iPhone発売にサムスン独自OS 韓国モバイル市場が変わる

いよいよ韓国でもアップルの「iPhone」が発売されることになった。2010年春にはグーグルの携帯プラットフォーム「Android(アンドロイド)」を搭載する端末も発売される。

 韓国でiPhoneは「来月フォン」というニックネームをつけられてしまった。「来月には出る」という報道が何度も繰り返されたせいだ。携帯キャリアのSKテレコムとKTの競争が激しく両方から出るのではないかとみられていたが、ひとまずKTから発売されることに決まった。




サムスン電子「OMNIA」シリーズの新機種


■今秋商戦はiPhoneシフト


 韓国の携帯電話メーカーはすでに昨年から、iPhone対策としてタッチパネル端末を次々と投入している。いよいよiPhoneが発売されることになった今秋の新機種は、すべてがスマートフォンというほどのiPhoneシフトである。


 サムスン電子は年末商戦に向けた新モデルとしてスマートフォン「OMNIA」シリーズ5機種を一気に発売した。さらに2010年を「スマートフォン元年」と位置付け、新製品を09年の20機種から倍増させるという。09年10月のサムスン電子の韓国内でのシェアはタッチパネル端末の好調で55.8%にまで達した。


 一方のLGエレクトロニクスも、副社長をリーダーとするスマートフォン担当事業部を新設するなど追い上げに必死だ。「最大のライバルはノキアではなくアップル」と述べ、世界市場に向けてスマートフォンで勝負をかける姿勢を見せる。09年には5機種、10年には10機種のスマートフォンを発売するという。



■キャリア系も端末製造に再参入


 こうしたなか、韓国最大キャリアであるSKテレコムの親会社SKグループもスマートフォン製造に乗り出した。SKグループは4年前に系列の携帯電話端末製造会社をパンテックに売却したのだが、スマートフォン市場の拡大をみて09年に再参入した。


 「W」というシリーズ名が付けられたSKのスマートフォンは、携帯電話からSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログを利用したい人向けに特化している。SKグループのSNS「Cyworld」や主なブログサイトに写真、動画、メモなどを簡単に転送できるようにした。


 韓国の携帯電話からアクセスするモバイルインターネットは閉鎖的なネットワークで、キャリアのネットワークを出て勝手サイトにアクセスすることができないようになっている。WはSKテレコムのネットワークを経由せず直接ブログにアクセスできるという点が画期的で、グループ会社ならではの連携策といえる。



SKテレコムの「W」


■サムスンが独自プラットフォーム


 調査会社IDCによると、09年7~9月の世界のスマートフォン出荷台数は前年同期比4.2%増の4330万台で過去最高を記録したという。


 メーカー別シェアは、フィンランドのノキアが首位で37.9%、カナダのRIMが19.0%で2位、アップルが17.1%で3位。携帯電話世界シェアで2位のサムスン電子、3位のLGエレクトロニクスはともに圏外だ。成長が見込まれるスマートフォン市場での地盤固めは急務である。



サムスン電子のAndroid端末「MOMENT」

海外勢では米モトローラ、英ソニー・エリクソンがAndroid を搭載したスマートフォンに力を入れている。サムスン電子も欧州に続き北米でAndroid端末「MOMENT」を発売したが、11月10日に新たに独自のオープンプラットフォームをリリースすることを明らかにした。

 今年12月に公開される予定の「bada」は韓国語で「海」の意味で、サムスン電子のモバイル端末の共通プラットフォームとして使うという。外部の開発者がアプリケーションを開発するためのソフトウエア開発キット(SKD)の提供も予定しており、10年にはアプリ販売ストア「Samsung Application Store」でbada向けアプリの配信を開始するとみられている。


 世界シェア2位の端末ベンダーであるだけに、サムスン電子のあらゆるモバイル端末で使えるようになれば、規模は大きい。サムスン電子が自社のプラットフォームとアプリストアを持つことで、世界のモバイル市場にまた新しい変化をもたらすであろう。





■韓国モバイル市場は大変革期に


 韓国のスマートフォン利用者はまだ73万人、移動通信端末の1.5%を占めるに過ぎないが、10年には3.7%に増加するという予測もある。スマートフォンとモバイルWiMAXや無線LANを組み合わせれば、通話料を安く抑えられるという期待も高い。


 前回のコラムでも述べたように、韓国政府は通信キャリアに対しモバイルインターネットの料金値下げを促している。すでにW-CDMAとモバイルWiMAXのデュアル端末がKTから発売されるなど、スマートフォンが使いやすい環境へと変わり始めた。モバイルを中心に放送と通信の融合も進みつつある。iPhoneの発売とタイミングを同じくするように、韓国モバイル市場は今までにない大きな変化の時期を迎えようとしている。



– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
[2009年11月16日]
Original Source (NIKKEI NET)

有線・無線電話のコンバージェンスで「一足先にユビキタス」―KTとサムスン (過去記事)

韓国には面白いIT施設がたくさんある。情報通信部1階にオープンした「ユビキタスドリーム展示館」にはホームネットワークやRFID、知能型交通、人の動きに反応する広告など、2010年の韓国が紹介されている。

 郊外のFTTHショールームでは、高級マンションの一室を使った遠隔医療、インターフォンの映像を携帯電話に転送し、訪問者を確認して遠隔でドアを開けるサービスなどが体験できる。TVで映画の試写会に参加することもできるし、受験勉強までできる。


 街中には通信キャリアが顧客管理のために運営しているメンバーシップ制の無料PCバン(インターネットカフェ)があり、全国の郵便局と銀行にも、誰でもネットを使えるPCが必ず置いてある。 こうした状況だから、韓国ではわざわざパケット代を払ってまで携帯でネットを利用するのは無駄使い、という考えも多いのだ。そんな韓国で通信事業者が収益をあげるには、ニッチ市場を狙ったコンバージェンス(融合)しかない。


 韓国最大通信事業者のKTは、2010年までに本格化すると予想されるコンバージェスサービスでも主導権を握れるよう、自社のインフラと、携帯電話マーケットシェア1位であるサムスン電子の技術と端末を応用し、電話とデータ通信、固定電話と携帯電話、放送と通信、ホームネットワークといったコンバージョンス分野を強化している。特に携帯電話がデジタル機器の中心になる「モバイルコンバージェンス時代」の到来をにらんだ新しいビジネスモデルとして成功を収めているのが「Ann」、「Du:」、「Netspot Swing」といったコンバージェンスサービスだ。








