地デジが抱える大問題
放送局が危ない!?
2012年末をもって、韓国ではアナログ放送から地上デジタル放送に切り替わるという日程が組まれている。だが、地デジをよく知らない国民が多く、大混乱が起きる恐れがあることを前号で報じた。
しかし問題は視聴者よりも放送局なのだという説もある。放送局側の地デジ対応が予算の問題で予定通り進んでいないからだ。
韓国政府は地デジの環境に合わせたデジタル放送コンテンツの制作と流通を振興するための「デジタル放送コンテンツ振興法」制定の準備を急いでいる。放送コンテンツ振興委員会を結成し、財源は放送発展基金、情報化促進基金、政府予算などでまかなう計画だ。
放送通信委員会の調査によると、放送局4社のデジタル転換費用は1兆7000億ウォン(約1160億円)と見込まれている。放送局はインターネットに視聴者を奪われ、広告収入が減っていることからすでに赤字経営に陥っているため、地デジへの投資まで手が回らないと主張している。公営放送であるKBSは、アナログの難視聴問題すらまだ解決できていない。
なんとか特別法の勢いで地デジブームを巻き起こしたい放送通信委員会は、KBSの受信料を値上げする一方、政府がコントロールしていたテレビCMを全面的に自由化して、CM営業や流せる時間などの規制を緩和することで地デジ関連予算を確保できるようにする方針である。とはいえ、不況でテレビCMが減ったというのは、視聴者の生活に余裕がなくなってきたということでもある。地デジのためとはいえ、視聴料値上げなど反対されるに決まっている。残った方策は、CMの規制緩和だろうか。
アナログ放送が中断される2012年は韓国の大統領選挙の年、そしてロンドンオリンピック開催の年でもある。オリンピック特需も考えられるが、2008年秋から世界を襲っている金融不安や不況がどれほど続くかも影響するだろう。韓国は放送の歴史が長く、韓国より1年半ほど前にアナログ放送を中断する日本に注目している。日本を手本にして、よりスムーズに地デジへ転換したいと思っているのだが、聞こえてくるのは「地デジ詐欺」。困ったものだ。韓国には「紙一枚も二人で持てばなお軽い」ということわざがある。日韓で一緒に知恵を絞ればうまくいくかもしれない。
(趙 章恩●取材/文)
[BCN This Week 2009年1月5日 vol.1266 掲載] Link