韓国スマホメーカーが「スマートカバー」に注力、従来のケースに機能性と遊び心を付加 [2013年10月4日]

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韓国サムスン電子のスマートフォン「GALAXYシリーズ」のユーザーは日本でも多い。韓国旅行のお土産に「スマートカバー」を買って行く日本からの旅行者をよく見かける。カラフルな本革カバー、鏡のようになる透明パネル付きカバー、高級なスワロフスキーのクリスタルを使ったハンドメイドカバーなど、大人かわいいカバーを日本より安く買えるからだろうか。

 韓国では最近、「スマートフォンケース」ではなく「スマートカバー」を使う人が増えている。スマホを守ったり、カラーや柄などおしゃれを楽しんだりするだけではなく、スマホを使いやすくする機能性を強調したのがスマートカバーである。

サムスンが「Sビューカバー」で先陣

 スマートカバーの先駆に当たるのが、サムスンの「GALAXY S4」の専用カバー「Sビューカバー」だろう。

 韓国人が大好きなおサイフ兼用(クレジットカードを差し込んで日本の「おサイフケータイ」っぽく使う)フリップ式ケースは、便利だが、液晶を覆ってしまうので時計を確認するためにはいちいちフリップをめくる面倒がある。Sビューカバーはフリップに透明窓を付けて、カバーを開けなくても時計を確認したり通話したりできるようにした。

 ディスプレイの中でもフリップの透明窓から見える部分だけ電力を消費する仕組みなので、バッテリーがすぐ消耗することもない。バッテリーカバーを外して代わりにカバーを付けるようにすることで、カバー付きの状態でも厚ぼったくならず端末を保護できるようにした。

 サムスンは2013年9月25日に世界同時発売した5.7型ディスプレイのスマホ「GALAXY Note 3」(日本ではauなどが発売予定=関連記事)にも専用のSビューカバーがある。GALAXY S4のSビューカバーより透明窓が大きくなり、よりスリムになった。端末を保護透明窓からは時計の確認に加えて、ショートメッセージや発信者番号、天気の確認、カメラとミュージックプレイヤーのコントロール、「Sヘルス」アプリの万歩計機能を利用できる。

サムスン電子のGALAXY Note 3専用「Sビューカバー」。

透明窓の上からメモまでできる

 何よりも便利なのは、カバーを開けずに透明窓の上から「Sペン」で手書きメモができることだ。通話中にメモしたくなった時、通話しながらSペンで書き込めるので助かる。カバーを開けてSペンでメモをすると、手書きの文字をテキストに自動変換して、その文字をアドレス帳、マップ、メール、検索など、どのアプリで使うのかというリンク先を選べる機能もある。

 GALAXY Note 3のSビューカバーは遊び心もある。カバーのカラーに合わせて、透明窓から見える液晶のカラーを変える機能が特徴。カバーの透明窓から見える液晶部分を、グリーン、パープル、ブルーなど、カバーのカラーに合わせて見やすいよう自分で設定できるのだ。

GALAXY Note 3専用Sビューカバーは7色のカラーバリエーションがある。

LGは「クイックビューケース」で対抗

 LG電子は、9月27日に発売した5.2型スマホ「LG Vu3」に専用カバー「クイックビューケース」を用意した。GALAXYのカバーとは全く違う不透明カバーで、これもまたユニークだ。


LG電子のスマートカバー「クイックビューケース」。

 カバーを開けることなく、ぴかぴか光るキャラクターや動物のアイコンで、通話受信、ショートメッセージ受信、不在電話メッセージ、時間、アラーム、充電状態などを確認できる。スペースインベーダーに登場するキャラクター風のネオンサインのようなアイコンが動いて、着信やメール受信を知らせてくれる。どのデザインのアイコンにするかはユーザーが選択できる。サムスンのSビューカバーを意識しているのか、LG電子はスマホ新機種と同じぐらいクイックビューケースを大々的に宣伝している。

中小企業を圧迫しているという批判も

 韓国スマホメーカーのパンテックも、最新の「VEGA LTE-A」を購入すると、専用カバー「スマートフリップ」を無料提供している。フリップケースに透明窓の代わりにぽっかり穴が開いている。そこからスマホの液晶をタッチして、カバーを開けずにショートメッセージの確認、スケジュールのアラームなどさまざまな機能を利用できる。

 ユーザーにとってはスマートカバーの登場で、スマホ端末を保護しながらスマホの機能を便利に使えるメリットがある。普通のケースではなくスマートカバーを選ぶ人が増えるだろう。だが、中小企業の市場だったスマホケース製造販売にサムスンやLGといったメーカーが直接参入しているので、「大手が中小企業を潰している」という批判もある。

 それでもサムスンやとLGはスマートカバーに力を入れており、競争がこれから本格化しそうだ。スマホメーカーが本体からカバーまでを一通り製造販売する動きはしばらく続きそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131004/1107366/

韓国のトレンドリーダー「C世代」は大の動画好き、YouTubeでも強い参加意識 [2013年9月27日]

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2013年9月25日、米Googleのアジア太平洋マーケティング担当者らが韓国を訪問し、動画投稿サイト「YouTube」をマーケティングツールとして利用するためのヒントを紹介した。

 この日テーマになったのは「C世代」。最近の若い世代は何よりも映像コンテンツが大好きで、「創造(Creation)」「つなげる(Connection)」「コミュニティ(Community)」「情報を選別・編集する(Curation)」が好き。こうした「C世代」の若者たちはデジタルネイティブで、SNSで人とつながることで情報を取得するだけでなく、情報の生産にも関わり、情報を共有・拡散したがる傾向が強いという。

 例えば、YouTubeで人気歌手の音楽動画を視聴するだけで終わらず、気に入った動画のリンクをSNSで友達に教えたり、コメントを残したりする。さらに「歌ってみた」「踊ってみた」という動画を投稿するのが、C世代の特徴である。

