MWC 2023、韓国勢はAI・ロボットに重点 高性能メモリ技術やアライアンスで勝負

スペインのバルセロナで2023年2月27日~3月2日に開かれたモバイル業界最大級の展示会「MWC Barcelona 2023」。韓国からはSamsung Electronics社、通信キャリアのKT社とSK Telecom社など130社が出展した。5G・6Gの通信技術はもちろん、AI・ロボット・モビリティの展示に重点を置き、超高速モバイルネットワークで生活やビジネスがどう変わるかを体験できる展示が目立った。

 Samsung Electronics社はデバイスを中心に、同社が開発した半導体やAIサービスなどを見せた。話題のChatGPTをはじめ、多様な分野でAI、機械学習、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)などの技術が発展を続ける中、これらの性能を最大限引き出すためには大容量のデータを高速かつ効率的に処理・保存できるメモリが必須だ。ChatGPTのような対話型AIはリアルタイムで回答するため、必要な情報に迅速にアクセスできる高性能メモリが求められる。世界メモリ市場で大きな影響力を持つ同社は今回、AIと実生活をつなぐサービスをサポートできる高性能メモリとソリューション、AIの可能性を極限まで引き出せるように設計したというチップの展示に力を入れた。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2023. 4.  

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MWC 2023、韓国勢はAI・ロボットに重点 高性能メモリ技術やアライアンスで勝負 | 日経Robotics(日経ロボティクス) (nikkei.com)

政府の後押しでも伸び悩む韓国スマート農業、中東への「輸出」で活路を見いだせるか

ロシアによるウクライナ侵攻の長期化と異常気象により、韓国でも物価高騰と食料安保の懸念が強まっている。韓国の食料自給率は2019年時点で約46%。農業は米中心で、その他の食料は輸入に頼っている。近年は韓国人の食卓に欠かせないサンチュ、唐辛子などの自給率も減少。このため、韓国政府は国内の食料自給率向上だけでなく輸出も目指す「韓国型スマート農業」の育成に力を注ぐ。

 スマート農業という言葉が生まれる前から、遠隔での水やり、LEDによる光照射、温度・湿度などのモニタリングといったことは一部農家が導入していたが、2010年に政府による「農水畜産IT事業」が始まり、2016年に農林畜産食品部(部は日本の省に当たる)が「韓国型スマート農業普及事業」を本格的に開始し、スマート農業の拡散を核心課題に選定。2022年10月には農業生産に占めるスマート農業の割合を2022年の15%から2027年までに30%へ高めることを目標にした「スマート農業拡散による農業イノベーション法案」を発表したことで重要性が増した。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2023. 2.  

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Samsung社が2023年ロボット発売計画公表、DARPA競技会で有名になった会社にも投資

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 米国ラスベガスで2023年1月に開催された世界最大規模のテクノロジー見本市「CES 2023」で韓国Samsung Electronics社の副会長であるHan Jong-Hee氏は記者懇談会を開き、「年内に『EX1』という名前のヒューマンアシスタントロボットを中心に、シニアケアなど複数のロボットを発売する予定」「ロボットの具体的な機能は製品発売時に紹介する」「当社は新たな成長動力としてロボットとメタバースに関心を持っている」「ロボット事業には持続的に投資している」と語った。

 同社が初めてロボットを公開したのは「CES 2019」。健康管理ロボット、室内空気管理ロボットなどのAI搭載ロボット「Samsung Botシリーズ」、歩行補助や筋力強化のために使うウエアラブルロボット「GEMS(Gait Enhancing & Motivating System)」を展示した。このうちGEMSはGEMS Hip、GEMS Knee、GEMS Ankleの3種類があり、それぞれ股関節、膝、足首を補助する。

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《日経Robo》 2023. 2.  

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韓国で進む医療IT応用、AI画像診断や搬送ロボ、KTは韓国AIチップのRebellionsに23億円出資

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 韓国政府は2022年12月21日、官民協力による国家成長戦略である「新成長4.0戦略」を発表した。この戦略で重視されているのはD・N・A(Data・Network・AI)である。

 AI半導体を活用した高効率データセンター「Kクラウド」を利用してデータ利活用を世界最高水準に引き上げ、公共医療機関はより積極的にAI医療ソリューションを使い、AI製品・サービスの開発と普及をサポートする。2025年までに公共・民間の多様なデータプラットフォームを連携した国家データインフラを構築し、5Gの次の世代のモバイル通信規格である6G商用化を推進する。

 医療サービスは予測・予防を重視するようになったが、そのためには信頼できるデータの確保と学習が必要だ。しかし病院やソリューション開発事業者ごとにデータの生成・蓄積方法が違うのが悩みだった。そこでKクラウドを使い標準化した形式でデータを収集・管理することでAI医療ソリューションの高度化につなげようという訳だ。

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《日経Robo》 2023. 1.  

