モバイルゲームを売るにはSNSが必須? 開発者は韓国でKakao、日本でLINEと組む [2013年7月5日]

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韓国では、2012年下半期に中高年までを“ゲーム地獄”に引きずり込んだ国民的人気モバイルゲーム「Anipang」(
関連記事)が成功してから、SNG(Social Network Game)ではない単独ゲーム、つまりSNSとつながっていないモバイルゲームは売れなくなってしまった。アプリストアの人気上位は全てKakaoTalk(カカオトーク)とつながっているモバイルゲームで、大手ゲーム会社のアプリよりもアイデアで勝負するベンチャー会社のゲームアプリが躍進している。2013年6月時点で170を超えるゲームが「ooo(ゲーム名) for Kakao」の名前でアプリストアに登録されている。

 韓国では、単独のモバイルゲームや、「モバゲー」のような(SNSよりもゲームを中心とした)ポータルサイトが提供するゲームよりも、SNGが圧倒的に人気を集めている。それは、SNSが今までゲームに全く興味がなかった人までも顧客にできるプラットフォームだからである。


NHNハンゲームも韓国ではKakaoと組む


 実は、韓国のKakaoTalkでヒットしたモバイルゲームは、日本ではKakaoTalkではなくLINE(ライン)に乗り換えてリリースされることが多い。同じゲームを韓国語バージョンはKakao向けに、日本語バージョンはLINE向けに提供していることがよくある。韓国でSNSといえばKakaoTalkの存在感が大きいが、日本ではLINEを超えるSNSはないからだ。


 KakaoTalkとLINEはSNS事業では全世界で激しく競り合っている(関連記事)。ところが、LINEの親会社である韓国NHNは、韓国内ではKakao向けゲーム「チームナイン for Kakao」を提供するなど、ゲームの供給先としてKakaoを活用している。










NHNハンゲームがKakaoTalk向けに新しく始めた野球ゲーム「チームナイン for Kakao」


 KakaoTalk(KAKAO)とLINE(NHN)は共に韓国資本の企業が開発したSNSだが、海外利用者数が多いことから、韓国モバイルゲームの海外進出プラットフォームになるのではないかと期待されている。現時点でKakaoTalkのユーザーは全世界で約1億人、LINEは1億8000万人に上る。


中高年がソーシャルゲームを楽しむように


 韓国インターネット振興院が発表した「2012年スマートフォン利用実態調査」によると、スマートフォンユーザーの79.7%はKakaoTalkやLINEといったソーシャルネットワークサイトを経由したSNGを利用したことがあると答えた。SNGの利用経験者は10~30歳代は90%以上、40歳代77.2%、50歳代で54.3%と中年層の間でも着実にユーザーを獲得しているのが特徴だ。


 SNS上の友達から「面白いゲームがあるからやってみて」とメッセージをもらいゲームをダウンロードするのが最初のきっかけになっている。広告よりも、友達に勧められる方がダウンロードしてみようという気持ちになるからだ。また、「主にダウンロードするアプリ」についても79.7%がゲームと答えているほど、モバイルゲームは韓国のアプリストアで圧倒的な人気を集めている。


若年層よりも30歳代以上が有料アイテム購入多い


 2013年7月3日ソウルで開催されたゲームテクノロジーセミナーでは、KakaoTalkやSNG開発会社によるモバイルゲームの展望に関する発表が人気を集めた。スマートフォンのゲームアプリの主なユーザーは10~20歳代と思われがちだった。だが韓国で人気のSNGは、ダウンロード数は20歳代の方が多くても、有料アイテムを購入するユーザーはほとんど30歳代以上だという。


 2013年上半期の売上高を比較すると、いち早くKakaoTalk向けにゲームアプリを提供したベンチャーが既存の大手モバイルゲーム会社を追い越した。ゲーム会社が次々にKakaoTalkと手を結んだことで、SNGの種類も豊富になった。


 現状では、まだ「Anipang」「ウィンドランナー」「アイラブコーヒー」のように、中高年層のゲームになじみの薄い人でもすぐに遊び方を理解できるカジュアルゲームの方がユーザー数は多い。だが、この夏からはロールプレイングやシューティングなど本格的なゲームが多数登場している。パソコン用ゲームと比べても遜色ないほどグラフィックも高品質になっている。さらに、数人が同時にアクセスしてチームを作って敵を倒すゲームになっているので、SNS上の友達と一緒に遊ぶのにぴったりである。


大画面スマホや高速回線普及も追い風に


 最近のスマートフォンは画面が5インチぐらいあり、高性能プロセッサーを搭載して、バッテリーもかなり長持ちするようになった。しかも7月から韓国のキャリアはLTEより2倍、3Gより10倍速い150Mbpsの「LTE-Advanced」を商用化する。「ネットワークが遅いためにスマホでゲームを楽しめない」ということも少なくなりそうだ。


 韓国コンテンツ振興院によると、韓国のスマートフォン向けゲーム市場規模は2012年約820億円で前年比28%ほど成長している。2013年も20%以上成長する見込みである。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130705/1096656/

スマート教育はロボットを活用する時代へ、韓国2大キャリアが子供向けロボットで競う [2013年6月28日]

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韓国は、教育分野でのIT活用、スマート教育に熱心な国だ(
関連記事)。2013年6月18日~20日、韓国・ソウル市にある展示場COEXで、スマート技術と教育の融合をテーマにした「スマートラーニングコリア」展示会が行われた。一般向けではなく、ビジネス・バイヤー向けの展示会ではあったが、スマート教育を実践している小中学校の教師が参加するセミナーや模擬授業もあり、教師と企業が一緒になって教育の未来を考える展示会だった。

 展示ブースの中で目立ったのは、大手通信事業者(キャリア)であるSKテレコムとKTの2社が、幼児向け教育ロボットを目玉にしたことである。


 SKテレコムは「アルバート」という名前のロボットにスマートフォンを装着して使う方式である。ロボットとスマートフォンの他に、専用のお店ごっこゲームボード、英単語カード、英語絵本などを展示した。









ソウル市の展示会でSKテレコムが展示した幼児向け教育ロボット「アルバート」



 英語絵本は電子ペンでなぞると英語を読み上げる。ペン先に付いているカメラで自分の顔を撮影してアプリに連動させると、ロボットの画面には絵本の主人公が自分の顔になって登場。子供が楽しく英語を勉強できるようにしている。英語絵本は600種類を販売。英単語カードをロボットにかざすと読み上げ、韓国語で意味を教えてくれる。


