」は韓国でも人気の「PlayStation 4」ソフトだ(PlayStationの韓国公式サイトより)

第1号購入者は「もう二度と並びません」ときっぱり

 PS4を1カ月間無料で体験できるブロガー28人も公開した。70倍もの競争から選ばれたブロガーだという。

 会場に6泊7日間も並んだ第1号購入者がいたことで、PS4はものすごい宣伝効果を上げた。韓国のテレビや経済新聞まで6泊7日も並ぶほどPS4はすごいものなのかと特徴や海外での人気ぶりを紹介したからだ。氷点下の真冬に6泊7日もの野宿を覚悟して並んだ第1号購入者のインタビューも韓国のメディアに大きく取り上げられた。

 「奥さんが応援してくれたおかげで挑戦した」という第1号購入者。6泊7日の間もっとも大変だったのは、「SCEKの負担になるほどの好意」だったそうだ。寒さで第1号購入者が体調を崩してしまっては大変だとSCEK側がテントと暖房を用意してくれたが、これが逆に目立って恥ずかしかったという。

 「登山のように、自分の足で苦難を乗り越えてPS4を手にしたかったのに、SCEKの好意でケーブルカーに乗って頂上に着いてしまった気分」だという第1号購入者は、PS5が出たらまた並ぶつもりかと聞かれ、「もう二度と並びません」ときっぱり。購入した第1号PS4はコレクション用で、もう1台を買ってゲームをするのだとか。

 韓国で人気のPS4ソフトは「Killzone Shadow Fall」。第1号購入者をはじめ、会場に集まった多くの人が「Killzone Shadow Fallをプレイするのが楽しみ!」だと話していた。12月20日からは韓国マイクロソフトがPS4のライバルである新型テレビゲーム機「Xbox 360」をPS4より安い34万8000ウォン(約3万4000円)で販売する。Xbox 360の次世代機といえる「Xbox one」は14年に発売予定だ。

 韓国のゲームユーザーは、「行列競争」で勝つのはPS4かXbox oneか、さらに実際の販売ではどうか、といった話題で持ちきり。ゲーム以外にも大いに楽しんでいる。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131219/1116045/

「韓国スマートヘルスケア最前線」CESで目立った「ウエアラブル+ヘルスケア」、LG社も本格的に市場参入へ [2014年01月23]

.

2014年1月7~10日に米国ラスベガスで開催された「2014 International CES」では、「フィットネステックゾーン」「ヘルスケアゾーン」が新設され、中国のZTE社やソニーのウエアラブル端末も注目を浴びた。これまでのウエアラブル端末は「こういうものも作れる」というメーカーの技術を宣伝するための展示のように見えたが、2014年はビジネスとして「ウエアラブル+ヘルスケア」「ウエアラブル+フィットネス」に一歩踏み出したメーカーが多い印象を受けた。

目立っていたLG社


 中でも目立っていたのが、韓国LG Electronics社だ。同社は、ヘルスケア機能を備えるウエアラブル端末「ライフバンドタッチ(lifeband touch)」と「心拍イヤホン(heart rate earphone)」を公開した。LG社はCESの会場で実施したプレス向け発表会で、2014年上半期中にライフバンドタッチを発売し、本格的にモバイルヘルスケア市場に進出すると宣言した。

 腕時計型のライフバンドタッチは、身体の活動量を測定するもので、歩数や歩いた距離などからカロリー消費量を計算して表示する。測定した情報は、LG社が提供するフィットネスアプリだけではなく、人気の高い他のダイエットアプリやフィットネスアプリと連動して使えるようにした。

 LG電子のライフバンドタッチはiOSとAndroid両方のスマートフォンと連動する。この点では、自社のスマートフォンにしか連動しない韓国Samsung Electronics社の腕時計型端末「GALAXY Gear」と差異化を図った。