参加型プラットフォームがマーケティングの主戦場

 韓国ではこのC世代が現在のトレンドリーダーであり、コンテンツ市場の主な消費者である。「これからはC世代がよく利用する参加型プラットフォームのYouTubeを使ってマーケティング活動をすべきだ」というのがGoogleの主張だった。

 CMを見るだけでは満足せず、CMの中に飛び込みがる、企業側とコミュニケーションを取りたがるのがC世代。というわけで、韓国ではYouTube上で動画が始まる前に見せる短いCMではなく、映画のような動画や「ドッキリ動画」を制作して載せる企業が増えている。

 例えば韓国通信事業者(キャリア)のLGU+(LGテレコム)は、スマートフォンから利用するナビゲーション「U+NaviLTE」の機能を宣伝するため、ホラー映画のようなCMを制作した。地図データのリアルタイムアップデート機能がないナビゲーションのせいで、旅行中に道に迷ってしまった2人の女子大生が、不思議な老人に出会う。こんな場面から始まる10分程度の動画をYouTubeで流している。

結末が7つある参加型動画で口コミ拡大

 しかもユーザーは、女子大生がどのように行動すべきかを選択できる。ユーザーの選択によって結末は7つに分かれる。LGU+のU+NaviLTEは、高速モバイル通信のLTEを使って地図データをリアルタイムアップデートできるため、道に迷うことがないというのがアピールポイント。そのためのCM動画だが、ユーザーが参加できることで、見るだけのCMより印象に残る。ゲームのように楽しめるので、「ユーザーが自ら検索してまで見たがるCM」として大きな話題になった。SNSでも動画のリンクが広がり、口コミで広がった。

 LGU+側は、「映像コンテンツ消費が非常に増えているため、オンライン広告も画像やテキストだけではなく、映像で制作するようになった。ユーザーが楽しめる映像をもっと制作していきたい」と説明した。

LG電子は「ドッキリ動画」

 LG電子のチリ法人が制作した「ドッキリ動画」は、欧米で先に話題になった。面接の時に、面接官の後ろにある窓から見えるビルの外に隕石が落ち、面接を受けている人がそれを見てびっくりして慌てる。しかし窓だと思っていたのは実はLG電子の84インチスーパーハイビジョンテレビ(Ultra HD TV)。画質が良すぎて窓の外を見ていると勘違いするほどだと訴求するためのドッキリだった。

 LG電子のチリ法人は、同じくスーパーハイビジョンテレビを使ってエレベーターの底が抜けて落下するかのように見せかけた「ドッキリ動画」も制作した。ネット上で大ヒットした面白動画は欧米メディアで取り上げられ、低予算でテレビCM以上の効果を上げたという。

 韓国のアモーレパシフィックという化粧品メーカーは、高周波オーディオフィンガープリント技術(音声認識)を使ったアプリを提供している。YouTubeに掲載した同社のCM動画の音楽に合わせてスマホを振るとポイントが貯まり、割引クーポンがもらえるというアプリだ。

 同社は、ダンスアイドルグループ少女時代(Girls’ Generation)のメンバー・ユナが出演するCMに、ユーザーが自分の動画を組み合わせて、2人で一緒にCMを撮影したかのように見せられるアプリも提供する。こうして自分で制作したCM動画をYouTubeやFacebookに投稿できるようにした。企業が一方的にCM動画を制作して動画サイトに載せるのではなく、ユーザーが面白がって自分なりのCM動画を作って友達に共有するという新たな形の動画マーケティングを生み出したのだ。

YouTube利用目的トップは「情報を探すため」

 韓国ではスマホが普及する前までは、国内企業が運営する動画投稿サイトが人気だった。だが、スマホが登場してからは、モバイルで利用しやすいYouTubeが最も人気を得ている。Googleが韓国の16歳から60歳代までのインターネット利用者2000人に調査したところ、57%が「動画を観たい時はまずYouTubeにアクセスする」と答えた。

 YouTubeを利用する目的は、1位が「情報を探すため」、2位が「音楽鑑賞」だった。文字や写真よりも動画で情報を仕入れようとする人が増えているのだ。また、全体の44%は気に入った動画があるとSNSで友達に教え、50%は動画に表示されたURLリンクをクリックすると答えた。

 韓国ではテレビCMをそのままネットに流しても宣伝効果がなく、ネットならではの動画マーケティングが必要だと言われる。動画を観るだけで終わらず、積極的に共有し参加するC世代を対象にした動画マーケティング。さまざまな工夫を凝らした競争がより一層激しくなりそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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韓国ユーザーはiOS 7に興味津々、サムスンはTizen(タイゼン)で対抗できるか? [2013年9月20日]

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 2013年9月20日、日本では米アップルの新型スマートフォン
「iPhone 5s」「iPhone 5c」が発売された。前回書いた通り、韓国での発売は少し先になる。

 にもかかわらず、韓国ポータルサイトで最も読まれたIT記事ランキングを見たら、日本のiPhone 5s/5cに関する状況をリポートする記事がランクインしていた。「日本ではキャリア(通信事業者)3社がiPhone 5s/5cを巡って競争している」「iPhone 5sの実質負担額は16GBモデルが新規と乗り換え(MNP)で0円」といった内容の記事だ。

最新人気機種で「実質負担額0ウォン」はあり得ない

 コメント欄には「うらやましい~」の書き込みが200件ほどずらりと並んでいた。NTTドコモがiPhone 5s/5cを販売することで、ドコモが販促に力を入れていた韓国サムスン電子の「GALAXY S4」の販売動向を気にするコメントもあった。

 韓国でもキャリア同士の競争によりスマホを安く販売するケースはある。だが在庫処分かよほど売れない機種でない限り「実質負担額0ウォン」はない。最近だと旧機種の「iPhone 5」を0ウォンで販売する代理店が増えているものの、最新機種はせいぜい1万円ほどの割引しかない。スマホの端末価格を安く抑えるには、たいてい一番高い料金プランで契約しなければならない。端末価格をとるか、適正な料金プランをとるか、よく考える必要がある。

