拡大続く韓国のインターネット、ホームショッピング (過去記事)

韓国では今インターネット通販はもちろん、ホームショッピングが熱い。ホームショッピングとはCATVで広告の代わりに流しているテレホンショッピングのことで、95年8月に政府主導で登場し、「CJホームショッピング」と業界1位の「LGホームショッピング」が生まれた。2001年には放送委員会の承認を受けて「農水産TV」、「ウリホームショッピング」、「現代ホームショッピング」の3社が加わり、現在5社がCATVのチャンネルを確保し24時間テレホンショッピングの番組を流している。

いつでもどこでもだれにでも売る


 ホームショッピングは95年当初34億ウォンの目立たない市場だった。しかし、8年後の2002年には、1500倍の5兆ウォンの市場に急成長し、今では小売市場を支配する強者として流通業界を動かしている。CATVの視聴世帯が1100万、このうち600万世帯がホームショッピングチャンネルを頻繁に視聴している。この勢いでホームショッピングの事業主はインターネットにも進出、TV、カタログ、インターネット3つの分野で事業展開している。


 インターネット通販とホームショッピングは直接商品を見ずに買うという点では同じ顧客層を狙っているように見える。しかし、インターネットは主に20代と30代、ホームショッピングは中年層や特に購買力のある主婦をターゲットにしている。時代を反映し、いつでもどこでもだれにでも売ってやる、という意気込みだ。昨年まではホームショッピングが90%、インターネットが10%ほどだったが、今年に入りインターネットでの通販が20%にまで増えている。


 オフラインの大手百貨店も現代をはじめ、インターネット以外のホームショッピングに事業を拡大させている。品そろえは同じで販売チャンネルを増やすだけ、と最少限の人員で運営する「新世界デパート」(http://www.shinsegae.com)もあれば、「ロッテデパート」(http://www.lotte.com)や「現代デパート」(http://www.hmall.com)のようにこれがわが社の生きる道と大々的にやっているところもある。どちらとも直接販売でないインターネット通販とホームショッピングの売り上げは絶好調だ。



ホームショッピング最大手2社




LGeショップ(http://www.lgeshop.com)
 ホームショッピング、インターネット通販両方の老舗であり、トップ企業でもある。 2001年 1009億ウォン、2002年には2840億ウォンの売り上げを達成した。1万5000人の顧客評価団を募集し、6000件以上の商品評価や購入の知恵を提供している。情報ショッピングという戦略に合わせ、毎週「借家用のお金をかけないインテリア」、「結婚5年目の食器買い替え」などテーマを絞り、顧客が推薦する商品を集め別途売り場を作っており、これが大好評。
CJモール(http://www.CJmall.com)
 ホームショッピングとカタログ通販の商品をそのままインターネット環境で提供している。何でもインターネットで済ませたがる20代と女性に人気がある。動画やインターネットラジオを利用して今何を安く売っているのかTVと同じように放送しているので、見ながら聞きながらショッピングできる。250万人に及ぶ会員の65%が女性なので生活用品、ファッション、雑貨がよく売れる。


老舗百貨店の売り上げ超える


 IMF経済危機の時以上に家計が苦しく、就職難やリストラが続く不景気の中、どうしてインターネットやテレビによる通販はこれほど成長しているのか。その理由はまず韓国の個人消費が景気に関係なく縮小していない、というところにあるだろう。2003年に入り、個人消費が落ち込んだが、日本に比べればはるかに元気がいい。


 全国経済人連合会の発表によると2002年のテレビを通じたホームショッピングの市場規模は5兆2000億ウォン、インターネット通販は4兆6000億ウォン、カタログ通販は1兆ウォンと、家の中で済ませてしまう小売市場が何と11兆ウォンにのぼる。130兆ウォン近い小売市場の中でホームショッピングやインターネット通販の割合はまだまだ9%に満たないが、2001年から2002年の成長率は40%を超えている。百貨店が8%、コンビニが16%程度なので、流通業の中では最も高い成長率だ。LGホームショッピングの売り上げは韓国の老舗百貨店「ロッテデパート」本店の売り上げの1.5倍にものぼる。


