副業として人気のビジネス、アイドルも例外じゃない?

老後のためにレストランやショップ、会社を経営する芸能人が増えてきた。ちょっと前までも芸能界を引退してから食堂を経営したり、ビジネスを立ち上げたりするか、自分の写真入り記念品やアジアの韓流ファンを狙ったお土産程度の品物を販売するショップが主流だったが、それが成長して今では本格的なデザインショップを運営するスターも登場した。芸能人グッズとは思えないクオリティーの高いアクセサリーやファッショングッズを自らデザインして販売するショップを持つのは、日本でも人気の高いジウ姫やイ・ビョンホンなど。特にジウ姫のデザインした靴は履きやすくてかわいいと評判が高い。

 最近韓国の芸能人の間では、もっと手軽な副業が人気を集めている。それはインターネット上にお店を持つことである。ショッピングモールに名前を貸すだけの人もいるが、自ら問屋に行って商品を買い付け、モデルとしてサイトに登場し、商品の説明も自ら書き込むなど、積極的に運営にかかわる人が増えている。主にファッションアイテムが多く、自分のお店で売る商品をテレビで着用して宣伝するなどしている。インターネットショッピングモールを運営する副業は特に20~30代の女性芸能人に多く、自分がデザインした商品を販売するケースも増えている。


 芸能人のインターネット副業ブームはアイドルグループも例外ではない。もちろん、本人達は忙しいので、事務所側が運営をバックアップし、利益をシェアする場合が多い。


 日本でも話題の女性アイドルグループ「KARA」が参加するショップ「KARAYA」は芸能人インターネットショッピングサイトの人気上位ランキングをいつも占めている。洋服が中心のファッションストアで、KARAのメンバーがモデルとして登場している。サイトの構成もショッピングだけでなく、KARAが出演する番組情報やKARAのメンバーが教えてくれるコーディネートアドバイスもあり、ちょっとしたファンサイトのようになっている。




実はKARAYAは某番組の企画で誕生したショップ。女性向けにインターネットショッピングモールを立ち上げる手続きや運営ノウハウを教えるという特集番組で、KARAが直接お手本となってインターネットにお店を作り、その過程をすべて番組で見せようということから始まったショップなのだ。


 KARAのメンバーが役所に行って事業者登録し、商品の写真を撮ってショッピングモールに掲載する方法などを体験する過程を番組にすることで、そのまま見て真似れば誰でもインターネットにお店が持てます、という企画だった。韓国の雑誌や新聞にも頻繁に取り上げられているせいか、KARAYAはオープンして間もないというのに1日の訪問者数は2万人を下らない。20代女性が気軽に着られるお手頃価格のものばかりで、売り上げが1日数千万ウォン規模もあるというからすごい。KARAのようにかわいくなりたいと願うファンの間では聖地のようなサイトになっているのだ。


 お笑い芸人もインターネットショッピングモール運営に乗り出していて、ビキニ水着専用ショップを運営したり、海外で買い付けた1点もののアクセサリーだけ扱うショップを運営したり、専門ショップで勝負するケースが多かった。ビキニを着た美人モデルの隣でおとぼけポーズで一緒に写真を撮り、それをショップの商品紹介の写真に使うことで笑いもとり商品も売るという戦略で話題になっている。


 テレビCMや雑誌広告で宣伝するお金のない中小企業のブランドは、知名度を上げるため芸能人ショップにわざと安く洋服を提供することもあるという。ショップ側としてもほかのショップより安く売れるのであればお客さんは喜んでくれるので、Win-Winというわけだ。


 しかし芸能人のお店だから売れるというプレミアムは最初の数カ月だけで、結局ほかのショップと同じように、価格や商品の品ぞろえ、配送の素早さが売り上げの決め手だという。芸能人インターネットショッピングモールはその人のファッションセンスをアピールする場にもなるので、下手に手を出すと「テレビではかわいくしているのに売り物はダサい」とネットに書きこまれ、好感度ががくっと落ちてしまうことすらある。


 芸能人に限らず、韓国では就職難から20~30代女性が就職をあきらめ自分でお店を持つケースが急増している。オフラインではなかなか売っていないビッグサイズ洋服専門店や1年中夏服しか売らない専門店で成功し、パソコン1台、カメラ1台で創業して今や億万長者という人も数人登場している。中には女子高生が高校生向けのファッションモールを立ち上げたところ大当たりしたケースもあった。韓国政府も「インターネット起業」に関する無料講座を全国各地で実施し、失業対策として取り組んでいる。


 最近はスマートフォンのアプリケーションとして利用できるショッピングモールが大人気で、芸能人ショップもほかのショップもみんなスマートフォンへと移行している。Twitterのようにソーシャルネットワークサイトと連動したショップも人気が高く、好きな芸能人をフォローしながらおそろいの服を着るファンがますます増えそうだ。

趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年7月1日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100630/1025841/