[日本と韓国の交差点] 韓国人の休暇:休みたくても休めないのは昔の話!?

ファイナンシャルタイムズのドイツ語版(7月10日付け)が、韓国人の労働に関する記事を掲載し、韓国で反響を呼んだ。ソウル発の記事で、韓国の労働時間の長さと休暇日数の少なさ、韓国観光公社の社長イ・チャム氏(韓国に帰化したドイツ人)のインタビューを取り上げた。

 筆者はドイツ語が分からないので韓国の聯合ニュースが翻訳した記事を読んだ。主な内容は以下のようなことである。


 「韓国は他の先進国に比べて労働時間が長い。自殺率も高い」
 「韓国人は年平均11日しか休暇がない。これを短期に分けて休まなければならない」
 「韓国人は年平均4日しか旅行しない。労働意欲の高い日本人でも、韓国人の10倍以上の時間を旅行に費やしている」
 「OECDによると韓国人の年間労働時間は平均で2256時間。ドイツは1430時間、オランダは1389時間しか働いていないが、1人当たり名目生産高は韓国の2倍である」
 「韓国人は休暇よりも、働くことを選ぶ。働くことでボーナスと称賛を得られるからだ」
 「韓国人は自分が仕事中毒であることを誇りに思っている。しかしこれは自分で自分の首を絞めているようなもので、効率良く仕事をこなしているとは言えない」


 この記事の内容を裏づけるように、韓国観光公社の社長が「韓国にはまだ、産業化時代の考えが残っている。生産性と労働時間を同じものと考える」とコメントしている。


 ファイナンシャルタイムズの記事の中で、筆者は、PR会社の会長で韓国をよく知るMichael Breen氏のコメントがいちばん気に入った。いつリストラされるか分からないほど不安定で、競争の激しい韓国社会で働くビジネスマンの本音をずばり言ってくれた気がしたからだ。「韓国人は、自分が休暇を取っている間も会社の業務がスムーズに行われるのを同僚に知られるのが怖くて休暇を取りたがらない」


 ファイナンシャルタイムズが言いたいのは、こういうことのようだ。韓国人は休みたくても社内で自分の居場所がなくなるのが怖くて休めない。休まず働く自分を誇りに思う。これは非効率的なことで、逆に生産性が低くなる。だから休みも必要。



一斉休暇を取る企業が増加



 しかし、韓国は少しずつ変わり始めている。


 かつては、「暑い夏は、どこかに出かけるより会社に居るほうがよい。いちばんの避暑だ」と言って休暇を取りたがらない人がいた。だが、光熱費が値上がりしたため、会社は経費節約のため強制休暇を実施するようになった。夏の休暇を決まった期間に決めて一斉に休むようにする。その期間はエアコンを稼働中止にする会社も増えた。


 韓国の代表的な造船所と自動車製造団地がある蔚山では、「現代重工業」が7月23日から8月7日まで16日間の夏の休暇を実施する。同じ地域にある関連会社も7月30日から9日間の休暇を実施すると発表した。これに合わせて、下請け会社も同じ時期に夏の休暇を取ることになった。


 強制休暇を取る会社が増えているとはいえ、ここまで同じ時期に休暇が集中するとは。8月の1週目は、ソウルはがらがら、全国の観光地は足の踏み場もない状態になりそうだ。



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By 趙 章恩

2011年7月27


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110725/221669/