「アップルの下請けはお断り」、プライド優先させた現代自動車

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 米Apple(アップル)の電気自動車(EV)「アップルカー」を韓国Hyundai Motor(現代自動車)が生産するという話は、どうやら頓挫したようだ。現代自動車と傘下のKia Motors(起亜自動車)は2021年2月8日、「我々はアップルと自動運転車の開発に関する協議をしていない」とのコメントを発表した。アップルの下請けになるのは、現代自動車にとって受け入れがたい選択だった。


英Reuters(ロイター)が「24年を目標にアップルが自動運転EVを開発している」と報じたのをきっかけに、このアップルカーをどこが生産するかに関心が集まり、「アップルが現代自動車と交渉している」「アップルが起亜自動車に4兆ウォンを投資する」といった報道が相次いでいた。しかし、現代自動車グループが否定したことで、アップルカーを巡る狂騒は新たな展開を見せようとしている。


結果的には得をした?

 ただし、現代自動車グループが候補から完全に外れたと判断するのは早計かもしれない。韓国では、声明に出てくる文言が「EV」ではなく「自動運転車」となっていることから、協議は打ち切られたのではなく主導権争いのために一時的に中断しただけとの見方もある。仮に協議が物別れに終わったとしても、現代自動車グループはアップルのパートナー候補に選ばれるくらい技術力があると全世界にアピールできたので、結果的に得をしたのではないかという意見もあった。

 現代自動車や起亜自動車の株価はアップルカー関連報道が出るたびに上昇していたが、2月8日のコメント発表後は急落した。しかし、翌9日にはEV新型車への期待から現代自動車の株価は再び上昇した。

 2月9日には、起亜自動車がオンラインの投資家向けイベント「CEO Investor Day」で中・長期戦略を発表。独自ブランドで勝負する姿勢を強調し、「クルマを製造・販売する会社から顧客に革新的なモビリティー経験を提供するブランドになる」と宣言した。現代自動車グループのEV専用プラットフォーム「Electric-Global Modular Platform(E-GMP)」を適用した7車種を26年までに公開し、30年に年間88万台以上のEV販売を目指す。

 さらに、EVをスマートフォンのようなスマートデバイスとして使えるように、インフォテインメントを強化し、搭載するソフトウエアをユーザーが選択できるにする。21年3月に公開するEV(コードネーム「CV」)には、自動運転レベル2(部分自動運転)に当たる自動運転技術「HDA2(Highway Driving Assist 2)」を搭載する。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021.2 .

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00026/

サムスンがテスラと5nm半導体開発か、買収候補にはルネサスも]

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車載半導体不足で世界の自動車メーカーが生産停止するなど、深刻な問題が起きている。そんな中、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は車載半導体への投資を加速させている。同社は米Tesla(テスラ)との連携を深め、最先端プロセスの半導体生産で先行する台湾積体電路製造(TSMC)を追撃する構えだ。

 2021年1月25日、韓国メディアは、サムスン電子のファウンドリー事業部とテスラが5nm EUV(極端紫外線)プロセスのIVI(In-Vehicle Infotainment)用半導体を開発していると報じた。これまでテスラはIVIに米Intel(インテル)の「Atom」系プロセッサーを使っていたが、それをサムスン電子との共同開発品に切り替えるのではないかと予想されていた。

 サムスン電子がテスラとの連携を深めようとする背景には、半導体受託生産を巡るTSMCとの激しい競争がある。

 サムスン電子は現在、テスラの自動運転コンピューター「Hardware 3.0(HW3)」の半導体を生産している。この半導体は、米国オースティン工場の14nm フッ化アルゴン(ArF)プロセスで生産している。ところが、HW3の次世代版であるHW4の半導体は、TSMCが7nmプロセスで生産すると報道されている。

 つまり、サムスン電子にとってテスラに5nmプロセスを訴求することは、IVI用半導体にとどまらず自動運転用半導体の生産も受託するために重要なのだ。ただし、テスラはEVの電力効率向上に向けて、7nmの次は5nmを飛ばして3nmを採用するのではないかとの分析もある。サムスン電子とテスラが共同で5nmプロセスの半導体を開発しているとしても、車載半導体で覇権を握るのは、サムスン電子とTSMCのうち3nmプロセスの量産で先行したほうだろう。

