iPad 2と張り合うGALAXY Tab10.1に高まる期待

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米アップルがサムスンのGALAXY S2やGALAXY Tab10.1、GALAXY Tab8.9がiPhone、iPadのデザインとユーザーインタフェースをそっくり真似ているとして特許侵害訴訟を起こしたことは日本でもあちこちで報道された。その後サムスンも、アップルがデータ分割伝送、電力制御といった携帯電話製造に関する特許を侵害したと逆提訴している。


 アップルがサムスンのGALAXY Tab新端末を公開するよう求め裁判所の許可をもらうと、サムスンも負けじとiPhone 5とiPad 3を公開するよう求めている。特許紛争ではよくある資料収集のための要求とのことだが、アップルが攻撃するとサムスンも同じ攻撃で応える状況だ。


 アップルの訴訟目的はサムスンではなくAndroidをけん制するためと分析されている。半導体やLCD特許訴訟のように、いずれ和解するとは言われているが、ユーザーとしては法律事務所だけがもうかる意地の張り合いになってほしくない。結局その費用は製品価格に上乗せされるだろうから。


 韓国ではアップルとサムスンの訴訟の影響で、ますますiPad 2とGALAXY Tab10.1の関心が高まっている。iPad 2は5月末時点でも全く手に入らない幻の端末である(参照記事)。GALAXY Tab10.1はついに6月8日に発売されるという報道が流れている。


 ネットではGoogle I/O 2011開発者会議や展示会で撮られたと見られるGALAXY Tab10.1とiPad 2の比較映像が大人気。海外のブログやオンラインマガジンが掲載するGALAXY Tab10.1のレビューや感想はすぐ翻訳され記事になり、iPad 2とどっちを買うべきか迷うユーザーのコメントが多く書き込まれている。


 GALAXY Tab10.1はiPad 2の最大のライバルになるのではないかと期待を集める。Google I/Oで参加者に贈られたモデルからすると、iPad 2より細長い感じで、薄さは8.6mmと0.2mm薄く、重さは565g(Wi-Fiモデル)と601gのiPad 2より軽い。モトローラやアスースのタブレットよりも断然軽く、もっとも薄くてもっとも軽いタブレットPCというのが自慢だ。既存のGALAXY Tabは7型でポケットに入る大きさというのが売りだったものの、あの分厚さはなんとかならないのかとユーザーの間では不満もあった。


2011年5月11日、Google I/Oに参加したアプリケーション開発者に贈られたGALAXY Tab10.1。6月に発売する製品は、端末のサイズは同じで仕様が若干変更されるという


 韓国のユーザーの間では、DMB(韓国のワンセグ)を搭載するのかしないのかが話題になった。GALAXY Tab10.1にはDMBを搭載せず、10.1の後に発売されるGALAXY Tab8.9には搭載するという。10インチのタブレットでテレビを見るよりは、アプリから電子本、ゲーム、動画を利用するユーザーの方が多いと判断したからだ。DMBを搭載しないとより軽くなる。


 サムスンは、GALAXY Tab10.1がiPad 2と張り合えるよう、Googleが提供する各種クラウドサービスとAndroidマーケットに最適化している。韓国でもタブレットPCを買うのは仕事に使えて便利だから、という人がまだ多いので、いつでもどこでも仕事ができる「スマートワーク」をサポートする端末であることをアピールする。


 GALAXY Tab8.9や既存の7型はサムスンならではの機能を追加することで、選択の幅を広げるとしている。スマートフォン、タブレットPC、スマートTVをつなげたNスクリーン(利用していた動画やアプリをどんな画面からも続けて利用できる)戦略も視野に入れていて、アプリケーション開発の支援も始めている。


 韓国内では4Gに対応したGALAXY Tab Wibroも発売された。タブレットPCからどんなに重たいコンテンツでもすいすい利用できるようになった。海外ではLTEに対応したスマートフォンを先に発売、LTEに対応するタブレットPCをアップルより先に発売する計画だ。



 米シスコシステムズのVisual Networking Index (VNI) 2010~2015によると、2010 年には、300 万台のタブレットPCがモバイルネットワークに接続され、各タブレットPCでは、スマートフォンの平均の5倍の通信量が生成されたという。2010年から2015年で、世界のモバイルデータ通信量は26倍増加し、2015年にはタブレットPCの通信量だけで2010年全世界のモバイルネットワーク通信量に匹敵するほどの量になると予測した。この通信量を処理するためにも、ネットワークの速さにストレスを感じることなくタブレットPCを利用できるようになるためにも、「4G+タブレットPC」の組み合わせも重要な競争のポイントになる。


 ガートナーは世界のタブレットPC販売台数を2010年1950万台、2011年には5480万台、2014年には2億800万台と大幅に成長するものと予想する。一方、JPモーガンは、アップルが一人勝ちしすぎたため、他のメーカーはタブレットPCの生産台数を予定よりも減らし、慎重に対応していくだろうという報告書を発表した。iPad 2は売れても、タブレットPC全体で見ると予測されたほど売れていないという。


 そんな中でもサムスンは、2011年のタブレットPCグローバル販売台数を前年の5倍、750万台を目標としている。ラインアップを多様化することで無難に目標は達成できると見られている。一方スマートフォンの目標は前年の2倍である年間6000万台で、携帯電話(フィーチャーフォン)を合わせると3億台販売を目指している。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年6月2日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110602/1032154/

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