Bluetoothサイコロでお店ごっこ


 「お店ごっこゲームボード」はロボットがお客、子供が店員になる。Bluetooth付きサイコロを投げると、サイコロの数字をロボットが認識して、その数だけボード上のマスを進められる。


 マスには魚、野菜、文房具、セール会場といった文字が書いてある。ロボットは該当マスに書いてあるカテゴリーの中から商品を選んで「○○をください」と子供に示す。子供は商品が書いてあるカードをロボットにかざす。ロボットはBluetoothでカードの情報を認識し、ロボットの画面(スマートフォンの部分)にカードに書いてある商品が登場する。


 さらに、画面にはロボットがお金を差し出す場面が登場し、ロボットは「おつりください」と言う。子供は専用の紙幣をロボットにかざし、おつりを渡す。ちゃんと計算しておつりを渡すことで算数の勉強につながり、遊びながら学習効果もあるということだ。


 スマートフォンにゲームコントローラーをダウンロードすることもできる。スマートフォンをリモコンにしてロボットを動かしてボールを入れるサッカーゲームで遊ぶ、といった使い方になる。今までロボットというと大きくて銀色に光る巨体をイメージさせたが、SKテレコムの教育ロボットは手のひらサイズでとても小さく簡素なものだった。


 スマートフォンが画面になるので、ロボットとゲームボード、絵本や電子ペンまで一式全てをそろえても2万円もかからないお手頃価格である。スマートフォンを取り付けて使う仕組みなので、ロボット自体を買い替えなくてもスマートフォンにアプリをインストールするだけで幅広い機能を使える。



KTは歌って踊れるロボットを展示


 もう一方のKTは、2012年から発売している水色のロボット「Kibot2」を展示した。7インチの画面が付き、30cmぐらいの高さで、頭の後ろに投影のための“ビーム”が付いている。ロボットにアプリをダウンロードしたら、ビームを使って壁一面にアプリ画面を映し出し、親と子供が一緒に歌ったり踊ったり絵本を読んだりできる。英語や韓国語の文字を指でなぞりながら筆順を練習するアプリもある。筆順通りに書かないと次に進まない。









KTが展示した教育ロボット「Kibot2」



 ロボットの頭や足をなでると画面が笑顔になり、放置すると眠そうな顔になる。専用のカードをロボットにかざすだけで親の携帯電話につながる仕組みもあるので、防犯カメラとしても使える。Kibot2は一括払いだと7万円、KTのインターネットユーザーの場合は2年契約で月1500円ぐらいの利用料をネット料金に上乗せする。KTは、Kibot2用学習アプリ開発者を育成するための教育プログラムも運営している。


キャリアは音声通話収入を補う狙い


 スマートフォンが登場してから減り続ける音声通話収入を補う狙いもあって、SKテレコムとKTは「スマート教育」に力を入れている。2015年からは韓国全土の学校で「デジタル教科書」を使えるようになる。このため、親は子供が小学校に入る前にデジタル教科書に備えたいとして、タブレットを購入して学習アプリを利用させるケースが増えている。


 KTが無料提供している「オーレ幼稚園」「オーレ小学校」は算数・国語・社会などの学習効果があるクイズとゲームを提供するアプリ。初めてスマートフォンやタブレットを使う子供向けのアプリになっている。学習レベルを分析して、それに合わせてより難易度の高い学習アプリを勧めてくれる。「子供に学習アプリを使わせてみたいけど何から始めたらいいのか分からない」という親に好評だ。


 対するSKテレコムは有名予備校と提携し、中高生向けの本格的な受験勉強アプリを有料サービスとして提供している。大人向けの英語学習アプリにも力を入れる。展示会で紹介していたのが「Tムービーイングリッシュ」。最新映画を観ながら英会話を学習できるというものだ。スマートフォンで映画を再生すると、右側の透明なスクリーン上に英語字幕と韓国語字幕が登場する。もう一度見たい場面を繰り返したり、分からない単語をクリックすると詳細な意味が出てきたり、字幕を消して映画だけ見たりできる機能もある。映画ごとに覚えておくといい英語表現をまとめて解説する機能も学習の助けになりそうだ。


 SKテレコムは、現行の「アルバート」よりさらにかわいくて使い勝手が良いという新たな子供向けロボット開発も進めているという。2012年下期には「キッズタブレット」と呼ぶ幼児向け7インチタブレットの広告が目立ったが、今年の展示会ではロボットを前面に打ち出している。


国策として「スマート教育」推進


 今回のスマートラーニングコリア展示会の内容は盛りだくさんだった。英語・算数といった科目別学習アプリ、スマート教室内で3D映像やAR(拡張現実)を使う模擬授業、紙の教材を手軽にアプリに変換できるツール、デジタル教科書を教師がカスタマイズして使えるようにするツール、学習履歴管理・学習レベル分析といったソリューションに至るまで、びっしりとブースに並んでいた。


 韓国新政権のICT(情報通信技術)政策はソフトウェア・コンテンツ産業育成、クリエイティブな人材養成、ベンチャー投資活性化に重点を置いており、スマート教育関連ベンチャー投資も積極的に行うとしている。政府が営業担当者になりスマート教育関連端末とシステムを輸出することも盛んに推進する方針だ。次回のスマート教育関連展示会は9月にソウル市で開催される。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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Microsoft、Googleに続いてFacebook首脳が韓国訪問、ザッカーバーグCEOとサムスン電子の7時間に及ぶ会議の内容は? [2013年6月24日]

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2013年6月17日の夜、米Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOが韓国を訪問した。ソウルの金浦空港には、あのザッカーバーグCEOを一目見ようと一般人も集まり、K-POPアイドルの出待ちのような状態になった。


 韓国でのザッカーバーグCEOに対するイメージは、「プログラミングの天才」「ハーバード大学中退でFacebookを設立した秀才CEO」「Facebookを大手企業に売らなかったプライドの高いCEO」「最年少大富豪」といったもので、憧れの存在である。


 ザッカーバーグCEOは18日の午前、朴槿恵(パク・クネ)大統領と面談し、午後にはサムスン電子本社で7時間に及ぶ会議をしてから帰国した。大統領官邸によると、朴大統領とザッカーバーグCEOは、Facebookをプラットフォームにして新しいビジネスができるようにし、韓国政府が力を入れているベンチャー起業促進と、ベンチャーのグローバル進出をサポートする、といった話を交わしたという。


スマホ分野でのサムスンとの関係強化が狙いか?


