スマートフォンで冷蔵庫の中身まで管理、顔写真から好きそうな音楽をお薦め [2013年11月18日]

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韓国ソウル市にあるCOEX(コエックス)展示場で、2013年11月13日から15日まで「2013国際スマートホーム・ビル展示会」が開催された。産業通商資源部(部は省)が主催し、韓国スマートホーム産業協会が所管するイベントである。

 スマートホームやヘルスケア関連団体のフォーラムがメインのイベントなので展示会の規模は大きくなかったが、サムスン電子と大手キャリア(通信事業者)のKTが「スマートホーム」を体験できるブースを出していた。会場は大学入試のテストを終えて団体観覧に来た高校生で大いににぎわっていた。


団体参観に来た高校生向けにクイズ大会中のサムスンのブース。サムスンのスマート家電の機能やサービス名を当てるクイズで盛り上がる。

サムスンはブース内にスマートホームを再現

 サムスンはスマートフォンで、スマート冷蔵庫、スマートTV、掃除機、洗濯機、エアコンをコントロールできる「サムスンスマートホーム」をブース内に再現した。スマートフォンがリモコン代わりにとなり、家の外にいてもインターネット経由で家の中の家電を制御できる。「外出モード」に設定すれば一斉に家電や照明の電源が消えたり、家に着く20分ぐらい前に「帰宅モード」にすると、エアコンが稼働して快適な温度にしてくれたり、という機能がある。

 こうした機能は何年も前からあり、パソコンから利用できた。今回はスマートホーム制御をアプリにして、家電のアイコンをタッチするだけで楽に制御できるところを強調した。サムスンのスマートホームはお年寄りでも十分使いこなせる、生活が楽になるといったことをアピールした。

 サムスンのブースで最も人が集まっていたのはスマート冷蔵庫の前だった。冷蔵庫のドアにあるディスプレイとスマートフォンが連動し、賞味期限切れ防止、買い忘れ防止を助けてくれる。まだ商品を冷蔵庫に入れるだけで中身と賞味期限情報がインプットされる、という段階まではなってないので手動で入力しないといけないが、冷蔵庫のどこに何があってそれぞれの賞味期限はいつまでなのかを分かりやすいアイコンで冷蔵庫のディプレイ上に表示する。賞味期限が明日までの食材は何か、買い足さないといけない食材は何か、といった情報を冷蔵庫が持ち主に知らせてくれる。

 この情報はスマートフォン上のスマートホームアプリからも確認できるので、「ミネラルウォーター残量1本」「賞味期限が明日までの牛乳があります」といったメッセージが登場し、買い物リストに追加するか、賞味期限前の食材で作れる料理のレシピを検索するか、といったことを選択できる。冷蔵庫の中にあることをすっかり忘れて干し乾びてしまった野菜、どろどろになった牛乳、賞味期限が2年前に切れた調味料なんかが冷蔵庫の中に転がっている余地を与えない。冷蔵庫に余計なものが入っていないので、省エネにもつながる。

大手スーパーと提携も

 買い物リストに登録した商品は韓国スーパーマーケット最大手のEMARTと連携して、スマートホームアプリや冷蔵庫のディスプレイから注文・決済して自宅まで配達してもらうことを計画している。実際にサムスンのスマート冷蔵庫からEMARTに注文できる仕組みにはなっているが、現在はEMART側のサーバー点検のため一時的に注文をストップしているという。スマート冷蔵庫のディスプレイは額縁や家族へのメモ帳としても使え、天気予報、ニュース、スケジュール帳、料理情報といった機能もある。

 また、家電が自ら自分の不具合を知らせるという機能も面白かった。


スマートテレビの右画面に、家電が自ら不具合を知らせてきた。どう対処すればいいのかイラストが登場するのでマニュアルを引っ張り出したり、ネットで使用法を検索したりしなくても済む。

 例えば、掃除機内にゴミがいっぱい溜まると、スマートテレビを観ている途中、画面右に「掃除機のゴミがいっぱいになりました」というメッセージが出てくる。同時に、どうやればゴミを取り出せるのかイラストが出てくる。最近はコンパクトでデザインを優先した家電が増えているため、ぱっと見て直観的に動かせないものもある。このスマート診断機能があれば、マニュアルを引っ張り出したり、ネットで使用法を検索したりしなくても、その場ですぐ対処できる。家電はすべてWi-Fiでつながっている。

KTは「ALL-IP基盤スマートホーム」を訴求

 キャリアのKTはALL-IP基盤のスマートホームということで、KTのスマートフォン型インターネット電話機(サムスン電子GALAXY 070)、「スマートホームパッド2HD(GALAXY Note 10.1)」、スマートテレビが連動したコンテンツサービスを展示した。「スマートホームフォンmini」という名前の固定電話は4インチのシンプルなスマートフォンで、Wi-Fiを利用してインターネット電話、音楽ストリーミング、VODを利用できる。
 


キャリアKTは、ALL-IP基盤のスマートホームをテーマに、タブレットPCや家庭用インターネット電話機から楽しめるKT独自のコンテンツを紹介した。

 KTの音楽ストリーミングサービスは140万曲ほど保有していて、ユーザーに合った音楽を選んでくれるという機能がある。しかし、なぜか音楽を薦めるために顔写真を要求してくる。顔写真から好きそうな音楽を選んでくれるという不思議な機能が付いているのだ。

 ちなみに人相を見るのではなく、髪型とか、服の色とか、その人のスタイルを分析して好きそうな音楽を選んでいるとのことだった。ランダム再生とあまり変わらないような気がするが、知らなかったいい曲に出会えるチャンスもあるので、これはこれで楽しい。

 スマートホームパッド2HDは、家の中ではKTの家庭向けHubを使うことでハイビジョン画質のVODを視聴できるのが特徴だ。家の外ではWi-Fiで普通画質の動画を視聴できる。10.1型のタブレットであっても、ハイビジョン画質だと色もくっきりしてより立体的に見えるので、画面が小さいとは感じなかった。

テレビをタブレット代わりに使う単身世帯に焦点

 韓国でも一人暮らし世帯が増えていて、タブレットをテレビ代わりにする人も増えた。キャリアのモバイルIPTVを利用すれば、地上波放送とケーブルテレビ合わせて60チャンネルほどリアルタイムで受信できるので、タブレットは十分テレビ代わりになる。

 この他に、政府から予算をもらっている実証実験の展示もあった。ウエアラブル端末で人の心理状態を把握して適切なメンタルケアを提供できるようにするヘルスケア、顔の表情や動きなどを分析して罪を犯しそうな人を選び出すカメラ、透明なビニール1枚にしか見えないのに電源を入れると英字も韓国語も入力できるキーボードになり、腕や太ももに巻いても使えるものなどが面白かった。