 デザイン面の工夫も施している。柔らかく曲がるので、手首の骨に当たって痛かったりサイズが窮屈で長時間装着しているのが苦痛だったりという不便を可能な限り少なくしている。生活防水機能を備えており、手首の太さに応じてサイズも3種類用意した。有機ELディスプレーの画面をタッチすると、スマートフォンと連動して着信やスマートフォンに保存した音楽を再生する機能もある。

イヤホンで心拍測定

 一方、心拍イヤホンは、イヤホンを利用して耳の血流量から心拍数を測るというもの。音楽を聴きながら測定できる。運動効果を高めるためには一定の心拍数を維持した方が良いため、自分がちゃんと運動効果を出せるほど動いているかをチェックするためにはとても便利な機能といえる。

 心拍数を測定するイヤホンは、韓国の中小企業であるiriver社が2013年のCESで公開し、LG社よりも一足先に販売している。「iriverOn」という名前の製品で、心拍数の測定と同時にGPSを用いて歩いた距離や経路をスマートフォンに記録できるものだ。Bluetooth搭載イヤホンなので、電話の着信機能もある。運動記録用のアプリケーション(以下、アプリ)はFacebookのIDでログインするようになっているので、Facebookの友達同士で運動記録を共有し、励まし合うこともできる。


Samsung社の自転車連動端末にも注目

 Samsung Electronics社は、米国の自転車メーカーであるTrek社と提携し、自転車のペダルを漕ぐと「GALAXY NOTE3」を充電できるサービスを展示した。GALAXY NOTE3をTrek社の自転車のハンドルに装着すると、スマートフォンと自転車に取り付けたセンサーが連動して、自転車に乗って移動した距離、移動速度などをGALAXY NOTE3の画面から確認できるので、サイクリングがより楽しくなるという機能も展示した。この機能は、GALAXY Gearとも連動する。

 中小家電メーカーの韓国Moneual社は、ウエルネス分野のウエアラブル端末を展示した。「Babble」というベビーコミュニケーター端末で、耳が不自由な母親に赤ちゃんの泣き声を伝える。赤ちゃんの近くに丸い人形のような本体を置くと、赤ちゃんの声の音域を分析して、ぐずっているのか、楽しそうにしているのかといった状態を母親用の腕時計型端末に振動で伝える。

産業拡大を支援する韓国政府

 韓国保健福祉部(部は省にあたる)が2013年末に公開した「OECD Health at Glance 2013解説」によると、韓国の一人当たり医療費支出の増加率は2000~2009年の間で年平均9.3%とOECD平均(4.1%)の2倍に当たり、OECD加盟国の中で最も大きかった。過度な医療費負担により貧困層に転落した世帯の割合は0.36%と、OECD加盟国の中で5番目に高いという。韓国では家計に占める医療費の負担が徐々に大きくなっているため、健康を維持し、病気を予防できるようサポートするモバイルヘルスケアが益々注目を浴びるのは間違いないだろう。

 韓国政府は2013年医療法改定による医者と患者間の遠隔診療許可に続き、ヘルスケア用ウエアラブル端末の標準制定、ヘルスケア用バイオセンサー開発、モバイルヘルスケアのための医療情報システム改良、医療情報のビッグデータ分析などを支援している。2014年も韓国政府は世界に先駆け規制を緩和し、韓国の企業が多様なビジネスモデルでヘルスケア市場をリードできるようにするつもりだ。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2014年1月23
-Original column

デスクトップPCより、スマホの利用時間が長くなった韓国 [2013年12月13日]

.
2013年12月10日に韓国情報通信政策研究院が発表した調査結果によると、13年の韓国人のネット利用形態が初めて、パソコンからスマートフォンへ移行した。デスクトップのパソコンよりスマホの利用時間の方が長いというのは韓国でも意外だったようで、テレビのニュースにまでなった。

 12年と13年にそれぞれ1万319人と1万464人を対象にプライベート時間のメディア利用状況を調査したところ、スマホの1日あたりの平均利用時間は、12年の約46分から13年は66分と40%ほど増えた。パソコンの利用時間は12年の61分から13年は55分に減少した(タブレットやノートパソコンは調査対象に含まれていない)。

