モトローラ撤退で韓国スマホはサムスン、LGの寡占が進む [2012年12月14日]

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モトローラ・モビリティが、韓国市場から2013年2月に撤退すると発表した。モトローラは2011年発売したスマートフォン「ATRIX」と「RAZR」を最後に、新規端末を発売しなかった。モトローラ韓国支社の社員は約500人いるが、ほぼ全員が再就職先のないまま解雇される形となった。

 Yahoo! Koreaの撤退と並んで、韓国のネットユーザーはモトローラの韓国撤退を残念がっている。Yahoo! Koreaが韓国のインターネット黎明期を支えたポータルサイトとしてネットユーザーの思い出に残っているように、モトローラも韓国初の携帯電話として、たくさんの思い出を残したからだ。











モトローラ・モビリティの韓国語サイト



 モトローラは1988年、韓国初の携帯電話を発売した。電話というより凶器のような物体で、大きなアンテナが差し込まれた四角い箱の形をしていた。重さ1kg、長さ30cm、バッテリーは30分も持たなかった。それでも自動車1台が買える値段だったので、80年代まで携帯電話を持っているのは新聞記者や政治家、起業家といった一部の人に過ぎなかった。


 その後はモトローラのポケベルが流行った。国産のポケベルもあったが、GalaxyよりやっぱりiPhoneの方がかっこいいという人がいるように、当時もモトローラのデザインが優れている(といってもどれも黒くて四角だった)という理由でよく売れた。


 1996年以降、個人が安い値段で携帯電話を利用できるようになってからは、韓国でモトローラのフォルダー式携帯電話「StarTAC」が一世を風靡(ふうび)した。88gという驚異的な軽さで、ポケットに入れても邪魔にならない初めての携帯電話が出たとして話題を集めた。StarTACは当時130万ウォン(約10.5万円)もしたのに130万台が売れた。1996年の物価はまだ電車賃の基本料金が500ウォンほどで今の半額だった時代である。2012年の物価でいうと200万ウォン(約15万円)はする携帯電話だった。


 StarTACを持っているのはお金持ちということでもあり、持っているだけで女性にもてるほどであった。2012年夏に大ヒットしたドラマ「応答せよ1997」でも、1997年、ソウルから釜山にやってきた転校生の携帯電話がStarTACで、それをきっかけに御曹司だということがばれ、女子の間で噂(うわさ)になるという場面があった。現代のビジネスパーソンがiPadやタブレットPCを持ち歩くように、90年代後半はモトローラのStarTACができるビジネスパーソンの象徴だった。






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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サムスンの太っ腹キャンペーン、タブレットPCお絵かき大会が熱い [2012年12月10日]

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2012年サムスン電子の年末一押しデバイスは、スマートフォンだとGALAXY Note2、タブレットPCだとGALAXY Note10.1だ。この2つのデバイスの特徴はSペンという感度の高い電子ペンがセットになっていて、手書きや絵を描くのに非常に向いている点である。しかし、Sペンのすごい技術を難しい用語を混ぜて説明されても、一般ユーザーは「あ、そうですか」としか反応のしようがない。


 サムスン電子をはじめ韓国ベンダーは、販促やCMではデバイスの優れた技術を紹介しない。それよりも先に、なぜこのデバイスを買うに値するのか、このデバイスを持っているとこんなに楽しくて便利なことができると使い道を紹介する。その次に他社との差別点として技術の話が始まる。


 サムスンが考えたのが、ドラマの主人公にSペンを使わせてその機能を宣伝させるという方法である。2012年にヒットしたドラマの主人公のほとんどがサムスンのスマートフォンを使った。GALAXY NoteのSペンで絵を描いて好きな人に送ったり、Sペンで日記を書いたりと、いろいろな使い方を見せてくれた。


 この冬は幼児から小学生を対象にGALAXY Note10.1を使ったお絵かき大会を開催する。2012年11月20日~2013年2月15日のおよそ3カ月にわたる大規模な予選を通過して選ばれた101人は2013年2月23日、ソウル市中心部のセジョン文化会館(コンサートや演劇などを上演する大型劇場)に集まり本決戦を行う。入選した作品はセジョン文化会館に展示される。


 大賞の景品は、園児だと保護者と一緒に行けるヨーロッパ美術館ツアー、小学生だと海外英語キャンプ参加ツアーである。大賞から銅賞まではGALAXY Note10.1も1台ずつもらえる。101人の1人に選ばれさえすれば、図書券や美術用品セットがもらえるので、かなり太っ腹なイベントである。


 予選の参加方法は、GALAXY Note10.1からサムスン専用のアプリケーションSノートを立ち上げて、Sペンを使って絵を描く。それを保存して応募掲示板に載せるだけで、子ども1人が何枚応募してもいいそうだ。ただし「大会のテーマに合っている絵」、「子どもが描いた絵」である必要がある。絵のテーマは、園児向けは「私がしたい楽しい遊び」、小学生は「最も楽しかった思い出」である。











GALAXY Note10.1お絵描き大会のための訪問美術教室。講師が子供の人数分のGALAXY Note10.1を持ってきて、Sペンを使って絵を描く方法を教えてくれる。ギャラリーはここで見られる