 またスマートホームとも政府の技術開発とも全く関係なさそうに見える「あなたの家は大丈夫ですか!」と恐怖心をあおる防虫グッズのブースがあったり、韓国SNS協会が「韓流SNS」というのを宣伝していたり、企業向け販促品を宣伝するブースもあった。COEX展示場では年中何かしらIT関連の展示会を開催しているので、出張や観光のついでに活気あふれる韓国の展示会を経験してみるのも、いい経験になるだろう。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131115/1112223/

ネットゲームはアルコール中毒と同じ? 韓国政府はゲーム産業育成を掲げつつ規制も [2013年11月8日]

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韓国国会は今、オンラインゲームを麻薬中毒やギャンブル中毒、アルコール中毒と同じく深刻な“中毒”を引き起こすので厳しく取り締まるべきだという趣旨の法律案を検討している。これは「中毒予防管理及び治療に関する法律」で、通称「4大中毒法」と呼ばれている。この法が制定されると、ゲーム産業は売上高の1%程度を「中毒治癒負担金」として国に支払わなければならない。

 韓国政府コンテンツ振興院が2013年10月末発行した「2013大韓民国ゲーム白書」によると、韓国の2012年ゲーム市場規模は約8900億円。26億3891万ドル分を輸出した。韓国のコンテンツ輸出の実に67%をゲームが占めている。K-POPよりも韓国産ゲームの方が海外で売れているわけだ。自動車やデジタル機器の輸出に負けないほど大きく成長しているのがゲーム産業の輸出である。

 コンテンツ産業を育成するうえでゲーム産業の活性化は欠かせない。韓国のICT政策省庁である未来創造科学部と文化体育観光部(部は省)は、ゲーム産業をK-POP、映画、アニメ、ミュージカルと並んで5大重点コンテンツ産業として育成するという計画を発表したばかりだった。

ゲーム産業振興の半面で規制論が台頭

 しかし、与党のセヌリ党は未来創造科学部と文化体育観光部の政策をひっくり返して、ゲームを「アルコール中毒や麻薬中毒のような社会悪を引き起こす」ということで取り締まろうとしている。セヌリ党はこれといった科学的根拠を示さないままゲーム中毒とアルコール中毒、麻薬中毒は同じと主張しているため、野党の民主統合党とゲーム産業は反発している。

 「育成する」と言ったかと思えば「規制する」と言い始めたりして、足並みのそろわない政府の姿勢にゲーム産業は困惑している。セヌリ党が規制強化しようとしていることが分かってから、ゲーム会社の株価は軒並み下落した。

「社会悪」というレッテル貼りに抵抗

 ゲーム産業は、「負担金以上に問題なのは、政府がゲームを社会悪と断定すること」だと口をそろえる。ゲーム産業の社会的印象が悪くなったことで、ゲーム開発者として働く人たちもプライドを傷つけられたとして、「ゲームが麻薬のように中毒を起こすので社会悪ということは、ゲーム開発者は麻薬売人と同じということなのか」と反発している。

 10月末に韓国を訪問した米グーグルのエリック・シュミット会長も韓国ゲーム産業を擁護して、「韓国のゲーム産業はK-POP以上に成長できる。ゲームを“検閲”するより活性化させるべき」とコメントしたほどだ。

 すでに政府は2011年、青少年のゲーム中毒を予防するため、「強制的シャットアウト制度」を導入している。16歳未満のユーザーは夜12時から朝6時までゲームを利用できないようにシャットアウトし、アクセスできないようにする制度である。

「強制的シャットアウト制度」も効果は限定的

 これは会員登録時の住民登録番号(国民ID)を根拠にした制度だ。その裏をかいて、小中学生らは16歳未満でない親の住民登録番号を盗用して、会員登録し始めた。また、海外にサーバーがあるゲームサイトは強制的シャットアウト制度が適用されない。なので、韓国のゲーム会社だけが影響を受ける結果となった。強制的シャットアウトで夜12時以降は利用できなくても、ゲーム会社はユーザーに利用できなかった時間分の利用料金を払い戻すことをしなかった。これもトラブルとなった。

 ではこうした規制強化に効果はあったのだろうか。その後の国会の調査によれば、強制的シャットアウト制度が始まってから夜12時以降ゲームをしなくなったと答えた青少年はたった0.3%だということが分かった。すると「ゲーム産業に対する無駄な規制はやめた方がいい」という世論がわき上がった。韓国コンテンツ振興院が2012年に青少年12万人と19~35歳の男女3300人を対象に実施した調査でも、ゲーム中毒と言えるほど問題のあるユーザーは全体の2%だった。

 政府がゲーム産業を厳しく規制すればするほど、ゲーム中毒が減るのではなく、ベンチャーキャピタルの投資が減り、新しいゲームの開発が減る悪影響が出ている。ゲーム産業の委縮は、韓国のコンテンツ産業全般に悪影響を与える可能性が高い。数年前まで中国や台湾、日本のネットカフェで見かけるオンラインゲームの多くは韓国で開発したものだった。最近のパソコン用オンラインゲームは中国と米国、モバイル用ゲームは日本のものが競争力を高めて市場を席巻し始めている。

ゲーム産業は署名活動を開始

 韓国インターネットデジタルエンターテインメント協会は、ゲームを麻薬やアルコール中毒と同じように扱うという、世界でも例を見ない「中毒法」に反対する署名を集めている。2013年11月7日までに19万人以上が署名に参加した。韓国のゲーム会社も、自社サイトに反対署名のバナーを貼り、ユーザーに署名を求めている。

 

大手ゲームサイトNEXONも、ゲームを社会悪とみなす中毒法制定に反対する署名を呼びかけている(Noと書いてあるバナー広告)

 11月14日からは釜山市で年に1度のゲーム展示会「GSTAR」が開催される。毎年30万人近くが訪問する大人気の展示会だ。GSTAR展示会のブースでも署名運動を続けるという。

 何でも政府が管理しようとするのが韓国の特徴ではあるが、ゲーム産業に対する政策には反対の声が強い。日本のように、基本的に市場に任せ、政府がゲームやコンテンツ産業にあまり口出ししない姿勢を見るとうらやましく思う。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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韓国キャリア、LTE周波数競争の一巡後にモバイルテレビ競争始まる [2013年11月2日]

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この2013年秋、韓国のスマートフォン市場では、端末は5型以上の大画面で競争、キャリア(通信事業者)はLTEでモバイルテレビを安く利用するサービスで競争を繰り広げている。