 サムスン本社を訪問した時には、最新型スマートフォンの「GALAXY S4」(関連記事)を握りしめてやってきた。サムスンのイ・ジェヨン副会長、携帯電話事業部門シン・ジョンギュン社長、イ・ドンジュ副社長など、モバイルビジネス関連の役員とミーティングし、社内レストランで食事もともにした。サムスン会長の長男であるイ・ジェヨン副会長はFacebookに会員登録していないそうで、ザッカーバーグ氏に会ってみてどうだったかと質問する記者らに「FacebookのID持ってないのかってザッカーバーグに怒られた」なんていうエピソードを披露した。


 今回の訪問にはザッカーバーグCEOの他にFacebookのダン・ローズ副社長、スマートフォン向け「Facebook Home」を担当するプロダクトマネージメントディレクターのアダム・モセリ氏、モバイルパートナシップ部門副社長のボーン・スミス氏、同部門ディレクターのアロン・バースタイン氏も一緒だった。このことから、サムスンのスマートフォンにFacebook Homeを搭載して、両社がモバイル広告事業で手を結ぶぼうとしているのではないかと見られた。


 Facebookは台湾HTCと、いわゆるFacebook Phoneの「HTC First」を発売したことがある。あまり売れなかったどころか、発売中止になるかもしれないという噂が流れるほど、失敗作だと酷評された。Facebookはサムスンと手を結んで、Facebook Phoneを復活させたがっているのか。




 


サムスンはFacebook Phoneには慎重姿勢


 サムスン側は、「Facebook側とIT産業について多様な意見を交換し、パートナーシップについて話し合いをした」とコメントしながらも、Facebook Phoneについては「また今度話しましょう」というだけだった。


 2013年に入ってから、米Google共同創業者のラリー・ペイジCEO、米Microsoft創業者のビル・ゲイツ氏も韓国を訪問した。ザッカーバーグ氏と同じように朴大統領と面談し、サムスンの役員らともミーティングしている。


 この2人は朴大統領と、大統領のキャッチフレーズである「創造経済」(クリエイティブな発想が国家競争力につながるとしてソフトウエア産業とベンチャー活性化に重点を置く政策)について語った。サムスンとはスマートフォンのOSについて協議している。


 韓国マスコミは、GoogleやMicrosoft、Facebookは「サムスンが世界最大のスマートフォンメーカーであるために、仲が良いことをアピールするため韓国に来たのではないか」と分析した。


AndroidとTizen、Windowsを巡る思惑が交錯


 サムスンはGoogleのAndroid OSを搭載したスマートフォン「GALAXY Sシリーズ」を世界中でヒットさせた。一方で、米Intelや日本のNTTドコモと共同で「Tizen(タイゼン)」というLinuxベースのOS開発を支援していることから、「サムスンにとっての脱・Androidの日が近づいた」と騒がれている。


 一方のMicrosoftとサムスンのパートナーシップも揺らいでいる。サムスンが販売しているパソコンは全てMicrosoftのWindowsベースのものだが、Windows 8搭載ノートパソコンの売れ行きはぱっとしない。「Windows大好き」の韓国人でさえ、自宅用にはおしゃれで高画質の米Apple製のMacを購入する人が増えている。


 サムスンはGALAXY Sシリーズの前に、「Omnia(オムニア)」というWindowsベースのスマートフォンを販売したことがある。世界的にパソコンからタブレットへ重点を移すパソコンメーカーが増えている中で、Microsoftもまだサムスンとは仲良しパートナーであり、Windowsベースのスマートフォンに注力する可能性もある、ということをアピールしたかったのではないかと見られている。


 サムスンは最近、ソフトウエア人材の確保に乗り出していて、ハードウエアの製造だけではなく、「中身」も作れる企業になろうとしている。韓国ではサムスンとグローバルIT企業との提携だけでなく、サムスン自身がこれからどのように変身するかも注目されている。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130624/1095602/

韓国でスマホがないと不安で何もできない子供が続出、3歳から「スマホ中毒」予防教育義務化へ [2013年6月14日]

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韓国で「スマホ中毒(スマホ依存症)」が社会問題になっている。IT政策を担当する未来創造科学部と韓国インターネット振興院が2013年6月、10~49歳のスマートフォンユーザー1万683人を対象に調査したところ、10代の18.4%が「中毒」状態であるという結果になった。20~49歳の中毒率9.1%を大きく上回る。

 スマートフォンが手元にないと不安で、日常生活ができなくなる状態を「中毒」と判断する。2012年調査では11.1%だったのが、1年の間に7ポイントも増えている。スマートフォンユーザーの1日の平均使用時間は4時間、中毒と判定された人は1日7.3時間以上使っている。中毒者は1回当たり19分ほど、1日23回以上スマートフォンをチェックしていた。


 また別の調査では、未就学~小学生の7.3%が1日3時間以上インターネットを利用する「ネット中毒」(パソコン利用)という結果も出ている。小学生はネット中毒、中高生はスマートフォン中毒が問題である。


スマホ中毒とSNS中毒の“合併症”も


 一般的なスマートフォンユーザーは主にニュースや検索、メール、スケジュール管理といったことにスマートフォンを使う。一方で、片時も手から離せなくなる中毒状態の人は、SNSとゲームに使う時間が圧倒的に多かった。


 一般的なユーザーはスマートフォン使用時間4時間のうち3時間をSNSに使うが、中毒者は7.3時間のうち5.4時間をSNSに使っている。青少年のスマートフォン中毒は「SNS中毒」と言われるほどである。青少年のスマートフォン中毒者は1年に平均7.9回ほど、SNSで嘘を書き込まれたり、仲間外れにされたりする「ネットいじめ」を経験したことがある。




「ネットゲーム中毒」は解消に向かったが


 韓国インターネット振興院の『2012年インターネット利用実態調査』によると、6~19歳のスマートフォン保有率は64.5%で、2011年21.4%に比べ3倍も増えている。小学生から当たり前のように自分用のスマートフォンを持つ韓国では、デバイスの普及と共に小学校でも個人情報保護やネチケット(ネットで書き込みする際のエチケット)などを教えている。


 韓国では15年ほど前から、青少年の「ネットゲーム中毒」が社会問題になった。ネットカフェで寝泊まりしながらゲームのしすぎで“過労死”した事件、ゲームを止める家族に暴力を振るった事件、現実とゲームの世界を区別できなくなり殺人や自殺をする事件、などが何度も起きている。