 Sノートのお絵かき機能はさまざまだ。いろんな色を背景に描いてから黒で塗りつぶし、消しゴムで画を描くスクラッチ風、水彩画風、ドローイング風、写真と組み合わせたコラージュ風、パステル画風、ポップアート風など。


 子どもが投稿した絵を見ていると、タブレットPCで書いたとは思えないほど色鮮やかで、生き生きしている。この中から101人を選び、セジョン文化会館でGALAXY Note10.1を使ったお絵かき本大会が開催されるというわけだ。101人の子どもがずらりとタブレットPCとSペンを握ってお絵かきしている光景を想像すると、うわ~なかなかの壮観じゃないか。


 GALAXY Note10.1を持っていないから大会に参加できない、という子どものために、「訪問美術教室」も開催している。講師がGALAXY Note10.1を持って保育園、幼稚園、学校を訪問してSノートとSペンで画を描く基礎を教えてくれる。そこで描いた絵を大会用に応募してもいい。


 この大会はサムスン電子の「How To Live Creative」キャンペーンの一環。GALAXY Noteを使った楽しい体験イベントはまだまだ続く予定である。






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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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総スマホ時代に話題を呼ぶ“コンビニプリペイド携帯” [2012年11月30日]

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韓国のセブン-イレブンは2012年11月29日、プリペイド携帯電話の販売を始めた。コンビニで携帯電話本体とSIMを販売するのは国内で初めてである。まずはソウル市中心部にあるセブン-イレブン20店舗で開始、12月6日より全国7000店舗で販売する。ネットでも販売する。

 販売する端末は中小メーカーが手掛ける「プリピア」というバータイプのフィーチャーフォン。端末価格8万4900ウォン(約6500円)に1万ウォン(約760円)分の電話料を含む。これはスマートフォンの10分の1の値段である。SIMと回線はMVNOのSKTelinkが提供する。同社はSKテレコムの子会社で、国際電話、市外電話サービスを提供する通信事業者。2012年6月よりMVNOサービスを開始した。
 










韓国のセブン-イレブンが販売するプリペイド携帯電話端末「プリピア」



 携帯電話を購入してもすぐ使えず、犯罪に悪用されるのを防止するため、SKTelinkのWebサイトまたはコールセンターで本人確認を行ってから電話番号をもらう。それから端末に同封されているSIMを端末に差し込んで使用開始となる。本人名義のクレジットカードまたは携帯電話を持っている人だけが対象なので、未成年者と外国人の名義では購入できない。親が買って子どもに使わせることはできる。1人4回線まで申し込める。


 料金制度はいろいろあるが、基本料金なしで通話料10秒当たり36ウォン(約2.9円)、SMS1件20ウォン(約1.5円)、使った分だけをチャージした金額から差し引く料金制が注目されている。クレジットカード、振り込み、固定電話料金の合算請求などで入金する。

プリペイド携帯の販売についてセブン-イレブンは、「仕事用とプライベート用に電話番号を2つ使いたいが、最近はスマートフォンしか売っておらず費用の負担が大きすぎることから諦めていた人や、音声通話とSMSしか使わないお年寄り、ネットにつながらない携帯電話を子どもに持たせたい親、スマートフォンを紛失して一時的に新しい携帯電話が必要な人をターゲットにしている」と説明した。

 安いフィーチャーフォンとはいえ、テレビ電話用の30万画素カメラ、MP3プレーヤー、ラジオ、SDメモリーカード、Bluetoothに対応する。コンビニで販売する、手軽で激安なMVNOであるが、問題はアフターサービス。端末メーカーであるプリピアのサービスセンターが全国に1つしかないため、端末に不具合が生じてもサービスを受けられないのではないかと心配するユーザーもいる。


 セブン-イレブンのプリペイド端末は、韓国初のW-CDMAとGSMのデュアルSIMで、韓国のSIMと海外のSIMの2枚を差し込んで使えば、韓国では韓国の携帯電話番号を、海外では海外の携帯電話番号を使える。海外出張が頻繁なビジネスパーソンは、現地で電話を使うと受信するだけでも非常に高いローミング代を払わないといけなかったが、現地のプリペイドSIMを端末に差し込んで使えるので電話代を節約できる。


 セブン-イレブンを第1弾として、大型スーパーのHomeplusやEmartもKT、SKテレコムと提携して激安MVNO端末の販売を準備中だ。2012年12月中には販売を開始する予定。オンラインショッピングモールもMVNO携帯電話販売の特設ページを作るほど力を入れる。


 長引く不景気の影響なのか、携帯電話も高額なスマートフォンと激安フィーチャーフォンの二極化が進んでいる。MVNOはスマホとフィーチャーフォンの2台使いを狙うというが、ソウル市内は無料で使える公共Wi-Fiが整っているので、MVNOのフィーチャーフォンとタブレットPCのWi-Fiモデルだけでも十分“スマートライフ”を楽しめそうだ。年末にはGalaxyスマホの半額以下という価格の中国産スマホが韓国でも発売されるというので、それもユーザーは期待している。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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サムスン製以外のスマホが欲しい! 韓国iPhone 5いよいよ12月に発売 [2012年11月26日]

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 韓国のスマホユーザーが首を長くして待っていたiPhone 5がいよいよ12月上旬に発売されることが決まった。インターネットニュースの「iPhone 5来月発売有力」という短い記事にはコメントが700件以上も書き込まれた。
 