 10月まで韓国大手キャリア3社は「黄金周波数でよくつながるLTE-A」と、周波数を全面に出すCMをしていた。「黄金周波数」とは日本で言うプラチナバンド、800~900MHzの周波数帯のことである(詳しくは関連記事参照)。

 日本ではどうなるか分からないが、韓国では周波数だけでは一般消費者にLTE通信の速さが伝わらなかったようだ。今では高画質モバイルテレビや音楽サービスに競争の重点が移っている。スマートフォンからLTEで途切れることなくハイビジョンクラスの高画質で野球中継やDVD発売前の映画を視聴し、「5.1chサラウンド」で新曲もどこより早く聴けるといったことをアピールしているのだ。

スマホ端末は大画面化

 この秋人気のスマートフォンも、サムスン電子のGALAXY Note 3(5.7型)、LG電子のG2(5.2型)、パンテックのシークレットノート(5.9型)のように、5型以上ばかりである。移動中に1人でテレビや映像コンテンツを楽しむには小さすぎずちょうどいいサイズだ。

 キャリア3社のモバイルテレビやスポーツ中継はLTE加入者でないと利用できないようになっている。KT、SKテレコム、LGU+の3社は「広帯域LTE」という、さらに速度が速くなったLTEサービスを提供している。広帯域LTEサービスでは、LTEは下り最大100Mbps、LTE-Aは下り最大150Mbpsである。LTE-Aの実際の速度はソウル市内中心部で70Mbps前後、人が多い地下鉄の中では20Mbps前後だった。

各社がLTEとコンテンツのセット割引を提供

 KTは月額約550円の音楽ストリーミングサービスをLTE加入者には1年間無料で提供している。また、月額約450円で64チャンネルと5万5000本のVOD(ビデオ・オン・デマンド)がそろうモバイルテレビサービスと、映像コンテンツだけを利用できるLTEデータ通信6GB分がセットになったパック料金制を導入した。1980~2000年代のテレビドラマを10分以内に編集して提供する「思い出のドラマ」というコーナーが目玉である。

 SKテレコムはLTEデータ通信料とモバイルテレビ利用料を合わせて月額約800円のパック料金プランを始めた。70チャンネルあるモバイルテレビで、リアルタイムの野球中継やドラマ、バラエティー、ニュース番組などを視聴できる。ハイビジョン画質の映画や地上波テレビの人気ドラマやバラエティー番組の再放送VODも3万本以上あり、追加料金なしで利用できる。SKテレコムはサムスンと共同販促も実施していて、GALAXY Note 3を購入すると、パック料金が2カ月間無料になる。

 SKテレコムは、キャリア3社の中で唯一米メジャーリーグの試合を中継している。韓国人選手が登場する試合の日になるとLTEとモバイルテレビの加入者が急増するという。モバイルテレビで3Gより料金の高いLTEに加入者をシフトさせる戦略は有効だったようだ。パック料金に加入しなくても、SKテレコムの利用料金に応じて貯まるポイントでコンテンツ料金を決済できるようにもしている。さらに、月額約5000円以上のLTE料金プランに加入した加入者は、毎月約1800円分映像コンテンツを利用できるようにするキャッシュバック制度も始めた。

モバイルテレビを見ながらつぶやく「マルチタスク」も

 LGU+は月約500円で40チャンネルと映画VOD、ドラマ再放送VODを利用できるモバイルテレビ「U+HDTV」に力を入れている。


「LGU+のモバイルテレビ「U+HDTV」

 

LTE加入者だけが利用できる高画質モバイルテレビ(モバイルIPTV)で、リアルタイム放送40チャンネルと地上波テレビ番組の再放送VODがそろっている

 スマートフォンの画面を4分割して4チャンネルを同時に視聴できるマルチチャンネルが目玉である。モバイルテレビ視聴中は電話の着信を拒否する機能もあるので、「ドラマの一番いい場面で、突然の電話に邪魔される」という事態を防止できる。

 モバイルテレビを観ながらSNSでつぶやいたり、ネット検索したりという「マルチタスク」も実現している。韓国ではモバイルテレビや動画を観ながら番組内容をネットで調べたり、出演者が身に着けている洋服を検索して購入したりと、テレビをより楽しむために「マルチタスク」する人が多い。マルチタスクを楽にできるかどうかも競争のポイントになっている。

モバイルテレビを見すぎると料金はどうなる?

 SKテレコムの調べによると、LTEよりさらにネットワークが速いLTE-Aユーザーの方が、スポーツ中継やドラマといった映像コンテンツの消費が多かった。2013年7月の場合、LTE加入者のデータ通信量が月間3.2GBなのに対し、LTE-A加入者は4.1GBで、約1GBほど多かった。

 しかし気になるのはデータ通信料金である。3Gはデータ通信使い放題の料金制度があるが、LTEは従量制。野球中継やドラマを毎日観ていると、とんでもない料金になってしまう可能性がある。

 そこで、キャリア3社は映像コンテンツを利用する時だけ使えるLTE定額料金を始めている。1日2GBずつ月最大62GB分の映像コンテンツを利用できる特別なLTEデータ通信料金をキャリア各社が月額700~900円で提供している。LGU+は、24時間約200円でLTEを使い放題という料金プランも始めた。週末や特別に観たいスポーツ中継がある日だけ加入すれば、従量料金を気にぜず視聴できるというわけだ。

 日本でも地下鉄構内や走行中にLTEを利用できるようになり、モバイルテレビを利用するユーザーが増えているというニュースを見た。日韓のスマートフォンユーザーが欲しがるコンテンツは似ているのかもしれない。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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賞金2億円のオンラインゲーム世界大会、スマホ時代でも人気を保つPCゲーム「LOL」 [2013年10月25日]

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韓国で人気のオンラインゲーム。スマートフォンが普及してから、ゲームもすっかりモバイルが主流になったと思ったら、まだまだ根強い人気を誇るパソコン用オンラインゲームがあった。「League of Legends」、略してLOL(ロール)と呼ばれるゲームである。


League of Legends(LOL)」のゲームサイト

 米ゲーム会社Riot Games社が2009年に開発したLOLは、世界145カ国の7000万人以上のユーザーが利用している。ゲームサーバーにアクセスする人は1日平均1200万人、同時接続者数は300万人超という数を誇る。ユーザーのゲーム時間を足すと、月1億時間を超えるというからこれまたすごい。

 LOLのやり方は、簡単にいうと3対3または5対5で、相手の「Nexus」という本部を先に破壊できるかどうかを競うネットワーク対戦型ゲームである。それぞれ使える技が違う100以上あるチャンピオン(キャラクター)から選択し、知らない人と一緒にチームになって対戦する。

