料金値下げ?端末ラインアップ?メンバーシップ?キャリアを選択する基準

日本とは逆に2008年3月より携帯電話購入の際に支払われる購入補助金、奨励金が自由になった韓国。2008年に就任したイ・ミョンバク大統領の家計通信費負担20%軽減公約により、携帯電話の通話料も値下げ競争となっている。

 しかし補助金は新規顧客獲得のためなので、機種変更するだけだと適用されず、端末がとても高くなる。最近のサムスン電子やLG電子の端末は、みんなタッチパネル搭載のスマートフォンだから値段が高く、補助金がない場合80万~100万ウォン(約6万~8万円)は出さないと、しょぼい音声通話しかできないような端末しか手に入らない。機種変更したい人は仕方なくナンバーポータビリティを利用してキャリアを変更し補助金をもらう。


 携帯電話普及率が93%(2008年10月末)を超えてからは、本当の意味での新規加入よりも、補助金を使ってキャリアを渡り歩く最新端末好きのアーリーアダプターばかり増えている。キャリアは補助金食い逃げ防止のために1年以上の約定加入をさせたり、加入期間が長いほど通話料が安くなる長期割引を強化したりしている。韓国の最大手キャリアSKテレコムは家族全員の加入期間を合算して最大基本料から通話料まで半額にする割引を実施している。残るキャリア2社KTFとLGテレコムも長期加入割引や通話料値下げをしているが、ほんのちょっとの値下げではユーザーにとって何のメリットもなく、キャリアの負担ばかり大きくなる。


 KTF関係者の話によると、「韓国の携帯電話ユーザーは複雑で、アンケート調査をしてみると通話料金が高いので他のキャリアに変えたいとしながらも、実際には料金より端末ラインアップやその他のサービスが重要な選択要因になっている」という。その他のサービスとは音楽、動画、SNSなどがあるが、それよりも重要なのがメンバーシップなのかもしれない。


 韓国の携帯電話キャリア3社はメンバーシップ制度というものを導入している。年間利用金額に応じて一般会員、シルバー会員、ゴールド会員などに分けられ、スターバックスのコーヒーが無料になったり、ファミリーレストランやコンビニで15~20%の割引が適用されたり、遊園地の入場が無料になったり、色んなところで特典を受けられるサービスだ。換算すると会員のレベルによって年間3万~10万ウォン分(約2300円~8000円)の割引を受けられるという計算になる。


 マーケティング会社「インサイト」が10万人を対象にネットでアンケート調査した結果をみても、32.2%が他のキャリアに変更する予定があると答えている。現在加入しているキャリアの不満については31.8%が高い利用料金と答えた。その他は通話品質、高額な端末価格、メンバーシップ特典が少なすぎるの順になっている。

面白いのは、大半の利用者は料金が高くて不満と答えながらも、実はキャリア間では料金が最も安いLGテレコム加入者の50.8%もが他のキャリアに移りたいと答えている一方で、料金が最も高いSKテレコムの加入者で他キャリアに移りたいとしていたのは20.9%だけだったという点だ。


 移りたいキャリアはまだ決めていないと答えた人が最も多かったが、決めているとこたえた人では、SKテレコムが37.8%で1位、KTFが25.4%で2位、LGテレコムは6.8%しかなかった。高い利用料金には不満だが、料金が安ければ安いほどいいというものではないようだ。韓国初の携帯電話キャリアで歴史が長くメンバーシップの特典も最も多い、最新端末をどこよりも早く独占提供するSKテレコムか、それとも3Gサービスをどこよりも早く開始し、3G加入者専用のメンバーシップ特典を提供、派手なCMを繰り返すKTFか、はたまたとにかく料金の安いLGテレコムか、という選択肢の中では、料金の安さが売りのLGテレコムよりも老舗SKテレコムが選ばれたというわけだ。


 さらに、2008年からは高速モバイルネットワーク競争も激しくなっている。韓国ではまだ発売されていないものの、iPhone 3Gの影響からか液晶が大きくタッチパネル式の端末がどんどん売れ始めたことから、キャリアもスマートフォンから使える、安くて速度の速いネットワーク競争に身を投じざるをえない状況である。


 安くて早いモバイルネットワークで強いのはHSDPAを提供するSKテレコムやKTFではなく、リビジョンA方式のLGテレコムである。OZといって月400円ほどでモバイルインターネットが使い放題の料金制度を導入(詳しくは以前書いた「「鎖国」状態の韓国携帯ネットワークに風穴」を参照)してから、スマートフォンでインターネットを使ってみたいアーリーアダプターたちが動き始めたのだ。

