新政権発足後最初のICT政策はAI半導体育成、科学技術情報通信部の長官に半導体専門家が就任

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韓国では2022年5月10日、新しい大統領が就任し、5月11日には科学技術情報通信部(部は省に当たる)の長官に新たにLee Jong-ho氏が就任した。Lee長官は米Intel社や韓国Samsung Electronics社も導入した半導体トランジスタ構造「3D Bulk FinFET」を世界で初めて開発し特許登録したことで著名な人物である。Lee長官は5月24日、就任後初の現場訪問としてAI半導体をファブレスで手掛けるスタートアップ、FuriosaAI社を選択した。

 章恩(ITジャナリスト)

 

《日Robo》

2022. 6.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00103/

SK Telecomはロボットビジョンの会社に出資、次期大統領はロボット・AI支援を拡充

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2022年4月20~22日、韓国最大規模のICT展示会「WIS(World IT Show)2022」がソウルCOEXで開催された。科学技術情報通信部(部は省に当たる)主催で「Innovation for Tomorrow」をテーマに358社が出展した。韓国政府は4月18日よりマスク着用以外のソーシャルディスタンスを確保するための規制を全て解除した。

 しかし韓国では在宅勤務やデリバリーサービスなど非接触型社会の便利さに慣れてしまい、新型コロナウイルス(COVID-19)以前の生活には戻れないという声の方が多い。韓国のSamsung Electronics社、LG Electronics社、キャリアのKT社とSK Telecom社など大手企業も非接触型社会を支えるロボットとメタバース事業を強化しているからか、WIS 2022の展示も非接触型社会をより便利にするロボットやAIサービスが主流だった。

 章恩(ITジャナリスト)

 

《日Robo》

2022. 5.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00101/


NAVERがロボットフレンドリービルを建設、内部では配送ロボなど100台以上稼働へ

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韓国ではコロナ禍を受けた非接触型社会の定着により、人々はサービスロボットのある生活にも慣れてきた。スマートフォンで注文しロボットが配膳するレストランや配達ロボット、カフェのバリスタロボット、ショッピングモールで検温と消毒をする防疫ロボットなどをよく見かける。レストラン向け配膳ロボットのレンタル料は価格競争が始まった。

 韓国産業通商資源部(部は省)は2022年3月より公共機関と製造現場のデジタルトランスフォーメーションのためのロボット普及事業に2440億ウォンを投資している。2022年は製造・航空・造船・バイオ化学のロボット活用標準工程モデル開発、ロボットデータベース統合管理システム運営、中古ロボット再生のためのロボットリファービッシュセンターオープン、国民の生活レベルを上げるためのAI・5Gサービスロボットテスト事業支援を実施する。

 韓国最大手通信キャリアのKT社は2022年3月30日、MWC 2022で公開したAI防疫ロボットを発売した(図1)。KT社はキャリアでありながら新規事業としてロボットを選択した。キャリアとして長年研究開発してきたAI・ビッグデータ・クラウドコンピューティングの集大成がロボットだとして、顧客の悩みを解決しデジタルトランスフォーメーションをサポートするロボット本体とロボットサービスプラットフォームに力を入れている。90年代後半、全国にブロードバンド回線工事をし、世界最速でインターネットを普及させたようにこれからはロボットサービスプラットフォームを普及させるという。

 章恩(ITジャナリスト)

 

《日Robo》

2022. 4.

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00099/

MWCで韓国勢はAI・ロボット・メタバースなど注力、SKはAI半導体企業のSAPEONを米国に設立

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2022年2月28日~3月3日、世界最大級のモバイル関連の展示会「MWC Barcelona 2022」が「Connectivity Unleashed」をテーマにリアルイベントとしてスペイン・バルセロナで開催された。韓国からはSamsung Electronics社、通信キャリア3社(SK Telecom社・KT社・LG Uplus社)、中小企業53社、スタートアップ51社が出展した。

 Samsung Electronics社はスマートフォンやスマートウオッチなどGalaxyブランドのデバイスによるコネクティビティを体験できるようにした。韓国で2月25日に発売したスマートフォンの新しいフラッグシップモデル「Galaxy S22」シリーズ、2月27日に発売したタブレットPC「Galaxy Book」シリーズを中心に、デバイスに搭載したAI機能を強調した。Galaxy S22は4nm世代の技術で製造したSoCを搭載したことでAIに関わるNPU(Neural Processing Unit)の機能を向上。カメラもAIソフトウエアの機能向上でよりよくなった。

 章恩(ITジャナリスト)

 

《日Robo》

2022.3 .