 韓国では、やはりサムスンのGALAXYシリーズのユーザーが圧倒的に多い。2013年9月時点でiPhoneユーザーは携帯電話加入者の5%に当たる約290万人にすぎない。2012年まではiPhoneユーザーの割合が10%を超えていたが、その後、サムスンとLG電子が巻き返した。iPhoneよりサムスン・LGのスマホの方が端末割引特典が大きかったことや、サムスンの「大画面化戦略」が奏功した。iPhoneユーザーは漸減しているのが実情だ。

 2013年9月20日、日本では米アップルの新型スマートフォン「iPhone 5s」「iPhone 5c」が発売された。前回書いた通り、韓国での発売は少し先になる。

 にもかかわらず、韓国ポータルサイトで最も読まれたIT記事ランキングを見たら、日本のiPhone 5s/5cに関する状況をリポートする記事がランクインしていた。「日本ではキャリア(通信事業者)3社がiPhone 5s/5cを巡って競争している」「iPhone 5sの実質負担額は16GBモデルが新規と乗り換え(MNP)で0円」といった内容の記事だ。

最新人気機種で「実質負担額0ウォン」はあり得ない

 コメント欄には「うらやましい~」の書き込みが200件ほどずらりと並んでいた。NTTドコモがiPhone 5s/5cを販売することで、ドコモが販促に力を入れていた韓国サムスン電子の「GALAXY S4」の販売動向を気にするコメントもあった。

 韓国でもキャリア同士の競争によりスマホを安く販売するケースはある。だが在庫処分かよほど売れない機種でない限り「実質負担額0ウォン」はない。最近だと旧機種の「iPhone 5」を0ウォンで販売する代理店が増えているものの、最新機種はせいぜい1万円ほどの割引しかない。スマホの端末価格を安く抑えるには、たいてい一番高い料金プランで契約しなければならない。端末価格をとるか、適正な料金プランをとるか、よく考える必要がある。

 韓国では、やはりサムスンのGALAXYシリーズのユーザーが圧倒的に多い。2013年9月時点でiPhoneユーザーは携帯電話加入者の5%に当たる約290万人にすぎない。2012年まではiPhoneユーザーの割合が10%を超えていたが、その後、サムスンとLG電子が巻き返した。iPhoneよりサムスン・LGのスマホの方が端末割引特典が大きかったことや、サムスンの「大画面化戦略」が奏功した。iPhoneユーザーは漸減しているのが実情だ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130920/1105707/

サムスンのお膝元でiPhone 5sと5cを酷評する韓国メディア、ユーザーはAndorid不安から乗り替え検討も [2013年9月13日]

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米アップルが2013年9月10日(現地時間)に発表した
スマートフォン「iPhone 5s」と「iPhone 5c」。日本ではNTTドコモからも販売されることになり、話題騒然になっている。

 韓国でも、やはりiPhone 5sと5cは話題になっている。去年の「iPhone 5」の時と同様、またもや5sと5cは日本で先に発売される。韓国での発売は今年11月以降になりそうだ。今回は5sと5cを先行発売する国から個人輸入してMVNOで使える道が開けた。「キャリアの補助金なしでもいいから早くiPhone買いたい!」と心待ちにしているユーザーも少なくない。

指紋認証やカメラ機能、処理速度向上などが話題になっている「iPhone 5s」

韓国メディアはiPhone 5s/5cを酷評

 海外のメディアは、スティーブ・ジョブズがいた頃のようなあっと驚かせるところはなくても、iPhone 5sの指紋認証やカメラ機能改良、A7チップ搭載で処理速度が高くなった点、常に動きを感知して最適の状態にするモーションプロセッサーM7を搭載したところなどを高く評価している。

 それに対し、韓国メディアは酷評しているケースが多い。「iPhone 5sと5cは期待外れ」「新作発表後アップルは株価下落、サムスン電子は株価上昇」「5cは値段が高すぎて低価格スマホとは言えない」「指紋認証なんていらない無駄な機能」など、韓国メディアでは異常なほどアップルを批判する記事が多いのに驚いてしまった。

 「iPhone 5sと5cを少しでも褒めるとサムスンから広告もらえなくなるのか?」と突っ込みたくなるほどである。韓国にいると、iPhone 5sと5cについての中立的な情報を得るには、海外メディアの記事と、国内ブログのレビューを頼るしかない。

韓国ではサムスンの大型新製品発売が間近

 韓国内でも世界市場でも、スマホはサムスンの「GALAXYシリーズ」が最も売れている。サムスンは9月5日、新しいスマホ「GALAXY Note 3」と腕時計型のウエアラブル端末「GALAXY Gear」を公開したばかりである。

 GALAXY Note 3は、5.7インチSuper AMOLEDディスプレイの大画面に1310万画素カメラ、3200mAhの大容量バッテリーに重さは182gというスペックで、前の機種に比べ使いやすくなった。韓国のスマホユーザーは写真撮影が大好きで、特に「セルフカメラ」と呼ぶ自分撮りが大好きである。Wi-Fiが使える場所が多いので、テレビドラマの再放送やバラエティー番組のクリップ動画などを移動中に視聴する人も多い。通常の画面サイズのスマホは「小さすぎて目が痛い」と不評。韓国のWebサイトは未だにAdobe Flashのコンテンツが多いので、(iOSが動くiPhoneシリーズではなく)Android OSが動くGALAXYでないとネット閲覧が不便だという面もある。

Androidスマホの「スミッシング」詐欺が脅威に

 しかし最近、Androidスマホを狙った「スミッシング」が多発しており、「安全なiOSに乗り換えるべきなのではないか」と考えるユーザーが増えている。Twitterやブログ、韓国メディア記事のコメント欄の反応などを見ると、悩んでいるユーザーが多いのが分かる。

 韓国のスミッシングは、ショートメッセージ(SMS)とフィッシング(phishing)を組み合わせた造語。知人の電話番号からURL入りのSMSが送られてきて、そのURLをクリックすると悪性コード(マルウエア)に感染する。悪性コードを通じてハッカーにスマホを勝手に操作され、知らない間に有料アプリの決済を繰り返したり、モバイルショッピングサイトを経由して金品を盗まれたりするという、新しい金融詐欺である。