 台湾の調査会社である集邦科技(TrendForce)によると、20年10~12月における半導体ファウンドリーの市場シェアはTSMCが55.6%で圧倒的な1位、サムスン電子が16.4%で2位だった。21年の市場シェア予測も、TSMCが54%、サムスン電子が18%と、差は大きい。ただし、10nm以下の微細プロセスでは、TSMCとサムスン電子の比率が6対4と、差が縮まるという。

 サムスン電子は、18年10月にプロセッサーとイメージセンサーを発表して車載半導体事業を強化すると宣言して以降、自動車メーカーへの売り込みを進めてきた。19年1月に、ドイツAudi(アウディ)にIVI用半導体「Exynos Auto V9」の供給を開始。20年1月には、米Harman International Industries(ハーマン・インターナショナル・インダストリーズ、17年に買収完了)と共同開発した5G(第5世代移動通信システム)対応のテレマティクス制御ユニット(TCU:Telematics Control Unit)が、ドイツBMWの電気自動車(EV)「iNEXT」(21年発売予定)に採用された。サムスン電子は、先進運転支援システム(ADAS)やIVI、テレマティクスなどの分野を中心に攻勢をかけている。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021.2 .

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自動運転EV「アップルカー」は薬か毒か、試される自動車メーカー

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 2020年1月8日、韓国メディアは一斉に、韓国Hyundai Motor(現代自動車)と米Apple(アップル)が自動運転機能を持つ電気自動車(EV)「Apple Car(アップルカー)」の生産に向けて協議していると報道した。各社の報道内容をまとめると、アップルが現代自動車に対して24年までに米国の工場で30万台の生産を提案し、両社は協議を進めてきたという。報道直後、現代自動車の株価は20%ほど急騰した。

 現代自動車は当初、アップルと協議中であることを認めたものの、同日の公示で「多くの企業から自動運転EVに関する共同開発の協力要請があったが、現時点で決まったことはない。確定し次第、あるいは1カ月以内に再公示する」と発表した。その後も同社の株価は上昇し、1月12日になってやっと落ち着いた。

 韓国証券業界の分析は「アップルとの協力は現代自動車にとって新たな市場を作る絶好のチャンス」と「アップルの下請けに転落する」の真っ二つに分かれた。両社はどのような形で協力するのか、それとも協力しないのか、2月8日の現代自動車の再公示が注目されている。

 英Reuters(ロイター通信)など複数の報道によると、アップルは24年の自動運転EV生産を目標に複数の自動車メーカーと協議している。同社は14年から「Project Titan」という名称のEV開発プロジェクトを進めており、一時中断を経て19年に再びプロジェクトを加速させたという。

 現代自動車は20年12月、EV専用プラットフォーム「Electric-Global Modular Platform(E-GMP)」を公開した。800Vの高圧充電に対応しており、18分以内に80%充電できる。1回のフル充電で最大500㎞、5分の充電で最大100㎞の走行が可能だ。21年発売予定の中型CUV(クロスオーバー・ユーティリティー・ビークル)「IONIQ 5」を皮切りに、22年発売予定の中型セダン「同6」や、24年発売予定の大型SUV(多目的スポーツ車)「同7」に適用する。アップルが現代自動車を協業相手として選んだのは、このE-GMPがあるからともいわれている。

24年にレベル4以上の自動運転か

 韓国証券業界で現代自動車とアップルの協業をチャンスと分析する側は、現代自動車がアップルカーの生産を率先して引き受けることで、競合が躍進する芽を摘み、EV事業を軌道に乗せられるとみる。さらに、最初のパートナーに名乗りを上げれば、現代自動車はアップルの下請けにならず、対等の関係を築けるとの見方もある。協業によって両社は24年にレベル4(一定の条件下で無人運転が可能)以上の自動運転EVを生産できると期待する。

 両社の協業は、電池の開発も含むとみられる。アップルにとってEVでの強敵は米Tesla(テスラ)であり、同社と価格でも張り合うには電池コストの低減が不可欠だ。アップルがリン酸鉄リチウムイオン電池を開発中との報道もあった。現代自動車も全固体電池の研究を進めているほか、韓国電池大手のLG Energy Solution(LGエネルギーソリューション)、Samsung SDI(サムスンSDI)、SK innovation(SKイノベーション)の3社とも緊密な関係にある。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 1.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00024/