 韓国情報通信政策研究院は、韓国でスマホの利用時間が大きく伸びたのは、ゲームアプリを利用する人が増えたことが影響しているようだ、と見ている。LTE対応のスマホの保有率が12年の11.5%から13年は37.2%と3倍以上増加したことで、スマホから途切れることなく高画質動画を視聴できるようになったのも影響している、と分析した。スマホはテレビを見ながら同時に利用することが多いことも、利用時間が伸びた一因のようだ。

 スマホからメッセンジャーアプリを利用する人が増えたことから、スマホから音声通話を利用する時間は1年間で17.6%減、SMS(ショートメッセージ)の利用時間も61%減少した。

韓国キャリアのSKテレコムは化粧品店やカフェを使い、「Shop in Shop」の形態でスマートフォンを販売している

スマホさえあれば何でもできる社会に

 韓国ではゲームといえばパソコンを利用するネットワーク対戦ゲーム、動画といえばパソコンから利用するテレビ局の再放送VODサイトと、パソコンがネット利用の中心にあった。家庭に子供の数だけパソコンがあって当たり前だった。ところがスマホが急激に普及し始めた11年以降、WindowsOS以外は使えなかった韓国のインターネットバンキングや電子政府サイトもスマホ向けサイトを作るようになり、Windowsパソコンが使わなくなったのもパソコン減少に影響したとみられる。

表●韓国人のメディア利用状況(韓国情報通信政策研究院)
---------------------------------------------------
2012年 2013年
---------------------------------------------------
スマートフォン 46分 66分
家庭用TV 183分 185分
デスクトップパソコン 61分 55分
フィーチャーフォン 22分 11分
(紙)新聞・本・雑誌 53分 52分
---------------------------------------------------

 情報通信政策研究院の別の調査では、韓国20代がもっとも重要だと答えたメディアは「スマートフォン」で、続いて「デスクトップPC・ノートPC」31.2%、テレビ15.9%の順だった。韓国の20代は93.5%がスマートフォンを持っていて、その内57%は移動中にスマーホからテレビを観ていると答えた。さらにその内の26.5%は家の中にいる時もテレビではなくスマホからテレビを観ていると答えた。

 韓国では、スマホが家庭の全ての家電を動かすリモコンになったり、健康管理をしてくれるヘルスケア端末になったり、財布を忘れた時に携帯電話料金を合算請求で決済できるポストペイのおサイフケータイになったり、スマホさえあれば何でもできてしまう社会になりつつある。スマホの利用時間は今後、もっと伸びることは間違いなさそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131213/1115203/

韓国で話題の「浮気向け」スマホ、連絡先や写真を隠すシークレット機能充実 [2013年12月6日]

.
指紋認識の機能に加え、写真や連絡先を他人に見られないよう隠せるようにした、個人情報保護機能というより、いわば「シークレット機能」までも搭載したパンテックのスマートフォン、その名もずばり「シークレットノート」が、「浮気向け」スマホとして韓国で話題になっている。

 iPhoneやGALAXYといったスマホでも、画面のロックを解除するには暗証番号を入力しないといけない。スマホを紛失した際、他人に使われるのを防止する機能はどの製品もついている。しかし恋人や配偶者から、「スマホ見せて」と言われたらどうするか。子供がスマホでゲームをしたいと頼まれたら、どうするべきか。スマホを貸さずにはいられないだろう。となると、見られたくないものまで見られてしまうかもしれない。

 シークレットノートは、ロック解除方法を「一般モード」と「シークレットモード」に分けて設定できる機能がある。一般モードは通常の暗証番号設定方式で、誰に見られても大丈夫なアプリ・写真・動画・連絡先だけ画面に表示する。シークレットモードで画面を見たい場合は指紋認証しなければならないのである。

