ネット検索は信用できない? ユーザー詐称する広告代理店を処罰

Yahoo知恵袋を始めとして、教えてgoo、価格ドットコム、アットコスメなど、ユーザーがユーザーへ質問し教えてもらったり、商品を購入する前に同じユーザー目線で書かれた他の人の経験を検索して参考にしたり、ということが定着している。

 韓国でもブロードバンドが始まって間もない頃から、オンラインゲームのチャットを利用して宿題を教えてもらったり、コミュニティサイトを通じて口コミをしたり、もっとさかのぼればPC通信の時代から見ず知らずのユーザー同士が助け合ったり、ということがよくあった。


 韓国で最も利用されている口コミはポータルサイトNAVERの「知識検索」。ユーザー同士が質問をして教えてもらうサービスだ。「ノートパソコンの中でもっとも軽いのはどれ」「携帯電話AとBのどっちを買うべき」「二重手術が上手な整形外科はどこ」「深夜にやけどをしてしまってどうしたらいい」「交通事故を起こしてしまった場合はどのように対処すればいい」、といった今すぐ解決したい疑問が書き込まれ、みんなが自分の経験を語りアドバイスしてくれる。キーワード広告やバナー広告、企業が提供する情報よりも信頼できる情報として親しまれてきた。


 ところが、ユーザーの信頼の上に成り立つ知識検索を悪用した広告代理店6社が摘発されたことから、口コミの信頼ががた落ちしている。盗んだ個人情報で4900個ものアカウントを作り、一般ユーザーのふりをして「ここがよかったよ~」と、特定のお店やWebサイトの宣伝をしていた。つまり、私達が利用したのは知識検索ではなく広告検索だったのだ。


 なんと、2008年11月から09年6月まで、2万4000件ものユーザーを詐称した宣伝を書き込み、広告主から1億4000万ウォン(約1100万円)を受け取っていた。さらに、特定キーワードの質問には自動的に広告が答えとして登録されるプログラムや、広告が書き込まれた掲示物を推薦して検索キーワード順位上位に押し上げるプログラムまで使っていたのだ。このプログラムを68社もの広告代理店に販売したというから、「検索キーワード上位にあるものがホッとな話題」ではなかったということだ。口コミのように書かれた広告は、主に整形外科、フラワーショップ、ショッピングモール、アダルトサイトの広告に集中していた。

NAVERも広告を書き込んだIDやIPアドレスではアクセスできないようにしたが、自動プログラムにまでは対応しきれなかったようだ。これからは取り締まりを強化し、信頼して利用できる知識検索にしていくとしている。


 この直後に行われたアンケート(回答数1016人)では、実に84.8%の人が「検索結果の信頼性に疑問を感じる」と答えている。NAVERが信頼を取り戻すには時間がかかりそうだ。信頼できない検索サービスとしては(複数選択)知識検索56.3%、ブログ32.8%、ニュース21.8%、カフェ(同好会)14.4%の順だった。検索結果を信頼できない理由については、ほしい情報が出てこない、専門性がない情報、内容に不満(広告ばかり)といったことが選ばれた。


 警察は、「これは消費者の意思決定を妨害する悪質な行為であるため起訴した」と説明している。このように信頼がなくなってしまうと、自然とインターネット広告市場の萎縮につながる。1回クリック当たりいくらか費用を払う広告ではなく、このように抜け道を使った広告をすれば費用も安く収められるからだ。


 今回の事件は検索サービスや広告の信頼をなくすだけでは済まなかった。個人情報を盗んでIDを大量に作り利用していたというのがもっと深刻な問題である。知らないうちに共犯者になっていた4900人に、その事実を知らせてあげるべきではないだろうか。


 ショッピングの前は検索が当たり前だったのに、全部広告に騙されていたような気がして後味が悪い。広告か口コミかを判断するのはやっぱりユーザー自身。嘘を見抜く目を持たないといけない。この際、検索に頼る受け身なユーザーにならず、些細なことでもどんどん自分から情報発信して、健全なネット作りに一躍してみたくもなる。ユーザー同士の助け合い、マスコラボレーションはこれからも萎縮されないことを願う。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年10月28日

-Original column

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20091028/1019904/