サムスン、LGのIoT家電戦略 力点はスマートホームへ [現地レポート:韓国編]

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毎年1月に米国で開催される、世界最大級のコンシューマーエレクトロニクス関連の展示会「CES」で、2016年からIoT・AI機能を搭載した家電をアピールしてきた、韓国の2大メーカー、サムスン電子(Samsung Electronics)とLG電子(LG Electronics)。両社が力を入れるIoT家電の最新事情や戦略について、ITジャーナリストの趙 章恩氏に現地から報告してもらう。

 韓国では長年、「家電はLG」という認識が一般に定着していた。スマートフォン(スマホ)は、世界トップシェアのサムスン電子の「Galaxy」シリーズを使う人が圧倒的に多いが、冷蔵庫や洗濯機といった生活家電は丈夫で長持ちするとしてLG電子が人気だ。LG電子は2020年8月、前身の金星社時代に販売した電子レンジの最も古いモデルを持っている人を探すキャンペーンを実施、勝者3人に最新のキッチン家電3種をプレゼントした。

 LG電子はこれまで、韓国初の家電を数多く発売してきた。古くはラジオ、白黒テレビ、家庭用エアコン、洗濯機、電子レンジ、キムチ冷蔵庫など。この10年ではロールアップ型のOLED(有機EL)テレビや衣類管理機など、従来は存在しなかった市場を生み出した。「家電はLG」から「プレミアム家電はLG」へ、多機能・高級化戦略が目立つ。

 しかし最近は、サムスン電子の追い上げが激しい。テレビは既に世界市場でも韓国市場でもサムスン電子の方がシェアが高く、エアコン、洗濯機、乾燥機など生活家電では両社とも4割ほどのシェアで韓国市場を二分している、という報道もある。

「家電を私らしく」

 家電では後発のサムスン電子は1990年代後半から「デザイン」を重視する戦略を採ってきた。デザインだけでなく、家電とスマホ、AI・IoTでユーザーの利便性を高められるよう、ハードウエアとソフトウエアをつなぐ融合デザインも重視してきた。

 2019年には「Project PRISM」と名付けた戦略によって生活家電を一新した。同年6月には、光がプリズムを通ると虹色に光るように、ユーザーがカラーも素材も機能も好きなように組み合わせることができるオーダーメード家電「BESPOKE」シリーズを発売した(図1)。冷蔵庫、キムチ冷蔵庫、食洗器、オーブンなど、まずはキッチン家電を展開している。ソウルのロッテデパート本店、新世界デパート江南店など、サムスン電子製品を取り扱うどの売場に行っても、最も面積を占めているのはBESPOKEという力の入れようだ。

 BESPOKEは「BE+SPEAK」で「言う通りになる」という意味が込められている。外側パネルの材質は9種類から選べる。冷蔵庫は1ドアから4ドアまであり、2ドア+1ドアまたは4ドア+2ドアといった具合に、自宅のキッチンのサイズに合わせて自由に組み合わせられる。

 BESPOKEが追及するのは、製造より創造(Creation)、標準化より個人化(Customization)、そして異業種との協業(Collaboration)である。ターゲットは個性を追求したいミレニアム世代(1980年~94年生まれ)。韓国のこの世代はコストパフォーマンスより心を満たす消費を重視する傾向が強く、自分が満足できるのであれば価格にはこだわらない。

 「家電を私らしく」という同社の戦略は当たった。2020年上半期に売れた同社製冷蔵庫の6割はBESPOKEシリーズだった。韓国では単身世帯の増加により、丈夫な家電よりデザイン優先、AI・IoTでユーザーが操作しなくても機器が状況を判断して空気をきれいにしてくれたり、アプリケーションでモニタリングや操作ができたりする、付加機能を重視する傾向が出始めていた。

 そこに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で「ステイホーム」の時間が長くなり、キッチン家電の需要が伸びた。レジャーや旅行にお金を使えない分、自己投資として自宅のリフォームやインテリアを一新することが流行った。デザインなどを自由に選べるサムスン電子のオーダーメード家電がマッチしたのだ。BESPOKEは既に、韓国・米国・欧州・中国・インドで意匠権を68件登録済み。2021年は種類を増やしてエコシステムを築くとしている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経 ELECTRONICS》

2021.1 .