 学校と政府機関、警察、病院が協力してネットゲーム中毒予防教室と治療教室を続けたことで、今ではネットゲーム中毒そのものが問題になることは少なくなった。ところが、それで一件落着とはならず、時代がパソコンからスマートフォンに移行した途端に、今度はスマートフォン中毒が問題化しているのである。


「中毒予防計画」もスマホ版に改定


 韓国政府は2013年6月13日、ネット中毒予防教育、ネットゲーム中毒予防教育など、別々に行っていた各種ネット中毒の予防教育を1つにまとめ、3歳から義務的に教育する総合計画を発表した。国家情報化基本法により2010年に成立した「インターネット中毒予防と解消総合計画」を改定し、幼児から大人まで、生涯にわたってネット中毒・スマートフォン中毒を予防し、治療・事後管理するという内容である。中毒予防・治療に関する韓国の経験や治療事例を海外に伝える国際協力も活発にする。


 総合計画では具体的に以下のような施策を掲げている。2015年までに幼稚園から高校まで予防教育の義務化、医学・科学的スマートフォン中毒治療モデルの開発、スマートフォン中毒予測指数の開発、「スマートフォン中毒対応センター」を11カ所から18カ所に増設、治療を終えた「回復者の集い」を結成、などである。幼児の場合は親に対する教育活動をして、子供がスマートフォン中毒にならないよう見守れるようにする。



政府が保護者向け「アプリ制限アプリ」を提供


 さらに、スマートフォン中毒・ネット中毒を細分化する。スマートフォン中毒の中でもSNS中毒なのかゲーム中毒なのか、ギャンブル中毒なのか、といった中毒の類型を細かく分けて、それに合わせて予防・治療をするのだ。この計画には、教育部、未来創造科学部、保健福祉部、女性家族部、文化体育観光部、放送通信委員会といったネットと教育に関わる省庁がすべて参加する。


 韓国政府は「子供のスマートフォン中毒を予防するためのアプリ」も開発している。親が決めたサイトとアプリしか利用できないようにしたり、ネットに接続する時間を制限できるアプリである。スマートフォンの使用時間と何に使っているのかを自動記録し、「やり過ぎ」と判断した場合、親と担任教師に連絡するアプリも登場した。


 スマートフォンの普及が速かった分、中毒という悪い面が出てしまった韓国。3歳からのスマートフォン中毒予防教育は効果を発揮するのか、中毒の原因と言われるSNS会社がどう対処するのかも気になるところだ。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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米ITC、アップルがサムスン電子の3G関連特許を侵害したと判定 韓国内では「裁判所マーケティング」との声も [2013年6月7日]

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米国際貿易委員会(ITC)は2013年6月4日、米アップルが韓国サムスン電子の標準核心特許(Standard Essential Patents)である通信方式CDMAの「インコーディング」「ディコーディング」関連特許を侵害したと判定した。

 これは(LTEではなく)3Gモバイルネットワーク関連特許である。この特許を巡ってはオランダの裁判所でもアップルが侵害したとしてサムスンが勝訴したことがある。ITCは、サムスンがアップルにこの特許に関して告知したにもかかわらず侵害した点に着目した。


iPhone4以前のスマホが“特許侵害”と判定


 ITCは特許を侵害した製品であるとして、アップルのスマートフォンiPhone3、iPhone3GS、iPhone4、iPad、iPad2を米国内に輸入してはならないという「輸入中断」まで宣告した。米国外で生産したアップル製品を米国内に輸入して販売してはならないということだ。同じアップル製品でも、米クアルコム製のチップを使っているiPhone4Sの場合は、クアルコムがサムスンに特許使用料を払っているから問題ないという判定になった。


 アップルは、サムスンの標準核心特許はFRAND(Fair, Reasonable And Non-Discriminatory)といって、誰でも特許が使えるようにしないといけないので訴訟の対象にはならないと主張した。だが、ITCは受け入れなかった。


判定勝ちのサムスンだが、新製品は無関係


 今回のITCの判定は2011年6月サムスンがITCに審査要求したもので、再審に再審を重ね、2年の歳月を経てやっと最終判定が降りたものである。サムスンとアップルはお互いに自社の特許を侵害されたとして、ITCに特許を侵害した製品を米で売ってはならないと主張。サムスンはアップル製品を、アップルはサムスン製品の輸入禁止を求めていた。ITCは「関税法」に基づき、特許を侵害した製品を米に輸入できないようにする。


 実は今回の判定は、サムスンにとっては、とても“大勝利”と言えるようなものではない。新製品は輸入禁止の対象にならなかったのでアップルの金銭的な損害はそれほど大きくない。今回はたまたまサムスン有利な判定が先に出たが、「サムスンがアップルの特許4件を侵害したのかどうか」に関するITC判定が8月に行われる予定。8月になったらアップルはサムスンの特許を1件侵害、サムスンはアップルの特許を4件侵害した、という判定で“逆転”される可能性もある。サムスンとしてはITCの判定に満足していられない状況だ。


米国政府vsアップルの対立も背景か


 とはいえ、ITCの判定は韓国で大々的に報道された。世界各国でサムスンとアップルの特許侵害訴訟合戦が続いている中、ITCの判定は今後の判決に影響を与える可能性があるからだ。


 今回のITCによる判定(アップルがサムスンの3Gネットワーク関連特許を無断で使用したという判定)は、現在両者の訴訟の中でも最も注目されている米カルフォルニア北部連邦裁判所の判決とも食い違いを見せる内容だった。ITCが認めれば、米国内の他の裁判所でも同じようにアップルがサムスンの特許を侵害したと判定する可能性が高い。


 一方で、別の角度からの見方もある。アップルは米国を代表する企業ではあるが、納税や雇用を巡っては米国政府と対立している。アップルに米国経済のためのアクションを促す意図で、ITCや米国政府が判定を“政治的”に利用したのではないか、というのだ。



裁判をマーケティングに活用?