 アドレス帳に登録してある友人の電話番号から「結婚することになりました!」とか、「最近仕事がうまくいかなくてお金に困っている」といった内容のSMSとURLが送られてくると、気になってついクリックしたくなるものだ。ハッカーがスマホ内に保存された個人情報を盗み見して友人になりすましてSMSを送るので、従来型の「迷惑メール」に比べて引っかかってしまいやすい。

スミッシング被害金額は半年で約3億円

 スミッシング被害に遭った人はほとんどがAndroidスマホのユーザーだ。韓国ではGALAXYシリーズなどAndroidスマホ使っているユーザーが多いというのが1つの要因である。だが、AndroidスマホではGoogle Playストアを経由しなくても自由にアプリケーションをインストールできるため、悪性コードが入ったアプリに「感染」しやすいという事情もある。

 セキュリティ会社であるフィンランドF-Secureの調査によると、2012年10~12月世界市場で新しく発見されたスマホの悪性コードの96%がAndroid向けに作られたものだった。同じ期間中のiOS向け悪性コードの発見件数は0件だった。米シマンテックの調査結果も似ていて、Androidの悪性コードは103件、iOSの悪性コードは1件だった。

 韓国警察庁サイバーテロ対応センターによると、スミッシング犯罪発生件数は2012年の2182件から、2013年は上半期だけで16万449件に増えた。被害金額は2012年の5億6900万ウォン(約5200万円)から2013年上半期は32億1900万ウォン(約3億円)まで増えた。一度に大金を決済するのではなく、被害者が気付かないよう500~1000円ほどのお金を長期に渡って盗むのが特徴である。

“国産スマホ”も良いが、安全でかわいいカラーのiPhoneが気になる

 もちろん、スミッシング被害が急増しているのはサムスンやGALAXYのせいではない。だがAndroidスマホを使う限り、メッセージをクリックしないように気をつける以外打つ手が乏しい。AndroidのGALAXYでは不安がある。iPhone 5s/5cはGALAXYシリーズより画面は小さいし、韓国語のWebサイトの一部を表示できない不便さがある。だが「iPhoneを使った方が身のためかな」と悩むユーザーも多い。

 筆者もその1人。かわいいカラーで価格も安いiPhone 5cを狙っている。韓国メディアはiPhone 5cについて「洗礼されたスタイリッシュなモノクロがiPhoneの特徴だったのに、サムスンのまねをしてカラーを増やした」と酷評している。ここまでメディアにけなされながら、韓国でiPhone 5sと5cがどれだけ売れるか、注目したいところだ。


カラフルな「iPhone 5c」を筆者も狙っている

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130912/1104805/

「韓国スマートヘルスケア最前線」 韓国医療機器、中国や新興国への輸出活発に [2013年10月30]

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 医療機器は米国やEU(欧州連合)、日本からの輸入に依存していた韓国だが、2012年から新興国への輸出が増加しはじめた。韓国食品医薬品安全処によると、2012年の輸出は対前年比17.6%増の19.67億米ドル。輸入は同3.2%増の26.01億米ドルだった。貿易赤字は2011年の8.48億米ドルから2012年には6.34億米ドルに減少した。

 韓国が輸出している医療機器は、超音波診断装置が多い。実際、医療機器メーカーの輸出額上位も、サムスンメディソン(2.1億米ドル)、韓国GE超音波(1.8億米ドル)、NUGA医療機(0.72米億ドル)と超音波診断装置の関連企業が並んだ。

 韓国の医療機器輸出額は、中国・ロシア・インド・中南米など新興国で着実に伸びている。韓国保険産業振興院によると、医療機器の輸出全体では前述の通り2012年に対前年比17.6%増加したが、中国向けの輸出額に限れば66%増、ロシア向けは25.4%増、中南米と新興国向けは36%増加しているという。

 韓国の医療政策を担当する省庁である保健福祉部(部は省)は2013年10月23日、韓国製の医療機器の海外輸出を支援する「海外医療機器総合支援センター」をベトナムとインドネシアにオープンした。このセンターは、韓国製の医療機器であればメーカーに関係なく修理やアフターサービス、現地の医療従事者を対象にした医療機器使用教育、韓国中小医療機器メーカーの海外進出のための販売代理や輸出手続き代理などの役割を担う。

 海外医療機器総合支援センターは、韓国と東南アジアの政府間保健産業分野の協力増進のための支援活動である。韓国保健福祉部は、国をあげて医療機器の輸出に力を入れていると現地政府にアピールすることで、韓国製の医療機器の認知度やブランド価値を高め、輸出増加につながることを期待している。オープン初日には韓国から保健福祉部や医療機器協同組合などの役員が現地を訪問し、ベトナム・インドネシア両政府と韓国製の医療機器輸出のための許認可手続きについて意見交換した。

 韓国は今後新興国が医療機器の主な顧客になると展望している。先進国は既に米国やドイツ、日本の医療機器が市場を確保しているので、超音波診断機器がメインの韓国のメーカーが進出するのは難しい。一方、中国や新興国は経済発展により医療サービスの需要が高まっており、医療機器もほぼ輸入に依存しているので、韓国の医療機器も輸出できるチャンスがあると見込んだのだ。

 特に中国は人口が多く生活水準も高まっていることから、米国に続いて世界第2位の医療機器市場になると韓国のメーカーは展望している。中国には既に韓国医療機器メーカーのサムスンメディスン、Lutronic(医療用レーザー機器)、VATECH(歯科用CT)、CU Medical Systems(AED)などが進出している。中国の医療市場への進出を狙う韓国企業はとても多く、韓国の通信キャリアであるSKテレコムも熱心に動いている。中国の医療機器メーカーであるTIANLONG(天隆)社を買収し、中国の医療情報ネットワーク構築や体外診断機とIT技術を融合したヘルスケア・サービスを始める準備を進めている。