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Samsung AI Forum 2022が開催、Bengio氏らが登壇、Hyperscale AIなどを議論

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韓国Samsung Electronics社は2022年11月8~9日にソウル市内で6回目となるSamsung AI Forum 2022(https://saif-2022.com/)を開催した(図1)。世界で著名なAI学者らが最新の研究成果を共有し、Samsung Electronics社の研究所で行っている研究についても紹介した。8日は「Shaping the future with AI and Semiconductor」をテーマにDS(Device Solution)部門の研究所であるSamsung Advanced Institute of Technology(SAIT)が、9日は「Scaling AI for the real world」をテーマにDX(Device eXperience)部門の研究所であるSamsung Researchが主催した。

図1 Samsung AI Forum会場の様子

図1 Samsung AI Forum会場の様子

(写真:Samsung Electronics社)

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《日経Robo》 2022. 12.  

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現代自動車グループとBoston Dynamics、AI研究所に4億2400万米ドル投資

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 韓国Hyundai Motor Group社(現代自動車)は2022年10月12日、「Unlock the Software Age」のタイトルでオンラインフォーラムを開催し、ソフトウエア中心のスマートモビリティ企業を目標にした投資計画を発表した。そのため米国ボストン近郊にロボットAI研究所のBoston Dynamics AI Institute社を、韓国にはソフトウエア定義型自動車(Software-Defined Vehicle)開発とグループ全体のソフトウエア開発を主導する「グローバルソフトウエアセンター」を設立する。Hyundai Motor社と傘下のKIA社は自動運転、コネクティビティ、ビッグデータセンター構築、モビリティスタートアップ投資に2030年までに18兆ウォンを使い完成車メーカーからスマートモビリティ企業へ転換を図るという。2020年には「2025年までロボティクス、自動運転、AI、航空モビリティに集中投資する」という計画を発表していたが、今回はさらに具体化した。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2022. 11.  

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Samsungが2030年に生産拠点を無人化、人口減少と安全に備える

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2022年8月2日、韓国メディアは一斉に、Samsung Electronics社が韓国を含め世界各国にある主要生産拠点を2030年より完全無人化する計画だと報道した。Samsung Electronics社は2022年7月に無人工場タスクフォースを立ち上げ、生産工程の100%自動化のためのシステム開発と点検に着手したという。2030年以降に建設する工場は完全無人化で設計する。

 米IBM社によると工場の完全自動化・完全無人化は5つのレベルがある。最終段階のレベル5は全工程において人が介入することなく工場がデータを取得・判断して自律的に生産を行うレベルであり、2030年ころに始まると見込まれている。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2022. 10.  

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Samsungが2030年に生産拠点を無人化、人口減少と安全に備える | 日経Robotics(日経ロボティクス) (nikkei.com)

韓国ではテレビやイベント、SNSで AI技術により生成したバーチャルヒューマンが活躍

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韓国では2021年からSNSやテレビで見かけるようになったAIヒューマン。芸能事務所と契約しテレビドラマやCM、イベントの司会として活躍するAIヒューマンがどんどん増えている。非接触型社会が定着してからメタバースで新製品の発表や商品の宣伝を行う企業が増えたことで、AIヒューマンの活躍の場も増えた。テレホンショッピングで商品を販売したり銀行で各種取引の手伝いをしたり、AIヒューマンは身近な存在になっている。

 韓国でいうAIヒューマンは「バーチャルヒューマン」にAIを組み合わせたものである。3Dエンジンで生成する人間らしい表情や動きをするバーチャルヒューマンに大規模言語モデル、音声合成AIなどを搭載し双方向のコミュニケーションができるよう試みたものである。バーチャルヒューマンやAIが生成する特定人物のクローンは、音声合成でテキスト入力通りに話したり、決まった動作を繰り返したりするが、AIヒューマンは一歩進んで話の内容に合致するトーンで話す技術、話す内容と唇・顔の表情を合わせる技術、音声認識で相手の言葉に反応する技術、自然に対話を続けられる技術などを加えた。

