Windows 7への期待からパソコン関連株が急騰! 一方でユーザーの反応は?

Windows Vistaの互換性問題で一騒ぎあった韓国では、ユーザーの多くが未だに2001年発売のWindows XPを使っている。Vistaが搭載された最新パソコンを買って、わざわざダウングレードしているほどだ。

 しかし今度は違う。Windows 7は最初から「XPとの互換性ばっちり!」を謳い文句にしているせいか、正式販売前なのに体験版を試したユーザーの意見を投稿できるサポーターサイトが登場した。5万8800人以上が加入している「Windows 7サポーターズカフェ」には、Windows 7をインストールしたパソコンの画面キャプチャーや、XP/Vistaとの違いを比べる動画、Windows 7を最適に利用できるパソコンの組み立て情報などが投稿されている。このようにユーザーの満足度はかなり高い。


 株価も動いている。パソコンのアップグレード需要を見込み、パソコン部品製造会社やLCD関連会社の株価が急騰しているのだ。Windows 7はメモリが1GB程度でも快適に動くというので、パソコンの買い替え需要よりアップグレードが多いと見込まれている。


 また省エネ機能でVistaに比べ電気を節約できるため、バッテリーが15%ほど長持ちするという話しもある。Windows 7効果で、ノートパソコンやネットブックの売り上げが今まで以上に増加するのではないかとも見られている。


 Windows 7の機能の中で、もっとも期待されているのはiPhoneに実装されているようなマルチタッチである。NAVERの知識検索(ユーザー同士の質問と答え)では、「タッチ機能を使うにはどうしたらしいのか」「どんなモニターがいいのか」「どんなノートパソコンがいいのか」といった質問が登場している。タッチ機能を使うためには、タッチパネル対応のモニターに買い換えなくてはならない。パソコン販売会社のサムスン電子やサムボコンピューターも、タッチ機能を生かしたノートパソコンやモニターに力を入れている。韓国ヒューレット・パッカード(HP)は、タッチパネルを備えたノートPCを大幅値下げした。パソコンの使い方にも変化があらわれるとなれば、ゲームやソフトもタッチ方式中心のものに変わるだろう。


 10月7日には、ついにWindows 7の価格が発表された。韓国マイクロソフトのネット販売サイト「マイクロソフトストア」での正規価格は、Home Premiumが27万9000ウォン(約2万円、日本価格は通常版2万4800円)、Ultimateは38万9000ウォン(約2万9000円、日本価格は通常版3万8800円)。通常版を購入するとタッチマウスや8GBのメモリを先着777人に進呈するイベントも開始している。


 VistaやXPからのアップグレードはHome Premiumが15万8000ウォン、Ultimateが29万5000ウォンと日本に比べて若干安くなっているが、やはり韓国の所得水準を考慮すると個人が買うには高すぎる。


 韓国では政府の徹底した知的財産権の取り締まりにより、違法コピーは減っている。これは取り締まりの影響だけでなく、ソフトウエア業界が個人向けに値下げをした結果でもある。無料で使えるソフトも増えている中、個人としては手が出ない高すぎる料金設定では違法を量産するばかりという判断から、払える範囲内の料金設定でユーザーを犯罪者にさせないよう動いている。韓国MSも大学生に限定してアップグレード料金を値下げすることを検討しているという。


 Windows 7のおかげで久々に活気が出てきたパソコン市場であるが、一方では「OSなんて、もう関係ない」という意見がある。「これからはOSより、もっとスピーディーにインターネットにアクセスできるWeb環境の方が重要」と見ているユーザーも少なくない。GoogleやNAVERのようなポータルサイトにさえアクセスできれば、資料の検索・作成・共有やコンテンツ利用など、必要なことは一通りできるからだ。


 日本も韓国も久々のユーザーの興味を引くため、何かと「Windows 7」をひっぱりだしている。OSなんてXPで十分、と思いながらもパソコン売り場の前を素通りできない今日この頃。秋の食欲と物欲、どっちも抑えられない!