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00068/00006/


韓国で盛り上がるウエアラブルロボット、商用化に向けLG社やSamsung社も積極投資

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でソーシャルディスタンスを保つことが日常になり、人の代わりに働くロボットの活躍が目立つ。韓国・ソウルではバリスタロボットや調理ロボットをよく見かける。他にも、大手企業や役所は人の体温とマスク着用を監視する防疫ロボットを、大学病院は検体を運ぶロボットを積極的に導入している。

 最近は、障害者の歩行を補助する装着型(ウエアラブル)ロボットも注目されている。2020年11月に開催された障害者スポーツ大会「CYBATHLON 2020」おいて、外骨格型パワードスーツを使った歩行レース「Powered Exoskeleton Race(EXO)」で韓国チームが1位になったこともあり注目された。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2021. 1.

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00069/

LGがEV用新型電池の量産を前倒し、テスラ向けにNCMA正極採用

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韓国LG Chem(LG化学)の電池部門を分社したLG Energy Solution(LGエネルギーソリューション)が2020年12月1日、創立総会を開催し事業を始めた。電気自動車(EV)用新型電池を米Tesla(テスラ)などに前倒しで供給し、市場シェア1位を維持するための勝負に出る。

航続距離を600kmに

 同月16日、LGエネルギーソリューションがEV用新型電池を21年第2四半期に量産するとの報道があった。その新型電池は、ニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム酸リチウム正極(NCMA正極)を採用したリチウムイオン電池(NCMA電池)だ。ニッケルの比率が90%と多く、価格高騰や児童労働といった問題が付きまとうコバルトは5%以下に抑えた。アルミニウムを加えることで、安定性を強化している。このNCMA電池をEVに使えば、航続距離を600kmまで延ばせるという。

 NCMA電池の供給先は、テスラと米General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)である。NCMA電池の生産開始は22年前後とみられていたが、EVの航続距離に対する要求が高まったことでLGエネルギーソリューションが量産前倒しを決定した。電池メーカー間の争いが激化していることも背景にある。

 韓国の市場調査会社SNE Research(SNEリサーチ)によると、20年1~9月に世界で車両登録されたEVの電池搭載量(容量ベース)は80.8GWhと、前年同期から1.3%減少した。新型コロナウイルス感染症の世界的流行で需要が伸び悩んだ中、LG化学は前年同期比127%増の19.9GWhと供給量を大幅に増やし、シェア1位だった。しかし、2位の中国・寧徳時代新能源科技CATL(同12.0%減の19.1GWh)や3位のパナソニック(同22.8%減の15.8GWh)との差は小さい。韓国勢のSamsung SDI(サムスンSDI)とSK innovation(SKイノベーション)も追い上げている。さらに、電池内製化を打ち出して22年に100GWhの生産目標を掲げるテスラの存在も、競争に拍車を掛けている。

 LG化学とGMが合弁で設立した米Ultium Cells(アルティウムセルズ)でもNCMA電池の開発を進めており、やはり21年中の量産開始を目指している。同社は20年11月、技術者約1100人の採用告知を出した。同社の工場で生産したNCMA電池は、GMの新型車(EVピックアップトラック)に搭載するという。当初計画では22年の量産開始だったが、韓国メディアは、GMがテスラを意識して前倒ししたのではないかと見ている。

NCMA正極材の調達ルートを確立

 LGエネルギーソリューションはNCMA正極材を2社から調達する。テスラ向けは韓国L&F、GM向けは韓国Posco Chemical(ポスコケミカル)である。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 1.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00023/


電池や半導体で激化する日韓特許紛争、韓国は政府が企業支援

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 2次電池などの先端技術分野で、日韓企業の特許紛争が増えている。今後は、韓国が国産化を推進する半導体製造用材料でも同様の争いが広がるとの見方も出てきた。韓国は、主に中小企業を対象とした支援機関を新設し、将来的な特許紛争の激化に備えようとしている。