添付画像

サムスン電子のPDAスマートフォン「SPH-M4300」(広報資料より)


 日本では肩身の狭いPDAだが、韓国ではKTが無線LANとCDMA携帯電話のデュアルモードを備えたPDAスマートフォン「Netspot Swing」のサービスを2003年6月に開始してから、サムスン電子のPDAスマートフォン(SPH-M4300)に機種変更する人が増えている。無線LANはKT、CDMAはKTの子会社であるKTFにそれぞれ加入しなくてはならないが、サポートはKTが担当しているので面倒なことはない。今テレビに流れている映像をネット経由でそのままリアルタイム受信できる「OnairTV」や、ドラマ再放送のビデオ・オン・デマンド、音楽ファイルも「Netspot Swing」だと無料で利用できる。だが、うっかりこれをCDMAで接続してしまったらもう最後。先日このような間違いをおこしてパケット代1千万ウォン(約110万円)請求された男性が料金の取り消しを求める裁判を起こしたが、ユーザーのミスということで片付いてしまった。ホットスポット圏外になると「CDMAに接続しますか?」と必ず警告画面が出てユーザーがYESかNOかを選択しているようになっているためパケット代は払うべきという結論だった。


 5月から韓国では、携帯電話から利用できる衛星DMB(Digital Multimedia Broadcasting、モバイル衛星放送)が世界に先駆けて商用化された。続いて7月には地上波DMB(日本の地上デジタル1セグメント放送に近い)のテスト放送が始まる。「Netspot Swing」のほかに、KTはソニーのPSPとも提携しPSPからもドラマの再放送を利用できるサービスを提供している。


 固定電話も変身している。携帯電話が一人一台の時代になり、固定電話の新規申し込みがどんどん減っているため、KTが命運をかけて開発した「Ann」というサービスは、固定電話でありながら携帯電話に近い機能が備わっている。


 一見すると家庭でよく見かけるコードレスフォンだが、24和音の呼び出し音、1.5インチLCD、電話番号200件保存、発信者番号通知、自動応答、音声メッセージ録音、ボイスポータル、SMS(ショートメッセージサービス)送受信、着メロ、メロディコール、目覚まし、天気予報などのコンテンツ利用と、携帯電話と変わらない機能を持っている。SMSの料金は携帯より安い。Ann同士のSMSは1件1円、Annから携帯へは1.5円。通常、携帯電話のSMS送受信は1件3円だから破格な料金である。天気予報やショッピング情報をSMSで受信することもできる。Annは去年11月発売されてから7カ月で70万台を販売し、年間目標100万台の70%を達成している。ANN電話機を購入した人の76%がSMSや通話連結音などの付加サービスに加入しているため、ARPU(一台当たりの月平均利用額)は約300円、全体では月に2億円以上の売り上げになる。年末まで1.8インチカラーLCD、TVリモコン機能付き、64和音などの新機種を順次発売し、目標を上回る130万台の販売を目指している。Ann端末はサムスンとKTのOEMでアプロテックという中小企業が製造している。端末代は24カ月払いで電話料金に合算請求されるので電話機の買い替え需要も呼び起こし、新婚家庭や小規模ショップでのニーズが高い。








添付画像

サムスン電子のBluetooth携帯「SPH-V6900」(広報資料より)


 KTはこのほかに、1台で屋内では固定電話、屋外では携帯電話として使えるBluetooth技術を採用した「ワンフォン」、「DU:」も発売している。


 「ワンフォン」を利用するためには6~7万円もする携帯電話に機種変更し、1万円ほどする家庭内AP(Access Point)を購入しなければならないため負担が大きい。だがAPから半径20~30m以内では固定電話料金が適用され、KTのブロードバンドサービス「Megapass」に加入している場合は半径100m以内でモバイルゲームなども無線インターネット経由で安く使えるので電話代の節約になる。この夏からサムスン電子がテレビ広告で、Bluetooth無線イヤホンを利用するとDU:携帯をカバンの中に入れたまま通話したり音楽を聞いたりできる場面を流しているため、DU:に加入しなくてもサムスン電子のBluetooth携帯(SPH-V6900)を購入する人も多い。


有線→無線→放送へと拡大していくKTのコンバージョンスサービスは通信と放送の融合を見据えた戦略だ。いずれサービスと端末をすべてKTが握るための計画ではないかということで、情報通信部までもKTの独占を警戒している。ユーザーとして新しいサービスがどんどん登場するのはとても嬉しいが、家計支出に通信費の割合が高すぎて困っている。

by –
趙 章恩

日経デジタルコア連載   
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サムスンが人材確保に躍起になるワケ [2006年11月28日]

サムスン電子(サムスン電子)は10月、日本の慶応義塾大学とよく比べられる私立の名門、延世(ヨンセ)大と大学院に携帯電話専攻設立協約を結び、2007年から毎年、修士課程20人、博士課程8人を携帯電話の専門家として養成することにした。これを皮切りに、サムスンは韓国の主な大学と携帯電話専攻提携を広げていく計画だ。

専門家育成カリキュラムを専門大学で実施


 さらに韓国で初めて4校の専門大学とも提携し、サムスンが要求する半導体設計専門家、設備エンジニアを育成するカリキュラムを組んでいる。2007年2学期から大学ごとに30人を選抜し、半導体部門の「設計専門家」と「設備エンジニア」を養成するため「半導体技術教育プログラム(STEP : Semiconductor Technical Education Program)」を実施し、サムスンの就職に向けた教育プログラムを行う。こちらも同じように奨学金を支援する。サムスンの系列会社もそれぞれ大学と協力し、LCD、LED、セラミック、イメージセンサーモジュール、無線技術、部品の国産化、新素材開発を支援している。


 人材育成にここまで力を入れているのはサムスンくらいのもの。他の大手企業も奨学金制度こそあるが、サムスンほど大きな金額ではない。LG電子では大学生のグループを対象に、海外に出向いて調査を行い、その調査結果で優勝した学生はLGに入社できるという制度を運営しているが、規模は年々縮小している。