 隠したいアプリ・写真・動画・連絡先は、本人が指紋認証しないと画面に表示しないので、「隠しファイルがあることを気付かれることがない」「パソコンのように暗証番号を設定したフォルダが丸見えで問い詰められるといったことがない」というのが最大の特徴だ。

 例えば、浮気相手の連絡先やチャット内容を削除しなくても、誰にも気づかれることなくこっそり隠せる。何かを隠していること自体を「隠せる」わけだ。韓国の代理店やスマホのレビューサイトでは「産業スパイか浮気している人にはぴったり」と評判だ。


シークレットノートのテレビCMでは「浮気」の手助けではなく、マッチョな男性が顔にパックをするなど女性っぽい自分の趣味を「隠す」ために使うという内容にしている

あくまで「私生活を徹底して守るスマホ」として宣伝

 指紋認識の機能はスマホの後面にある。スマホを片手で握った時に人差し指が付くところに指紋認識ボタンがあるので、そこを指でこするだけで指紋認証できる。片手でスマホを持って片手の指の指紋を認識させるといった手間を省いた。指紋は2種類登録できるので、2人分の指紋を登録するか、本人の指紋を指2本分登録できる。

 パンテックは、浮気を手助けするスマホと直接的に宣伝しているわけではない。あくまでも「私生活を徹底して守るスマホ」として宣伝している。完璧なセキュリティと私生活保護機能を必要とする芸能人や著名人に、シークレットノートのユーザーが多いと強調する。シークレットノートのテレビCMは、マッチョな男性が実は顔にパックをしたり自分撮りが大好きだったりといった女性っぽい自分の趣味を隠すために、シークレットモードを使っているという内容になっている。

 2013年10月に発売開始してから30万台を突破し、目標にしていた50万台販売を無事達成できる見込みだ。パンテックはこの勢いに乗ってシークレット機能をさらにアップグレードしたり画面サイズを5.9インチから5.6インチに小さくした「シークレットアップ」という名称のスマホを12月中に発売する。

 シークレットアップはソニーのVAIOにあったような、横から画面をのぞけないようにする「シークレットブラインド機能」を追加した。LINEでチャットをしたり、ゲームをしたりする際に、隣の人がちらちら見るようで気になるというときには、ぴったりかもしれない。パンテックは、「シークレットアップなら100万台は売れるはず」と自信満々だ。

 パンテックは携帯電話一筋の中堅メーカーで、フィーチャーフォン時代はスライド式端末が大ヒット。斬新で面白い携帯電話を作るメーカーとしてサムスン電子に負けず人気が高かった。スマホ時代になってからは鳴かず飛ばずで、経営状況がかなり悪化しているが、シークレットノートとシークレットアップで2014年には巻き返しを狙っている。韓国のスマホ市場には中国勢もどんどん進出している。市場シェア圧倒的1位のサムスン電子を除くメーカー競争はますます熾烈になっている。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131206/1114343/

iTunesには負けられない?サムスン電子「GALAXY」専用の音楽配信開始 [2013年11月29日]

.
 サムスン電子が「GALAXYシリーズ」のスマートフォンやタブレットPC向けの音楽配信サービス「サムスンミュージック」を始めた。アップルがiTunesなら、サムスン電子はサムスンミュージックというわけだ。Google Play Musicとは別もので、GALAXYシリーズに合わせた高音質音楽サービスが目玉だという。アップルと訴訟が続いているサムスン電子は、iPhoneに対抗して付加価値を付けるためにも、iTunesやApp Storeに負けないコンテンツサービスを自前でそろえたいようだ。

 サムスン電子が独自に提供する音楽配信は、欧米向けには2013年5月から、韓国向けには9月からテストサービスを行っていた。全世界の楽曲320万曲のストリーミングとダウンロード、ラジオ機能のほか、「歌手が自分の隣で歌っているかのようだ」といわれるCDより4倍高音質なUHQ(Ultra High Quality)で再生できる機能まで用意し、11月25日から本格的にサービスを始めている。320万曲は韓国の音楽配信サービスの中では最大曲である。