各国の選抜を勝ち抜いた「プロゲーム団」が競う

 LOLは韓国でも大人気だ。自分でプレイするのはもちろん、観戦して楽しむオンラインゲームとしても人気がある。「プロゲーマー」が参加する世界大会まである。Riot Gamesが主催する「League of Legends Championship Series」の世界王者を決めるワールドチャンピオンシップの賞金総額はなんと200万ドル、2億円近い。優勝すると100万ドル、2位は25万ドル、3位は15万ドルと上位14チームまで賞金がもらえる。

 Riot Gamesによると、2013年9月から10月かけて開催されたワールドチャンピオンシップは、ケーブルテレビ中継とネット中継合わせて全世界1000万人以上が視聴したほど人気だという。米ロサンゼルスにあるStaples Centerで行われた決勝戦には1万1000人の観客が集まった。Staples CenterといえばプロバスケットボールNBAの試合やグラミー賞の授賞式が行われる有名な大型室内体育館である。

 チャンピオンシップに参加したのは、各国の選抜大会を勝ち抜いた代表たち。決勝では韓国と中国のプロゲーマーが戦い、韓国のチーム「T1」が優勝した。

韓国大手キャリアが支援する「T1」

 LOLチャンピオンシップで優勝した「T1」は、韓国の大手通信事業者(キャリア)であるSKテレコムがサポートする「プロゲーム団」である。世界1000万人が視聴するワールドチャンピオンシップで優勝したことで、SKテレコムが得た広告効果は相当なものである。

LOLワールドチャンピオンシップで優勝した韓国SKテレコムのプロゲーム団「T1

 T1に所属するプロゲーマーたちは1994~1996年生まれで、ゲーマーを養成するコーチも1984年生まれという、とても若いチームである。SKテレコムは「トレンディー」「若い」「楽しい」というブランドイメージを高めるために、プロゲーム団をサポートしているという。

 韓国では大手IT企業の多くがプロ野球の球団、バスケットボールの球団を運営するように、プロゲーム団のスポンサーになっている。League of Legendsの場合、キャリアのSKテレコムとKT、サムスン電子、航空会社のJINAir、大手メディアのCJ、建物管理業者のナジン産業がそれぞれLOLのプロゲーム団を抱えている。

 韓国や台湾などアジアで人気のオンラインゲーム対戦は、「eスポーツ」として世界に広がり、スポーツ競技種目の1種ととらえられるほどになった。「シーズン3」ワールドチャンピオンシップではT1が優勝、ナジンが3位、サムスンが9位に入賞し、韓国チームが合計119万5000ドルの賞金を獲得した。韓国のプロゲーマーは元祖eスポーツともいえる、スタークラフトのリーグ戦でも毎回優勝しているが、LOLでも頭角を現している。

米国でも普及する「eスポーツ」

 米政府はLOLのチャンピオンシップに参加するプロゲーマーをスポーツ選手として認めている。米国のLOLプロチームに所属することになった韓国人プロゲーマー5人は、スポーツ選手用の「P1-Aビザ」を与えられている。

 ここまでLOL市場が大きくなると、プロゲーマーのスポンサーになる企業も増える。米コカ・コーラはLOLワールドチャンピオンシップのスポンサーになった。日本企業では日産自動車が北米のチーム「Curse Gaming」のスポンサーになっている。

 LOLは2013年からサムスンがメインスポンサーを務める「World Cyber Games(WCG)」の競技種目になった。WCGとは、2000年から開催されているオンラインゲームプロゲーマーの世界王者を決める「eスポーツ大会」である。2013年10月に世界各国で代表選抜予選が行われ、11月28日に中国・上海に近い江蘇省崑山でWCG2013 Grand Finalが開催される予定だ。WCGには日本代表も参加することになっている。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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韓国で「黄金周波数」巡る騒動、コードレスフォン子機を使うだけで罰金18万円? [2013年10月18日]

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今週、韓国のTwitter上では「コードレスフォンの子機で電話を受信するだけで18万円の過怠料」というニュースが話題になった。デマではないかと疑ったが、テレビのニュースにも登場した。

 「2014年1月1日から、900MHzの周波数帯を使うアナログコードレスフォンの子機で電話をかけたり、電話に出たりすると、周波数不法使用に当たり電波法違反で行政処分の対象になる」「過怠料として200万ウォン(約18万円)を支払わないといけない」という内容だった。

 その理由は、韓国政府の通信政策を担当する未来創造科学部が2011年に900MHz帯を大手通信事業者(キャリア)のKTに割り当て、LTEサービスのために使うようにしたことにある。KTは、900MHz帯は電波干渉が多いとしてサービスを始められずにいた。900MHz帯の電波を使うアナログコードレスフォンを使用すると、同じく900MHzを使うKTのLTEサービスの電波と干渉し、信号が途切れたり、速度が遅くなることもあるという。

 KTは2013年8月、LTE-Advancedのために1.8GHzの周波数帯を「落札」した。1.8GHz帯と900MHz帯を使い、基地局の負荷を分散してより通信速度を早くする「キャリアアグリゲーション」でLTE-Advancedサービスを始めるとしている。そのためにも未来創造科学部に「電波干渉問題を何とか解決してほしい」と要請していた。

韓国・仁川広域市にあるKTのLTE基地局で施設点検している様子

周波数帯使用期限が迫るまで、政府は周知せず

 未来創造科学部は、900MHz帯を使うアナログコードレスフォンは2003年から2006年にかけて販売されたもので、まだ10万人近くが使っていると説明した。2007年からは1.7GHz帯や2.4GHz帯の周波数を使うデジタルコードレスフォンだけ販売しているので、最近購入したコードレスフォンは問題ないという。ところが、インターネットショッピングモールでは、今も900MHzのアナログコードレスフォンが販売されている。

 未来創造科学部は、2006年10月の時点で「コードレスフォンの900MHz帯周波数使用期間は2013年12月31日まで」と決定したとしている。しかし未来創造科学部はあと2カ月半で10万人以上の人が過怠料を払うことになるかもしれない重要な事項を、Webサイトに告知文を掲載しただけで、何も宣伝活動をしていなかった。
 

世論の非難を浴び、韓国政府は“方針転換”

 Twitterやテレビニュースなどでこのことが知れ渡ってから、「政府はKTのために国民を犯罪者にする気か」「Twitterをしていなかったら何も知らず毎日18万円ずつ過怠料取られるところだった。怖い」と未来創造科学部を非難する意見が広がった。人気アイドルや著名人らも、Twitterで「今回のコードレスフォン過怠料はひどすぎる。電話に出るだけで18万円の過怠料なんてあり得ない。政府は企業の肩ばかり持つな」と政府・未来創造科学部を非難する書き込みをした。