 サムスン電子の関係者は「大学での教育は現場のIT技術の早さに追いついていけない。毎年6000人以上の理工学部の新卒を採用し、800億ウォン以上を投資して再教育している。やっと会社の人間として使えるようになるまでには平均2年半もかかる。大学と提携してオーダーメイド式に人材を養成し、採用後すぐ実力を発揮してくれる高級人材を確保できるならば、授業料全額や生活費支援なんて安いもの。韓国の携帯電話産業を世界一にするためにも産学連携は絶対に必要だ」と話している。


国を代表するエリート


 サムスン電子は創意的、挑戦的、専門的なグローバル人材を自社の人材像としてよく話している。そして、同社の人材採用での選別は徹底していることから、韓国国内ではサムスン出身者=エリートという認識は強い。同社社員たちもその自負はあるだろう。


 ただ、優秀な学生を選び支援して会社に必要な人材として育てるのはいいけど、自由な発想を育てる期間であるはずの大学時代に、ここまでサムスン、サムスン、といわれてしまうと創意もなければ挑戦もないんじゃないかという気もしてくる。就職教育ばかりで学生時代の楽しさがなくなるというもの、学生にとっては不幸だ。


 就職難からか、この頃の韓国の大学生たちはサークル活動もせず、ノートの貸し借りもせず、とにかく優秀な成績を残すために必死になりすぎている。10年前まではレポートや試験前になれば図書館に集まってアドバイス(もちろん無料)してくれていた先輩たちが、今ではレポートや試験でいい点数を取るためのノウハウをネットで売買をしている。人間味がなくなったというか、競争のしすぎというか。もちろん遊ぶ人もいるだろうけど、今では、それは一部の姿となりつつある。


 企業側が、ここまで徹底して大学で人材を育成したいという気持ちもわかる。特に韓国は徴兵制が残っているから男性は大学を卒業するのが日本より3年遅い。大卒新入社員が既に24~25歳を超えているので、そこからまた再教育となれば社員として一人前になるのは27歳を超えてからとなってしまう。二浪、三浪していると、本格的なスタートは30歳を超えてしまう場合だってある。これは確かに企業の負担も大きい。楽しい大学時代を保証しつつ、専門人材としての養成を受けられる、この両方は選べないものか。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061121/254360/

韓国大手企業の2006年成績表・サムスンとLGの極端な差はどうして? [2006年12月26日]

12月が年度末の韓国ではちょうど今頃、企業の推定実績発表と人事異動がマスコミを賑わす。朝鮮日報の報道によると、韓国企業ランキング100位までの大手企業の2006年度実績は、売上高が前年比7.07%増加した547兆576億ウォン(注)だが、営業利益と純利益はそれぞれ1.45%減、5.94%減の48兆3757億ウォンと43兆6523億ウォンだった。

 円安の影響から、海外市場でノートパソコンやHDTVなどの家電や自動車は、日本製の方が韓国製より安いという現象が発生した。韓国製品は価格競争力が落ち、輸出への依存度が高い企業は売れるけど儲からないという問題を抱えている。


韓国でも貧富の差は開く


 韓国を代表する自動車メーカーといえば現代自動車だが、不正資金工作・横領問題で会長が逮捕されたことに加えて、組合のリストラ、円・ドル安ウォン高と内外から締め付けられ純利益は32%も減りそうだ。日本市場には、ヨン様をモデルに起用し、韓国の国民車として愛される「ソナタ」を投入したが販売は苦戦し、ネットでは「日本の主婦向けにセダンを売り込むのは日韓の差を認識せずヨン様だけに頼った戦略の間違い」と指摘されてもいた。


 一方で、輸入車を扱う現代自動車の子会社はウォン高から外車の値下げ効果があり、売上高、純利益とも40%ほど成長した。景気が悪いといっても韓国国内での貧富の差は広がっている。実際には余裕資金の多い個人は増えていて高級外車と輸入食材、輸入赤ちゃん用品は飛ぶように売れている。今年のファッションはあまり寒くもないのに毛皮がトレンドだそうで、通勤の満員電車に毛皮で乗り込むOLが増えていて、私としてはくしゃみが止まらなくなるから困るくらいだ。


 大手企業の動向の中でも特に注目されているのは韓国の2大財閥系企業、サムスンとLG。2社の2006年の実績は極端な差が出た。時価総額韓国国内1位のサムスンはまずまずの実績を達成したのに比べ、LGは悪夢の1年というほど実績が落ち、グループ内の中核会社であるLG電子のCEO交代まで断行したほどだ。


 LGは今年グループ全社が大幅の純利益減少となった。主力事業の家電は純利益が54.5%減少した。LG電子製の携帯電話の人気が落ち、前々回紹介した「チョコレート」携帯が唯一の救いとなった。2005年純利益5170億ウォンでお祭り騒ぎだったLGフィリップスはLCDの価格急落で8000億ウォンの赤字、通信キャリアのLGテレコムも純利益11.74%減少、化粧品や洗剤などのLG生活健康は12%減少、LG化学は24.03%減少、持ち株会社のLGも26.49%減少した。


 LGは責任を追及するかたちで大規模な人事異動を断行し、グループ内の代表理事(日本でいうところの代表取締役)8人が新しく入れ替わった。今まで「和」を重視した人事から一変して、徹底した成果主義と未来志向的、グローバル経営強化の3つの原則に沿って行ったと発表した。LG電子の代表理事にはナム・ヨン前LGテレコムの社長が抜擢された。30年間LGに勤めた戦略通と呼ばれる人物で、攻撃的マーケティングでLGテレコムの加入者を増やし雨後の竹の子ように成長させたのが高く評価された。オーナーである会長の秘書室長でもあった人物だ。


 サムスンは営業利益は減ったものの純利益は4.44%増えた8兆ウォンと予想されている。サムスン物産や子会社の純利益も100%以上の成長が見込まれていることから「やっぱりサムスンは危機に強い、賢い企業」と評価されている。毎年年末になるとサムスン電子やキャリアのSKテレコム、LGテレコムは基本給の700~1000%がインセンティブで支給されると報道され、サラリーマン達を憂鬱にさせていたが、今年はどこも大規模なインセンティブは支給されない様子。でもサムスンは会社別の実績に応じて基本給の150%以内で支給し、1月には事業部別の目標を超過した利益を年俸として支給する制度があるため、事業部によっては年俸の50%近い金額をボーナスでもらえる人もいるということだ。