韓国のAppleストアのページ「iPhone 5 もうすぐやってきます」と書いてある



 「iPhone 5の発売が遅れたのはサムスンのせいだ」、「アップルは既に次の新機種を準備しているので韓国で在庫処分するつもりなのだろう。サムスンのせいだ」、「iPhone 5待ちきれずGalaxy Note2を2年契約で購入してしまった。2年後また会おうねiPhone。みんなサムスンのせいだ」、と恨む書き込みから、「iPhone 5ブラック64GB LTEこそ本物のスマホ、待ち遠しい!」、「iPhone 5が発売されればサムスンやLGがシェアを取られないためにスマホの値段を下げるだろうから、そのときGalaxy Note2かOptimusに機種変更しようかな~」と楽しみにしている書き込みまでいろいろあった。コメント欄でユーザー同士がiPhone 5を買うべきかどうか真剣に討論しているのをみると、iPhone 5が韓国のスマホユーザーの物欲に大きな影響を与えるのは間違いなさそうだ。


 iPhone 5はKTとSKテレコムのキャリア2社から発売される。KTもSKテレコムも史上最大の補償販売(iPhone4Sのユーザーが、契約期間が終わる前に購入しても端末価格を安くするマーケティング)をすると宣伝している。


 今まではKTの単独販売だったが、キャリア2社が競争することによって、同じiPhone 5でもネットワークの速さなどで選べるようになった。KTは1つのアクセスポイントに512人まで同時接続可能で既存のWi-Fiより7倍速い68Mbpsの「プレミアムWi-Fi」を、SKテレコムは2つの周波数を使う75MbpsのLTEマルチキャリアとスマホ1台がWi-Fi2チャンネルを使うことで速度が2倍速くなる「Smart Channel Bonding」を始めた。


4度目の正直?


 iPhone 5がいよいよ発売されるというニュースは、これが4度目である。韓国でスマートフォンを発売するためには、電波法により国立電波研究院で電波認証を受けないといけない。電波の混乱や障害を防止し、韓国の電波環境と放送通信インフラを保護するためである。韓国に端末を持ち込んでテストし、合格してから発売日が決まる。


 アップルは9月19日、10月10日の2度も電波認証を受けては取り消しを繰り返した。理由はSKテレコムの周波数を間違えて申し込んだというのだが、あまりにも初歩的なミスなので、韓国における発売日を遅らせるためにわざと間違えたのではないか、という説が有力だった。サムスンとの訴訟で韓国でのイメージが悪くなり、発売を見合わせているというのだ。実際はサムスンとの訴訟よりも、中国工場のストライキにより生産が追い付かず、米国でも3週間待ち状態だったので、供給不足から韓国での発売を遅らせようとした、という説に落ち着いた。iPhone 5は10月31日にやっと電波認証を終え、発売日を調整してきた。


 韓国のスマホユーザーは、iPhone 5に続いてLG電子がグーグルに納品した「Nexus 4」も韓国で発売してくれたらと願っている。Nexus 4は欧米のGoogle Playストアで、発売開始30分で売り切れたという話題のスマホである。LG電子がグループ会社の技術を集めて作ったという自信作「Optimus G」と変わらない仕様なのに値段は半額。Optimus Gの韓国での出荷価格は約7万3000円だが、Nexus 4は8GBモデルが約2万4000円、16GBモデルが約2万8000円に過ぎない。


 海外で人気のモデルを韓国でも同じ時期に使えるといいのに。韓国でサムスンのシェアが圧倒的に高いのは、ほかに選択の余地がないという事情もあるからかもしれない。海外メーカーのスマホを韓国でもっと販売してほしいものだ。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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アップルとの訴訟でシェア増? サムスン、スマホ販売快調の強気 [2012年11月16日]

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調査会社ガートナーによると、2012年7~9月、スマートフォンの世界市場は1億6920万台、そのうちサムスン電子のスマートフォンは5500万台、iPhoneは2360万台が売れた。シェアで見るとサムスンが32.5%で世界1位、アップルは14%だった。

 人気の端末はサムスンだとGalaxy S3で1800万台、アップルはiPhone 4Sで1620万台売れた。サムスンの躍進によりOSのシェアもAndroidは72.4%、iOSは13.9%と差が広がった。サムスンは携帯電話市場でも世界市場シェア22.9%を記録、ノキアを押しのけて1位になった。
 





Galaxy S3のWebサイト



 


 同四半期はアップルがiPhone 5を発売する直前だったため、買い控えするユーザーが多かったこともアップルのシェアが落ちた原因の一つといわれている。しかしアップルとの訴訟をきっかけに、サムスンのスマホがもっと売れるようになったのは確かなようだ。


 韓国の複数メディアが米モバイル専門家のコメントを引用して報道していた内容はこうだ。アップルとサムスンが訴訟を始めてから、サムスンのスマホに興味がなかった米ユーザーがニュースを見て、同社のスマホの性能がiPhoneと変わらないことを知り機種変更するケースが増えているという。訴訟をきっかけにサムスンを知ったユーザーもかなりいるそうで、サムスンにとっては一長一短ありの訴訟となった。米国の年末商戦でiPhone 5が爆発的に売れない限り、サムスンがスマホ市場で世界1位をキープし続けるのは間違いないといわれている。