 サムスンとアップルは2011年から、世界中の裁判所で30件を超える特許訴訟中である。通常、判決までに2~3年以上かかる。スマートフォンやIT機器の分野は製品サイクルが短く、判決が出る頃には、訴訟対象になった製品は古くなっている。販売差し止め訴訟の結果が出る前に、もう市場から消えているのだ。


 例えば、アップルが訴訟を起こした対象製品は2011年当時の最新機種「GALAXY S2」だが、販売差し止めをするまでもなく、今では“自然に”販売終了している。韓国ないのスマートフォンユーザーたちの反応は冷めている。「両社は無駄な消耗戦をやめて和解し、訴訟に使う時間と金を新製品開発に使えば?」というのがよくある意見だ。


 韓国のマスコミも、アップルがサムスンを訴えたおかげで、サムスン電子の知名度が上がり、ブランド価値も高くなったという、冷めた見方をしている。「裁判所マーケティング」という名称まで付けた。訴訟に使った資金の元は十分に取れたということだ。アップルとの訴訟が始まった2011年夏以降、サムスンのスマートフォンがどんどん人気を集めた。今や、アップルより売れるようになり、世界シェアではサムスンが優位に立った。


 裁判所マーケティングをあまり長々と続けていては、世界中のスマートフォンユーザーが白けてしまうだろう。ITCの判定をきっかけに、再審に再審を重ねていた訴訟もいよいよ決着がつきそうだ。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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違約金なしで1年ごとに機種変更できる新プランがユーザーから不評、「ホゲン様になりたくない」 [2013年5月31日]

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韓国最大手通信事業者(キャリア)のKTは、2013年5月末からサムスン電子のAndroidスマートフォン「
GALAXY S4」を購入した先着1000人に対し、1年後に端末代金残高や「違約金」(24カ月契約とするいわゆる“2年縛り”の代わりに利用料金を割引してもらった分を違約金として支払い、自分割りとか家族割りなど割引してもらった分も返す)、その他手数料一切なしで新規スマートフォンに機種変更できる「チェンジアップ」プランを始めた。条件は月々5500円(直近の為替レートで日本円に換算した場合、以下同様)以上のLTE料金プランに加入すること、それから、1年後に機種変更をする際には端末を返納することである。

 つまり、通常の24カ月契約で加入し、利用料と端末代金を分割で支払う。12カ月過ぎた時点でKTの公式Webサイトから機種変更すれば、GALAXY S4の端末代の残金や24カ月契約を満たなさなったことに対する違約金はなかったことになる。新機種を選んでまた新しく24カ月契約で加入できる。










韓国キャリアKTのWebサイト。GALAXYS4を購入した先着1000人を対象に、1年後最新機種に機種変更できる特別プランを始めた。



頻繁に機種変更したい人には朗報のはずが…


 キャリアを乗り換える場合、契約期間が残っていても、「違約金相当を割引するからうちのキャリアに変えませんか」と代理店が勧誘することは、これまでにもよくあった。しかしキャリアが自ら違約金無しにして1年で機種変更できるようにしたのは、韓国ではこれが初めてである。


 スマートフォンの新機種は1~2カ月ごとに発売されている。「24カ月も同じ端末を使うのは嫌だ」というユーザーも多かったはずなので、チェンジアッププランは喜ばれるだろう…というのはキャリアの思い込みだったようだ。


 なぜなら、GALAXY S4の端末価格が7万円ほどと高めだ。端末代金の24回分割払い分を上乗せすると、最も安い料金体制を選んでも月々8500円程度を払う必要がある。1年後に解約すれば、チェンジアッププランに加入しない場合、端末の月賦残りと違約金で5万円ほど払わないといけないが、チェンジアッププランならこれが無料になる。しかし、ネット上では「KTの新プランはユーザーをバカにしている」という不評が絶えない。







趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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サムスンとLGが超高画質TVで勝負、来場者はスマホ写真のプリントサービスに夢中 「韓国World IT Show 2013」から [2013年5月24日]

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 2013年5月21日から24日まで、韓国IT業界が一堂に会する展示会「World IT Show 2013」がソウルのCOEXで開催された。20カ国442社が展示に参加し、アジアの通信キャリアが参加したビジネスミーティングやIT大臣会議、「3Dアートフェア」も同時開催した。


 World IT Show 2013の目玉は、やはりサムスン電子とLG電子の新製品である。


サムスンの目玉は“高級すぎる”テレビ










ソウルで開催された「World IT Show 2013」のサムスン電子ブース。UHDTV(超高画質TV)と曲面型有機EL TVが目玉



 サムスンは、韓国などで4月に発売したスマートフォン「GALAXY S4」(日本ではNTTドコモから発売、発表会速報端末の詳報)と85型UHDTV(超高画質TV)、曲面型有機EL TV(curved OLED TV)をメインに展示した。


 既に米国の展示会「CES」で公開済みで、サムスン本社のショールームでも見られる製品ばかり展示しているので「新鮮味がない」と不満を漏らすネット上の声もあった。だが、曲面型有機EL TVは韓国初公開だっただけに注目を浴びた。


 85型UHDTVの前では、「ダイヤモンドブラックパネルに120ワットの高品質サウンド、その他にもすごい技術を搭載した」という難しい説明が繰り返されていたが、生まれ変わっても買えそうにない“高級すぎる”TVのせいか、来場者の足は自然とGALAXY S4へと向いていた。


やはり人気の「GALAXY S4」


 GALAXY S4は「Life Companion」というキャッチフレーズで、「これがあると生活がこんなに楽しくなる、便利になる」といった使い方を提案する展示をしていた。


 中でも人気はGALAXY S4で撮った写真をその場でプリントしてくれるフォトゾーン。「スマートプリンター」に、スマホからWi-FiまたはNFC(近距離非接触通信、関連記事)を使って写真を転送する。NFC搭載スマホから写真を選んでプリンターにかざすだけでプリントできるという。カメラは1300万画素もあるのでかなりきれいに撮れた。写真を撮るのが好きで、特に自分撮りが大好きな韓国人だけに、フォトゾーンは長蛇の列だった。


 韓国ではブログやSNSで顔写真を公開するのが当たり前なので、スマホで「自分撮り」がきれいにできるかどうかは、機種選択の重要な判断基準になる。ブログに食べ物や景色ではなく、本人の自分撮り写真だけ何百枚も載せる女性が少なくない。ブースで配る記念品が年々減っていくなかで、各メーカーのフォトゾーンで撮った写真は、スマホの性能比べであると同時に記念品にもなっていた。


LGブースもフォトゾーンが大人気











LG電子もやはりUHDTVと曲面型有機EL TVを展示



 LGのブースもフォトゾーンが人気だった。サムスンがGALAXY S4なら、LGはスマホ「Optimus G Pro」(日本ではNTTドコモから発売、関連記事)を押している。5.5インチの大画面で、バッテリー容量はGALAXY S4より大きい。カメラは1300万画素。写真と撮る人と撮られる人が1つの写真に納まるデュアルレコーディング、左右だけでなく上下も含めて360度撮れるパノラマ機能など面白い写真の撮り方もできる。


