WiMaxの普及を目指し100円ネットブックが登場

 2009年1~3月に韓国で販売されたミニノートパソコンは11万台。シェア1位はサムスン電子の5万台。以下、LG電子が2万7000台、アスーステック・コンピューター(ASUS)の1万4000台と続く(ちなみに、「ネットブック」という単語は商標権があるため使えないそうだ。韓国ではメーカーもマスコミもネットブックではなく「ミニノートブック」と表記している。韓国経済新聞の記事によるとノートブックという単語は1988年に東芝が初めて使ったけど、商標権を主張せず全世界で誰でも自由に使えるようにしたのだとか)。


 サムスン電子は、他のメーカーより遅れて2008年9月に初めてミニノートパソコン「NC10」の販売を始めた。そして、2009年4月に深沢直人のデザインした小石のように丸くてやわらかい素材のミニノートパソコン「N310」をヒットさせた。レッドオレンジ、トルコブルーといった鮮やかなカラーも人気の秘訣。10.1型の液晶ディスプレイに標準バッテリー装着で1.23Kg、動作時間は最大4時間。大容量バッテリーを使えば11時間も使用できる。価格は90万ウォン台と、ASUSのおよそ2倍なのでミニノートにしては高い。


 サムスン電子の携帯電話やテレビは世界市場でよく売れているが、ノートパソコンは正直サムスンというブランド力の割には売れていない。サムスン製ノートパソコンの世界市場における販売台数は2008年で200万台ほど。ミニノートの人気を背景に2009年は2倍以上の500万台を目指している。この目標を達成できれば、グローバルなノートパソコン市場で7~8位ぐらいになるはずだ。


 不景気で高機能ノートパソコンが売れなくなった分を、ミニノートパソコンが埋めている。そのため、メーカーにとってはミニノートパソコンが何よりも大事な主力商品となりつつある。従って、広告やキャンペーンにも力が入る。ブロガー向け体験イベントや動画投稿サイトを利用した宣伝も増えてきた。


 さらに、韓国版モバイルWiMax「WiBro」(関連記事)の活性化計画の一つとして、WiBroに加入すると補助金でミニノートパソコンが半額近く値引きされる。その結果、家電量販店だけでなく、キャリアの代理店でもミニノートパソコンが購入できるようになった。パソコンメーカーの立場からすると、キャリアが一括して買い上げてくれるので、一気にまとまった台数を販売できる、この上なくうれしいニュースである。

WiBroの事業者KTは、月50GBまで利用できるWiBro無制限50に月2万7000ウォン(約2100円)で24カ月間利用する契約で、同時にミニノートパソコンを購入すると、毎月1万ウォンずつ、合計24万ウォンの補助金を支給する。KTは2008年6月よりパソコンメーカー7社と契約し、WiBro+ミニノートパソコンで10万~20万ウォンの補助金をつけている。


 韓国では2002年末からキャリアが加入者へ携帯電話端末価格を割り引く端末購入補助金が禁じられていたが、2008年に復活した。その一環として、WiBroに一定期間加入すればミニノートパソコンにも補助金をつけられるようになった。KTの場合、補助金をつけ始めてから、WiBroへの加入が月1万人のペースで増えているという。WiBro事業者であるSKテレコムもやはり、パソコンメーカーとの提携を進めている。2009年はWiBro補助金によるミニノートパソコン販売が全体の3~4割を占めると予想されている。


 最も安いミニノートパソコンが40万ウォン台なので、24カ月間WiBroを使えばただ同然となるケースもある。割引後の代金を契約期間中、月賦払いにできるので、携帯電話を買うよりも負担が少ない。最近のハイエンド端末は80万ウォン台、補助金に約定加入割引に長期加入割引などを利用しても40万ウォンを下回らないので、ノートパソコンの方が安く手に入れられる。携帯電話からネットにアクセスするより、ミニノートを持ち歩いた方が安くて便利だ。だから韓国では携帯電話のデータ通信売り上げが伸びないのかもしれない。


 ヒューレットパッカード(HP)はWiBro補助金に合わせて、アメリカで299ドルの「Mini 110」シリーズを韓国でさらに安く販売できるようKTと提携を打診している。韓国HPは「通信会社はこのごろ、スマートフォンの販売に力を入れてきたが、スマートフォンは値段が高すぎる。ミニノートパソコンは補助金で学生でも気軽に購入できるようになる」「スマートフォンとミニノートパソコンは用途が違うので、スマートフォンがパソコンに代わるとはいえない」「韓国はインターネットの利用率が高く、ミニノートパソコンの興味を持つユーザーが多いので、補助金がもらえるとなれば早期拡大が期待される」と通信会社との提携に積極的だ。