 2013年10月12日、未来創造科学部は「2014年1月1日から900MHzのアナログコードレスフォンを使うのは電波法違反になるが、個人を対象にした取り締まりや過怠料徴収はしないことにする」と発表した。900MHzコードレスフォンの販売を中止し、時間をかけてデジタルコードレスフォンへと移行することになった。

せっかくの「黄金周波数」が台無しに

 未来創造科学部はKTの900MHzの周波数帯域を移動してコードレスフォンとの電波干渉を避けるとしている。そうなると、今度は800MHzを使う別のキャリア・LGテレコム(LG U+)の電波と干渉することになる。LG U+利用者とKTのLTE利用者が4m以内に近づくと電波干渉が起こるという。

 電波干渉を早期に解消するためには、900MHzのコードレスフォンを回収して他の物に交換するのが一番いいのではないだろうか。過怠料を徴収しないとしても、900MHzをKT以外が使うのは電波法違反になることには変わりない。

 800MHz帯、900MHz帯の電波は携帯電話サービスに向く特性があり、日本では「プラチナバンド」と呼ばれることがある(関連記事)。韓国でもやはり、キャリアが「『黄金周波数』でつながりやすい!」と宣伝し、周波数を前面に出すCMを流している。周波数をめぐる競争や思わぬ問題は今後さらに起こりそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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サムスンが世界初の曲面ディスプレイスマホ「GALAXY ROUND」発売、高価な“瓦”との酷評も [2013年10月11日]

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ついに韓国でも、米アップルの新型スマートフォン
「iPhone 5s」「iPhone 5c」が発売されることになった。2013年10月9日、アップルは10月25日から韓国など51カ国でiPhone5s/5cを発売すると発表した。日米などに続く第2弾の発売である。

 同じ10月9日に、サムスン電子は世界初という曲がったディスプレイのスマホ「GALAXY ROUND」を発表した(関連記事)。


韓国サムスン電子の曲面ディスプレイ搭載スマートフォン「GALAXY ROUND」

 さらにサムスンは従来機の「GALAXY S3」と「GALAXY Note 2」を“実質無料”で販売すると発表した。「MNP(番号乗り換え制度)で12カ月以上の契約で、月額約3000円以上の料金プランに加入する」という条件付きではあるが、このタイミングでの値下げは、iPhone5s/5cの発売に合わせたのではないかと疑いたくなる。主力スマホの「GALAXY S4」も大手量販店で8割引の1万5000円ほどで販売を始めた。

手元にすっぽり収まる形状

 新たに発売されるGALAXY ROUNDは曲がったディスプレイを搭載した世界初の「カーブド(curved)スマートフォン」である。曲がったディスプレイというので、掛け軸のように丸められるディスプレイのことかと思ったが、そこまで曲がるわけではなく、少し曲がったままのディスプレイだった。形が似ているとして、SNSでは早速“瓦”というニックネームが付いた。

GALAXY ROUNDの“瓦”のような外観

 5.7型のFull HD Super AMOLEDディスプレイの左右曲率が400mmなので、若干左右が丸くなっている感じだ。手に持つと、手のひらのカーブに沿ってすっぽり収まるのでグリップ感はとても良い。通話する際にも耳の周りにくっつく感じなので、イヤホンをしてスマホのマイクを口の前に近づけなくても大丈夫だ。


GALAXY ROUNDを上部から見たところ。カーブは手のひらになじみやすい

 CPUは2.3GHzクアッドコア、メモリーは3GB RAM、カメラは1300万画素と仕様は「GALAXY Note 3」(関連記事詳細レビュー)とほぼ同じ。だが、曲がったディスプレイはガラスではなくプラスチック素材なので、GALAXY Note 3よりも薄く(7.9mm)、より軽く(154g)なった。

GALAXY ROUNDの価格は約10万円と高め

 GALAXY ROUNDは韓国の大手通信事業者(キャリア)のSKテレコムが独占販売することになっていて、価格も10万円ほどする。まだ世界市場で発売する計画はないようで、「サムスンはこんなものまで作れる」という技術力をアピールするための端末なのかもしれない。

 GALAXY ROUNDの発売に韓国のSNSは大いに盛り上がっている。「すごいスマートフォンが登場した」と期待する声が多いが、「こんな高い“瓦”、誰が買うの?」「曲がったスマホではなく、曲がるスマホが欲しかった」「世界初を狙う挑戦はすごいが、販売できるような代物ではないだろう」「韓国のユーザーは自腹でサムスンのテスターをさせられるわけか」といった辛口コメントもある。iPhoneファンとGALAXYファンが互いに“自分側”の先進性を主張し合って、SNSでけんかする事態まで起きている。

「曲がるバッテリー」は製品化できる?

 サムスンやLG電子が展示会で公表した「曲がるディスプレイ(フレキシブルディスプレイ)を使ったスマホ」を作るには、もちろん曲がるバッテリーが必要である。バッテリーは発熱して爆発する可能性もあり、物理的に安定していることが重要だ。曲がるバッテリーの開発に成功したとしても、安全性を考慮すればそう簡単には製品化できないだろう。

 LG電子製スマホのバッテリーを製造しているLG化学は、「大きいバッテリーの上に小さいバッテリーを積み上げられる階段式バッテリー」に続いて、ウエアラブルデバイス向けの巻きつけても大丈夫な曲がるバッテリーを開発し、量産を始めると10月8日に発表した。LG化学によると、これら新しいバッテリーは「スマホのバッテリーは四角」という固定概念から脱皮し、スマホのデザインに合わせて作れるという。端末内部の無駄なスペースを減らして、ぴったりのバッテリーを組み込める。内部スペースをフル活用できる分バッテリー容量も増やせるので、より長時間動作するという。

 iPhone 5s/5cへの対抗のために、韓国ではサムスン、LG電子、パンテックの新機種発売や、サムスンの大幅値下げなどの動きが相次いだ。それでもiPhone 5s/5cが売れるのか、サムスンが市場を守り抜くのか、楽しみである。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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韓国スマホメーカーが「スマートカバー」に注力、従来のケースに機能性と遊び心を付加 [2013年10月4日]

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韓国サムスン電子のスマートフォン「GALAXYシリーズ」のユーザーは日本でも多い。韓国旅行のお土産に「スマートカバー」を買って行く日本からの旅行者をよく見かける。カラフルな本革カバー、鏡のようになる透明パネル付きカバー、高級なスワロフスキーのクリスタルを使ったハンドメイドカバーなど、大人かわいいカバーを日本より安く買えるからだろうか。

 韓国では最近、「スマートフォンケース」ではなく「スマートカバー」を使う人が増えている。スマホを守ったり、カラーや柄などおしゃれを楽しんだりするだけではなく、スマホを使いやすくする機能性を強調したのがスマートカバーである。