輸出管理厳格化がきっかけ

 韓国特許庁(KIPO)は2020年11月27日、ソウル市江南区の韓国知識財産保護院内に「知識財産権紛争対応センター」を開所した。KIPOは、「日本など海外企業の特許攻撃に備えて韓国の輸出企業を支援する知識財産権の紛争専門組織を発足させた」「素材・部品・設備の国産化を進める過程において源泉となる特許を多数保有する日本企業と韓国企業の間で特許紛争が起こる恐れがある」「紛争対応に脆弱な中小企業への支援が必要であることを認識した上でセンターを運営しなければならない」などのコメントを発表した。

 同センターは、韓国Korea Advanced Institute of Science and Technology(KAIST)の諮問団と協業し、主に中小企業の特許紛争を積極的に支援する。諮問団は、KAISTの教授ら約100人が素材・部品・設備の国産化に向けて中小企業の技術開発を促進するために設立した組織である。19年夏に日本政府が半導体製造用材料3品目(レジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミド)の輸出管理を厳格化したことが、設立のきっかけになっている。

 KIPOは同年8月に「輸出規制対応知識財産権支援団」を発足し、日本の輸出管理厳格化による素材・部品・設備関連の中小企業への影響を調査し続けてきた。そして、20年7月に産業通商資源部(韓国の部は日本の省に相当)と「知識財産権基盤産業政策樹立のための民官協議会」を共同で開催し、素材・部品・装備に関連した特許を活用した技術開発の成果を共有するともに、知識財産の活用で成長している中小企業のニーズに応えるべく、特許のビッグデータ分析で研究開発の方向性を助言するなど、技術開発を促進してきた。中小企業の研究開発は、従来の実績や社内専門家の経験に依拠していることが多いが、ビッグデータ分析によって思いがけない方向性を見つけるのに役立っているという。他にも、中小企業が特許を担保に融資できる金額を拡大するなど、知的財産権重視の施策を取ってきた。

 新設の知識財産権紛争対応センターは、こうした支援体制をさらに強化する施策である。主な業務は(1)素材・部品・設備に関連した特許紛争へのワンストップ支援、(2)KAIST諮問団との協業による特許紛争支援、(3)海外での韓国ブランド侵害の防衛支援、の3つである。

 特許紛争に関しては、これまで主に米国企業によるものが監視対象だったが、その対象を日本や欧州、中国にも拡大する。さらに、紛争の内容についても特許侵害訴訟に限定せず、無効審判や異議申し立ての情報も収集する。

 韓国の中小企業に対する特許侵害訴訟や無効審判、異議申し立てがあった場合、各企業に合わせたプログラムに基づいて支援する。対象企業は、素材・部品・設備関連を優先する。従来は監視組織と支援組織が分かれていたことから連携に時間がかかっていたが、新設の知識財産権紛争対応センターでは、監視から戦略策定まで一連の支援策をワンストップで提供する。支援期間は最大3年。費用は年間1億ウォン(約950万円)以下とすることで、中小企業の負担を軽減する。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020.12 .

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00022/


Samsungは「人間中心AI」「オンデバイスAI」に注力、SK Telecomはデータセンター向けAI半導体を公開

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2020年11月、韓国ではAIやロボットに関連したイベントが目白押しだった。

 同月2、3日にSamsung Electronics社の研究開発組織が開催した「Samsung AI Forum 2020」では、主に海外のAI専門家が研究成果を発表(図1)。新型コロナウイルスの感染拡大で急変した人々の生活をAIが助けられるかを議論する交流の場となった。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2020. 12.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00067/


GMのEVもリコール、電池大手のLG化学が迎えた試練

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電気自動車(EV)用電池で高シェアの韓国LG Chem(LG化学)が試練を迎えている。同社製電池を搭載するEVが相次いでリコールとなり、さらに顧客の米Tesla(テスラ)が電池の内製化に本腰を入れ始めた。電池需要は増加が見込めるものの、戦略の見直しが必要になるかもしれない。

充電率を90%に制限

 米General Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)は2020年11月13日、17~19年モデルの5ドアハッチバックEV「Chevrolet Bolt EV」のリコールを発表した。火災事故防止のために、電池の充電率を90%以下に制限するソフトウエアを配布する。対象車両は、LG化学の梧倉(オチャン)工場で生産した電池を搭載していた。