 韓国保健産業振興院は、新興国進出支援活動の一環として中国各地で韓国製の医療機器と病院を輸出するための「韓国医療宣伝活動」を行っている。病院輸出とは、韓国の大手病院を中国に設立することで、病院の建設から医療機器、医師、看護師、医療情報システムなど全てを韓国の大手病院と企業が手掛けることを指す。韓国の技術で最先端の病院を中国に作り、中国にいる医師と韓国にいる医師をつなげる遠隔診療でより質の高い医療サービスを提供することを狙う。

 韓国保健産業振興院は2013年9月、中近東に韓国製の医療機器を輸出するため、エジプトやアラブ首長国連邦の医療機器メーカーを韓国に招待し、現地進出のためのマーケティングや流通事業者選定について学ぶシンポジウムも開催した。韓国保健福祉部は、医療機器産業の海外進出活性化のために全省庁が参加する産業育成案について議論を始めた。政府の積極的な支援を追い風に、韓国製の医療機器の新興国向け輸出は、今後も大きく伸びそうだ。



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By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2013年10月30
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メール・LINEの普及で低迷する韓国郵便局が“奇策”、郵便局でMVNOスマホ販売 [2013年9月6日]

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韓国郵便局は2012年時点で累積赤字約700億ウォン(約68億円)を記録した。韓国の郵便局は政府が運営している。郵便量の減少から、特に郵便事業の赤字がひどい。韓国では光熱費やクレジットカード請求書、行政機関からの案内などもほとんどがメールで届く。郵便局で利用するのは貯金と宅配ぐらいになってしまった。

 韓国郵政事業本部は、メールやLINE、KAKAOといった通信手段が一般に広く普及したことから今後も赤字が続くとして、経営改善のため大都市を中心に郵便局を大幅に統廃合する方針を発表した。空いたスペースを貸し出して収益を上げるという。

 もう1つの“奇策”が、郵便局の収益改善のために始めるMVNOスマートフォン販売である。2013年9月23日から、全国の郵便局で「中小MVNO」6社のスマートフォンを販売する。ユーザーが郵便局のMVNO専用窓口でパンフレットや端末を見てMVNOと端末を選択すると、数日内に郵便局の宅配便で自宅に端末が届く。郵便局の職員を教育して、MVNOの料金制度や端末の特徴を説明できるようにする。独自の販売網を持つケーブルTV会社や大手流通チェーン店、キャリア(通信事業者)の子会社などの「大手MVNO」は対象外である。

スマホ対応で課題を抱えていた韓国MVNO

 この施策は、韓国MVNO業界の事情とも関係している。

 MVNOではサムスン電子、LG電子、中国ZTEなど大手メーカーと、韓国の中小メーカーのスマートフォンを利用できる。韓国の大手キャリアは他社から乗り換えると料金が安くなるとか、端末代が安くなるとか、いろいろな特典を付けて販促している。一方のMVNOではプリペイドで通話料やデータ通信料は大手キャリアより20~30%ほど安いものの、端末購入補助金がない。サムスンのGALAXYシリーズやアップルのiPhoneなど高機能なスマートフォンを選択すると、大手キャリア利用よりもトータルの費用が割高になってしまうこともある。

 こうした課題を解決するため、9月4日に、MVNO事業者と、サムスン、LG、ソニーモバイルなどのメーカーが参加する「MVNO端末共同調達協議体」が発足した。MVNO専用のシンプルで安いスマートフォンを増やしたり、MVNOが大量に端末を調達することで最新機種の価格を少しでも抑えたりという取り組みを進める。MVNOのスマートフォンは現在15機種ほどあるが、協議体は2013年末までに7機種程度を追加する予定である。

流通網の問題を郵便局の信頼性で解決

 端末の種類は増えるが、残った問題が流通である。今まではMVNOのオフライン代理店は少なく、ほとんどネット上だけで販売している状態だ。2012年末時点で大手キャリア3社の代理店は全国4812店、販売店(キャリア3社の端末を全て販売する店舗)は2万店に及ぶ。一方のMVNOの代理店は全国280店ぐらいしかない。

 コンビニエンスストアでもMVNO2社のスマートフォンを販売しているが、選択肢が少なすぎる。コンビニには料金制度や端末の特徴をよく知っている販売員もおらず、不安を感じる利用者が多いために売れ行きは芳しくなかった。


MVNOスマートフォンの1つである、サムスン電子製の「GALAXY M」はコンビニやネットで購入できる。

 郵便局ならMVNO6社を扱うので選択の幅が増え、局員が説明をしてくれるので利用者の不安も少ない。国営の郵便局で販売することによって、MVNOの信頼度を底上げする効果も狙える。2013年後半にはMVNOのスマートフォンユーザーがかなり増えそうだ。

 韓国のMVNO加入者は2013年8月末時点で約200万人。全携帯電話加入者の3~4%という規模である。韓国のICT政策を担当する省庁に当たる未来創造科学部は、欧米のようにMVNO加入者が全携帯電話加入者の10%を超えると、MVNOと大手キャリアの競争が促進されて、より安い費用でスマートフォンを利用できるようになると見込んでいる。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130906/1104066/

韓国のタブレット市場は7~8インチで勝負、難しいスマートフォンとの差異化 [2013年8月30日]

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韓国は教育分野ではタブレットや電子黒板を使ったデジタル教育が盛んなだけに、タブレットの普及率が高いように思われがちだ。だが実際には、スマートフォンは売れてもタブレットはなかなか売れない市場である。

 タブレット販売台数は伸びるどころか減少している。韓国IDCの調査によると、韓国内のタブレット販売台数は2010年39万8660台から2011年139万7172台と3倍以上に増えたが、2012年には125万5956台と前年比10%ほど減少している。

