IT強国としての義務――世界の中心でITをさけぶ(過去記事)

ノブレス・オブリージュ(Noblesse oblige、高貴の義務)という言葉があるが、この言葉通りの生活をしている人が何人いるだろう。韓国のマスコミは政治家、財閥、医者、弁護士、教授などの高収入の人たちをひっくるめて「社会指導層」と呼ぶ時がある。しかしテレビをつければこの「社会指導層」たち、所得隠しに税金未納に賄賂等と、問題を起こすばかり。あるボランティア団体の代表によると、韓国では所得が少ないほど人生の苦しみを味わっているのでたくさん寄付し、ボランティア活動にも積極的に参加しているそうだ。私の周りもそうである。

途上国へ「海外インターネット青年奉仕団」派遣


 政府の情報通信部は5月、途上国の人々にPCとインターネット教育を提供する「2004海外インターネット青年奉仕団(Korea Internet Volunteers)」を4人1組で75組300人募集し、アジア12か国、アフリカ6か国、ヨーロッパ3か国、独立国家連合(CIS)6か国、中南米5か国など32か国に7月から約30日間派遣した。奉仕団には大学生や教師などが参加している。


 インターネット海外青年奉仕団の派遣は、2000年11月にシンガポールで開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3首脳会談がきっかけとなった。金大中前大統領が開発途上国のデジタルデバイド解消のため青年奉仕団を派遣すると提案したのだ。その後2001年に170人、2002年に206人、2003年に345人と、721人が40か国に派遣された。「インターネット大統領」とも呼ばれるノ・ムヒョン大統領も公約として「IT(情報技術)奉仕」を約束した。


 奉仕団は派遣された国々の現地の学生や公務員はもちろん、歴史的な背景の中で中国や旧ソ連に強制移住させられた高麗人と朝鮮族など現地に居住する韓国人を対象に、PCとインターネットを教育し、国籍は変わっても祖国を誇りに思えるように元気づけようという目的もある。


 韓国のIT産業の生産額は全産業の12.9%を占めている。全輸出額の27.3%がIT分野で、ITなしでは国家の存在も危ういと言っても過言ではないほどだ。有線・無線ブロードバンド網も先駆的に整備され、全世界からベンチマーキングの対象として注目されている。韓国は自ら情報化国家を立ち上げた先輩として、このノウハウを分けてあげるべき「義務」を負っていると考えている。


「尊敬されるIT強国」目指して


 韓国は戦争を何度も経験し、戦後の貧しさを十分味わっている。つい34~35年前まで、もうこの国は立ち直れない、見込みがないとして欧米諸国から融資もしてもらえなかった。その時、韓国政府は西ドイツに2万人の看護婦と炭鉱労働者を送り込み、彼らの賃金を保証金にして融資してもらい、高速道路やアパート、ビルを建て農漁村のわら屋根を瓦に変えるセマウル運動を起こし、その結果は「漢江の奇跡」へとつながった。「助けられてばかりではだめだ」「我々も他の国を助けてあげたい」――その願いがITで実現している。


 韓国はまだOECD(経済協力開発機構)加盟国の中でODA(政府開発援助)額の少ない国である。だが韓国は韓国なりの、日本は日本なりの方法で途上国をサポートしている。途上国が経済大国である日本に望むもの、それはお金や医療や装備など様々だ。しかし途上国の中でちょっと上にいるぐらいの韓国には、お金より世界に誇るITを活用した「韓国式経済再生モデル」の提供による支援を要求している。本当のIT強国になるためには、分け合うのも重要だ。その結果として「ITコリア」のイメージが世界に知れ渡り、貿易と友好的な関係を維持し、韓国企業の海外進出もサポートできるようになる。一人勝ちの「IT大国」ではなく、世界各国の人々と一緒に生き「尊敬されるIT強国」になりたい。


 奉仕団の結果はそうすぐに表れるものではないと思っていたが、既に東南アジアでは韓国の電子政府システムを導入する国が増え、韓国企業が行政の情報化や電子政府構築に参加している。カンボジアの場合、政府の情報化を担う情報通信開発振興庁(NIDA)の積極的な情報化意志があり、公共機関を中心にインターネットとITに対する認識がますます拡大している。韓国の情報化事例にも格別な関心を持っている。2002年に情報通信部と韓国情報文化振興院が国際デジタルデバイド(情報格差)解消サポート事業の一環としてカンボジアに「インターネットプラザ」を建設し、財政経済省が運営している「対外経済協力基金」も提供した。政府省庁と地方公共機関の公務員の情報化教育及び実習空間で活用されているこのプラザでより高いレベルの教育を提供するために奉仕団も派遣した。国土のほとんどが未開発のままであるカンボジアにGIS(地図情報システム)を導入したいと考えている。現在カンボジア政府は韓国企業のソリューションを導入して電子政府を構築し始めている。


「競争より協力」で日本と中国との連携を


 韓国はよく「私たちはグローバルeリーダー」だと言う。東アジアや開発途上国のデジタルデバイド解消だけでなく、日本と中国とのIT分野での協力もとても大事な国家課題として考えられている。地理的にも韓国は日本と中国の真中にあり、日本とも中国とも海底ケーブルでつながっているので、この関係は重要である。韓中日の協力なしでは世界の未来もない。中国の経済が急成長する中、韓国と日本はこのまま中国を見守るだけでいいのか?韓日FTA(自由貿易協定)が締結すれば韓国の自慢であるIT産業に影響はないのか? 韓国は中国に負けずIT先進国の座を守れるのか?――などの課題を競争より協力で解決していきたい。幅広いITの中でもどの分野からどのように交流し協力するべきなのか。筆者の周りの韓国人は公務員も民間企業人も学生も深く悩み、自分の身の回りから何か協力できるようなものはないかと考えている。


「不景気に見えない」パワーをあげたい


 韓国はここ数年ずっと不景気だ。就職難にインフレについていけない所得水準、激しい貧富の差、頻繁なストライキなど、問題は数え切れない。なのに外国人から「まったく不景気に見えない」とよく言われる。それは希望を持っているからだ。私は必ず成功する、私は必ず就職できる、韓国は必ず経済成長し先進国の仲間入りをする、このような希望を海外の途上国にも分けてあげたい。これが、韓国が世界の中心でITをさけぶ本当の理由である。



by- 趙 章恩


 


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