サムスンが「Sビューカバー」で先陣

 スマートカバーの先駆に当たるのが、サムスンの「GALAXY S4」の専用カバー「Sビューカバー」だろう。

 韓国人が大好きなおサイフ兼用(クレジットカードを差し込んで日本の「おサイフケータイ」っぽく使う)フリップ式ケースは、便利だが、液晶を覆ってしまうので時計を確認するためにはいちいちフリップをめくる面倒がある。Sビューカバーはフリップに透明窓を付けて、カバーを開けなくても時計を確認したり通話したりできるようにした。

 ディスプレイの中でもフリップの透明窓から見える部分だけ電力を消費する仕組みなので、バッテリーがすぐ消耗することもない。バッテリーカバーを外して代わりにカバーを付けるようにすることで、カバー付きの状態でも厚ぼったくならず端末を保護できるようにした。

 サムスンは2013年9月25日に世界同時発売した5.7型ディスプレイのスマホ「GALAXY Note 3」(日本ではauなどが発売予定=関連記事)にも専用のSビューカバーがある。GALAXY S4のSビューカバーより透明窓が大きくなり、よりスリムになった。端末を保護透明窓からは時計の確認に加えて、ショートメッセージや発信者番号、天気の確認、カメラとミュージックプレイヤーのコントロール、「Sヘルス」アプリの万歩計機能を利用できる。

サムスン電子のGALAXY Note 3専用「Sビューカバー」。

透明窓の上からメモまでできる

 何よりも便利なのは、カバーを開けずに透明窓の上から「Sペン」で手書きメモができることだ。通話中にメモしたくなった時、通話しながらSペンで書き込めるので助かる。カバーを開けてSペンでメモをすると、手書きの文字をテキストに自動変換して、その文字をアドレス帳、マップ、メール、検索など、どのアプリで使うのかというリンク先を選べる機能もある。

 GALAXY Note 3のSビューカバーは遊び心もある。カバーのカラーに合わせて、透明窓から見える液晶のカラーを変える機能が特徴。カバーの透明窓から見える液晶部分を、グリーン、パープル、ブルーなど、カバーのカラーに合わせて見やすいよう自分で設定できるのだ。

GALAXY Note 3専用Sビューカバーは7色のカラーバリエーションがある。

LGは「クイックビューケース」で対抗

 LG電子は、9月27日に発売した5.2型スマホ「LG Vu3」に専用カバー「クイックビューケース」を用意した。GALAXYのカバーとは全く違う不透明カバーで、これもまたユニークだ。


LG電子のスマートカバー「クイックビューケース」。

 カバーを開けることなく、ぴかぴか光るキャラクターや動物のアイコンで、通話受信、ショートメッセージ受信、不在電話メッセージ、時間、アラーム、充電状態などを確認できる。スペースインベーダーに登場するキャラクター風のネオンサインのようなアイコンが動いて、着信やメール受信を知らせてくれる。どのデザインのアイコンにするかはユーザーが選択できる。サムスンのSビューカバーを意識しているのか、LG電子はスマホ新機種と同じぐらいクイックビューケースを大々的に宣伝している。

中小企業を圧迫しているという批判も

 韓国スマホメーカーのパンテックも、最新の「VEGA LTE-A」を購入すると、専用カバー「スマートフリップ」を無料提供している。フリップケースに透明窓の代わりにぽっかり穴が開いている。そこからスマホの液晶をタッチして、カバーを開けずにショートメッセージの確認、スケジュールのアラームなどさまざまな機能を利用できる。

 ユーザーにとってはスマートカバーの登場で、スマホ端末を保護しながらスマホの機能を便利に使えるメリットがある。普通のケースではなくスマートカバーを選ぶ人が増えるだろう。だが、中小企業の市場だったスマホケース製造販売にサムスンやLGといったメーカーが直接参入しているので、「大手が中小企業を潰している」という批判もある。

 それでもサムスンやとLGはスマートカバーに力を入れており、競争がこれから本格化しそうだ。スマホメーカーが本体からカバーまでを一通り製造販売する動きはしばらく続きそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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韓国のトレンドリーダー「C世代」は大の動画好き、YouTubeでも強い参加意識 [2013年9月27日]

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2013年9月25日、米Googleのアジア太平洋マーケティング担当者らが韓国を訪問し、動画投稿サイト「YouTube」をマーケティングツールとして利用するためのヒントを紹介した。

 この日テーマになったのは「C世代」。最近の若い世代は何よりも映像コンテンツが大好きで、「創造(Creation)」「つなげる(Connection)」「コミュニティ(Community)」「情報を選別・編集する(Curation)」が好き。こうした「C世代」の若者たちはデジタルネイティブで、SNSで人とつながることで情報を取得するだけでなく、情報の生産にも関わり、情報を共有・拡散したがる傾向が強いという。

 例えば、YouTubeで人気歌手の音楽動画を視聴するだけで終わらず、気に入った動画のリンクをSNSで友達に教えたり、コメントを残したりする。さらに「歌ってみた」「踊ってみた」という動画を投稿するのが、C世代の特徴である。

参加型プラットフォームがマーケティングの主戦場

 韓国ではこのC世代が現在のトレンドリーダーであり、コンテンツ市場の主な消費者である。「これからはC世代がよく利用する参加型プラットフォームのYouTubeを使ってマーケティング活動をすべきだ」というのがGoogleの主張だった。

 CMを見るだけでは満足せず、CMの中に飛び込みがる、企業側とコミュニケーションを取りたがるのがC世代。というわけで、韓国ではYouTube上で動画が始まる前に見せる短いCMではなく、映画のような動画や「ドッキリ動画」を制作して載せる企業が増えている。

 例えば韓国通信事業者(キャリア)のLGU+(LGテレコム)は、スマートフォンから利用するナビゲーション「U+NaviLTE」の機能を宣伝するため、ホラー映画のようなCMを制作した。地図データのリアルタイムアップデート機能がないナビゲーションのせいで、旅行中に道に迷ってしまった2人の女子大生が、不思議な老人に出会う。こんな場面から始まる10分程度の動画をYouTubeで流している。

結末が7つある参加型動画で口コミ拡大

 しかもユーザーは、女子大生がどのように行動すべきかを選択できる。ユーザーの選択によって結末は7つに分かれる。LGU+のU+NaviLTEは、高速モバイル通信のLTEを使って地図データをリアルタイムアップデートできるため、道に迷うことがないというのがアピールポイント。そのためのCM動画だが、ユーザーが参加できることで、見るだけのCMより印象に残る。ゲームのように楽しめるので、「ユーザーが自ら検索してまで見たがるCM」として大きな話題になった。SNSでも動画のリンクが広がり、口コミで広がった。