 世界市場ではタブレットの販売台数が大きく伸びている。2012年は前年の1億4440万台より60%ほど増加した2億2930万台だった。タブレットは特に米国と発展途上国で売れているという。米国では小型TVの代わりにタブレットを利用する家庭が増えていることから「テレビのライバルはタブレット」とまで言われているそうだ。韓国IDCは、世界市場におけるタブレットの販売台数は2017年まで年平均23.2%成長し、スマートフォンの年平均成長率(16.9%)を上回ると展望している。

iPad mini発売以降、タブレットが話題にならず

 一方、韓国内を見ると、スマートフォンに比べタブレット新機種発売のニュースがあまりない。そのせいか米アップルの「iPad mini」発売以降、2013年に入ってからはほとんどタブレットが話題になることはなかった。ようやく8月中旬になって、9月に開催するドイツの家電展示会IFAと新学期に向け、タブレットの新機種が発売されるようになった。

 韓国のタブレット市場は、サムスン電子とアップルが競争するハイエンド市場、中国メーカーと韓国中小企業メーカーの価格競争が激しいローエンド市場、幼児向け教育端末市場の3つに大きく分けられる。

 サムスンとアップルは10.1インチタブレットで競争してきたが、最近はサイズがだんだん小さくなっている。学生の間では10.1インチの大画面タブレットが人気だが、社会人には、スマートフォンとノートパソコンの間を埋めてくれるサイズのタブレットの方が人気である。

 韓国では、何でもポケットに入れて、会社に行く時も遊びに行く時もバッグを持たない社会人男性が多い。これも、ジャケットの内ポケットに入れるか、あるいは片手で持ち歩ける7~8インチのタブレットが売れる理由である。

サムスン「GALAXY Tab 3」は少し大きめ

 サムスンが韓国で2013年8月22日販売した新しいタブレット「GALAXY Tab 3」は、8インチの画面に厚さ7.4mm、重さ314gとだいぶ軽くなった。サムスンは「片手で握れる大きさと重さで、携帯性を強化したタブレット」だと強調している。7インチではなく8インチにしたのは、直前に発売したスマートフォン「GALAXY Mega」が6.3インチなので、スマートフォンより大きく、手軽に持ち歩けるサイズでありながらもタブレットらしさを出すためではないかとみられる。

 サムスンは、2011年にLG電子が発売した幼児向け7インチタブレット「キッズパッド」に似た「GALAXY Tab 3キッズ」も9月に発売する予定だ。LGのキッズパッドはインターネットにつながらず、コンテンツはゲーム機のように専用のメモリーを差し替えて利用するモデル。一方のサムスンGALAXY Tab 3キッズは、無線LAN(Wi-Fi)につながるようにした。

 タブレットの新製品競争から一歩引いていたLGも、8インチモデルで再び挑戦する。2013年9月のIFAで8.3インチの「G Pad 8.3」を展示することが決まった。画質にこだわったタブレットで、発売は10月の予定である。

グーグルの第2世代「Nexus 7」がサムスンの脅威に

 サムスンのタブレットに劣らない仕様なのに1万円以上安いことから、米グーグルの新しい「Nexus 7」(関連記事)も大きな話題になっている。韓国では8月26日から予約販売を開始した第2世代Nexus 7は、「全てが新しい、生まれ変わった」と宣伝している。

 初期モデルより薄くて軽くなっただけでなく、1920×1200ドットの高画質である。画面の密度は323ppi(1インチ当たりの画素数)とタブレットの中では世界最高レベルで、文字がくっきり見える。真っ黒い外観で高級感があるという点も人気の秘訣である。

 韓国内での正式発売を待てず、「個人輸入してしまった」と新しいNexus 7を自慢するブログも多かった。カメラが500万画素という性能にとどまるところは残念だが、タブレットでよく利用する動画再生、電子書籍閲覧には価格も性能もちょうどいい。韓国では、初代のNexus 7はいつも品切れで買いたくても買えなかった。第2世代はいつでも買えるようにしてほしいものだ。そうすれば少しはタブレット販売台数が伸びるかもしれない。

Amazon Kindle不在の韓国市場

 Nexus 7よりも安くてシンプルなタブレットもある。ネット書店のインターパークは2013年8月16日、中国で製造した7インチの「ビスケットタブ」を発売した。約1万5000円と韓国で販売している7インチタブレットの中では最も安い水準である。インターパークが販売する電子書籍リーダーとして使うのはもちろん、インターネット検索やGoogle Playストアのアプリも利用できるようにした。普段はスマートフォンを使うがたまに動画や電子本をもう少し大きな画面でベッドに寝ころがって観たい、タブレットは子供の絵本アプリを再生するぐらいしか使わない、という人にはちょうどいい。

 実は、韓国はまだ米Amazon.comが進出していないので、Amazonのタブレット・電子書籍リーダーの「Kindle」は正式発売していない。Kindleが発売されれば利用できるコンテンツが増えるので、タブレット市場に活気が出るかもしれない。

 スマートフォンとの差異化が難しくなったタブレットだが、新機種が続々発売される秋以降は動きがありそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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金好きなお国柄? サムスンが韓国でシニア向けスマホ「GALAXY Golden」発売 [2013年8月23日]

韓国サムスン電子がガラケー(従来型携帯電話)のようなデザインのフォルダー(折りたたみ)型LTE対応スマートフォンを発売した。シニア層をターゲットにしたスマートフォンということで、その名もずばり「GALAXY Golden」。

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韓国サムスン電子が発売したシニア層向けスマホ「GALAXY Golden」。

 「シルバー」ではなく「ゴールド」なのが韓国らしい。ちなみに、中国人の金好きは有名だが、韓国も負けないほど金好きで、貯金の代わりに金を購入する投資が流行っている。

 端末は全体がゴールドというわけではなく、黒を基調にふちがゴールドなのだが、高級感たっぷりのデザインに仕上がっている。韓国のスマートフォンユーザーの間ではかなり話題を呼び、シニア層をターゲットにしているにもかかわらず、珍しい端末好きの20~30代の若者にも売れているようだ。ブログでは「お父さんにプレゼントしたい」「持っているだけで金持ちに見えそう」という書き込みも増えている。