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00097/

CESでSamsungやLGが最新ロボットを出展、メタバースと組み合わせた提案も

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 米国ラスベガスで2022年1月に開かれた世界最大級の家電IT見本市「CES 2022」では米国の次に出展企業が多かった韓国。1973年に当時の金星(現LG Electronics社)が白黒テレビを展示したのが韓国企業による初めてのCES参加。約50年後の2022年は史上最多の502社が参加した。CES Innovation Awardsの632件のうち139件を韓国企業が受賞し、受賞最多国にもなった。

  ただし、良いニュースばかりではなかった。CES 2022に参加した韓国企業の社員らが米国で新型コロナウイルス(COVID-19)陽性となり通常の航空便に搭乗できなくなる事態も発生した。社員らをチャーター機で帰国させたSamsung Electronics社は「韓国技術の優秀性を広く知らせるため(参加の)決断をしたが、感染者が出てしまい申し訳ない」と韓国メディア経由で謝罪までしたほど、COVID-19の影響を受けた展示会になってしまった。


 章恩(ITジャナリスト)

 

《日Robo》

2022. 2.

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00095/

Samsungが組織改編でロボット事業チーム新設、NAVERは5Gロボットフレンドリービルが完成目前

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 2021年12月12日、Samsung Electronics社が大々的な組織改編を発表した。消費者家電、IT・モバイル・映像ディスプレー・医療機器・ネットワーク事業部門をDX(Device eXperience)部門に統合。2021年初めに消費者家電事業部門の傘下に新設した「ロボット事業化タスクフォース」を「ロボット事業チーム」に格上げし、DX部門長直属組織にした。

 Samsung Electronic社によると、組織改編の狙いはユーザーにとって最大の価値を提供すること。コロナ禍以降重視されるようになったユーザー一人ひとりの趣向とライフスタイルを繊細に反映しながら、デバイス同士が滑らかにつながる技術を確保することを重視し、身の回りにSamsung Electronics社のデバイスが増えるほど日常が楽で豊かになるよう、組織の境界を越えた技術融合とシナジー効果を出すことだという。「New Samsung」、「One Samsung」をキャッチフレーズに、Samsung製デバイスのエコシステムを拡大するビジネスモデルを積極的に育成すると意気込む。

 章恩(ITジャナリスト)

 

《日Robo》

2022. 1.

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00093/

韓国の半導体人材10万人育成方針に教育界が異論、画一化への懸念

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韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が公約した、半導体人材を10万人育成する方針を巡って、韓国内が揺れている。産業界が賛同する一方、教育界からは異議を唱える声が噴出しているからだ。なぜ教育界が反発するのか。そこには韓国における大学の首都圏一極集中や、教育画一化への懸念など、さまざまな問題が横たわっている。


 複数の韓国メディアによると尹大統領は2022年6月7日(現地時間)、日本の文部科学省に相当する韓国・教育部(部は省に当たる)の次官に対し、半導体人材10万人育成の達成に向けて韓国の首都圏にある大学の半導体学科の定員を増やすよう求めた。しかし次官は「地域で均等な発展を目指すために、同大学の入学定員を制限している」と説明。それに対し尹大統領は「国の未来がかかっている」と、次官の説明を一蹴したという。尹大統領の方針を受けて早速に教育部は、同大学の半導体学科の定員を増やす方向で動き始めた。

 同大学は、首都圏への一極集中を避けるため、1982年に制定された首都圏整備計画法に基づいて定員を制限している。過去に何度も先端産業の人材不足を解消するために、半導体学科などの定員を増やす議論があった。しかし韓国では急速に少子化が進み、首都圏の大学定員を増やすと地方大学に学生が来なくなるという懸念から、これまで規制緩和には至っていない。

学生に大人気の「契約学科」、企業が学生の生活費まで支給

 韓国の大学では、企業が大学運営の参画し、場合によっては学生の生活費支援や就職を保証する「契約学科」と呼ばれる仕組みが急速に広がっている。企業にとっては、求める人材を学生時代から育て、即戦力として採用できるメリットがある。尹大統領による半導体学科の定員増方針は、契約学科の定員数を増やすことにもつながり、産業界からは歓迎の声が聞こえる。

 韓国の大学で半導体学科が創設されたのは2006年、韓国成均館(ソンギュングァン)大学校が開設した半導体システム工学科がその始まりだ。成均館大学校はソウル市に本部を置く私立大学であり、1996年から韓国Samsung(サムスン)グループが大学運営に参加している。

 サムスングループは1996年から2015年までの20年間、半導体やディスプレー、医療分野の人材育成のため、成均館大学校に対して1兆5000億ウォン(約1570億円)を支援。この時、成均館大学校に新設された学科の一つである半導体システム工学科が、契約学科の先駆けである。