 LGは「ポケットフォト」という名前のスマートフォン向け小型プリンターを使ってプリントしていた(日本での発売に関する記事)。ポケットフォトは手のひらより若干大きいサイズで、重さ212gとバッグに入れて持ち歩けるほど小さい。


 染料分子入りの専用紙に熱を加えて写真にするので、カートリッジはいらない。専用紙は1枚50円ほど。LG電子は、富士フイルムの「instax miniチェキ」のようなインスタントカメラの需要が根強く残っていることに着目し、ポケットフォトを開発したという。LGは「フィルム代はインスタントカメラよりポケットフォトの方が安い」と宣伝している。




LGは3D映像で勝負、Google TVも


 フォトゾーンが人気を呼ぶ一方で、LGブースの目玉展示品は、やはりテレビだ。7月に発売予定というGoogle Playのアプリをテレビの大画面で楽しめるGoogle TVも登場した。画質で勝負するとして84型UHDTV、曲面型有機EL TVを一番目立つところに置き、ブース内のあちこちでスマートTVから3D映像を流していた。


 「3Dコンテンツに合わせて自動的に色合いや明るさを調整する3Dエンジンを搭載したスマートTV」という説明を聞いたせいもあってか、他で見るより鮮明でくっきりした3D映像を見られるように感じた。LGは、「3DTVの技術力では世界のどのメーカーにも負けない自信がある」とアピールしている。しかし私の感想としては、去年も一昨年も3Dをアピールしていたので、展示内容までも去年・一昨年と同じように見えてしまったのは残念だ。


「江南スタイル」PSYのホログラムも目を引く


 サムスンとLG以外で、もう1つ大きな話題をさらっていたのが、YGエンターテインメントのホログラムである。YGエンターテインメントは、「Gangnam Style(江南スタイル)」で有名なPSY(サイ)、日本でも知られるBigbang、2NE1など人気K-POPスターを抱える音楽事務所である。


 所属するK-POPスターのライブを4Dホログラムで制作、テーマパークのアトラクション向けコンテンツ制作・配給を専門とする会社を、大手通信キャリアKTと一緒に立ち上げた。その最初の作品として、PSYのホログラムを先行公開したのだ。


 メガネのいらない3D映像をさらに立体的にリアルにした感じで、本物のライブを見たように面白かった。このホログラムは、サムスングループが運営するテーマパーク「エバーランド」に2013年7月オープンするアトラクション「K-POP Hologram YG at Everland」で上映するコンテンツでもある。


 ハードウエアだけでなく、学生ベンチャーの試作品や、中小企業のコンテンツ・アプリの展示も充実していたWorld IT Show 2013。早くも来年が楽しみである。







趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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サムスンのGALAXYブランドで発売される“Google純正”スマホ、2社の「協調と競争」に注目 [2013年5月17日]

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 米Googleの開発者向けイベントである「Google I/O 2013」は、韓国でも大きな話題になっている。約6000人の開発者が参加する一大イベントは世界中にインターネット生中継され、韓国では2013年5月16日深夜1時から始まった「キーノート」の動画中継を見ながらTwitterやブログに投稿する人も多かった。(関連記事:Google I/O 2013で音楽配信サービスや開発ツール「Android Studio」など発表


 韓国で話題になったのは、やはり、Googleのソフトウエア開発標準となるスマートフォン(レファレンスフォン)として、「Nexus」ブランドのスマートフォンではなく、サムスン電子の「GALAXY S4」を選択したことである。「GALAXY S4 Google Edition(Google版GALAXY S4)」として米国などで発売される。


Google版スマホなのに、名前はGALAXY


 これまでの慣例では、Googleのレファレンスフォンには必ず「Nexus」という名前が付いていた。既存のレファレンスフォンである「Nexus 4」(日本国内では未発売)は同じ韓国のLG電子製だが、LGは自社ブランドの「Optimus」ではなく、「Nexus 4」という名前でGoogleに納品した。


 今回、“Google純正”ともいえるレファレンスフォンが「Nexus」ではなく、サムスンのブランドである「GALAXY S4」の名前のままで発売されるのは興味深い。「2013年のレファレンスフォンはGoogle傘下のMotorolaから出るのではないか」という噂もあったが、実際にはGoogleはサムスンを選択した。


 Google版GALAXY S4は、OSとしてはAndroid 4.2.2を搭載するが、最新のAndroidへのアップデートがどの端末よりも早く提供されることになる。Android 5.0(Key Lime Pie)がもうすぐ登場するという噂もある。Android 5.0を真っ先に体験できるのも、このGoogle版GALAXY S4になりそうだ。


 Google版GALAXY S4は、開発者らが自由に自分の好きなソフトウエアをGALAXY S4に搭載してテストできる(Bootloader unlocked)状態で提供する。サムスンが開発したソフトウエアは一切搭載せず、純粋にAndroidとGoogleのソフトウエアだけを搭載する。この点は既存のレファレンスフォン「Nexus」と同様だ。




価格はNexusシリーズとしては高め


 Google版GALAXY S4のストレージは16GB、SIMフリーで、発売日は6月26日。価格は649ドルである。米Appleの「iPhone 5」のSIMフリーが649ドルなので、Google版GALAXY S4も同じ価格で勝負するようだ。


 この価格設定には意外さもある。GoogleのNexusシリーズは、「ハイスペックなのに価格は安い」ことが大きな特徴だった。LG電子の「Nexus 4」の場合、同じ仕様のスマートフォンの半額程度の299ドル(8GB)、349ドル(16GB)で売り出して大人気となった。


 Google版GALAXY S4の649ドルという価格は、GoogleのNexusにしては“高い”。韓国では「Nexus 5が出るのを待った方がいいかもしれない」というつぶやきも結構見かけた。


Androidレファレンスフォン初のLTE端末


 もう1つ、気になるのはストレージ容量である。GALAXY S4のストレージは16GBでも、システム領域が占める割合が大きく、ユーザーが自由に使えるのは8.8GBしかないことを不満に思う声もある(micro SDカードで64GB追加することは可能)。あれもこれもテストしたい開発者はどう思うだろうか。同じくストレージ容量16GBのNexus 4は、13GBほどユーザーが使える領域がある。


 今までGoogle Playストアでは「Nexus」というGoogleオリジナルブランドのスマートフォンだけを販売していた。今回のGoogle版GALAXY S4は従来のNexusシリーズと同様の扱いで、Google Playストアで発売。米国内ではT-MobileとAT&TのLTE通信網を利用できる。Google版GALAXY S4はGoogleのレファレンスフォンとしては初めてのLTE端末でもある。


GoogleとMotorola、サムスンとTizenの関係は?