サムスンとLG、社風はこう違う


 筆者の知人でLGからサムスンに転職した人によると、「LGはのほほんとして目立たず、物静かで、会社の外のことはあまり関心がない人が多かった。よくみんなで飲みに行ったけど安いお店で割り勘がいつものパターン。サムスンは野心家でエリート意識も強く、自信満々の人が多い。正直言ってついていくのが大変。業務方式もルールがありすぎて怖いくらい。頭の回転が速く、株や不動産で大儲けする社員もいるし、元々お金持ちのお坊ちゃまやお嬢様が多いせいか、みんなブランド物を身につけてるし、給料は飲み代だからと気前よく奢ってくれたり、LGとは全然違う雰囲気」だそうだ。LGの人事異動は実績の改善と社内の雰囲気を盛り上げるリーダーが必要とされる時期だから、と説明されているが、サムスンとの雰囲気の差が実績の差にも影響を与えているのかもしれない。


 なお、IT業界では景気のいい話もある。ポータルのNAVERが検索広告の売上急増で純利益が91億ウォンから1491億ウォンに増えた。NAVERは、韓国内では天下のgoogleでさえ足元にも及ばないほどのパワーで韓国検索市場シェア70%を占めている。記者会見では、2007年は、もう一度日本に進出するほか、中近東やヨーロッパにも検索ポータルで進出し、世界のNAVERを目指すという話も出た。当面はこのまま順調に成長していけるだろう。


 日本のNTTと同様の電話通信事業者のKTは純利益が13.3%増え、1兆1300億ウォンに達しそうだ。モバイルWIMAXであるWibro対応携帯電話の発売計画も発表され、携帯電話へSMS(ショート・メッセージ・サービス)を送信できる新しい公衆電話事業も始まることから2007年も実績好調が続くとみられる。


 大事な日は旧暦で数える韓国なので(年配の方は誕生日も旧暦を使うので毎年日付が変わりカレンダーにちゃんと表示しておかないと大変だ)、本当の正月は2月19日。そのため、休日は元日だけ。むしろ、同じく休日であるクリスマスの方が盛り上がっている。ちなみに、宗教には敏感なので韓国ではお釈迦様の誕生日(4月8日)も休日だ。


 日本のみなさん、一足先に「セヘボッマニバドゥセヨ!」来年は嬉しいニュースばかり続くといいですね。筆者の私は年末最後の厄払いで災難続きですが、みなさんはお元気で!これからも韓国に注目してください。来年もお楽しみに~。


注:100ウォン=約13円


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061226/257737/

サムスン参入でがらりと変わった韓国低価格ミニノート市場

韓国でもこの頃、低価格ミニノート、いわゆるネットブックの勢いがものすごい。日本のようにモバイルインターネットに加入すると100円になるとか、そこまで大特価販売はないが、この不況の中、なによりも安さがうけている。

 韓国ではまだノートパソコンは購入品なので、オンラインゲームやeラーニング、VOD視聴、DVD再生などマルチメディアの利用に不便はないか、持ち歩くものなのでみんなに見せて恥ずかしくないデザインなのか、それなりのブランドなのかというのが重要な条件になる。だからノートパソコンは日本メーカーのものが好き、という人が多いのかもしれない。


 とにかく値段が安い、しかも軽くて機能は全部揃っている、画面とキーボードは小さくてデスクトップに慣れている人には不便だがそんなに悪くはない、バッテリーの持ち時間は液晶サイズが小さい分、普通のノートパソコンより断然長い。などの長所がブロガーを中心に口コミで広がった。それでもネットブックを買う人は今まではそれほど多くなかった。ハードディスクの容量が少ないとか、画面が小さすぎるとか、表側はそういう文句をつけていたが、「それ5万円の激安ノートパソコンだよね」と言われるのは嫌だから買わない、というのが正直な気持ちなのかもしれない。


 ところが、サムスン電子がネットブック市場に飛び込んでから事情が変わった。2008年初頭には、「ネットブックには興味がない、激安パソコンよりはハイエンドで20万円以上の高価格パソコンでブランド力を高める」、なんて言っていたサムスン電子だっただけに、9月に突然のネットブック発売を打ち出したニュースにはマスコミも消費者も驚いたものだ。


 携帯電話は相変わらず超高価格路線を守っていて、デザイナーとのコラボやタッチパネルやスマートフォンで100万ウォン(約8万円)を超える端末も発売されている。それがノートパソコン市場ではNetobookを先頭に、安くて小さくて使える端末に集中している。


 韓国のネットブック市場は台湾メーカーのASUSやMSIが火付け役ではあったが、アフターサービスが粗末だったことから、買いたいけど買ってはいけないと遠ざけられていたところもあった。しかしサムスン電子やLG電子、トライジェムといった韓国メーカーのの参入を受けて、ネットブックも値段が安くても機能はしっかり揃っているだろうという良いイメージに変わったからだ。


 トライジェムのネットブック「Buddy」は発売から1カ月で1万7000台が売れた。10.2インチの液晶に1.1Kgの重さ、80GBのハードディスク、それで値段は約5万円。サムスン電子のネットブック「NC10」は10.2インチの液晶に120GBのハード、1.3Kgの重さ、バッテリーが8時間も持つところや、キーボードのサイズを一般キーボードの93%のサイズにしたため、ネットブックの最大の弱点とされていた打ちにくいキーボードを改良したところがうけている。値段は同じく約5万円だ。


 「NC10」はブロガーの間で特に評判が高く、普通はバッテリーの持ち時間が8時間といっても無線LANを使ったり使用環境に応じてすごくばらつきがあるが、「NC10」はしっかり7時間30分以上使えたと使用感想を載せている。いまや、他のメーカーのネットブックよりも注目されるようになった。この不況下にインターネットショッピングモールでも量販店でも、入荷待ち状態であるという。


 サムスン電子は全世界の景気悪化による消費傾向の変化に応じて、値段の安いネットブックと新興市場向けの安い携帯電話にもっと力を入れる方向で戦略を修正するとしている。どんなに良い製品を作っても、市場に受け入られない商品はいらないからだ。しかし、今まで高価格製品で着実に築いてきたブランドイメージなのに、今売行きがいいからといって収益性の低いネットブックに集中してしまい、お手頃ブランドのイメージになってしまっては困るという意見も少なくはない。


 サムスン電子は世界携帯電話シェア2位の企業であるが、パソコンでは2008年上半期時点でたったの1.6%。ネットブックで世界市場に躍り出るためにはまだまだ時間がかかりそうだ。