 契約学科は、企業が学科運営費の50%以上を負担する条件で新設できる。成均館大学校の半導体システム工学科は学生に対する手厚い待遇で有名だ。

 大学時代の4年間にわたって奨学金と生活費(学業奨励金)を支給するほか、1年生の夏休みに無料で海外研修も実施する。一方で、2年生の終わりになると、サムスングループの入社試験(職務適性検査)や面接などを受けることになる。合格すると卒業後に、サムスングループへと入社できる契約を結べる。

 優秀な成績を収めた学生は、サムスングループの支援を得て、大学院へと進学する道も開ける。同学科の大学院は、Samsung Electronics(サムスン電子)に長年在籍した研究員や米国から招聘(しょうへい)した教授などが講義し、厳しく指導する。

 サムスングループは延世(ヨンセ)大学校でも契約学科の運営を始めた。さらに浦項工科大学校(POSTECH)や国立の韓国科学技術院(KAIST:Korea Advanced Institute of Science and Technology)でも契約学科をつくる計画だ。

 ここにきてサムスングループに続き、韓国の大手企業がこぞって契約学科の新設に乗り出している。

 サムスン電子と並ぶ半導体大手の韓国SK Hynix(SKハイニックス)は、高麗(コリョ)大学校と漢陽(ハンヤン)大学校に半導体工学科の契約学科をつくる契約を結んだ。

 韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と韓国SK on、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)という韓国の大手バッテリー3社も、2021年から契約学科の運営を始めている。韓国Hyundai Motor(現代自動車)や韓国LG Display(LGディスプレー)といった企業も同様だ。

 学生の就職難が課題になっている韓国では、奨学金がもらえて就職も保障されている契約学科は大人気であり、成績優秀者が集まるようになっている。

 ただし2022年入学の半導体関連の契約学科定員数は約150人。2021年に契約を結んだ大学があるため、2023年入学の定員数は約360人に増える見込みだが、狭き門であることに変わりはない。

 企業にとっても半導体業界の慢性的な人材不足を解消するためには、現在の契約学科数の定員では到底足りないという認識だ。韓国半導体産業協会は、サムスン電⼦とSKハイニックスの⼤規模な⽣産設備拡⼤の推移からして、年間3000⼈の人材が不足すると見込んだ。


 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022.6 .

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00062/

サムスンなど韓国財閥110兆円投資の中身、新政権へ「ご祝儀」の本気度

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韓国Samsung(サムスン)グループや韓国Hyundai Motor(現代自動車)グループなど韓国財閥大手11社は2022年5月末までに、合計で1060兆ウォン(約110兆円)という大規模な投資計画を発表した。韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任し、新政権が発足したことに合わせた「ご祝儀」だ。技術優位を守るための、研究開発や生産拡大の投資が多い。ご祝儀に終わらず、どこまで韓国経済を活性化できるのか。

 韓国財閥大手は、新たに大統領が就任するたびに新政府の基調に合わせた投資計画を発表する。進歩派といわれる大統領が就任した場合、中小企業を優先した政策を重視する傾向がある。一方で保守派とされる大統領が誕生した場合、大手企業を優先する政策を重視する。

 2022年5月に就任した尹大統領は保守派といわれる。大手企業が経済成長をリードするとして、企業の税負担を軽くする公約を掲げている。大手財閥はその期待を込めて、大きな投資計画を発表したとみられる。

 韓国の経済団体である大韓商工会議所が2022年5月に公開したアンケート調査によると、韓国企業322社のうち約73%が新政権の経済政策を「期待する」と答えた。期待する理由について、新政権の「企業重視の政策」「規制改革の意思を見せている点」と答えた割合が多かった。新政権の経済政策が成功するためには「未来のための投資、インフラ支援」「規制改革による企業のイノベーション誘導」という意見が目立った。そのため韓国内では、財閥大手の大規模な投資計画は、政府支援への期待を込めた発表という見方が強い。

サムスンは半導体に31兆円投資、米国との関係強化へ

 韓国財閥大手の中でも最も大きな投資計画を発表したのは、サムスングループと韓国SKグループである。

 サムスングループは2022年5月24日、今後5年間で半導体やバイオ、AI(人工知能)と次世代通信に450兆ウォン(約46兆円)を投資すると発表した。今回の投資は「国家核心産業の競争力を1段階アップグレードすると同時に、社会全般に躍動を吹き込むためだ」と説明した。サムスングループの2017年から2021年までの5年間の投資額は、約330兆ウォン(約34兆円)であるため、36%増の投資計画となる。