 同調査が公開された11月14日、韓国メディアは、「サムスンが部品でアップルを圧迫」「サムスン、アップルと交渉なし」「サムスン、アップルに納品する部品20%値上げ」といった見出しで、サムスンの半導体とディスプレイの部品戦略を報じた。

サムスンと訴訟を始めてからアップルはサムスンの部品を減らしたが、部品の需給に問題がありサムスンに追加で納品するよう要求、これに対しサムスンは20%ほど値上げした価格で納品することにした、という内容だった。サムスンのスマートフォン事業を担当するIT・モバイル担当シン・ジョンギュン社長のコメントも紹介されていて、「アップルとの特許訴訟に関して(HTCのような)交渉はしない」という立場だった。

 これは、台湾HTCとアップルが11月11日に和解して訴訟を取り下げ、その代わりにライセンス料としてHTCスマホ1台当たり6~8ドルをHTCがアップルに支払うという報道を受けてのものだ。サムスンもアップルと和解するのでは? という予測があったがサムスンは最後まで闘う姿勢を見せた。サムスンは10~12月の実績も7~9月と変わらず世界1位をキープすること間違いないと見ている。


 サムスン側は部品の値上げや生産調整に関して、「はっきりしない需要に備えて生産を増やすより、短期的な収益を優先するため半導体(チップ、メモリーなど)とディスプレイの生産を減らす戦略」であり、「アップルを圧迫するため生産を減らすわけではない」とメディアに説明している。


 アップルの半導体購入金額は年間270億ドルで、このうち30%ほどをサムスンから購入していた。訴訟の影響で、サムスンにとっては“大口の顧客”を逃したともいえる。しかし、「アップルでなくても納品先はある、安すぎる納品価格を正常価格に戻したので収益改善のきっかけになる」(サムスン)と強気だ。


 サムスンが部品を提供しなくなってから部品の需給がうまくいかずiPhone 5の生産量が予定より遅れているというニュースもある。そのせいか、iPhone 5はまだ韓国での発売日が決まっていない。


 アップルとサムスンの訴訟はアップルが有利なように見えたが、サムスンの反撃も手強い。英国の訴訟ではアップルがサムスンに謝罪する広告を掲載するという判決が下された。米国での訴訟も陪審員が中立的立場を守れなかったとして問題になっていることから、アップルの一方的な勝利で終わることはなさそうだ。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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好き嫌いが極端に分かれる韓国パソコンユーザーのWindows 8使用記 [2012年11月12日]

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韓国は連日Windows 8関連イベントが行われている。ブロガー招待イベント、大学生のWindows 8サポーターが参加する「MS Student」イベントに続いて、11月9日には誰でも参加できる一般向けのイベントとしてソウル市内で韓国マイクロソフトとインテルが共催する「Windows 8デバイスデイ」が開催された。人気お笑い芸人を呼んでWindows 8の特徴を説明し、Windows 8搭載パソコンも自由に触って試せるようにした。











「Windows 8のデバイスデイ」イベントポスター。韓国で大人気のお笑い芸人が出演しWindows 8の使い方を教えてくれる。右上は人気キャラクター「ギャルさん」。「クリックアニムニダ~タッチイムニダ~(クリックではありません~タッチです~)」とわざと日本人が韓国語を話すみたいにしゃべるのがギャルさんの芸



 
韓国でもっともポピュラーなカフェである「カフェベネ」の大型店舗14カ所にWindows 8体験コーナーが設けられている。マイクロソフトの担当者が常駐しているので、コーヒーを飲みながらWindows 8を体験し、気になる点はその場で聞いて説明してもらう。
 










韓国で最も店舗数の多いカフェ「カフェベネ」にはWindows 8体験コーナーが設けられた。マイクロソフト担当者が常駐し、特徴を説明をしている



 韓国マイクロソフトは有名ブロガーや記者、IT企業の役員には、8月からWindows 8を提供していた。使ってみてブログで宣伝してください、ということだが、見事なまでに意見が分かれた。記者らはほぼ全員が「Windows 8はWindows 95を初めて使ったときのように衝撃的で斬新。とても軽くてパソコンがすいすい動くし、ユーザーインタフェースも使いやすい」、「今までのWindowsとは全く違う雰囲気なのでびっくりした。パソコン買い替えたくなった」、と褒めているのに対し、ブロガーやIT企業の役員らは「Windows 8はお勧めできない。Windows Meを思い出す。マイクロソフトはパソコンとタブレットPCの両方を狙おうとしてどっちも逃した」と書いていた。これにはマイクロソフトもびっくりしただろう。


韓国マイクロソフトは約1200円でWindows 7からWindows 8へアップグレードできるプロモーションを行っている。通常のアップグレード料金は約3500円なので、3分の1ほどの値段でWindows 8が使えるチャンスである。2012年6月2日以降、Windows 7を搭載したパソコンを購入した人が対象だが、適当にパソコンの種類と購入店、購入日を書き込むだけでプロモーション料金を利用できるので、話題のWindows 8を使ってみたいと申し込みが殺到した。しかしネットでは、「やっぱりWindows 7で十分」だとダウングレードしたという書き込みが多かった。

 ポータルサイトの質問掲示板を見ると、「タッチ式ディスプレイがないとWindows 8を利用できないのか?」という質問が最も多かった。韓国マイクロソフトは、「キーボードとマウスでもWindows 8の機能は全て利用できるので安心してアップグレードしてください」と答えているが、「タブレットPC持っていない人はやめとけ~」と突っ込まれている。