 韓国のマスコミでは、LG製の「Nexus 4」よりもサムスン製の「GALAXY S4」をプッシュすることで、Googleはサムスンと密接な関係であることをアピールしようとしているのではないか、とも報道されている。以前とは少し風向きが変わったようだ。一時期は、サムスンがAndroid OSに依存しすぎることを懸念して、米IntelやNTTドコモらと一緒に新しいスマートフォン向けOS「Tizen(タイゼン)」の開発に参加したことでGoogleとの関係が悪くなったという報道も出ていた。


 しかし、Android OSを搭載したスマートフォンで最も売れているのはサムスンのGALAXYシリーズであることもまた事実である。米国の調査会社Strategy Analyticsが2013年1~3月のAndroidスマートフォン端末の営業利益を推計したところ、全体の利益は53億ドルで、この内94.7%の51億ドルをサムスンが占めている。2位のLGが1億ドルなので、50倍もの差がある。


 今後Googleと傘下のMotorolaによる新しいスマートフォンが発売されれば、サムスンのシェアは変わるだろうか。世界的にGoogleの影響力が強くなっている中で、サムスンはソフトウエア開発人材集めに熱を上げている。「Googleのような会社を目指している」とも言われる。Googleとサムスンの「協調と競争」の行方が楽しみである。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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LTEに変えると何がいいの?LTE加入者が2000万人を超えた韓国で人気のサービス [2013年5月10日]

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 2013年5月、3Gよりも高速データ通信が可能なLTEの加入者が2000万人を超えた韓国。LTEサービスが始まったのは2011年7月だが、1年10カ月ほどでスマホユーザー(約3500万)の約6割が3GからLTEに乗り換えた。


 4月にサムスン電子がスマホの大型新製品「GALAXY S4」を発売したことで、LTE加入者はさらに増えそうである。(関連記事:日本国内登場間近!? 「GALAXY S4」の韓国ソウル発売現場をレポート








韓国で発売された「GALAXY S4」はLTE加入者獲得合戦も刺激している。


 韓国のキャリア(通信事業者)の間では、3Gより料金が高く従量制のLTE加入者を増やしてARPU(1契約当たりの平均収入)を伸ばすため、「LTE加入者専用」サービス競争を繰り広げている。2013年末までに、スマホユーザーの8割にLTEを使わせるのがキャリア3社の目標である。


韓国LTEのキラーコンテンツとは


 「LTEに変えるとこんなサービスが利用できてとっても便利で楽しい」と韓国のキャリアが宣伝しているのは、ナビゲーションと野球観戦である。


 キャリア3社の中で最もシェアの低いLGU+は、他のキャリアより一足先にLTEサービスを開始した。LTEならではのサービスとして、スマホから利用するクラウドコンピューティング方式の「3Dナビゲーション」を目玉にしている。


 モバイルデバイス向けに作られたキャリアのナビゲーションサービスは、乗り換え案内や徒歩ナビ機能もあり、いつでもどこでもすぐ使えて便利だ。しかし容量の大きいマップのダウンロードとアップデートに時間がかかりすぎるのが不便だった。


 最初にナビゲーションを起動した際に、300MB近いマップをスマホにダウンロードしなければならない。その後も、ナビゲーションを使うたびに、「アップデート中です」という表示が出て、何分か待たされることになっていた。韓国は“せっかちな人”が多いので、2~3分のアップデートも待てず、「これは使いものにならない!」という評価を下してしまう。


3Dマップを高速表示


 LGU+のLTEナビゲーションは、端末にマップをダウンロードすることなく、クラウドサーバーにあるマップを表示する。LTEの高速ネットワークを使ってすぐサーバーからコンテンツを取り寄せて表示するので、以前のように端末にダウンロードする必要がなくなった。


 周辺のビルや交差点などがはっきり分かる3Dマップなので、方向音痴で“地図が読めない女性”でも簡単に利用できるのは便利だ。LTEナビゲーションはLTE加入者しか利用できないが、利用料金は無料である。


 このLTEナビゲーションの面白いところは、グループナビ機能にある。友達に待ち合わせ場所を転送してから、その人(または車)が道に迷わっているのか、ちゃんと目的地に向かっているのか位置情報を共有できる。


 「今周りに何が見える? 一体どこにいるの?」と電話で騒がなくても、スマートに場所を教えられる。複数の車で移動する際にも、必死で前の車を追いかけなくてもよくなった。それぞれの車の位置を把握できるので、はぐれることなく一緒に移動できる。最大5人と共有できる。


バッテリー消耗という弊害も


 しかし、良いことばかりではない。ナビゲーションを利用するためには常にLTEネットワークにつながっている必要があるため、バッテリーの消耗が心配だという声がある。LTEはデータ通信使い放題ではなく従量制なので、ナビゲーションを利用するたびに大量のデータを使ってしまうのではないかという問題もある。


 LGU+はこのほか、LTE専用サービスとして、ストリーミング動画や音楽を2秒以内に再生できるようアップグレードした。今までは動画再生が始まるまで7秒以上かかっていた。さらに今までは動画再生中に電話がかかってくると自動的に動画再生が中止されたが、マルチタスク機能を強化して、動画を見ながら電話をしたり、カカオトーク(関連記事)でチャットしたりできるようにもしている。いずれも、“せっかちな韓国人”にとって大きな魅力になる。


LTEで高画質の野球生中継


 SKテレコムは、LTE加入者だけが利用できる野球生中継「Tベースボール」に力を入れている。


 テレビでは野球中継をあまり放送しなくなったのも影響があるが、好きなチームの試合は生中継で見たいという野球ファンが多く、2012年夏にも大ヒットしたアプリである。700万人ほどが利用しているTベースボールのアプリレビューを見ると、4947人のうちに4693人が5点満点と評価し、平均点数4.9という人気ぶりである。


 ワンセグ放送よりも断然きれいな1Mbpsの高画質で、スマホの4~5インチ画面でも十分迫力ある中継を視聴できる。2013年内には、2MbpsのフルHD生中継も行う予定である。


 好きなチームを設定すると、ニュースや試合中継、選手情報などすべてのメニューがそのチームの話題を優先的に表示する「パーソナル」機能、ホームランや得点チャンス・投手交代など見たい場面を設定しておくと中継中に知らせてくれる「アラーム」機能、生中継中にさっきの場面をもう一度見たいという場合に使う「タイムマシン」機能もあるので面白い。