 LGU+側は、「映像コンテンツ消費が非常に増えているため、オンライン広告も画像やテキストだけではなく、映像で制作するようになった。ユーザーが楽しめる映像をもっと制作していきたい」と説明した。

LG電子は「ドッキリ動画」

 LG電子のチリ法人が制作した「ドッキリ動画」は、欧米で先に話題になった。面接の時に、面接官の後ろにある窓から見えるビルの外に隕石が落ち、面接を受けている人がそれを見てびっくりして慌てる。しかし窓だと思っていたのは実はLG電子の84インチスーパーハイビジョンテレビ(Ultra HD TV)。画質が良すぎて窓の外を見ていると勘違いするほどだと訴求するためのドッキリだった。

 LG電子のチリ法人は、同じくスーパーハイビジョンテレビを使ってエレベーターの底が抜けて落下するかのように見せかけた「ドッキリ動画」も制作した。ネット上で大ヒットした面白動画は欧米メディアで取り上げられ、低予算でテレビCM以上の効果を上げたという。

 韓国のアモーレパシフィックという化粧品メーカーは、高周波オーディオフィンガープリント技術(音声認識)を使ったアプリを提供している。YouTubeに掲載した同社のCM動画の音楽に合わせてスマホを振るとポイントが貯まり、割引クーポンがもらえるというアプリだ。

 同社は、ダンスアイドルグループ少女時代(Girls’ Generation)のメンバー・ユナが出演するCMに、ユーザーが自分の動画を組み合わせて、2人で一緒にCMを撮影したかのように見せられるアプリも提供する。こうして自分で制作したCM動画をYouTubeやFacebookに投稿できるようにした。企業が一方的にCM動画を制作して動画サイトに載せるのではなく、ユーザーが面白がって自分なりのCM動画を作って友達に共有するという新たな形の動画マーケティングを生み出したのだ。

YouTube利用目的トップは「情報を探すため」

 韓国ではスマホが普及する前までは、国内企業が運営する動画投稿サイトが人気だった。だが、スマホが登場してからは、モバイルで利用しやすいYouTubeが最も人気を得ている。Googleが韓国の16歳から60歳代までのインターネット利用者2000人に調査したところ、57%が「動画を観たい時はまずYouTubeにアクセスする」と答えた。

 YouTubeを利用する目的は、1位が「情報を探すため」、2位が「音楽鑑賞」だった。文字や写真よりも動画で情報を仕入れようとする人が増えているのだ。また、全体の44%は気に入った動画があるとSNSで友達に教え、50%は動画に表示されたURLリンクをクリックすると答えた。

 韓国ではテレビCMをそのままネットに流しても宣伝効果がなく、ネットならではの動画マーケティングが必要だと言われる。動画を観るだけで終わらず、積極的に共有し参加するC世代を対象にした動画マーケティング。さまざまな工夫を凝らした競争がより一層激しくなりそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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韓国ユーザーはiOS 7に興味津々、サムスンはTizen(タイゼン)で対抗できるか? [2013年9月20日]

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 2013年9月20日、日本では米アップルの新型スマートフォン
「iPhone 5s」「iPhone 5c」が発売された。前回書いた通り、韓国での発売は少し先になる。

 にもかかわらず、韓国ポータルサイトで最も読まれたIT記事ランキングを見たら、日本のiPhone 5s/5cに関する状況をリポートする記事がランクインしていた。「日本ではキャリア(通信事業者)3社がiPhone 5s/5cを巡って競争している」「iPhone 5sの実質負担額は16GBモデルが新規と乗り換え(MNP)で0円」といった内容の記事だ。

最新人気機種で「実質負担額0ウォン」はあり得ない

 コメント欄には「うらやましい~」の書き込みが200件ほどずらりと並んでいた。NTTドコモがiPhone 5s/5cを販売することで、ドコモが販促に力を入れていた韓国サムスン電子の「GALAXY S4」の販売動向を気にするコメントもあった。

 韓国でもキャリア同士の競争によりスマホを安く販売するケースはある。だが在庫処分かよほど売れない機種でない限り「実質負担額0ウォン」はない。最近だと旧機種の「iPhone 5」を0ウォンで販売する代理店が増えているものの、最新機種はせいぜい1万円ほどの割引しかない。スマホの端末価格を安く抑えるには、たいてい一番高い料金プランで契約しなければならない。端末価格をとるか、適正な料金プランをとるか、よく考える必要がある。

 韓国では、やはりサムスンのGALAXYシリーズのユーザーが圧倒的に多い。2013年9月時点でiPhoneユーザーは携帯電話加入者の5%に当たる約290万人にすぎない。2012年まではiPhoneユーザーの割合が10%を超えていたが、その後、サムスンとLG電子が巻き返した。iPhoneよりサムスン・LGのスマホの方が端末割引特典が大きかったことや、サムスンの「大画面化戦略」が奏功した。iPhoneユーザーは漸減しているのが実情だ。

 2013年9月20日、日本では米アップルの新型スマートフォン「iPhone 5s」「iPhone 5c」が発売された。前回書いた通り、韓国での発売は少し先になる。

 にもかかわらず、韓国ポータルサイトで最も読まれたIT記事ランキングを見たら、日本のiPhone 5s/5cに関する状況をリポートする記事がランクインしていた。「日本ではキャリア(通信事業者)3社がiPhone 5s/5cを巡って競争している」「iPhone 5sの実質負担額は16GBモデルが新規と乗り換え(MNP)で0円」といった内容の記事だ。

最新人気機種で「実質負担額0ウォン」はあり得ない

 コメント欄には「うらやましい~」の書き込みが200件ほどずらりと並んでいた。NTTドコモがiPhone 5s/5cを販売することで、ドコモが販促に力を入れていた韓国サムスン電子の「GALAXY S4」の販売動向を気にするコメントもあった。

 韓国でもキャリア同士の競争によりスマホを安く販売するケースはある。だが在庫処分かよほど売れない機種でない限り「実質負担額0ウォン」はない。最近だと旧機種の「iPhone 5」を0ウォンで販売する代理店が増えているものの、最新機種はせいぜい1万円ほどの割引しかない。スマホの端末価格を安く抑えるには、たいてい一番高い料金プランで契約しなければならない。端末価格をとるか、適正な料金プランをとるか、よく考える必要がある。