 大韓商工会議所が発表した「2002年度小売業経営動態の調査」でも同じような結果になっている。昨年の通信販売業の平均売上高は1企業当たり2,567.7億ウォン、前年比97.0%増加した。ホームショッピングとインターネット通販のモール部門の売り上げはそれぞれ119.5%、133.5%増加、百貨店(2,207.0億ウォン)、ディスカウントショップ(878.6億ウォン)、スーパーマーケット(27.2億ウォン)の店鋪当り売り上げもそれぞれ12.9%、 5.8%、10.5%増加した。百貨店は週休2日制の普及やサッカーW杯開催などによりロッテ、新世界、現代など3大百貨店が史上最大の売り上げを記録するなど、2002年も安定的に売り上げを伸ばし売上高営業利益率も5.9%を達成した。


画面から目が離せない「中毒症候群」


 ホームションピングは流通だけでなく産業の構造をも変えてしまった。百貨店に納品することが至難の業だった無名の中小企業がホームショッピングを通じて業界一の売り上げを記録したなどというニュースにはもう驚かなくなった。インターネット通販やホームショッピングへの出荷を拒んでいた大手メーカーやブランド品メーカーが今ではホームショッピング限定品まで出すようになった。ホームショッピングで扱う商品は食品、自動車、団体ツアー、留学に続いてつい先日「カナダ移民斡旋」商品まで登場し、1時間で140億ウォン近く売れるなど何でもありの世界になっている。


 このような急成長の陰にはもちろん様々な問題もある。韓国では昼間と深夜は地上波放送が休止になるので、その埋め合わせに見るものがホームショッピングチャンネルしかなく、見ているうちについ買ってしまうという事情もある。商品よりおまけの景品目当てに衝動買いし購入と返品を繰り返したり、「TVを見ていない間にもっと安い商品が登場するかもしれない」と不安になりCATVから目が離せなくなる「ホームショッピング中毒症候群」まで登場した。


「何となく衝動買い」で高い返品率


 今年6月のホームショッピングの平均返品率は12-13%、商品を直接見ずに買うからとは言ってもこれは異常に高い。商品に問題があるわけではなく、「なんとなく衝動買いしてしまったがやっぱりいらない」と返品している人が多いからだ。韓国の場合、送料までも企業が負担しているから大変だ。返品を繰り返す人はブラックリストに載せ、何とか注文させないよう電話をつながなかったり、買う前にもう一度考えてほしいと哀願したり、様々な手を尽くしているが返品率は上がる一方だ。


 おかげでホームショッピングに返品されたものだけを安く扱うインターネット通販サイトまで登場した。返品ドットコム(http://www.vanpum.com)では、消費者保護法により新品として再度売るわけにはいかない返品商品を50%~70%引きで販売している。


安い、親切、便利で急成長


 ホームショッピング市場が急成長した最も大きな理由はなんと言っても安い、親切、便利――この3つだ。怪しい商品ではなくだれもが知っている商品を百貨店やスーパーより20-30%安い値段で売っている。おなじみの商品なので直接ものを見なくても値段で買いたくなるような商品をまずそろえ、さらにアイデア商品も提供、30日以内だったら無条件返品可能、電話1本で購入から返品まで受け付けるという利便性などを生かし、既存の流通業態と差別化した。さらに24時間生放送で、顧客の特徴と購入履歴を即時にデータベース化し、天気や季節に合わせて商品構成を変えていくなど、その販売手法も高く評価されている。売り場も必要なく、メーカーから直接仕入れるか、放送だけして商品はメーカーから直送させ、中間マージンを省くのも安さの秘けつだ。


 就職難、不景気により消費心理が萎縮しでも、若い世代の合理的で利便性を求めるライフスタイルに伴う消費パターンの変化はホームショッピングやインターネット通販を今後とも育てていくだろう。とはいえ、カード破産、1世帯平均200万円の借金を抱えているというニュースが続く中、小売市場が成長しているというのも何か恐ろしい気もする。




by- 趙 章恩


 


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