インスタのフォロワー数は14万人超

 韓国の元祖バーチャルヒューマンは映画製作会社Sidus社が開発した「Rozy」で、22歳ソウル生まれの女性という設定である(図1)。インスタグラムのフォロワーは14万人を超える。テレビにはRozyが登場するCMが連続で流れ、ラジオ番組にも出演、ファッションブランドとのコラボも多数こなしている。年間収入は2021年15億ウォン、2022年20億ウォン見込みというインフルエンサーに成長した。Rozyは韓国NAVER社のNES(Natural End-to-end Speech Synthesis)で自分の声を持っているが、まだコミュニケーション機能や自分で何かを生み出す機能はなく、決まった動きをするバーチャルヒューマンに留まっている。

図1 映画製作会社Sidus社が開発したインフルエンサーの「Rozy」

図1 映画製作会社Sidus社が開発したインフルエンサーの「Rozy」

(画像:Sidus社)

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2022. 9.  

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韓国では大規模言語モデルの実用化が既に開始、NAVERがHyperCLOVAを高齢者向け安否確認に

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2020年に米OpenAIが「GPT-3」を公開して以来、韓国でも米グーグルの「LaMDA」や米Microsoft社と米NVIDIA社の「MT-NLG(Megatron-Turing Natural Language Generation)」のように汎用性が高い大規模言語モデルの競争が激しくなってきている。ネット企業やキャリア各社は韓国語の大規模言語モデルを開発し、コールセンターにかかってくる電話のテキスト化や顧客の感情分析、高齢者向けの対話、レコメンド、記事作成、マンガや小説創作など多様なサービスに利用している。

 韓国語の大規模言語モデルといえば韓国最大のネット企業であるNAVER社が2021年5月に公開した「HyperCLOVA」がもっとも有名だ1)。NAVER社のポータルサイト上にあるブログ、ニュース記事などのデータを活用して開発した2040億パラメータ規模の言語モデルである。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2022. 7.  

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00105

Samsungの対米半導体投資に米政府が巨額の補助金、韓国内で渦巻く懸念

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の対米半導体投資に対する米政府からの補助金に対し、韓国内では多くの懸念が渦巻いている。同社の決断に伴い、中国にあるメモリー半導体工場はどうなるのか、韓国内の半導体投資が減るのではないか、といった不安の声が高まっている。

 米国商務省は2024年4月15日(米国現地時間)、米CHIPS・科学法(CHIPS and Science Act)により最大64億米ドル(1米ドル=154円換算で約9800億円)の補助金をサムスン電子に支給する予備的覚書(PMT)に署名したと発表した。補助金の対象になったことで同社は米国防部との協力も可能になった。米バイデン大統領は同社への半導体補助金支給に関して、「米国と韓国の同盟が(ビジネス)チャンスを生み出している」「半導体はAI(人工知能)のような先端技術に欠かせないものであり、米国の国家安保を強化するだろう」とコメントした。

†米CHIPS・科学法(CHIPS and Science Act)=米バイデン大統領が2022年に米国の安全保障を強化するために制定した。2030年まで米国が世界最先端半導体の20%を生産することを目標に、米国内の半導体生産設備投資に520億米ドルの補助金を支給する。半導体の輸入に依存せず、米国内で最先端半導体の設計、生産、パッケージング、購買まで全てが完結するようにし、半導体不足で自動車生産が止まるといったことをなくそうとしている。

 サムスン電子が補助金として受け取る64億米ドルという金額は、米Intel(インテル)の85億米ドル、台湾積体電路製造(TSMC)の66億米ドルに続く3番目の大きさとなった。サムスン電子の米国内の生産設備はファウンドリー事業(半導体受託生産会社)の拠点となる。同事業の最大手で好調が続くTSMCや、赤字が続き巻き返しを図るインテルと、米国内の顧客を奪い合う熾烈(しれつ)な競争が米国内で始まることになる。

 サムスン電子は2022年から米国テキサス州テイラー市に最先端の半導体生産工場を建設中である。今回、これに加えて半導体パッケージング施設とR&D(研究開発)施設を新築し、2030年まで総額400億米ドル規模の対米投資を行う計画という。現地の新規雇用も2万人を超える見込みである。

 韓国からはSK hynix(SKハイニックス)も同社初となる米国生産拠点を計画している。2028年下期の量産を目標に、米国インディアナ州に半導体パッケージング工場を建設する。台湾の調査会社TrendForceによれば、先端半導体(16nm世代以下)の国別生産キャパシティーは、2023年の台湾68%、米国12.2%、韓国11.5%、中国8%に対して、2027年は台湾60%、米国17%、韓国13%、中国6%、日本4%と、米国のシェアが拡大すると見ている。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 4. 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00107/