3.7型タッチディスプレイを2つ搭載

 GALAXY Golden は、3.7型のデュアルタッチパネルで、フォルダーの両面にディスプレイがついている。フォルダーを閉じたまま普通のスマートフォンのようにタッチして使い、フォルダーを開くとガラケーのように使える。

 サイズは幅118×奥行き59.5×高さ15.8mm。女性の手の大きさでも使いやすく、片手にすっぽり入る。重さは179gある。タッチパネルが両面に付いているせいか、若干分厚く、重く感じる。800万・190万画素カメラ、FMラジオ受信機能も付いて端末出荷価格は約7万2000円だ。

 タッチパネルで文字を入力するのが苦になるシニア向けに、メールやSMS(ショート・メッセージ・サービス)を利用する時は使い慣れたガラケーのように、キーパッドでボタン操作できるようにした。無料通話・SNS・マップ・電子書籍などスマートフォンで人気のアプリも使える。キーパッドでKAKAOやLINEを使えると、もっと早く楽に文字を入力できそうだ。

端末のどこに耳を当てても声が聞こえる

 GALAXY Goldenのタッチパネルのホーム画面も、シニア向けにシンプルにした。体重管理や万歩計機能があるサムスン独自のヘルスケアアプリ「Sヘルス」、名刺をカメラで撮影するとアドレス帳に電話番号やメールアドレスなどを自動保存できる名刺認識アプリをプリインストール。最新のスマートフォン「GALAXY S4」で使える機能はおおむねGALAXY Goldenでも使える。

 通話の際にはフォルダーを開かず、端末のどこに耳に当てても声が聞こえるというのも面白い。インターネットも使うが、音声通話の方が多いという人にはぴったりのスマートフォンだ。サムスンは「消費者の個性とニーズを反映してスマートフォンのラインアップを強化していく」とコメントした。

中国では富裕層向けに発売済み

 実はこのスマートフォン、一足先に昨年末中国で発売されている。ジャッキー・チェンがCMに出演し、中国の富裕層が好きな金色スマートフォンとして話題になった。端末価格は約15万円と韓国の2倍だったにもかかわらず、「今までで一番使いやすいスマートフォンだ」として富裕層のビジネスマンに売れた。

 サムスンのGALAXYシリーズはピンク、パープル、ブルーなどもともとカラーバリエーションが豊富だ。一方、米アップルが近々発売すると噂されるスマートフォンの新機種“iPhone 5S”で、従来機のホワイト、ブラック以外に「シャンパンゴールド」をラインアップするようだ。サムスンはアップルに対して先手を打ってゴールドのスマートフォンを発売したという報道もある。金好きな中国市場を狙ってiPhoneもゴールドを出すというのだ。

 米ストラテジー・アナリスティクスによると、2013年4~6月の世界LTEスマートフォン市場シェアはサムスンが47.0%(販売数2720万台)で1位だった。2位はアップルで23.5%、3位はソニーで6.2%だ。シニア層や富裕層、新興国市場も巻き込んで、スマートフォン市場の競争がますます盛り上がってきた。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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韓国LGが激戦区米国で新スマホ「G2」発表、アップルとサムスンの牙城に切り込む [2013年8月9日]

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韓国では「LTE」よりも2倍速いモバイル通信である「LTE-A」対応のスマートフォンが増えている。サムスン電子の「
GALAXY S4」に続いて、LG電子も「G2」という名前のスマートフォンを公開した(関連記事)。パンテックも「VEGA LTE-A」を発売した。

 LGはG2のプレス向け製品公開イベントを2013年8月7日米ニューヨークで開催した。サムスンはいつも新しいスマートフォンの公開イベントを欧米で行っている。LGもスマートフォンの激戦区である米国でスマートフォン公開イベントを開催することで、世界市場を攻めるという意思をはっきりと表明した。
 


2013年8月7日に米ニューヨークで開催された韓国LG電子の新型スマートフォン「G2」公開イベントの様子

「G2」の外観。5.2型フルHDディスプレイを搭載し、細いエッジ幅も特徴的

 それほどG2はLGの野心作、自信作ということだ。G2は8月8日から韓国で発売し、その後世界130キャリアから販売する計画である。

5.2型フルHDの画質、24ビット192KHzの高音質

 LGは記者会見で「G2は史上最高の自信作」であると強調した。

 5.2インチのフルHDのIPSディスプレイにLTE-A、2.26GHzのクアルコム製スナップドラゴン800プロセッサー、外側1300万画素カメラには手振れ補正機能も搭載した。内側カメラは210万画素。カメラのレンズは指で触っても指紋が付きにくくした。

 何といってもG2の自慢は音質にある。24ビット192KHzのハイファイサウンドで、スタジオ録音の原音を再生できるレベルだという。CD(16ビット、44.1KHz)の音質をはるかに超えている。もちろん通話品質も良くなった。バンドルイヤホンも2万円はする高級イヤホンと差がない着用感と音質で差異化した。

ユーザーインタフェースに一工夫

 G2のキャッチフレーズは「Learning From You」。顧客こそがイノベーションの源で、ユーザーの意見を最大限に反映したスマホだという。「G2を使うことでユーザーは日常の中で、感動と楽しさを味わえる」との説明だ。ただし、米アップルのiPhone 5や、サムスンのGALAXY S4もCMで確か同じことを言っていたような……。

 それはともかく、G2の面白いのは、電源ボタンとボリューム調整ボタンが全て端末の後面にあることだ。これはスマートフォンユーザーの行動を観察した結果生まれた変化で、端末を握りしめたまま楽に人差し指でタッチできるようにするためだという。端末の前面にあったボタンはディスプレイに電源が入ると使えるソフトキーに変えた。

 ディスプレイは5.2インチと大きいが、横幅は2.7インチなので、女性でも握りやすくなった。5インチ以上のスマートフォンだと大きすぎてうまく握れず、通話する度に手が疲れたが、これなら大丈夫だ。