 Windows 7に比べてパソコンの立ち上がりが速い、複数のプログラムを実行してもパソコンが遅くならないので快適、アップグレード費用が安い、という点はブロガーの間でも好評だ。ただ、「ユーザーインタフェースにはすぐ慣れたけど、やっぱりタッチ式ディスプレイに買い替えない限りWindows 8の良さは分からない」、「デスクトップモードがあるけど、マウスを使うデスクトップパソコンにWindows 8は合わなかった。スマートボタンがなくなったWindows 8をマウスでクリックして使おうとするといらいらする。短縮ボタン覚えられない。すぐWindows 7に戻した」、「Windows 8で使えるアプリやプログラムがまだ少ないので、当分はビジネス用に使うパソコンはWindows 7、エンタメ用はWindows 8、と分けた方が無難」など、辛口な意見が多い。共通しているのは、「Windows 8はタブレットPCに買い替えてから使うべき、そうでないと良さが分からない」という点だ。


 韓国からWindowsストアにアクセスすると、登録されているアプリの数は11月5日時点で484件、ほとんどが韓国のポータルサイトが作ったマップとKPOP、幼児向けアニメ、天気、簡単なゲームぐらいで、iOSやAndroidで人気のゲーム、お店検索、スケジューラーといったアプリはまだWindowsストアには登録されていない。


 韓国のWebサイトは「Flash乱用」というほどメニューからFlashで作り込んでいるところが本当に多く、Safariでは何もクリックできないWebサイトが多すぎる。インターネットバンキング、クレジットカード決済、オンラインショッピングもWindowsとIEに最適化されているので日常的に使うパソコンはやっぱりWindowsでないと不便だ。


 iPhoneの影響で大学生を中心にMacを使う人が増えたことから、「タブレットPC用画面」を別途作るサイトが増えたので、最近はだいぶ良くなった。以前のように一家に1台Windowsパソコンがあって、それがないと何もできないということはなくなった。そのせいか、Windows 8は話題にはなっているが、話題で終わってしまっている印象が強い。Windowsストアのアプリが急増すれば、Windows 8の人気も上がるのではないだろうか。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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サムスンとLGが電子ペン付きWindows 8パソコンを発売

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サムスン電子とLG電子がついにWindows 8パソコンを発売した。

 サムスンはWindows 8ノートパソコンを「スマートPC」と呼ぶ。タブレットの携帯性とノートパソコンの高性能なところを組み合わせたパソコンという意味で、Windows 8のノートパソコンを、タブレットやUltrabookと区別している。


 サムスンのスマートPCは「ATIV」というブランド。9月初旬にベルリンで開催されたIFA2012で公開した当時のまま、まずは11.6型のキーボード脱着式モデルから先に発売した。一般向け「ATIV Smart PC」とその上位モデルとなる「ATIV Smart PC Pro」の2つがある。ATIVグローバルサイトで紹介しているWindows 8タブレット「ATIV Tab」はまだ発売時期は決まっていないという。










サムスン電子のキーボード脱着式Windows 8パソコン「ATIV Smart PC Pro」



 スマートPCには電子ペン「Sペン」が付属する。文字の認識率が高いので使いやすいと評判が高く、スマートフォンのGALAXY Noteの人気を後押ししている。ディスプレイに手書きした文字や数式を瞬時にテキストに変換してくれる「Sノート」、スマートTVやスマートフォンと連動してファイルや今見ている画面を共有する「All Share Play」といったサムスンのスマートフォンで人気を集めるアプリは全てATIVでも使えるようにした。


 発売されたスマートPCは11.6型ディスプレイだが、キーボードは13型向けのもので小さすぎないので、書類を作るときも打ち間違いが少なくなった。韓国ではメールなどの文面に「タブレットで書いていますので誤字はご容赦ください」と一言添える人が多い。韓国語はローマ字で書いて変換するのではなく、ハングル文字の母音と子音の組み合わせで書くのでタッチ式のソフトウエアキーボードや小さい携帯型のキーボードだとつい隣の文字を押してしまう。「変換」というもう1回チェックする段取りがないので、誤字チェックしてくれないメールや掲示板の書き込みだと誤字に気付かないことがよくある。サムスンが「ATIVはキーボードが大きい」と宣伝しているのは、英語や韓国語を使うユーザーからの要望が多かったからだろう。


 一般向けのATIV Smart PCの仕様は、CPUがIntel Atom Z2760 (1.5GHz)、11.6型ディスプレイ(1366×768ドット)、2GBのメモリーに64GBのSSDを搭載。9.9mmの薄さでキーボードを外すと744gになる。価格は109万ウォン(約7万5000円)である。1回の充電でネットサーフィンは14.5時間、動画連続再生は9.5時間利用できる携帯性が売りだ。


 ATIV Smart PC Proは、CPUがIntel Core i5、11.6型ディスプレイ(1920×1080ドット)、メモリー4GBに128GBのSSDを搭載する。11.9mmの薄さながら冷却性能がプラスチックより30%良くなるメタルファンを採用した。キーボードを外した状態で888g。電源を入れてパソコンが立ち上がるまで8.5秒、IEのアイコンをクリックしてWebページの画面が開くまで0.5秒しかかからない点もアピールしている。価格は159万ウォン(約11万5000円)である。両方とも前面に200万画素、背面に800万画素のカメラが付く。