 それでもサムスン電子は、新興市場向けのネットブック市場はあきらめられないようだ。HPやデルもネットブックを発売していることも気になる。サムスン経済研究所も、新興市場では機能は最小限にして値段を最大限安くおさえたネットブックが爆発的に売れると予想しながらも、ネットブックは結局似たような機能になるしかないので最後は価格競争になるしかないため、どれだけ安く効率的に製造できるかが競争力とみている。


 そういう面でサムスン電子は強いはずだ。ハードディスクに変わるSSD(solid state drives)市場の拡大も狙っているからだ。ASUSのネットブックはSSDを搭載してより軽く薄くなっている。サムスン電子が生産しているSSDをハードディスクの代わりにネットブックに搭載すれば、収益率はそれほど落ちないのではないかという見方である。


 韓国のネットブック市場は全ノートパソコン市場の10%を占めると予想されている。2008年1~10月のネットブック販売台数は8万台、年末までには18万台を見込んでいる。韓国IDCの調査によると、韓国ノートパソコンの販売台数は170~180万台前後である。





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(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年12月3日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20081125/1009959/

韓国サムスン、低価格ミニノート参入の成算

 韓ではプレミアム志向のブランド略をとっていたサムスン電子が、いよいよ低格のミニノトパソコン、いわゆる「ネットブック」に入する。台勢の攻勢で国内も追せざるを得ないという構は韓も日本と同なのだが、サムスンの場合は別の思惑もあるようだ。


 


 日本の量販店では、モバイルインタネットに加入すると台の低格ミニノトを100円程度で買えるといった販方法が人だが、韓でも同じようなシステムが登場している。モバイルWiMAXの「Wibro」に加入するとミニノトを安く買える仕組みで、台製のミニノトが発売されてからパソコンの格競は確に激しくなっている。


 


 


■先行する台勢、デルも人


 


 インタネットショッピングモルのロッテドットコムによると、2008年8月のノトパソコン上高は全家電の20%以上を占め、このうちミニノトの比率が30%を超え、年率300%近い伸びをみせているという。


 


 


  


でも低格ミニノトは人が上昇している


 


 


 火付け役であるASUSTeK Computer、MSIをはじめ台勢の製品は日本円で3万円以下という安さでみるみるうちに韓で勢力をげ、米デルもシェアを伸ばしている。デルの8.9インチ型液晶を搭載する「Inspiron Mini 9」は49万9000ウォン(約4万5000円)程度の格であり、携電話を買うより安く10カ月無利子の分割いも利用できる。フラッシュメモリを使うSSD搭載で、HDDタイプに比べて熱や音、速度が改善されたのがりだ。


 


 こうしたなか、韓パソコン市場トップで倒的シェアを占めているサムスンもついに10月、低格ミニト「NC10」を発売する。


 


 サムスンやLG電子は韓市場ではブランドイメジを保つためプレミアム路線に固執し、携電話や家電と同にパソコンも20万円を超えるような高機能モデル中心で、格競にはろうとしなかった。このため韓国内では、「回復の見みがない不景のなか、プレミアム略だけではこれ以上れない、台勢に負けてしまうという危機を感じたからかもしれない」などと分析されている。


 


 


  


サムスンが発売する「NC10」


 


 


10.2型液晶のハイスペックモデル


 


 サムスンの「NC10」は、パソコンに慣れた目の肥えたユ対応すべくスペックや機能を高めたのが特だ。低格ミニノトの弱点といわれる小さすぎて使い辛いキドは存のノトパソコンの93%の大きさを確保し、液晶も10.2インチ型と大きい。バッテリー駆動時間も最大8時間と長いが、大容量バッテリ57.72Wh)を入れても重さ1.3キロと量にもこだわった。


 


 さらに韓では動ケティングが流行っていて、履書も紙ではなく動で作るという時代を反映して、動投稿サイトを利用しやすいよう130万素のWEBカメラも付けた。インテルのAtomプロセッサ1GBのメモリ120GBのHDD、無線LAN、マルチメモリスロット、3つのUSBポトなど、 サイズはコンパクトでも存のノトパソコンとわらないという点を調している。


 


  


 これで格は6万9000円台を予定している。今は無線LANのみに対応しているが、今後は通信社と提携してWibroやHSDPAを内蔵した製品も発売するという。品販より通信プランとセットで安く買える提携モデルで販していく考えだ。


 


  


トライジェムの「Averatec Buddy」


 


 


 韓ではこのほか、中堅のTG三(トライジェム)がサムスンより一足早く「Averatec Buddy」を発売している。10.2インチ液晶にインテルAtomプロセッサ1GBのメモリ80GBのHDD、重さはバッテリを入れて1.4キロと、基本性能はHDD容量を除いてほぼ同じで、格はサムスンより若干安い約6万4900円となっている。


 


  


 


みの国内市場、守りを優先


 


 いわゆるネットブックといわれるジャンルは、面サイズが10型以下で、45ナノプロセスで製造されたAtomプロセッサを搭載し、おもにインタネット利用に使うノトパソコンを指す。サムスンなどの製品は、面サイズを含めて仕面を充させており、「韓型ネットブック」などとも呼ばれている。


 


 しかし、今まで20万円以上のノトパソコンをっていたサムスンが突然6万円台の製品を主力商品としてるとなれば、り上げ規模は然縮小する。サムスンやLGは携電話やテレビはグロバル市場でいが、パソコンにしてはまだ世界でえる況ではない。それでも低格ミニノトにり出すのは、ここで台勢に国内シェアまで奪われれば世界市場に進出するチャンスが永遠に失われるという判があるのだろう。


 


 


 


アススが日本で発売している「Eee PC 901-X」


 


 


 低格ミニノトは値段の安さからまだ家庭にパソコンが普及していない新興市場、2台目需要の高い米や日本、韓などのパソコン成熟市場の方を狙える。韓でこの春から低格ミニノトを販し始めた台は、まだ韓国内に顧客センタが少なく、アフタビスの不安がネックになっている。今のうちであればき返しは可能とみているだろう。


 


 ASUSの低格ミニノト「EeePC」シリズは2007年に世界で35万台れたが、2008年は500万台を目標としているという。韓IDCは2008年の韓市場でのパソコン販467万台と予想しており、ASUSは韓全土でれるパソコンよりも大きな市場を狙っている。ブランド値云と指をくわえて見ているわけにはいかないのだ。