 ASUSのEeePCの発売をきっかけに火がついた韓国のミニノートパソコン市場は、サムスンのデザインを強化したミニノートの登場とWiBro補助金でさらに盛り上がっている。WiBroも利用できる地域が広くなった分、2009年はWiBro加入者も増やしてミニノートパソコンも売るWin-Winを目指す。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年6月11日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090611/1015928/

韓国市場でもついに!ネットブック好調でノートパソコンがデスクトップを上回る

ついに韓国にもノートパソコンがデスクトップを上回る時代が来そうだ。

 韓国IDCは、韓国でもついに、2009年はネットブックの好調によりノートパソコンがデスクトップの販売金額を上回るとの市場予測を発表した。2009年にはノートパソコンが3.3%増加の2兆243億ウォン(約1440億円)を記録、デスクトップは5.3%減少した1兆9467億ウォン(約1385億円)で、2013年にはノートパソコンが2兆2517億ウォン(約1600億円)、デスクトップが1兆7091億ウォン(約1216億円)とその差はもっと開くと予測している。


 海外では既にデスクトップよりノートパソコンが売れる時代になったのだが、韓国では持ち運べることよりもゲームや動画を利用しやすい大きなモニター、大容量の記憶装置、処理の速さを重視する傾向が強かったことからデスクトップ人気が根強かった。また依然として、オンラインゲームをするために集まるPCバン(韓国版インターネットカフェ)や学校・企業での大量注文がデスクトップに集中しているため、ノートパソコンの販売台数は意外と伸び悩んでいたのだ。


 ところが、昨年あたりからカフェでノートパソコンを開いて何かしている人の数が目立って増えた。首都圏では無線LANやWibro(モバイルWiMAX)がばっちり行き届いているので、ノートパソコンを持ち歩きながら外で仕事をする人も増えてきたようだ。


 販売台数を比べると、2008年でもノートパソコンが173万台、デスクトップが267万台と100万台ほどの差があった。しかし小さくて軽くて機能は揃っているネットブックが好調で、性能もさらに改良されたことから2009年には台数ベースでもノートパソコンの方が売れると見込んでいる。韓国のノートパソコン販売台数は毎年平均5.6%成長し、2013年には227万台に達するという予測だ。一方デスクトップは年平均3.4%減少すると推定された。パソコン市場全体は2010年から回復し、2013年には合わせて467万台規模にのぼる見込み。


 ソウル市内の電気街にある大手量販店でもネットブックがノートパソコン販売台数の20%ほどを占めるようになってきたと話していた。


韓国の大手メーカーもネットブックのラインアップをどんどん増やしている。LG電子は携帯電話とカラーやデザインを組み合わせたネットブックで話題になっている。ライム、チェリーなどのパステルカラーが魅力の「アイスクリームフォン」と呼ばれる携帯電話と同じカラー展開で、とてもかわいい(この件は前回も紹介した)。Windowsを立ち上げなくても音楽を聴いたり、メールをチェックできる「スマートオン」機能が搭載されているのも便利。

 サムスン電子も外部衝撃に強く耐えられ、バッテリーを10時間以上使えるようアップグレードされた新しいネットブックを発売した。サムスンとLGはネットブックをアジアやヨーロッパ市場でも販売するとしている。


 韓国のネットブックはキーボードが小さくて打ちにくい、タッチパッドが小さくてカーソルを上手く動かせないといったユーザーの声を反映して、どんどん使いやすくなっている。2台目というより、初めてノートパソコンを使う人にも向いている。


 しかし改良されるのはいいが、その度に少しずつ重くなっているので(1.3kg前後)、本来ネットブックが求めていた姿から遠ざかっているようにも思える。毎日ノートパソコンを持ち歩いている私にとっては、軽いのが一番!「VAIO type P」は軽さでは一番だけど、キーボードの真ん中にあるマウスボールがどうも動かしにくくて気合を入れないとカーソルが全然違う方向へ行ってしまう。


 ああ、本当に600グラム程度でキーボードとマウスが使いやすいネットブック探してます!


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年4月1日

-Original column

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090330/1013711/