 450兆ウォンのうち、300兆ウォン(約31兆円)を半導体分野に充てる。世界トップのメモリー半導体の強みを維持しながら、システム半導体とファウンドリーで台湾TSMC(台湾積体電路製造)を追い越し、2030年にメモリー以外も含めた半導体市場で世界トップを目指す。

 新素材や新構造研究開発の強化のほか、高性能・低電力AP(Application Processor)、5Gや6G通信モデムチップ事業に必要なファブレスの競争力も確保する。この他、高画質イメージセンサーの開発や、ファウンドリー分野では3nm世代以下の早期量産に力を入れる。

 サムスングループは米国との協力関係も強化する。2022年5月20日、韓国を訪問したバイデン米大統領は、到着後最初の訪問先として平沢市にあるSamsung Electronics(サムスン電子)の半導体工場を選んだ。バイデン氏は、米国を中心とした半導体供給網の構築に、サムスン電子をはじめ韓国側の協力を求めたとみられる。

 歴代の米大統領は、就任後にアジアを訪問する際、日本を最初の地としていた。韓国の証券業界は、バイデン氏が今回、韓国それもサムスン電子の半導体工場を最初の歴訪地として選んだ理由は、米国にとってサムスン電子の半導体が経済安全保障上、重要であるからだと分析している。

 韓国政府は2022年6月にも、「半導体超強大国」をキャッチフレーズに大々的な半導体産業の支援策を発表すると予告している。韓国メディアは、サムスングループの投資計画は、企業がこれくらい投資するからには、政府も何かしら支援しなくてはならない、という世論づくりが狙いとみている。

 長らく噂されてきたサムスン電子の大型M&A(合併・買収)も、いよいよ具体化するのではないかという報道もある。サムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏は2022年7月、巨大IT企業のCEO(最高経営責任者)や投資家を招待するイベント「Allen & Company Sun Valley Conference」に6年ぶりに参加する。これはM&A発表への布石ではないかといわれている。

 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022. 6.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00061/

韓国での動画配信と放送の見られ方 OTTとドラマ競争の末、地上波民放の利益増

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OECD Digital Economy Outlookによると、韓国は加盟国中FTTH普及率が最も高く、モバイルデータ使用量も1位。世界初のスマートフォン向け5Gサービスを開始するなどICT利活用が進んでいる。放送分野も世界に先駆け、1990年代後半から”オンエア”(同時配信)や”ダシボギ”(番組の見逃し配信)を開始。テレビ受像機を保有しない傾向が強まった”ゼロテレビ”危機を乗り越え、ネットフリックス、Disney+、AppleTV+といったグローバルOTTと競争しつつ成長してきた。

韓国放送通信委員会の「2021放送媒体利用調査」によると、全世帯の約95%が地上波放送を再送信するセットトップボックス経由有料放送(ケーブルTV、IPTV、衛星放送など)に加入。OTT(動画配信サービス)利用率は約70%となっている。個人のスマートフォン保有率は全世代で93.4%、60代は91.7%、70代以上は60.1%であり、週5日以上スマートフォンを利用する人は91.6%で、テレビ受像機の73.4%より多かった。このような流れから韓国人にとって日常に欠かせない媒体は15年からテレビとスマートフォンの位置が入れ替わり、21年にはスマートフォン70.3%、テレビ27.1%の割合で必需媒体と認識されるようになった。22年の韓国放送産業の特徴は、民放の営業利益が大幅増益に返り咲いたことである。地上波放送局の放送事業による売上はここ10年で減り続けていた。韓国での動画配信サービスと放送の見られ方から、その秘訣を探る。

世界上位に入る作品群

韓国では1995年、公共放送のKBSを皮切りに地上波放送局がプラットフォームを開設。インターネットサービスを専門とする子会社を設立し、オンエアとダシボギ、見えるラジオ(スタジオ生中継)、クリップ動画サービスなどを積極的に提供していた。98年からは家庭でも安い費用でブロードバンドとパソコンを利用できるようになり、見たいときに見たい番組を有料で楽しむ文化がいち早く根づいた。好きな番組を見るための支出に躊躇しない視聴者が多いことから、地上波放送局対OTT、ネットフリックス対韓国勢OTTのオリジナルドラマ競争も激しい。ネットフリックスは2016年に韓国へ進出してから、韓国ドラマ制作に20年までに7,700億ウォン、21年5,500億ウォン、22年は1兆ウォンを投資すると発表。「韓国ドラマは米国ドラマの4分の1程度の制作費なのに世界中のランキングで上位に入る」として投資を増やし続けている。