そうしたらすぐSKテレコムがサムスン電子の最新スマートフォン「T-Omnia」(こちらも「
韓国に来ないiPhone 3G、サムスンのiPhone対抗馬「OMNIA」で紹介した)を独占販売し、HSDPAよりも料金の安いWibro(モバイルWimax)にも力を入れると反撃を始めた。KTFは残念ながら社長が基地局管理を巡り数年間も賄賂を受け取っていたことが発覚したため、今は端末競争どころではない。








11月中にSKテレコムから独占販売されるサムスン電子の「T-OMNIA」。ネットブックよりも高い携帯電話として話題。4GBモデルが100万ウォン(約8万円)、16GBモデルは110万ウォン(約88000円)。3.3インチWVGA液晶搭載、OSはWindows Mobile6.1



 利用料金が安いモバイルネットワークが出揃い、無線LANが使える携帯電話端末も登場したことから、ますますスマートフォンをめぐる競争は激しくなる見込みである。勝手サイトにアクセスできないようにふさがれていたモバイルインターネットが開放され、携帯電話からどんなサイトも自由に利用できるようになったことで、またもやキャリアの選択にも変化がありそうだ。


 公式コンテンツの囲い込み競争は意味がなくなってきただけに、韓国のキャリアは子会社にまでして管理していた音楽会社や映画会社との関係を見直す動きも出てきた。日本のキャリアはプラットフォームだけでコンテンツはCPに任せるが、韓国はコンテンツまでもキャリアがしっかり管理していた。


 今韓国キャリアの関心事はどこがiPhoneと契約できるのか、ということ。端末そのものの値段も安く、機能もばっちり!それにiPhone 3G持っていることは自慢にもなるからユーザーがどっと流れてくること間違いなし!なのだが、WIPIといって韓国標準のミドルウェアを搭載するかしないかの問題があるため、国の許可が必要。景気悪化から携帯電話キャリアの実績も陰りを見せ始めている中、複雑な料金割引制度で顧客の注目を引こうとしたり、メンバーシップ特典を強化してみたり、端末の独占販売をしてみたり、ああでもないこうでもないと、限られた加入者の奪い合いは今日も続く。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年11月12日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20081112/1009641/

韓国通信キャリア事情 国際ローミングでの決済

KTF実験成功



 


 


【ソウル移動通信キャリアのKTFは、世界めてグロバル帯電話決済ビスの実証実験成功した。サビスが商用化されれば、3G利用するKTF加入者国際ミングが使える自分帯電話のままで、海外のレストランやショップ、列車代金安全できるようになる。



 
同社のサビスはNFCチップを利用して帯電話端末内蔵されたUICCICド)にアクセスできるようしたもので、200710ETSI(ヨロッパ気通信標準協会)により標準としてされたシングルワイアプロトコルをサポトしている。


 


 KTFPayByMobileNFC近距離無線通信)と帯電話端末USIM加入者認証モジュル)をつなげ10Mにある端末家電製品間のデ交換支援する。NFCチップは非積極型決システムと交信し、帯電話によるクレジットカドおよび現金決安全える。ビスとなりモバイ場合国家別にプラットフォムがうため、モバイル済対応端末でも海外ではできなかった。場合今回NFC方式実証テストをったが、国内向けにはコンビ方式採用している。KTFNFC方式して付加ビスとしてはめてグロバルロミングに成功したことになる。


 


 KTF世界初モバイル済実証テストにはマスタドと三星電子LG電子参加した。売店NFC機能えた帯電話非接触型ー機利用して代金った。マスタドのPAYPASSアプリケションと国信韓銀行のクレジットカドアプリケションをLG電子三星電子提供した帯電話端末内蔵されたKTFUICCにダウンロドし、売店にはNFCインタフェスを支援しマスタドのPAYPASSアプリケションをむリー機設置して実際った


 


 セルラー社調査ったところ、調査じた10250売業者50%帯電話決済ビスがしい販促ルになるとえていた。KTF3G端末普及加速されていることから、クレジットカドの30%ほどがモバイル済用使われるだろうと展望している。


 


 マカオの「モバイルアジアコングレス」会場KTFは「世界めてグロバルモバイル実証ビスに成功したことをしくう。個別われているモバイルペイメントが国際規格によって世界自分帯電話のままできることになれば、消費者売者にもメリットがじる。グロバルロミングのSMS(ショメッセビス)をえて付加ビスにまで拡大されたことにきな意味がある」とし、AT&Tも「2005大規模非接触型ビスの実証実験参加した北米初通信業者として、モバイルビスを普及させるためには、広範囲事業者参加必要であることがわかった。モバイル国際標準確立役立ちたい」とべた。



