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米GMは2021年8月20日、同社の電気自動車(EV)「Chevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)」のリコール(回収・無償修理)対象を広げると発表した。バッテリーの発火事故が相次ぎ、GMは20年11月と21年7月にもリコールを発表。今回の追加リコールで同車種の直近生産分まで対象を拡大した。原因が明らかになるまで同車種を販売中止にするという。GMが名指しで欠陥の原因と指摘したのが、Bolt EVが採用する韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)のバッテリーセルだ。GMは同社と韓国LG Electronics(LG電子)にもリコールの費用負担を求める考えで、LGは試練に立たされている。
3回にわたるリコールで、リコール対象はBolt EVの全モデル、合計約14万台に広がった。GMは米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)に対して発火原因を「バッテリーセルの製造上の欠陥」と報告したという。セルの負極タブと分離膜が破裂する可能性があり、充電中に発火するおそれがある。LGエナジーソリューションとGMが共同調査にあたっている。
リコールに伴う費用は18億ドル(約2000億円)に膨れ上がったとみられる。GMはリコール費用をLGにも求める考えだ。LG電子とLGエナジーソリューションは21年4〜6月期の決算において、リコール対策費用としてそれぞれ2346億ウォン(約220億円)、910億ウォン(約90億円)を充当した。
ただしリコール対象が広がったことで、用意した額に収まらない可能性も出てきた。調査結果次第で、GMとLG側でリコール負担の比率も変わる。LGエナジーソリューションのバッテリーセルを巡っては、韓国・現代自動車(Hyundai Motors)も発火のおそれがあるとしてリコールを決めた。その際のリコール負担比率はLGが7割、現代自動車は3割だった。韓国内では、GMとLGの負担比率も同じような割合になるとみている。
GMのリコール対象拡大を受けて、LGエナジーソリューションの親会社である韓国LG Chem(LG化学)の株価は大幅下落した。LGエナジーソリューションは21年6月、新規株式公開(IPO)に向けて韓国取引所に上場予備審査を申し込んでいた。しかしGMのリコールを受けて、審査の延長を依頼したという。LG化学は、LGエナジーソリューションの上場によって10兆ウォン(約9000億円)以上の資金を確保し、米国や欧州、中国といったメジャーなEV市場にバッテリー生産工場を増設する計画だった。しかしGMのリコール拡大で、その目算は狂ってしまった。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
<<NIKKEI X TECH>>
2021. 9.
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