 Chevrolet Bolt EVでは、20年11月までに米国で火災事故が5件発生していた。米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が調査を進めており、原因はまだ明らかになっていない。ただし、電池がある後部座席から発火したと推定する報道もあり、事故防止の観点からGMは自主的にリコールを決めたようだ。

 LG化学はGMのリコールに合意しており、両社は21年1月までの事故原因究明を目標としている。充電率を90%以下に制限するのはあくまで一時的な処置であり、原因究明後に所有者に対して最終的な解決策を提示するという。

 GMとLG化学は合弁で米国オハイオ州に世界最大級のEV用電池工場を建設している関係でもある。そのため、今回の問題についても積極的に協力して解決していくとみられる。

 LG化学の電池を搭載するEVでは、韓国Hyundai Motor(現代自動車)の「Kona Electric」も20年10月にリコールとなった。同車でも複数件の火災事故が起きていた。対象は17年9月~20年3月に製造したモデルで、電池管理システム(BMS:Battery Management System)をアップデートする処置を取った。アップデート後もセル間電圧の過度な偏差や急激な温度変化が認められれば、電池を交換するという。20年11月22日時点で、対象の約9割がアップデートを完了した。Kona Electricの火災事故も原因は調査中であり、火災の原因が電池であるという結論は出ていない。

 11月12日、Kona Electricの所有者173人は、現代自動車を相手に代金払い戻しまたは電池パックを含めた電池システム全体の無償交換を求める訴訟を起こした。原告は、「BMSアップデートはリコールといえない」と主張している。

 こうした苦境にありながら、LG化学の株価は最高値を更新した。11月13日に70万5000ウォンだった株価は、GMがリコールを発表した後の同月16日に67万7000ウォンまで下がったものの、同月26日には81万6000ウォンと、終値基準では初めて80万ウォンを超えた。時価総額も、韓国企業ではSamsung Electronics(サムスン電子)、SK hynix(SKハイニックス)に続く3位となった。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 12.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00020/


現代自にボストン・ダイナミクスは操縦可能か、交わる期待と不安

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ソフトバンクグループ(SBG)が傘下の米Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)を韓国Hyundai Motor(現代自動車)に売却するために協議中であると、米Bloomberg(ブルームバーグ)が2020年11月9日に報じた。この報道を受けて韓国では期待が高まる一方、現代自動車がボストン・ダイナミクスを本当に“操縦”できるのか不安視する声も上がっている。

 ブルームバーグの報道によれば、ボストン・ダイナミクスの売却額は最大で10億米ドル(約1050億円)だという。売却条件はまだ確定しておらず、交渉が決裂する可能性もある。現代自動車は韓国メディアに向けて「グローバル企業として常に多様な戦略的投資と提携の機会を模索している。しかし、(本件に関しては)何も決まっていない」とのコメントを発表した。

 ボストン・ダイナミクスは、SBG傘下のロボットメーカー。1992年に米Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学)発のベンチャーとして設立された。2013年に米Google(グーグル)が買収し、18年にSBGが買収した。現在はSBGの完全子会社である。2足歩行ロボット「Atlas」や4足歩行ロボット「Spot」を開発した会社として知られている。

 現代自動車の株主が参加するコミュニティーサイトでは、「ボストン・ダイナミクス買収は現代自動車にとってチャンス」「スマートモビリティーを目指す現代自動車とボストン・ダイナミクスの技術は相性がよい」という意見が多い。一方で、「グーグルもSBGも収益化できなかった会社を買収して大丈夫なのか」「ボストン・ダイナミクスの技術移転も含む契約内容なのか気になる」といった意見もあった。

自動車メーカーからの脱却を急ぐ

 現代自動車は最近、ロボティクスへの投資を進めている。ボストン・ダイナミクスの買収が現実となれば、Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)会長であるEui-sun Chung(チョン・ウィソン)氏が就任してから最初の大型買収となる。同氏は20年10月14日に首席副会長から会長に昇格した。現代自動車グループのトップ交代は、20年ぶりのことである。

 なぜ現代自動車によるボストン・ダイナミクス買収の話が浮上したのか。実は、チョン氏が会長に就任したときのあいさつに、その兆候があった。同氏は以下のように述べていた。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 11.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00019/