 GALAXYのスマホやタブレットPCからサムスン電子のコンテンツストアである「サムスンハブ」をアップデートすると「ミュージック」のメニューが登場。サムスン電子が自らコンテンツを調達して販売するこのサムスンハブには、映像や電子本、ゲーム、学習に続いて音楽のカテゴリーが追加された。


 

音楽をダウンロードできるストアの画面

韓国キャリアの音楽配信サービスより安い

 サムスンミュージックの韓国での利用料はストリーミングだけでは月額で約500円、ストリーミング+ダウンロード30曲分で月額約900円。韓国のキャリアが提供している音楽配信サービスより100円ほど安い値段設定だ。

 韓国の音楽配信サービスは音楽専門のコンテンツプロバイダーではなく、KTやSKテレコムといった通信キャリアの子会社が市場のほとんどを占めていた。携帯電話やスマホを購入すると、それぞれキャリアの音楽配信サービス用のプレーヤーがプリインストールされていて、利用した分キャリアの通信料金に合算請求するかたちになっていた。

 音楽配信アプリを別途ダウンロードしなくても、すぐ使えて決済も楽なので、キャリアの音楽配信サービスが人気が高かった。SKテレコムが運営する音楽配信サービス「MelOn」の利用者数だけで携帯電話加入者数の40%近い1800万人を超えるというから、韓国でどれほど音楽サービスが人気なのか分かる。

 ところが、韓国で一番売れているスマホ、GALAXYのメーカーであるサムスン電子が直接音楽サービスを提供する、しかもキャリアより安く提供する、となればキャリアの音楽ビジネスのシェアは激減するだろう。

世界市場でアップルやグーグルと勝負できるか

 韓国コンテンツ振興院の調査によると、韓国のオンライン音楽サービスの売上合計は2012年末時点で約910億円、13年は上半期だけで約500億円を突破した。

 デジタルコンテンツ市場全体でみると、最も売り上げが多いのは1位がポータルサイトの広告収入、2位はオンラインゲーム、3位がオンライン音楽配信サービスとなっている。韓国の音楽市場はCDが売れず、コンサートとダウンロード販売、ストリーミング販売で成り立っているため、音楽配信サイトを制覇するものが音楽流通を制覇することになる。

 韓国ではSNSのKakaoTalkも有料音楽配信を始めた。世界市場ではアップルとグーグルの音楽配信サービスを巡る競争も激しくなっている。グーグルはアップルのユーザー向けにも音楽配信を始めた。

 サムスン電子は、「サムスンミュージックを通じてコンテンツビジネスを拡大するというよりGALAXYスマートフォンの競争力を高めるのが目標」というコメントを発表。サムスン電子は10年からアプリケーションの公募を行い、コンテンツ開発会社に約150~300万円を支援したこともある。

 最近はハードウェアからソフトウェアまで一社ですべてを提供するのが主流になっているため、サムスン電子も端末を売るためにコンテンツサービスに力を入れるしかない事情もある。サムスン電子の音楽配信は韓国市場だけがターゲットではなく、世界市場でアップルやグーグルと肩を並べられるかどうか勝負しないといけない。音楽の他にもコンテンツサービスを強化しようとしているサムスン電子に今後も注目だ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131128/1113504/

高性能なのにGALAXYの半額で買える「Nexus 5」、幼児もスマホ好きの韓国で大注目 [2013年11月22日]

.
LGエレクトロニクスが製造し、Googleが販売する「Nexus 5」が2013年11月22日、ついに韓国でも発売された。キャリア(通信会社)のKTとSKテレコムが扱っており、発売前から「ハイエンドなのに値段はGALAXYシリーズの半額以下」と話題騒然。このNexus 5を巡って、KTとSKテレコムの割引競争がすごいことになってきた。