「ノックオン」「電池長持ち」など新機能多数

 もう1つ、「ノックオン機能」も面白い。iPhoneなら端末前面にあるボタンを押してディスプレイの電源を入れるが、G2はディスプレイの上を2回ノックして電源を入れたり消したりする。

 パソコンのログオン機能のように、1つのスマートフォンで複数のユーザー向けの画面を設定できるのも特徴だ。子供がスマートフォンで遊ぶ時はカメラと写真アルバム、学習アプリだけ使えるようにできる。安心して親のスマートフォンを子供のおもちゃとして使わせることができる。

 スマートフォンのヘビーユーザーにとって嬉しいのは、何といってもバッテリー長持ち機能だろう。G2はGRAM(Graphic RAM)を適用して、同じ画面をずっと見ている時はCPUを休ませる。この手法で使用可能時間を10%以上伸ばした。バッテリーは「Stepped Battery」というもので、従来のバッテリーに小さいバッテリーをくっつけている。バッテリーとカバーの間の隙間を埋める形で小さいバッテリーをもう1個増やし、さらに使用時間を伸ばしている。

iPhone 5とGALAXY S4の牙城を崩せるか?

 G2発売前から、韓国のスマートフォンユーザーの間で「LGがすごいスマホを発売するらしい」と噂が絶えなかった。韓国のスマートフォン市場はiPhone 5とGALAXY S4ががっちり握っているので、もっと他に選択肢が欲しいと願うユーザーが多かった。

 しかし、実際にG2が発表発表されると、「G2の性能はすごいし、斬新な機能が盛りだくさんなので使ってみたい。けれど今使っているスマホも悪くないし、LTE-Aにしなくてもインターネット速度が遅いと感じないし、悩ましい」という意見が多い。

 G2の端末価格は9万円ほどもする。キャリアから乗り換え補助金が出たとしても、6~7万円は払わないと入手できない。スマートフォン新機種の性能が良すぎて、逆にそこまでいらないから端末価格を安くしてほしいという意見も増えている。

 LGは、G2を世界市場で1000万台以上販売し、フィーチャーフォン時代の栄光を取り戻すのが目標だ。サムスン、アップルに続く世界3位のスマートフォンメーカーの地位を固めることを目指している。G2の投入でその目標に近づけるだろうか。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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スマホが売れない? 次の市場「スマートウオッチ」狙うサムスンとLG [2013年8月2日]

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スマートフォン市場に異変が起きている。

 このところ、韓国サムスン電子(スマートフォン世界シェア1位)の「GALAXY S4」や、米アップル(シェア2位)の「iPhone 5」のようなハイエンドスマートフォンの需要が減り、出荷台数も営業利益も減るだろうと予測する証券市場関係者のリポートが相次いでいる。これらの市場関係者は、ハイエンドではなく、300ドル以下のリーズナブルな端末の方が売れる時代になると見ている。

 実際に2013年7月末に各社が発表した4~6月の業績を見ると、韓国のサムスンとLG電子(世界シェア3位)、アップルの3社ともに、スマートフォン出荷台数の多さに比べて利益水準はそれほど高くない。サムスンの場合、ITモバイル部門の売上は前期に比べ8%増加しているが、営業利益は前期に比べ3%減っている。

 サムスンは「スマートフォンの売上高は伸びている。パソコンとネットワーク事業の実績が落ち込んでいること、新製品研究開発・流通投資の拡大により、前期比営業利益は小幅減少した」と説明した。

 LGも4~6月に出荷台数は伸びたが、平均販売単価が落ちたことで前期比売上も営業利益も落ち込んでいる。アップルも4~6月に3120万台ものiPhoneを販売したものの、純利益は前期比22%減少した。既にスマートフォンの普及率が高くなったことで、欧米市場での販売が落ち込み、途上国向けの安い端末しか売れないのでスマートフォンの利益は減少すると証券会社らは予測している。

アップルだけではなく韓国2強もスマートウオッチの商標出願

 そのせいか、アップルに続いてサムスンとLGもスマートフォンの次のハイエンド市場として、腕時計型デバイスの「スマートウオッチ」に力を入れている。

 サムスンのスマートウオッチは「Samsung Gear」という名前になりそうだ。サムスンは韓国と米の当局に「Samsung Gear」を商標登録した。登録した内容を見ると、Samsung Gearは、「PCやスマートフォン・家電とデータのやりとりができる、健康状態記録のための多機能ソフトウエア、デジタルカメラ、GPS位置確認システム装置、音響と映像の記録・再生・転送装置、TV受信機、コードレスヘッドセット」などの機能が搭載されるようだ。

サムスンは既に開発完了か?

 韓国マスコミは、「サムスンは既にSamsung Gearの開発を完了し、インドで製品テストをしているのではないか」「2013年9月にドイツで開催される世界家電展示会(IFA)で初めてGearを公開するのではないか」と見ている。そうなれば、アップルよりも先にサムスンがスマートウオッチを発売する可能性も高くなる。サムスンはIFAで「怪物」と噂される超ハイエンドスマートフォン「Galaxy Note 3」を披露する予定でもある。

 LGは韓国の特許庁に「G Watch」「G Glass」というブランドを商標登録出願した。名前からしてウエアラブルデバイスなのは間違いないだろう。LGは、「商標登録出願しただけでどのようなものになるかはまだ決まっていない」と説明した。

韓国ネットユーザーもアップルに熱視線

 日本でもソニーがスマートウオッチを発売して話題になっているが、韓国ネットユーザーの間でもスマートウオッチは話題の中心になっている。韓国でも本命はやはりアップルの「iWatch」(関連記事)。その理由はデザインにある。

 アップルなら普通の時計と変わらないかっこいいデザインのスマートウオッチを作りそうだという期待が高まっている。サムスンかアップルか、どっちのスマートウオッチにするかは、性能だけでなくデザインにかかっている。防水機能があってディスプレイがきれいな方を選ぶという意見も多い。

 アップルのスマートウオッチも10月には公開されるのではないかと見られる。年末商戦期には、スマートウオッチ競争が本格的に始まりそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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