 


 低格競まれるのは必至だが、だからといって放っておけば販はどんどん落ちむことが目に見えている。難しい選の岐路に立たされているわけだが、サムスンにはこれを克服できるチャンスがある。SSD市場の大だ。


 


  


■ミニノト向けSSDは年率5割成長


 


 サムスンは低格ミニノトでも採用されているSSDをさらに小さくした1.8インチの「Half Slim」という新しい規格のSATA2 SSDの量産を表している。この新しいSSDは8GB、16GB、32GBの3種類で、モバイルPCでの急速な市場大が見める。サムスンはネットブック向けのSSD市場が2011年まで年約57%成長すると見む。プレミアムノトパソコンがれなくなっても、これからミニノトには欠かせなくなるであろうSSD市場を大させていけば、十分な埋め合わせになるかもしれない。


 


 


 


 東芝も10月下旬にミニノトパソコン「NB100」を発売する


 


 


 今までM&Aには手を出さなかったサムスンがサンディスクの買について積極的な態度を示しているのも、東芝を出しいてSSDの主導を確保するのが狙いだろう。


 


 メル、インタネット、文書作成と基本的な機能が使えて持ち運びが便利な低格ミニノトのライバルは、ノトパソコンではなくスマトフォンといわれている。携電話ではインタネットを使わないとされていた韓人だが、パケット定額の導入でスマトフォンの割合も少しずつ伸びている。


 


 韓のモバイルWiMAXであるWibroに音通話機能を搭載するかもしれないという話も出ている。低格ミニノトからも音通話が使えるようになれば、携電話はいらなくなるかもしれない。時代がまた大きくわろうとしている。


 


 – 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
2008年10月1日
 


Original Source (NIKKEI NET) 


http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000001102008

サムスン電子の新端末、女性専用機能といわれても

サムスン電子がグローバル市場に向けて力を入れている「SOULフォン」シリーズに女性向け端末が新登場した。タッチパネル、500万画素カメラに地上波DMB(ワンセグ)受信、電子辞書やMP3など端末本来の機能がてんこ盛りで、カラーはメタリックなピンク色。その名も「SOULピンクエディション」と名づけられた。

 「SOULフォン」シリーズはタッチパネル携帯の中でも人気が高く7万円は下らない代物。しかしこの新しい端末の女性専用機能というのがネットで論争を巻き起こしている。


 例えばSOSサイレン機能。ボリュームボタンと上下方向キーを同時に押すとサイレンが鳴るという機能。夜道を一人で歩いていて危ない時にSOSを求められるというが、サイレンを鳴らすだけで、警察や家族に自動通報できる機能はない。強盗にあってサイレンを鳴らしたのはいいものの、誰も助けに来てくれず強盗を刺激するだけだったらどうする?もっと大きな事件になってしまう可能性だってある。


 しかもこのSOULフォン、2008年6潤オ8月に販売された約20万台は、112(韓国の110)に電話をかけると消防防災庁につながるという欠陥が発見された。犯罪の被害に遭い緊急通報したものの、電話がつながった消防防災庁ではなんでここに電話するんだといって切ってしまったということが何度もあったという。消防防災庁もひどい。そんな時は代わりに通報してくれたっていいじゃないか。


 被害者らが製造会社であるサムスン電子に苦情をいうとキャリアの問題だといい、キャリアはサムスン電子の問題だから責任は負えないと言っているようで、まだリコールには至っていないようだ。サイレンを鳴らして犯人を躊躇させてから警察に通報したくても警察につながらない。危ない状態は消費者不在のまま、まだ続きそうだ。


 もう一つは女性専用というよりSOULフォンの特徴であるが、電話がかかってきたようなふりができるという機能だ。これは自分に電話をかけられるようになっている機能で、タイマーのように予約もできる。退屈な会議から抜け出したいとき、タクシーの中で運転手さんに話しかけられたくない時に使うと便利だというが、ネットでは会社員が会議をさぼっていいのか、これは倫理的に問題がある、これのどこが女性専用機能だと論争になっている。


 確かに話しを早く切り上げたい時には電話がきたふりをするのも手であるが、これって新しい機能として大々的に宣伝するほどすごい機能なのだろうか?ネットでは、こんな機能を追加するより端末の値段を下げるか、欠陥のない端末を作ってほしいという書き込みが後を絶たないが、私も同感である。


 同じ端末モデルでも女性向け、男性向けに分けたり、細かい機能で分けたり、折りたたみかバータイプかで分けたり、ターゲットをはっきりさせるのが最近の傾向だ。ターゲットにしているユーザー層に喜ばれる機能を追加していくというサムスン電子の心配りは嬉しいけど、もうちょっと深く考えてほしい。そもそも、ピンク色を好まない女性だっているわけだし。女=ピンクということ自体、時代遅れじゃないか?どうも感性がずれている。ひょっとしたらこの女性専用機能、開発したのは男の人ではないだろうか。


 ただ、機能はどうであれ、SOULフォンの製品サイトはとてもよくできている。みなさんもぜひアクセスしてみてください。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年9月17日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080917/1007971/

韓国に来ないiPhone 3G、サムスンのiPhone対抗馬「OMNIA」

世界中がiPhone 3Gの発売で盛り上がっているこの頃、携帯電話の普及率が91%近いモバイル大国の一つ韓国では、なぜかいまだiPhoneの発売ニュースが届かない。7月11日から販売開始となる22カ国にも、年内発売可能となっている70カ国の中にも入っていない。キャリアのKTFから発売されるのではないか、iPhoneが発売されたらキャリアのシェアが変わるかもしれないほどインパクトがあるだろう、などなど噂ばかり飛び交っている。

 韓国でのiPhone発売に関してアップルの公式の立場はノーコメントである。しかし韓国ではほとんどの専門家が「WIPI(Wireless Internet Platform for Interoperability)」のせいではないかとみている。WIPIは2001年に韓国が国策事業として開発したモバイルインターネットの標準プラットフォームである。それ以前までも韓国のキャリアはそれぞれ違うプラットフォームを採用していたため、CP(Contents Provider)は3種類のモバイルコンテンツを制作しなくてはならないという不便があった。これをなくし、モバイルインターネットを活性化させるために導入されたのでがWIPIで、モバイルインターネットが使える携帯電話は搭載が義務づけられている。


 iPhoneも韓国で端末を販売するためにはWIPIを搭載しなくてはならないが、韓国のためだけにアップルが端末の仕様を変えるような面倒なことをするだろうか。しかしキャリアの立場としては一日でも早くiPhoneを販売したいので、費用を肩代わりするか、通話料のレべニューシェアをもっと積んであげるとか、そういう契約をしてでも持ってくるのではないかと見られている。