 韓国では、Nexus 5をGoogleサイトで買うと約4万6000万円(16GB)、キャリアの代理店で買うと約3万8000円になる。定価で買ってもGALAXYシリーズの半額以下だが、キャリアの割引制度を利用すると、最安値で1万円程度になる。KTが独占していた「iPhone」をSKテレコムでも販売するようになってから、KTとSKテレコムは各種割引制度でユーザー獲得競争を繰り広げている。

 そして今度は、Nexus 5をどっちがたくさん売るかの競争になった。「iPhone 5s」も「GALAXY Note 3」も、爆発的に売れたといえるほどではなかったので、KTとSKテレコムは値段の安いNexus 5で年末商戦を盛り上げようとしている。


韓国で人気を集める「Nexus 5」

買い取りと割引制度の併用で1万円にも

 今のところはKTの方が、割引種類が多い。NTTドコモの「プレミアムクラブ」のように、KTの利用金額に応じてもらえる「星」という名前のポイントによって端末価格を割引する。さらに、KTと提携しているクレジットカードに加入すると端末価格から約1万5000円を割引する。割引した分は提携クレジットカード使用金額に応じて貯まるポイントで毎月返す構造になっている。

 キャリアの提携クレジットカードを既に持っている場合は、貯まったポイント分だけ端末価格が安くなる。複数のクレジットカードのポイントを合計して割引してくれるのはありがたい。使っていたスマートフォンの端末も最大約1万4000円で買い取ってくれるので、割引制度をうまく組み合わせると、Nexus 5を1万円程度で購入できる。KTは予約購入特典として、Nexus 5用の補助バッテリーとスマホ用16GBのUSBメモリーを付けている。

韓国の場合、代理店独自の割引制度もあるため、最安値でスマホを買うには代理店を回って最も安くしてくれるところを探すのが一番だ。全国どの代理店で買っても同じ価格なのはiPhoneぐらいである。韓国産メーカーの端末は、キャリアとメーカーの両方から代理店へ端末購入補助金が出るので、補助金分だけもっと安くする代理店もあれば定価で販売する代理店もあり、価格が違う。

 そのせいか韓国はスマホを今どこで最も安く売っているかの情報を共有する掲示板サイトがとても多い。韓国政府は、代理店ごとに値段が違う原因となっている端末購入補助金制度を見直そうとしている。

 最近はMVNO(仮想移動体通信事業者)も最新機種のスマホを販売しているので、2年の約定で加入した場合はキャリアとMVNOのどちらが安いかを計算しないといけない。

 Nexus 5はMVNOのCJハローモバイルも販売している。2年で約定すると端末価格は約2万8000万円とキャリアよりは高いが、通信費はKTとSKテレコムより30%ほど安いので、2年間の料金を比較するとMVNOからNexus 5を購入するのも悪くない。

韓国では平均2.27歳からスマホを活用

 韓国のスマホ利用率は13年末の国民の8割を突破すると見込まれているほど、いまや携帯電話=スマホの時代になった。

 「韓国の子供は平均的に2.27歳で初めてスマホを利用する」というアンケート調査の結果が話題になったことがある。韓国青少年政策研究院が13年10月に0~5歳の子供がいる保護者1000人を対象に調べたところ、初めてスマホを利用した年齢は3歳の26.4%で、1歳は23.6%だった。また0~5歳の1日あたりのスマホ利用時間は36.7%が30~40分と答えた。

 幼児にスマホを使わせる理由としては、70.9%が「子供がほしがるから」、12.5%が「周りの子供との共感態形成のため(つまり、みんなが使っているから)」、6.1%が「特に理由はない」と答えた。幼児が主に利用するアプリは「漫画」が30.5%で「ゲーム」が26%、「音楽」13.1%、「教育コンテンツ」12.1%、「カメラ・写真」11.7%の順だった。

 韓国ではビジネス用とプライベート用にスマホを2台使うビジネスマンも多いので、子供に取られてもいいスマホとしてNexus 5を買うのもアリかもしれない。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131122/1112943/