 韓国では、やはりサムスンのGALAXYシリーズのユーザーが圧倒的に多い。2013年9月時点でiPhoneユーザーは携帯電話加入者の5%に当たる約290万人にすぎない。2012年まではiPhoneユーザーの割合が10%を超えていたが、その後、サムスンとLG電子が巻き返した。iPhoneよりサムスン・LGのスマホの方が端末割引特典が大きかったことや、サムスンの「大画面化戦略」が奏功した。iPhoneユーザーは漸減しているのが実情だ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130920/1105707/

サムスンのお膝元でiPhone 5sと5cを酷評する韓国メディア、ユーザーはAndorid不安から乗り替え検討も [2013年9月13日]

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米アップルが2013年9月10日(現地時間)に発表した
スマートフォン「iPhone 5s」と「iPhone 5c」。日本ではNTTドコモからも販売されることになり、話題騒然になっている。

 韓国でも、やはりiPhone 5sと5cは話題になっている。去年の「iPhone 5」の時と同様、またもや5sと5cは日本で先に発売される。韓国での発売は今年11月以降になりそうだ。今回は5sと5cを先行発売する国から個人輸入してMVNOで使える道が開けた。「キャリアの補助金なしでもいいから早くiPhone買いたい!」と心待ちにしているユーザーも少なくない。

指紋認証やカメラ機能、処理速度向上などが話題になっている「iPhone 5s」

韓国メディアはiPhone 5s/5cを酷評

 海外のメディアは、スティーブ・ジョブズがいた頃のようなあっと驚かせるところはなくても、iPhone 5sの指紋認証やカメラ機能改良、A7チップ搭載で処理速度が高くなった点、常に動きを感知して最適の状態にするモーションプロセッサーM7を搭載したところなどを高く評価している。

 それに対し、韓国メディアは酷評しているケースが多い。「iPhone 5sと5cは期待外れ」「新作発表後アップルは株価下落、サムスン電子は株価上昇」「5cは値段が高すぎて低価格スマホとは言えない」「指紋認証なんていらない無駄な機能」など、韓国メディアでは異常なほどアップルを批判する記事が多いのに驚いてしまった。

 「iPhone 5sと5cを少しでも褒めるとサムスンから広告もらえなくなるのか?」と突っ込みたくなるほどである。韓国にいると、iPhone 5sと5cについての中立的な情報を得るには、海外メディアの記事と、国内ブログのレビューを頼るしかない。

韓国ではサムスンの大型新製品発売が間近

 韓国内でも世界市場でも、スマホはサムスンの「GALAXYシリーズ」が最も売れている。サムスンは9月5日、新しいスマホ「GALAXY Note 3」と腕時計型のウエアラブル端末「GALAXY Gear」を公開したばかりである。

 GALAXY Note 3は、5.7インチSuper AMOLEDディスプレイの大画面に1310万画素カメラ、3200mAhの大容量バッテリーに重さは182gというスペックで、前の機種に比べ使いやすくなった。韓国のスマホユーザーは写真撮影が大好きで、特に「セルフカメラ」と呼ぶ自分撮りが大好きである。Wi-Fiが使える場所が多いので、テレビドラマの再放送やバラエティー番組のクリップ動画などを移動中に視聴する人も多い。通常の画面サイズのスマホは「小さすぎて目が痛い」と不評。韓国のWebサイトは未だにAdobe Flashのコンテンツが多いので、(iOSが動くiPhoneシリーズではなく)Android OSが動くGALAXYでないとネット閲覧が不便だという面もある。

Androidスマホの「スミッシング」詐欺が脅威に

 しかし最近、Androidスマホを狙った「スミッシング」が多発しており、「安全なiOSに乗り換えるべきなのではないか」と考えるユーザーが増えている。Twitterやブログ、韓国メディア記事のコメント欄の反応などを見ると、悩んでいるユーザーが多いのが分かる。

 韓国のスミッシングは、ショートメッセージ(SMS)とフィッシング(phishing)を組み合わせた造語。知人の電話番号からURL入りのSMSが送られてきて、そのURLをクリックすると悪性コード(マルウエア)に感染する。悪性コードを通じてハッカーにスマホを勝手に操作され、知らない間に有料アプリの決済を繰り返したり、モバイルショッピングサイトを経由して金品を盗まれたりするという、新しい金融詐欺である。

 アドレス帳に登録してある友人の電話番号から「結婚することになりました!」とか、「最近仕事がうまくいかなくてお金に困っている」といった内容のSMSとURLが送られてくると、気になってついクリックしたくなるものだ。ハッカーがスマホ内に保存された個人情報を盗み見して友人になりすましてSMSを送るので、従来型の「迷惑メール」に比べて引っかかってしまいやすい。

スミッシング被害金額は半年で約3億円

 スミッシング被害に遭った人はほとんどがAndroidスマホのユーザーだ。韓国ではGALAXYシリーズなどAndroidスマホ使っているユーザーが多いというのが1つの要因である。だが、AndroidスマホではGoogle Playストアを経由しなくても自由にアプリケーションをインストールできるため、悪性コードが入ったアプリに「感染」しやすいという事情もある。

 セキュリティ会社であるフィンランドF-Secureの調査によると、2012年10~12月世界市場で新しく発見されたスマホの悪性コードの96%がAndroid向けに作られたものだった。同じ期間中のiOS向け悪性コードの発見件数は0件だった。米シマンテックの調査結果も似ていて、Androidの悪性コードは103件、iOSの悪性コードは1件だった。

 韓国警察庁サイバーテロ対応センターによると、スミッシング犯罪発生件数は2012年の2182件から、2013年は上半期だけで16万449件に増えた。被害金額は2012年の5億6900万ウォン(約5200万円)から2013年上半期は32億1900万ウォン(約3億円)まで増えた。一度に大金を決済するのではなく、被害者が気付かないよう500~1000円ほどのお金を長期に渡って盗むのが特徴である。

“国産スマホ”も良いが、安全でかわいいカラーのiPhoneが気になる

 もちろん、スミッシング被害が急増しているのはサムスンやGALAXYのせいではない。だがAndroidスマホを使う限り、メッセージをクリックしないように気をつける以外打つ手が乏しい。AndroidのGALAXYでは不安がある。iPhone 5s/5cはGALAXYシリーズより画面は小さいし、韓国語のWebサイトの一部を表示できない不便さがある。だが「iPhoneを使った方が身のためかな」と悩むユーザーも多い。

 筆者もその1人。かわいいカラーで価格も安いiPhone 5cを狙っている。韓国メディアはiPhone 5cについて「洗礼されたスタイリッシュなモノクロがiPhoneの特徴だったのに、サムスンのまねをしてカラーを増やした」と酷評している。ここまでメディアにけなされながら、韓国でiPhone 5sと5cがどれだけ売れるか、注目したいところだ。


カラフルな「iPhone 5c」を筆者も狙っている

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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