 韓国で発売予定はないとしても、iPhone 3Gは韓国にとって重要なニュースである。iPhoneのせいで世界市場でシェアを伸ばしているサムスン電子やLG電子の携帯電話のシェアが減るのではないかという予測が米国では登場しているからだ。米国の市場調査機関SA(Strategy Analytics)が2008年4月に調査した資料によると、2008年1~3月の世界の携帯電話市場シェアはサムスン電子が16.4%で2位、LG電子が8.6%で4位となっている。サムスン電子はモトローラを追い越し、LG電子もソニーエリクソンを抜いて4位になった。世界でも韓国でも両社のタッチパネル携帯電話がよく売れたおかげだ。


 特にサムスン電子は「Haptic」といって、タッチすると端末がぶるぶる震えたり、電話をかけた相手のバイオリズムに合わせた振動が着信音の代わりになったり、端末を傾けたり動かすことで写真をめくったり、データを見たり、ゲームもできる触感機能を強調したタッチフォンが人気を集めている。


 iPhoneとの競争で特に注目されているのは価格戦略への影響だ。iPhone 3Gはとにかく値段が安い。2年加入という条件付きではあるが、アメリカで199ドルで販売される。日本でも8GBが2万3040円から、16GBが3万4560円からと割安感がある。サムスン電子やLG電子の携帯電話は前述したとおり機能も充実しているし、デザインもいいことは認めるが、600~800ドルはする高級端末が中心である。ブランド価値を高めるため、あえて安い端末は売らないというのが韓国メーカーの携帯電話販売戦略だったが、iPhone 3Gに市場を食われないためには、価格競争でも負けない端末を販売しなくてはいけない。

早速、その影響は出始めた。サムスン電子は、米国でスプリントネクステルから6月20日付けで発売されたスマートフォン「Instinct」を、2年契約を条件にiPhone 3Gより安い129.99ドルで売り出している。「Instinct」は韓国で人気を集めた「Haptic」とほぼ同じ仕様だが、韓国では800ドル近い値段で売られていたのを、アメリカでは129.99ドルに値下げした。当初はこれより高い値段を設定したかったのだろうが、ここでアップル負けたらどんどんシェアを食われることを懸念して、真正面から価格競争に挑んだようだ。とはいえ、「韓国のユーザーを何だと思ってるんだ!」と怒りたくなるような値下げだ。シェアは維持できても収益は落ちるだろうから、今後、開発・製造面でのコスト削減が必須となってくるだろう。


 「Instinct」はデザインや機能もiPhone 3Gによく似ていることから、アップル対策用の端末と思われがちだが、それは米国市場での話。世界市場(日本でも報道があったが)では「OMNIA」という端末でiPhone 3Gとは勝負する(写真)。










iPhoneによく似たきょう体のOMNIA。日本での発売時期は未定だが、年内にもソフトバンクから発売されるという報道もあった


 6月17日~20日ソウルで開催された韓国最大規模のIT展示会「World IT Show2008」の目玉でもあった「OMNIA」はiPhone 3Gと同じく8GBタイプと16GBタイプがあり、外付けメモリで拡張できる。iPhone 3G より高画素な500万画素カメラ付きだ。バッテリーの持ち時間はやはりiPhone 3Gの方が優れているがOMNIAにはHaptic機能がある。液晶はiPhone 3Gよりも、少し小さいがその分全体のサイズも一回り小さくグリップ感をよくした。「OMNIA」はまず6月から東南アジアで発売され、順次世界各国で販売される。韓国では9月頃に登場する予定だ。 


 個人的には、「OMNIA」もいい携帯電話だと思うが、早くiPhoneが韓国にやってきてくれないと困る。そろそろ機種変更したいのだが、iPhoneが来ないと韓国国内の携帯電話市場では価格競争が始まらないからだ。韓国では、新規加入で補助金が付いていても端末価格は5万円はする。iPhoneなんて補助金なしでも半額だ!こんなに携帯電話が高いにもかかわらず、韓国人の機種変更は1年未満という調査結果が発表されたから信じられない。中国では携帯電話が身分を表すから払うお金は惜しまないという話を聞いたことがあるが、韓国もどうやらその通りになってきたみたいだ。韓国は今ちょうど家族割を始め、通話料値下げ競争の真っ只中。iPhoneが来て端末価格の競争も勃発してくれることを願う。韓国の端末価格はどう考えてもバブルとしか思えない。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年6月28日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080626/1005506/


韓国大手企業の2006年成績表・サムスンとLGの極端な差はどうして?

12月が年度末の韓国ではちょうど今頃、企業の推定実績発表と人事異動がマスコミを賑わす。朝鮮日報の報道によると、韓国企業ランキング100位までの大手企業の2006年度実績は、売上高が前年比7.07%増加した547兆576億ウォン(注)だが、営業利益と純利益はそれぞれ1.45%減、5.94%減の48兆3757億ウォンと43兆6523億ウォンだった。

 円安の影響から、海外市場でノートパソコンやHDTVなどの家電や自動車は、日本製の方が韓国製より安いという現象が発生した。韓国製品は価格競争力が落ち、輸出への依存度が高い企業は売れるけど儲からないという問題を抱えている。


韓国でも貧富の差は開く


 韓国を代表する自動車メーカーといえば現代自動車だが、不正資金工作・横領問題で会長が逮捕されたことに加えて、組合のリストラ、円・ドル安ウォン高と内外から締め付けられ純利益は32%も減りそうだ。日本市場には、ヨン様をモデルに起用し、韓国の国民車として愛される「ソナタ」を投入したが販売は苦戦し、ネットでは「日本の主婦向けにセダンを売り込むのは日韓の差を認識せずヨン様だけに頼った戦略の間違い」と指摘されてもいた。