趙章恩
(チョウチャンウン=ITジャナリスト)


 


BCN This Week 2007123 vol.1214 掲載 Link


 


 

韓国キャリアの一風変わった「家族割」

日本でも携帯電話の料金体系の一つである「家族割」のCMが一日に何度も流れているが、韓国でも家族で一緒に加入すると料金が安くなる家族割りで勝負する料金競争が始まっている。

 LGテレコムは家族でなくても料金納付者を指定して、その人の下に加入するのであれば他人であっても7人まで「家族愛割引プログラム」という家族割り引きが適用される。この料金制度は家族間通話料が50%引き、家族間メンバーシップ(毎月の平均料金に応じて1年に約3300円~1万1000円ほどのポイントがもらえ、加盟店でその金額分割引してもらえる制度)も共有できる。


 驚きは1年ごとに2カ月分の基本料と平均音声通話を全額差し引いてくれることだろう。例えば一人当たり7000円/月の電話代を払う5人家族だと月に3万5000円。ここから2回分に相当する7万円を差し引いてくれるということだ。太っ腹な割引だな~と感心してしまった。だって家族じゃなくてもサークル仲間や仲良しグループで申請しても家族割りになるのだ。キャリア3社の中で最も加入者が少なく、新規加入を確保するため料金で勝負するようなところを見せているのは日本の事情と変わらない。


 韓国で最大手キャリアのSKテレコムも家族割りを始めて反響をよんだ。LGテレコムと異なり、戸籍上の家族5人だけが対象だが、家族登録するだけで通話料が50%引きになる。また、面白いのは基本料の割引制度。家族の加入年数を合計して、10年未満なら10%、10年以上は20%、20年以上は30%が基本料から割り引かれて、30年以上だと基本料が半額になる。


 さらに家族を登録した新規顧客の中から抽選で1000人に8万円以上する最新の携帯電話を贈呈するイベントまでやっている。基本料を安くしようとSKテレコムの加入期間が長い父に急接近する子供たちが増えているから、親孝行効果もあって一石二鳥だなんて言われている。家族割りは今年の4月1日に登場してからたったの10日間で25万人を突破した。2008年末までに400万人以上が家族割りを利用すると見込まれている。


 家族ではなくても、毎月約300円を追加すればSKテレコム加入者同士の通話料が毎月5時間無料になる。これは800円分ほどの割引効果があるということで、この料金制に加入する人は4月時点で全加入者の10%に当たる230万人を超えている。月額基本料には無料通話分が含まれていないので、家族割分を含めると5人家族で年間最大約6万2000円ほども節約できるという。SKテレコムの加入者は 2237万人で、全加入者の50.5%を占めている。LGテレコムやKTFよりもSKテレコムに加入している家族の方が多く、みんな家族割りのために多数決でSKテレコムへ移行したという人も結構みかける。家族全員の加入期間が長ければ長いほど基本料が安くなるから、どんどんSKテレコムに加入させようとするわけだ。

加入者間の無料通話は最後の最後の砦と言われてきたけど、新しく就任したイ・ミョンバク大統領の公約の一つが通信費を20%値下げして家計の負担を軽くすることなので、2007年秋からさまざまな家族割りが登場している。SKテレコムの資料を見ると、2008年1月から3月の加入者の平均通話時間は変わらないのに、ARPU(加入者一人あたりの月間売上高)は前期の約4600円から約4300円に落ちている。家計の負担は少しずつ減っている。


 家族割りでなくてもLGテレコムは月に1700円ほどの追加料金で加入者間の通話が20時間無料に、月に110円プラスすれば加入者間の通話料が50%割引に、4300円/月ほどを支払えば加入者間の通話が20時間無料+その他キャリアや固定電話への通話が5時間分無料になる。KTFも月に300円ほどを追加すれば加入者間の通話料が50%割り引かれる。加入者間の通話が増えるとKTの固定電話から携帯電話へかける頻度は当然に減るので、売り上げは前年同期比約11.6%も減っているという。家庭用インターネット電話も普及していることからKTの固定電話通話料の売り上げは前年比3.2%減っている。


 固定電話の売り上げが減る一方のKTも、負けじと通話料割引を始めた。韓国に住む外国人を対象にした「国際LOVE料金」。パケット定額制のように月額で約1100円~約3100円の定額料金を払えば家の固定電話と携帯電話合わせて60分から最大500分まで国際電話がかけ放題となる。


 以前は携帯電話の料金なんて標準料金、エコノミー料金(基本料が安くて通話料は高め)、300分通話放題料金(基本料が高くなる代わりに時間に関係なく月額300分の無料通話時間が付く)など、料金制度のタイトルと意味がその通りでとても分かりやすかったのに、家族割りやらパケット割引が登場してからは計算のややこしいこと! 料金案内のページに入ると、30種類以上の料金制度がどばっと出てくるからますます混乱してしまう。無料通話分や割り引き方が微妙に違うので、最も節約できる料金を選択するためにネットの知識検索に相談することもしばしば。知識検索とはユーザー同士でQ&Aするものなのだが、人の経験を教え合うので企業が提供する一括した情報サイトよりも分かりやすい。


 通信料が安くなってくれるのはありがたいが、もう少し整理してほしいものだ。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年5月21日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080521/1002692/

キャリアとコンテンツプロバイダーとの主従関係は改善する?