韓国勢OTTも”打倒ネットフリックス”とばかりに年間1兆ウォン以上を投資してオリジナルドラマを制作し続けている。韓国だけでなく世界の視聴者に受け入れられる作品を目指しており、作品のジャンルも豊富で特殊効果や映像美もレベルアップしている。

トラフィック負担めぐる論争も

地上波民放は多額の制作費を投入するOTTに負けないため、ドラマの制作本数を減らす代わりに一つの作品にかける制作費を、外部投資を誘致し大幅増額した。また、テレビ放映開始と同時に自社プラットフォームでダシボギを提供し、どのタイミングでどのハイライト場面をSNSに投稿し盛り上げるか工夫。映像配信もOTTとユーチューブを使い分け、韓国だけでなく海外ファンも獲得した。韓国地上波3社(KBS・MBC・SBS)のユーチューブチャンネル登録者数は22年5月時点で1.4億人超。地上波放送局でありながら、ユーチューブでしか視聴できないオリジナルバラエティ番組も多数制作するようになった。

こうした成果が反映され、MBCとSBSの21年営業利益は大幅黒字となった。テレビ広告は減少しても、OTT経由の売上は順調に伸びているからだ。競争から生まれた「イカゲーム」「愛の不時着」「梨泰院クラス」「社内お見合い」などのドラマは海外でも記録的なヒットとなった。韓国のWEBTOON(紙ではなくネットで連載するマンガ)などの映像化も活発で、K-POPアイドルを起用する1話10分程度のウェブドラマもヒット作が増えている。韓国のOTTが海外に進出し現地でドラマを制作する流れも出てきた。

22年末にはアマゾン・プライム・ビデオとHBO MAXが韓国に進出するのではないかと言われている。海外OTTと韓国OTTのさらなるコンテンツ競争で、韓国視聴者を楽しませてくれそうだ。ただし、韓国ではOTTとISP(インターネットサービスプロバイダ)の間でトラフィック負担をめぐる論争も起きている。大量のトラフィックを誘発するコンテンツプロバイダーもネットワークインフラ投資に責任を持つべきという考えが広がっており、国会で電気通信事業法の改定議論が行われている。韓国の事例が、また海外にも影響を与えそうだ。


 章恩(ITジャナリスト)

(民放online)

2022.6.

-Original column

https://minpo.online/article/-ott.html

アップル天下の日本でサムスン躍進、スマホシェア拡大に韓国歓喜

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米Apple(アップル)がスマートフォン(スマホ)シェア過半を占める「iPhone天国」の日本で、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)のシェアが上昇している。アップルや中国勢との競争に脅かされるようになってきた王者サムスン電子にとって、これまでシェアが少なかった市場の攻略が欠かせない。最後の激戦地になるとみられるのは中国市場だ。

 韓国メディアは2022年5月中旬、「アップル天下の日本で、サムスン電子が約10年ぶりにスマホのシェアを獲得した」と大きく報じた。調査会社である米Strategy Analytics(ストラテジーアナリティクス)が発表した調査結果を引用し、「22年1〜3月の日本におけるサムスン電子のシェアが13.5%に高まり、2位に浮上した」などと書いた。

 ストラテジーアナリティクスの調査によると、日本におけるサムスン電子のシェアは、12年に15%弱を確保して以降、16年には3%台まで下落した。今回のサムスン電子のシェアは約10年ぶりの水準であり、韓国メディアは大いに盛り上がっている。

 同調査による22年1〜3月の日本市場におけるシェア1位はやはりアップルだ。6割近いシェアを維持している。それでも韓国メディアは「韓国製スマホの墓場」ともいわれる日本市場でシェアを拡大したサムスン電子を偉業としてたたえている。

 サムスン電子が日本市場で確保した13.5%というシェアには、世界で人気を集めている同社の最新フラッグシップスマホ「Galaxy S22シリーズ」の影響は含まれていない。日本市場において同機種は22年4月の発売であり、調査期間中は未発売だったからだ。そのため22年4〜6月以降の日本市場において、サムスン電子のスマホシェアは、さらに伸びるという展望もある。

 サムスン電子が日本でシェアを伸ばせたのは、地道なプロモーションの成果だろう。17年からスマホ本体の「Samsung」ロゴを消し、ブランド名の「Galaxy」のみを表記するように変えた。さらに19年には東京・原宿に世界最大規模の体験施設「Galaxy Harajuku」をオープンした。人気K-POPグループ「BTS」を起用したキャンペーンも日本で浸透している。

 KDDIが22年3月末に3Gサービスを終了し、スマホを求めるユーザーが増えた点もサムスン電子にとって追い風になった。

 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022. 5.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00060/