 一方で、輸入車を扱う現代自動車の子会社はウォン高から外車の値下げ効果があり、売上高、純利益とも40%ほど成長した。景気が悪いといっても韓国国内での貧富の差は広がっている。実際には余裕資金の多い個人は増えていて高級外車と輸入食材、輸入赤ちゃん用品は飛ぶように売れている。今年のファッションはあまり寒くもないのに毛皮がトレンドだそうで、通勤の満員電車に毛皮で乗り込むOLが増えていて、私としてはくしゃみが止まらなくなるから困るくらいだ。


 大手企業の動向の中でも特に注目されているのは韓国の2大財閥系企業、サムスンとLG。2社の2006年の実績は極端な差が出た。時価総額韓国国内1位のサムスンはまずまずの実績を達成したのに比べ、LGは悪夢の1年というほど実績が落ち、グループ内の中核会社であるLG電子のCEO交代まで断行したほどだ。


 LGは今年グループ全社が大幅の純利益減少となった。主力事業の家電は純利益が54.5%減少した。LG電子製の携帯電話の人気が落ち、前々回紹介した「チョコレート」携帯が唯一の救いとなった。2005年純利益5170億ウォンでお祭り騒ぎだったLGフィリップスはLCDの価格急落で8000億ウォンの赤字、通信キャリアのLGテレコムも純利益11.74%減少、化粧品や洗剤などのLG生活健康は12%減少、LG化学は24.03%減少、持ち株会社のLGも26.49%減少した。


 LGは責任を追及するかたちで大規模な人事異動を断行し、グループ内の代表理事(日本でいうところの代表取締役)8人が新しく入れ替わった。今まで「和」を重視した人事から一変して、徹底した成果主義と未来志向的、グローバル経営強化の3つの原則に沿って行ったと発表した。LG電子の代表理事にはナム・ヨン前LGテレコムの社長が抜擢された。30年間LGに勤めた戦略通と呼ばれる人物で、攻撃的マーケティングでLGテレコムの加入者を増やし雨後の竹の子ように成長させたのが高く評価された。オーナーである会長の秘書室長でもあった人物だ。


 サムスンは営業利益は減ったものの純利益は4.44%増えた8兆ウォンと予想されている。サムスン物産や子会社の純利益も100%以上の成長が見込まれていることから「やっぱりサムスンは危機に強い、賢い企業」と評価されている。毎年年末になるとサムスン電子やキャリアのSKテレコム、LGテレコムは基本給の700~1000%がインセンティブで支給されると報道され、サラリーマン達を憂鬱にさせていたが、今年はどこも大規模なインセンティブは支給されない様子。でもサムスンは会社別の実績に応じて基本給の150%以内で支給し、1月には事業部別の目標を超過した利益を年俸として支給する制度があるため、事業部によっては年俸の50%近い金額をボーナスでもらえる人もいるということだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月26日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061226/257737/

サムスンが人材確保に躍起になるワケ

サムスン電子(サムスン電子)は10月、日本の慶応義塾大学とよく比べられる私立の名門、延世(ヨンセ)大と大学院に携帯電話専攻設立協約を結び、2007年から毎年、修士課程20人、博士課程8人を携帯電話の専門家として養成することにした。これを皮切りに、サムスンは韓国の主な大学と携帯電話専攻提携を広げていく計画だ。

専門家育成カリキュラムを専門大学で実施


 さらに韓国で初めて4校の専門大学とも提携し、サムスンが要求する半導体設計専門家、設備エンジニアを育成するカリキュラムを組んでいる。2007年2学期から大学ごとに30人を選抜し、半導体部門の「設計専門家」と「設備エンジニア」を養成するため「半導体技術教育プログラム(STEP : Semiconductor Technical Education Program)」を実施し、サムスンの就職に向けた教育プログラムを行う。こちらも同じように奨学金を支援する。サムスンの系列会社もそれぞれ大学と協力し、LCD、LED、セラミック、イメージセンサーモジュール、無線技術、部品の国産化、新素材開発を支援している。


 人材育成にここまで力を入れているのはサムスンくらいのもの。他の大手企業も奨学金制度こそあるが、サムスンほど大きな金額ではない。LG電子では大学生のグループを対象に、海外に出向いて調査を行い、その調査結果で優勝した学生はLGに入社できるという制度を運営しているが、規模は年々縮小している。


 サムスン電子の関係者は「大学での教育は現場のIT技術の早さに追いついていけない。毎年6000人以上の理工学部の新卒を採用し、800億ウォン以上を投資して再教育している。やっと会社の人間として使えるようになるまでには平均2年半もかかる。大学と提携してオーダーメイド式に人材を養成し、採用後すぐ実力を発揮してくれる高級人材を確保できるならば、授業料全額や生活費支援なんて安いもの。韓国の携帯電話産業を世界一にするためにも産学連携は絶対に必要だ」と話している。


国を代表するエリート


 サムスン電子は創意的、挑戦的、専門的なグローバル人材を自社の人材像としてよく話している。そして、同社の人材採用での選別は徹底していることから、韓国国内ではサムスン出身者=エリートという認識は強い。同社社員たちもその自負はあるだろう。


 ただ、優秀な学生を選び支援して会社に必要な人材として育てるのはいいけど、自由な発想を育てる期間であるはずの大学時代に、ここまでサムスン、サムスン、といわれてしまうと創意もなければ挑戦もないんじゃないかという気もしてくる。就職教育ばかりで学生時代の楽しさがなくなるというもの、学生にとっては不幸だ。


 就職難からか、この頃の韓国の大学生たちはサークル活動もせず、ノートの貸し借りもせず、とにかく優秀な成績を残すために必死になりすぎている。10年前まではレポートや試験前になれば図書館に集まってアドバイス(もちろん無料)してくれていた先輩たちが、今ではレポートや試験でいい点数を取るためのノウハウをネットで売買をしている。人間味がなくなったというか、競争のしすぎというか。もちろん遊ぶ人もいるだろうけど、今では、それは一部の姿となりつつある。


 企業側が、ここまで徹底して大学で人材を育成したいという気持ちもわかる。特に韓国は徴兵制が残っているから男性は大学を卒業するのが日本より3年遅い。大卒新入社員が既に24~25歳を超えているので、そこからまた再教育となれば社員として一人前になるのは27歳を超えてからとなってしまう。二浪、三浪していると、本格的なスタートは30歳を超えてしまう場合だってある。これは確かに企業の負担も大きい。楽しい大学時代を保証しつつ、専門人材としての養成を受けられる、この両方は選べないものか。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年11月28日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061121/254360/