 サムスン電子は10月24日のATIV記者発表会で、「タブレットパソコンのラインアップが拡大しても、ユーザーはパソコン本来の機能と性能を必要としている。サムスン電子は画期的な製品を持続的に発売する。最高のモバイル環境を提供するだろう」と自信を見せた。



LG電子はスライド型



 LG電子のWindows 8パソコンはATIVのようなブランド名はなく、タッチスクリーンノートパソコンは「H160」、タッチスクリーンでオールインワンパソコンは「V325」というモデルだ。LGはスマートPCではなく「Tab book」と呼ぶ。タブレットとノートブック(韓国ではノートパソコンを「ノートブック」という)のいいところだけを組み合わせたという意味なのはサムスンと同じ。


 H160は画面のサイズはサムスンと同じく11.6型だが、キーボードを取り外せない。ディスプレイの横にあるボタンを押すとオートスライドでキーボードが現れる。そのせいか15.9mmとちょっと厚みがあり、重さも1.05kgになった。CPUはIntel Atom Z2760(1.8GHz)、11.6型IPS液晶(1366×768ドット)、2GBのメモリーと64GBのSSDを搭載する。サムスンと同じく電子ペン「スマートタッチペン」が付属する。価格は専用カバー付きで110万ウォン(約7万5000円)である。10月26日から発売すると発表はしたものの、量販店やネットショッピングでは11月から予約販売開始と書いてある。


 LGは10月26日から、UltrabookにもWindows 8を搭載して販売している。本体はそのままWindows 8にアップグレードしたいユーザー向けに、23型のタッチスクリーンディスプレイも発売した。











LG電子のWindows 8パソコン



 韓国ではWindows 8がタッチスクリーンに対応していることよりも、パッケージソフトからアプリ方式に切り替わったことの方が話題になった。ソフトウエア販売方式がパッケージからアプリへ完全に切り替わるのではないか、という声もある。


 韓国は電子政府、オンラインバンキング、航空券予約、ネットショッピングなど、決済機能が必要な主なWebサイトはほとんどIEを標準にする。いろいろなサービスのWindows依存度が高いことからも、AndroidでもiOSでもなくやっぱりWindows端末が一番使いやすい!というユーザーがたくさんいる。外ではiPadやGALAXY Tab、仕事ではノートブックと2台を使い分けていたユーザーが、これからはWindows 8の端末だけに絞る可能性もある。


 カーナビやMP3プレーヤーを製造していた中小メーカーがタブレットを製造するようになった。グーグルのAndroidタブレット「Nexus 7」が9月に参入したことをきっかけに、ここでは激安タブレット競争が繰り広げられている。安いタブレットとノートパソコンを使い分けるか、高くてもWindows 8パソコン1台に絞るか、ユーザーとしては迷うところだ。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年11月02日]


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主戦場がスマホに移った韓国でヤフー撤退の必然

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韓国のヤフーが2012年10月19日、12月31日付けでポータルサイト「Yahoo!Korea」を中断、韓国から撤退すると発表した。2013年からはYahoo!の韓国語サービスはなくなる。Eメールやブログなどは、利用中のIDそのままに英語のYahoo!サイトで利用できるようにする。この決定は米ヤフーのマリッサ・メイヤー新CEOが下したリストラ策の1つだそうだ。韓国支社の社員はどうなるのか、広告契約はどうなるのか、といったことは順次説明するという。

 1997年9月、韓国初のポータルサイトとしてオープンしたYahoo!Koreaは2000年まで人気絶頂のポータルだった。しかし2000年以降からDAUM、EMPAS、NAVERなど韓国産ポータルサイトが続々登場してからその地位が揺らぎ始めた。アバターブーム、同好会サイトブーム、動画投稿ブームなど時代の流れをすぐ反映する韓国産ポータルとは違い、米本社の許可を得てから動くYahoo!Koreaはいつも一歩遅かった。














年末でなくなるYahoo!Korea



 2012年8月末時点での韓国ポータルサイトのシェア(コリアンクリック調べ)は、NAVER76.6%、DAUM15.1%、NATE3.9%、Google2.7%、Yahoo1.1%とNAVERが圧倒的な差で1位となっている。ポータルのモバイルサイトとアプリのシェアを見ると、NAVER73.9%、DAUM15.5%、Google10.1%、NATE0.5%と、ここでもNAVERが圧倒的で、Yahoo!はカウントされないほどである。


 Yahoo!KoreaのシェアがGoogleよりも低いのは、NAVERの壁を越えられなかったこと以上に、スマートフォン向けサービスの対応が大幅に遅れたことが理由ではないかという分析がある。Googleも韓国ではシェアが2%にならないほど人気がなかったが、Android搭載スマートフォンが普及してからは自然と伸びた。スマホで検索すると、Googleが標準搭載されているからだ。


 韓国のポータルサイトを見ると、NAVERのシェアは年々大きくなるばかりである。モバイルでもNAVERが圧倒的なシェアを持つことから、ほかの会社がポータルサイトの運営をやめてしまうケースが増えている。韓国の最大手キャリアKTも、モバイルサイトの対応に遅れたことからシェアが急減したポータルサイト「Paran」のサービスを2012年7月に終了した。SKテレコムの子会社が運営するシェア3位のNATEも、シェアが減り続けていることからリストラに着手した。これからはNAVER、DAUM、Googleの対決になりそうだ。