(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
[2009年10月7日]

-Original column

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20091007/1019230/

Vista登場でも苦戦の韓国パソコン市場で、売れ始めた意外なもの [2007年2月6日]

1月31日、ついにVistaが発売されたが、Vistaがどうのこうのと盛り上がったのは当日ぐらい。マイクロソフトは人気アナウンサーの司会に、人気プロゲーマーまで招待したVista発表会を盛大に開催したが、その現場ですらVistaにアップグレードするとサムスン電子やアイリバーのMP3プレーヤーが使えなくなった、iPodが使えなくなった、このサイトが立ち上がらなくなったと苦情ばかり目立っていた。そんな中でVistaで盛り上がろうと必死になっているのはマイクロソフトよりもパソコンメーカー。当のマイクロソフトは「10カ月後にはほとんどのパソコンでVistaが使われるはず」と自身満々の様子なのだが。

新入学商戦、「子供のため」も通用せず


 パソコンメーカーが必死になるのも仕方がない。2006年末からパソコンメーカーは「今購入してもWindows Vista無償アップグレードお付けします!」と騒ぎ、韓国人の最大の弱みである「みんな買い換えているのに古いパソコンのままではあなたの子供が恥をかく、仲間はずれにされる」と口説いているが、どうもぱっとしないのだ。


 韓国では何でも「プレミアム」、「子供の教育のため」というと売れる。他人の目に映る自分をとても意識しているうえに、少子化を背景とした教育熱が重なり、子供のためなら多少の出費は惜しまないからだ。現に、いまや一般の家庭でも、子供の数だけパソコンを持つのが当たり前になってきている。


 また韓国は2月が卒業式、3月が入学式なので卒業・入学祝いという名目で今が最もパソコンが売れる時期だ。2月18日はお正月(以前も書いたとおり、韓国では重要なイベントは旧暦で行う)なので、お年玉でオンラインゲームがすいすい利用できるパソコンを買いたがる子供も多い。


 そんなこんなでこの時期は、パソコンメーカーごとに新製品を発売し、懸賞イベントやおまけ合戦も過熱される。テレホンショッピングやオンラインショッピングでも、どこもかしこもパソコンとノートパソコンだらけになっているが、売れ行きは期待を下回っている。最も大きな顧客である企業と役所でのVistaアップグレードがまだ躊躇(ちゅうちょ)されている状況のため、パソコン買い替え需要は、3月以降にずれ込むと見られている。


 メーカーは「Vista対応だとどうしても高性能・高価格になっていまうので、100万ウォン(約13万円)ちょっとで買える普及型パソコンも発売する予定」だそう。ところが、パソコンの周辺市場では、Vistaのおかげで、意外なところが活気を取り戻している。


 大型液晶ディスプレイ市場だ。



市場の4分の1は20インチ以上に


 大型液晶ディスプレイ市場では、20インチ以上の製品が占める割合は2006年では11%ほどだったのが、2007年は25%に拡大すると予想されている。既に市場に出回っている50種類ほどのディスプレイ製品のうち、約6割が20インチ以上となっている。


 その理由は、マイクロソフトがVistaは22インチ以上の液晶ディスプレイに最適化されていると発表したことにある。それを受けて、中小メーカーが大型ディスプレイ製造に飛び込んできた結果、サムスン電子、LG電子など大手メーカーの大型液晶ディスプレイの価格は急落した。一部中小メーカーではWindows Vista認定ロゴの取得を急ぐ一方、20インチモニターを19インチモニターより安く販売しているほどだ。22インチ、24インチも同じように大幅の値下げが行われ、20インチは20万ウォン台(約2万4千円台)、22インチは40万ウォン台(約5万円台)にまで落ちた。


 低価格攻勢にさらされているサムスン電子は20、22、24インチそれぞれの大型液晶ディスプレイのプレミアムモデルを2006年12月と2007年1月に発売し、性能はもちろんデザインも優れた製品であることをアピール、Vistaにはサムスン電子のモニターが最も相性がいいと宣伝している。LG電子も19、20、22、24インチLCDモニターの新モデルを一挙発売し、コントラスト比3000:1、応答速度2ミリ秒と、群を抜く高性能をアピールしている。そのほか、大手ではHPのタッチスクリーンや回転できるモニターも注目されている。


 オンラインゲームやVOD(ビデオ・オン・デマンド)鑑賞のため利用することが多いパソコン用ディスプレイの需要には火がついたようで19インチから22インチへ買い替えが進んでいる。ソウルの秋葉原といわれる竜山(ヨンサン)では一度に50~60台の大量注文が全国から届いている。本体も部品も売れない中、唯一の救いになっているようだ。


 さらに、パソコン用ディスプレイを買い替えるついでにテレビも大型液晶のものに買い換える家庭も増えているようで、40インチのテレビは前年比40%、32インチは30%ほど安くなっている。50インチの値段も下がり始めた。市場で人気の高い40インチが42インチより値段が高くなる怪現象も起きている。現時点では、Vistaも話題だが、ブロードバンドでの動画配信やデジタル放送への出費を優先する家庭の方が実際には多いようだ。


 携帯電話よりもパソコンでネットを使う方が便利と思っている人が大半を占めるだけに、韓国でパソコンが売れなくなることはないだろうけど、Vistaの登場をきっかけとしたパソコン市場の動揺はまだ当分続きそうだ。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070206/260864/