見たいシーンだけを観戦


 タイムマシン機能は、これまた“せっかちな韓国人”利用者のニーズに応えるために始まった。ホームランや盗塁など重要な得点場面を見逃した時、今すぐさっきの場面が見たいというニーズがあるのだ。従来は、野球中継が終わってスポーツニュースの時間まで待たないとハイライト場面を見られなかった。


 もう1つタイムマシン機能のメリットは、バッテリーの消耗を最小限に抑えつつ、高画質の野球生中継を楽しめることだ。試合を最初から最後までスマホで見るとバッテリーの消耗が激しい。アラーム機能で試合の流れを把握し、タイムマシン機能で好きな場面だけを選んで観るという観戦スタイルも流行っている。「Tベースボール」からハイライト場面のVTRや、野球をテーマにしたWeb連載漫画なども見られるようにして、生中継時間以外でも楽しめるように工夫している。


 この他にもLTE専用の高画質モバイルショッピング、高画質ゲームなどが登場した。LTEならではのスマホの使い方を提案する動きは、しばらく続きそうだ。







趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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スマホアクセサリー好きな韓国人は1人当たり年間3800円を支出 「GALAXY S4」発売でますます活性化する市場 [2013年5月7日]

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 韓国の通信キャリアKTが調べたところ、韓国のスマートフォン利用者はスマホのアクセサリー購入費用として、2012年の1年間で1人当たり平均4万1700ウォン(約3800円)を支出したことが分かった。2010年に2445億ウォン(約222億円)だったスマホアクセサリー市場の規模は、2013年に1兆6776億ウォン(約1530億円)まで成長する見込みである。


 携帯電話にストラップをたくさん付けるのは韓国の女性もよくやっていた。脂ぎった液晶画面をふき取るシートが付いたストラップを景品として配るのが流行った時期もあった。端末よりも大きくて重いぬいぐるみのストラップも屋台でよく見かけたものだ。「電磁波の影響を減らしてくれる」という触れ込みの「24金シール」を端末に貼るのが流行ったこともある。


iPhone発売からブーム始まる


 携帯電話の外側を飾るアクセサリーという意味では、iPhoneが発売された2009年11月以降ブームが始まったようだ。24カ月の契約期間が終わるまでスマホが故障しないように、本体を衝撃から守るためにシリコンのケースに入れる、傷が付かないよう液晶と後面に保護フィルムを貼る、といった実用アクセサリーから普及し始めた。


 韓国で最もよく売れるスマホ用のアクセサリーはケースである。サムスン電子のGALAXY Sシリーズが登場してから、スマホのカバーも100円ぐらいで買えるものから数万円のオーダーメイド革製のものまで、バラエティー豊かになった。


 韓国では、スマホの後面にはめるシリコン素材のカバーよりも、「フリップカバー」といって、スマートフォンを差し込んで使うカード財布のようなカバーの方が人気だ。









韓国におけるスマホアクセサリー一番人気の「フリップカバー」。カード財布状のものにスマホを差し込んで使う




「おサイフケータイ」っぽくするアクセサリーも人気


 日本では携帯電話・スマホ端末内のチップに決済機能を搭載した「おサイフケータイ」が普及している(関連記事:定番スマホの最新機種が登場!大画面・おサイフ対応に「GALAXY S III SC-06D」)。一方、韓国ではフリップカバーにクレジットカードを差し込んでおサイフケータイっぽく使う人の方が断然多い。


 クレジットカードがあれば後払いで地下鉄・バス・タクシーすべての交通手段を利用できて、コンビニエンスストアで少額決済もできるからだ。韓国はクレジットカード社会なので、どんなに小さな食堂や小売店でもカード決済に対応している(クレジットカードを使わせることで脱税防止の効果を狙っているとか)。


 スマホとクレジットカードを一体化した「おサイフケータイ」はまだ加盟店が少なくてほとんど利用できないが、フリップケースにカードを差し込んでおけばどこでも決済できる。未成年者はプリペイド式のカードをフリップカバーに差し込んで使う。


GALAXY S4発売を契機にフリップカバーの新製品続々


 上述のKT調査によると、主に購入するアクセサリーの平均価格は、スマホケース約2万3000ウォン(約2100円)、液晶保護フィルム約1万1000ウォン(990円)だった。スマートフォンを機種変更するまでの24カ月間に、ケースは2.4回、フィルムは2.5回購入している。男性より女性の方が、ケース買い替え回数が多かった。


 2013年4月末のGALAXY S4の発売(関連記事)を機に、斬新なフリップカバーが次々に発売されているので、買い替え需要がどっと増えそうだ。


 GALAXY S4専用のフリップカバー「Sビュー」は、フリップを閉じると液晶が暗くなってフリップの透明な穴から時計を確認できる。フリップを開けると自動的に液晶が明るくなる機能もある。以前はフリップが液晶の上にパタッとのっているで、フリップを開けて液晶をタッチして時計を確認する手間がかかっていた。

















GALAXY S4用のフリップカバー「Sビュー」。透明の窓が付いている。

 


Sビューはなんと5万9000ウォンもするが、キャリアのKTとSKテレコムは、GALAXYS4を予約購入したユーザーに無料でプレゼントした。



成長余地大きいアクセサリー市場


 GALAXY S4専用のアクセサリーとしては、この他にもGALAXY S4の液晶、後面、側面をすべて丸ごとカバーできる保護フィルムや、保護フィルムより傷に強いという液晶の上にはめる液晶保護ガラスなども登場した。スポーツの際にスマホを腕に巻けるアームバンドや、ヘルスケアのための体重計や心拍数測定機なども専用アクセサリーとして発売されている。


 日本でよく見かけるスマホのピアス(イヤーキャップ)は、韓国でもキャラクターグッズやK-POPアイドルグッズとして注目のアイテムである。ただし、スマホでTV・動画視聴、音楽を利用する人がとても多いせいか、スマホにいつもイヤホンを差しっぱなしにしている人が多く、ピアスの出番があまりない。スマホの使い方によって売れるアクセサリーも変わってくる。


 韓国のスマートフォンユーザーは既に3500万人を超えており、2013年末には4000万人と、人口の8割を超える見込みである。KTは、2013年スマホのカバーは4600万個以上売れると見込んでいる。スマートフォン市場自体が成熟しつつある一方で、スマホアクセサリー市場はまだまだ成長の余地が大きい、ホットなビジネスであるようだ。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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