例えば日本のiモードの公式サイトになった場合、キャリアとコンテンツプロバイダー(CP)との利用料配分はキャリアが9%でCPが91%と配分率が公開されている。携帯電話キャリアはヒットコンテンツを見つけて利用させて通信費で儲ける(今はそうもいかなくなったが)というのが基本的なビジネスの仕組みだった。韓国ではCPとの契約なんてキャリアの勝手。利用料の60%をキャリアが持っていくなんていう契約もあれば、30%しか持っていかない契約もある。どことどのような契約をするかは、キャリアの勝手なのだ。韓国の放送通信委員会はこれは不公正取引行為として、キャリアとCPとの契約関係を改善すべく制度改善のために調査に着手した。

 韓国ではほとんどのコンテンツ契約がCPや製作した人は4割未満の配分となっている。キャリアやポータルサイトはいつも「本の印税は10%。それに比べたら40%ももらえるなんてステキな契約じゃないですか」という。日本のキャリアは手数料として9%ほどしか取らないと聞いてびっくりしてしまった。アップルのApp Storeだって手数料は30%だというのに。当然のことだが、iPhoneが韓国に入ってきたらCPはみんなApp Storeを狙うだろう。


 今はまだ端末に韓国標準プラットフォームWIPIを搭載しない限りiPhoneは韓国で販売できないと止めてはいるものの、端末ラインアップを豊富にして顧客の離脱を防止したいキャリアの要請から、WIPI搭載義務の廃止は時間の問題といわれるようになった。iPhoneとApp Storeが押し寄せてきたとき、韓国のキャリアは今のままで大丈夫なのだろうか。

韓国は日本と違ったビジネス環境でもある。韓国のモバイルコンテンツはマスターCP(キャリアの子会社になっている場合が多い)と呼ばれる大型CP経由で納品される。キャリアとの直接交渉ではなくマスターCPと交渉しなければならないし、経由点が多いから手数料として取られるのも大きいかもしれない。また日本ではキャリアは場所を提供し、コンテンツはCPが担当するという立場だが、韓国はキャリアがコンテンツ開発に積極的で、映画会社やレコード会社を買収してコンテンツ勢力を拡大させている。


 放送通信委員会の通信利用制度課は、モバイルインターネット・コンテンツの活性化と有望新規事業者発掘のための公正競争環境を作ろうとしている。キャリアとCPの契約から端末会社とCPの契約へ変わっていこうとしている中、新しいモバイルコンテンツ事業者がどんどん市場に出てくるようにするためには、キャリアとCPとの取引や契約関係が明確でないといけないという考えからだ。


 それに今までの政府の支援策といえば、海外展示会に参加する費用を補助するとか、コンテンツ開発費を補助するとか、お金をあげて生き延びられるようにする支援が多かった。それを市場の中で生きていけるように、公正な環境を作り、国内市場で積極的にコンテンツサービスを展開して競争できるようにすることで、海外でも通用するコンテンツにさせていくということ。Wibro(モバイルWiMAX)普及により、モバイルコンテンツの需要増加が見込まれているため、今のうちに明朗会計な市場に整えておきたいということなのかもしれない。


 韓国は日本より携帯電話、モバイルでは遅れを取っているようにみえる。確かに利用率の面では携帯電話からネットにアクセスすることはあまりしない(高校生や大学生の利用率はぐんぐん伸びているが)。それでも、韓国が発祥の世界的モバイルコンテンツだってある。韓国ではカラリング、日本ではメロディコールや街うたといわれる、電話がつながるときになる信号音の代わりに音楽が流れるというあれだ。


 ゲーム好きの韓国だけに、パケット通信費が高いといってもモバイルゲームは好調で海外へもわんさか輸出されている。キャリアに利用料の50から70%を持っていかれながらも、次々に新しいアイデアでコンテンツを披露している。キャリアの取り分が10%でCPが90%もらえるようになったら、もっと意欲的になってすごいことになるのではないかと期待してしまう。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年9月3日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080903/1007634/