 NAVERはグーグルのデジタルコンテンツ配信サービス「Google Play」に対抗して、マンガや動画などのコンテンツを販売する「Nストア」、独自のアプリを販売する「NAVER APPストア」に力を入れる。DAUMはLGU+のようにデジタルTVにセットトップボックスを付けるだけでスマートTVのように使える「TV+」に力を入れる。

韓国では、ソフトバンクが運営するYahoo!Japanは日本でのシェアが高く韓国のYahoo!とは全然違うことが話題になった。なぜならばYahoo!Koreaの撤退が発表されたその日に、韓国のスマホ向けアプリ人気ナンバーワンの「カカオトーク」を運営するカカオが日本のヤフーと5対5で合弁し、日本でカカオジャパンを設立したと発表したからだ。


 韓国ではポータルサイトの最大のライバルは、ほかのポータルサイトではなくカカオトークとまで言われている。カカオのソーシャルゲームや、FacebookのようなSNSサービス「Kakao Story」が大人気だからだ。今ではポータルサイトの利用時間よりもカカオのメッセンジャーやゲームを利用する時間の方が長い。そのカカオが日本に進出するために選んだパートナーがYahoo!Japanだという報道に、韓国ではなぜYahoo!なのか疑問だとする声もあった。韓国とは違って日本ではYahoo!がNAVERのように人気のあるポータルサイトだと知って、多くの人が逆に驚いている。


 Yahoo!Japanとカカオとプラットフォームシェアにより、Yahoo!Japanはスマホ向けサービスを強化、カカオは日本人ユーザーを獲得できるチャンスを得た。2社の合弁は、日本で人気の高い「LINE」に対抗するためとも言われる。


 インターネットの入り口はポータルサイト、朝起きたらまずそこのニュースを読む、というライフスタイルはもう昔話で、今ではTwitterやLINE、カカオトークのようなアプリを確認することから1日が始まるほどだ。Yahoo!Koreaの撤退をきっかけに、ポータルの必要性まで議論になっている。


 スマホ時代を迎え、ポータルも過去のサービスになってしまうのだろうか。カカオジャパンはもちろん、日本のポータルサイトの動きも気になるところだ。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年10月25日]


-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121025/1068223/

キャリアとして世界初、LGU+がGoogle TVを開始

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キャリアのLGU+がGoogle TVを利用できるサービス「U+TV G」を始めた。これは、2009年から同社の提供する「デジタルIPTV」サービスに、「スマートセットトップボックス」を追加したもの。米グーグルがメーカーではなくキャリアと手を組んでGoogle TVのサービスを提供するのは、初めてである。

 インターネットにつながるデジタルテレビにこのスマートセットトップボックスを追加すると、インターネット検索、VODといった既存のIPTV機能に追加してグーグルが提供するGoogle Playからゲームや動画、学習アプリなどをテレビから利用できる。セットトップボックスは1.2GHzのデュアルコアCPU、Google TV最新バージョンを搭載、タッチパッド付きリモコンも提供する。


 利用できるコンテンツは地上波放送再放送と119のケーブルTVチャンネルに加え、5万件あまりのVOD、グーグルのサービスとなる。月々9900ウォン(約700円)、ブロードバンドネットワーク料金とセットだと月3万ウォン(約2100円)で利用できる。









「U+TV G」でGoogle TVが使えるようになる



 サムスン電子やLG電子のスマートTVは普通のテレビに比べ3倍ほど高い。47型のスマートTVが14万円~15万円ほどする。それでもこの1年間で半額近く安くなってこの値段である。LGU+のスマートセットトップボックスを使えば、テレビを買い替えなくても安い費用でスマートTVが自慢する豊富なゲーム、学習関連アプリやフィットネスアプリを自宅のテレビから利用できる。


 「スマートTV」と「IPTV」はどちらもインターネットにつながるテレビである。しかしスマートTVはメーカーが、IPTVはキャリアがサービスを提供する。そのため2012年の始めには、サムスン電子のスマートTVが自社のネットワークトラフィックを大量に発生させているとしてキャリアのKTが「ネットワークのフリーライドはやめろ」と訴訟を起こしたこともある。サムスン電子はネットワーク中立性を盾に反撃した。政府機関の仲裁で和解したが、キャリアのスマートTVに対する対抗意識は依然と強く残っているようだ。


LGU+のスマートセットトップボックスにはNFCタグが付いていて、スマートフォンやタブレットPCをかざすだけで、テレビの画面がスマートフォンに移動、同じ画面を観られる。逆にスマートフォンの画面をテレビで観たいときも端末をかざすだけ。複雑な切り替え操作はいらない。

 4台のスマートフォンまたはタブレットPCをつなげてそれぞれデジタルテレビの違うチャンネルを視聴することもできる。テレビは1台だけどスマートフォンは家族全員が持っている家庭が多いので、チャンネル争いすることなく観たいチャンネルを選べる。画像検索機能も強化した。家族のスマートフォンをセットトップボックスにかざすだけで、スマートフォン内の写真がセットトップボックスに移動し、テレビで写真を鑑賞できる。


 日本では肖像権の問題で考えられないかもしれないが、テレビ番組の場面をキャプチャーして自分のSNSに投稿して番組について語り合う機能も付いている。これらはAndroidスマートフォンでしか利用できないようになっている。


 韓国のキャリアはスマートフォンが普及してから「脱通信事業」をキーワードに、融合サービスに力を入れる。具体的にはヘルスケア、教育、アプリケーション開発の分野だ。LGU+のスマートセットトップボックスはスマートホーム、スマートメディアサービスの一環で、個人向けにはスマートフォンで家族みんなをつなげるとしてデジタルテレビとセットトップボックスを利用するライフスタイルを提案した。


 韓国では自分のスマートフォンばかり使ってテレビも見なくなった、家族の会話も減った、という家庭が多い。スマートセットトップボックスがあれば、家族で一緒にゲームをしたり、学習アプリを利用したり、写真を見たりとコミュニケーションするきっかけが増えるかもしれない。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年10月22日]


-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121022/1067742/

サムスン、Android搭載「Galaxyデジカメ」投入

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最近は携帯電話には800万画素以上のカメラが付いていて、デジカメなんて今さら持ち歩かないという人が多いのではないだろうか。韓国でも、記念撮影というとみんな一斉にスマホを取り出す。韓国でデジカメといえば、もうデジタル一眼になった。

 LG電子の「Optimus」スマホが1300万画素カメラ付きだというのに、サムスン電子はあえてスマホのようなデジカメで勝負しようとしている。韓国の主要キャリアSKテレコムとKT、米AT&Tから10月中に「Galaxyカメラ」が発売されるそうだ。韓国のキャリア代理店でデジカメを販売するのは初めてのことである。カメラの値段とデータ通信料金制度についてはまだ正式に発表してない。










サムスンが力を入れる「Galaxyカメラ」。OSはAndroid 4.1、1600万画素CMOSイメージセンサーを搭載する



 Galaxyカメラは、スマホのカメラより優れた画質で撮影し、カメラを使ってその場で編集、データ通信を使ってSNSに公開できる、というものである。Android 4.1を搭載して3Gデータ通信を利用できる1600万画素BSI(Back Side Illumination) CMOSイメージセンサー、光学21倍ズームのカメラ。AT&TではLTEも使える。既存のデジカメより大きな4.8型の液晶画面で撮った写真を再生して編集もできる。SNS以外にもAndroidアプリをインストールして使える。「クラウドバックアップ」機能があり、撮ってすぐ自分のクラウド(ネット上のファイル保存空間)に保存できる。メモリーカードが壊れた、無くした、といったトラブルを防止できるのはありがたい。撮った写真や動画をサムスン製のスマホやタブレットPCと簡単に共有できるシェアリング機能も付く。


 どこかで同じコンセプトのカメラを見たことがあるような……と思ったらニコンのCOOLPIX S800cと同じコンセプトではないか。同モデルもAndroid OSに1602万画素、3.5型のAMOLEDワイド画面を搭載する。専用アプリでスマートフォン側からカメラ内の写真や動画を選んで転送もできる。


 報道によると、Galaxyカメラは、サムスン電子がスマホと同じぐらい力を入れている主力商品だそう。2012年5月に同社の李健熙会長が「3年内に世界ナンバーワンのカメラを作れ」と指示して3カ月後に生まれたという。急ぎすぎたのだろうか。


ジェスチャー認識で自分撮りも集合写真も


 韓国ではGalaxyカメラよりも、サムスン電子の別のデジカメ「スマートカメラMV900F」の方が話題だ。








サムスン電子の別のデジカメ「スマートカメラMV900F」。ジェスチャー認識でカメラを動作させる機能が面白い



 Wi-Fiが使える1630万画素のスマートカメラは、スマホよりはきれいに、デジタル一眼よりは手軽に写真を撮りたいというニーズにぴったりのカメラである。3D写真と動画も撮影できて、180度回転するAMOLEDタッチスクリーンを使えば自分撮りもうまくできる。


 面白いのは、セルフタイマーよりも断然便利な動作認識機能である。カメラのレンズを自分に向けて机の上に置いて、180度回転する液晶を開いてセットする。手を動かす(手を右に回す、左に回す、上下に動かすといったジェスチャー)だけでカメラが動作認識してシャッターやズームを動かせるので、液晶を見て確認しながら団体写真も撮れる。一人はみ出て首から上がないとか、セルフタイマーだと10秒間同じポーズで立っているのが恥ずかしいとか、そういう経験のある人にはお薦めのカメラだ。女性向けに、写真を撮った後でメイクしたように肌をきれいに加工できる機能も持つ。こういう機能はスマホにはないので、1台欲しくなる。


 MV900Fは日本円で3万円前後なので、お手頃価格とは言い難い。とはいえ、写真を撮るのが好き、でも奮発して買ったデジタル一眼は結局重くて持ち歩かない、一眼買って1年以上経つのに未だ「これなんだっけ……」と未知の機能に戸惑う(私のような)人にはぴったりなのかもしれない。


 サムスン電子は「これからの時代は活字や音声ではなく、写真で自分を表現する視覚コミュニケーションの時代」なので、デジカメの需要はまだまだ大きいとみる。スマホとデジカメ、やっぱり両方持つべき?




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年10月12日]


-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121012/1066567/