「失業ドミノ」の韓国経済 IT産業は再び救世主となるか

世界中が不況や失業にまされているが、韓も例外ではない。2009年年頭の大統領演では「危機」という語が30回近く登場したことが話題になった。韓が直面している現を正直に民にえ、一に危機を克服しようというメッセジをめたようだが、民の反は「不況はずっと前から。何をいまさら」と冷たかった。


 


 


 


ミョンバク大統領の年頭見をテレビで見つめるソウル市民=1月2日〔AP Photo〕


 


 


 年末から派遣社員や契約社員の大量解雇がき、製造業は休業を余儀なくされている。経済成長はにマイナスで、就職難に失業が重なり所得は減りけているのに、インフレが止まらない。貧困層の加は止めがかからなくなってきた。「スに行っても高すぎて買えるものがない」というのが、主婦たちの共通したみである。


 


 工場地が密集している地方都市では、人口が減り地元の食店や商業施設も大きな打を受けている。ドミノ失業、失業津波は日本どころの話ではない。貧困すれすれの中産層は、明日がどうなるか、食べていけるかが問題なのである。


 


 そんな韓国国民にとって1月2日に行われた李明博(イミョンバク)大統領の演の言葉は、空しい響きに過ぎなかった。いわく「危機には終わりがある」「韓は奇跡の史を作ってきた」「明るい未への希望、挫折しない勇が危機克服の重要な力となる」「他人のせいにせずお互い助け合うべき時だ」……。


 


 


  


釜山の大で炊き出しを受ける韓の貧困層の人たち=1月13日〔AP Photo〕


 


 


■地下シェルタ議でひんしゅく


 


 貧困は家庭を崩させ、社を崩させる大問題だ。2008年12月に失業手に支われた金額は前年同月比30.1%も加している。しかし派遣や契約社員の8割は雇用保に加入しておらず、失業手の支給を受けているわけではない。正社員の失業だけでこれだけえているということになる。


 


 ソウル市政開発研究院の調査によると、ソウル市民の10人に7人は1998年IMF経済危機の時よりも今の方が生活が苦しいと答えている。1年前に比べ貯金が減ったと答えた人も51.8%を占め、67%の人が景が回復するまで2年はかかるだろうと見ていた。


 


 2009年の韓国経済はマイナス成長になると予測されている。韓政府は「経済非常事態」と名づけて、大統領は時用に作られた地下シェルタWar Room」で議を開き、その子を「経済危機は戦争と同じ!」とばかりに宣している。


 


 しかしこれは、「民の怒りが怖くて地下シェルタに閉じこもったのか?」とかえってひんしゅくを買う結果となった。そもそも大統領用の地下シェルタなどというものは、安保を考えれば極秘事項のはずなのに、ここまで大公開していいのか。野党からは早速「War RoomじゃなくてShow Room」と攻されている。


 


  


■大は就職浪人の5年生が急


 


 韓の大生は「大卒の20%しか正社員になれない」と言われるほどしい就職難のなか、今まで以上にしい競いられている。最近日本でも定取り消しや就職難から公務員や員、資格が必要な職業の人が高まっているという記事を目にしたことがあるが、韓ではその態がIMF経済危機からずっといているのだ。


 


 韓は所得の格差が大きい。非正規職の時給が300円程度、月給が4万~5万円なのにして、新卒の正社員は平均的な中小企業で年俸150万円前後、大手企業は年俸270万円前後、金融業は年俸370万円を上回る。だから中小企業ではなく給料の高いところへ就職希望が殺到し、大手企業の採用は900倍、1200倍というものすごい字になるのだ。


 


 大生たちはTOEICは基本的に900点以上、日本語に中語も少しはしゃべれるように勉し、就職したい分野の基礎知識もグルプスタディでしっかりと頭の中に入れ、企業に自分の才能をアピルする。動で履書を作って個性を出してみたり、印象をよくするため整形手術をしてみたり、それでも就職はき門である。


 


 大キャンパスはいつの間にか「5年生」で溢れかえっている。就職の見みがないとわざと位を落としてもう1年校に通う。無職の就職浪人よりは大生といった方が人聞きもいいしまだチャンスがあるからだ。ソウル市の大では卒業しても1年間大の講義を無料で受けられる「Post-Bachelor Program(士後過程)」制度を導入したところもある。就職できなかった卒業生たちの居場所を作ってあげたようなものだ。


 


 「ゴルドミス」と呼ばれてちやほやされてきた仕事一筋の身女性たちもリストラには勝てない。このごろはきができるよう結婚を急ぐ女性がえてきたという。日本には「婚活」という言葉があるが、韓では「チュィジプ」(就職+結婚)といわれ、就職できないなら早く結婚して家族の負担をくするという女性がえている。


 


 親はリストラ、子供は就職難、家族の中で誰も正規社員がいなく、時給300円ほどの非正規職でその日暮らしをしないといけなくなると、中産層が貧困層になるのは時間の問題である。



 


   


仕事を求めるデモの最中、大統領や経済人の顔写真に靴を投げつけて抗議を示す韓の非正規労働者たち=2008年12月17日〔AP Photo〕


 


 


30代が早くもリストラ世代に


 


 韓兵制があるので、男性の場合、兵をませて大を卒業して25~26で就職することになるが、正社員になれないまま30を過ぎてしまう人も少なくない。韓の新期は3月なので、卒業式は2月。あともう少しでまた大量の失業者が輩出される。


 


 今の20代の間では、「一生正社員になれることなく、契約職をとしながら10年ぐらいでリストラされ人生が終わってしまうのではないか」という不安ががっている。リストラの象が30代にまで下がってきたからだ。


 


 1998年以降に大を卒業した「呪われたIMF世代」は、就職戦争を勝ちいたと思ったら今度はリストラ戦争のどん中にいる。ソウル市では環境美化員(掃除員)募集に30代後半の博士課程修了者が募し注目された。結局この人は体力テストで落ちてしまったそうだが、笑い事ではない。人間の寿命はどんどん長くなっているのに、ける期間はどんどん短くなっている。老後問題も深刻な社問題になるだろう。 


 


 


■IT産業でり切ったIMF経済危機


 


 だからこそ韓ITにかける期待は大きい。IMF経済危機を迎えた時、韓はブロドバンドに投資し、世界のどこよりも早く高速インタネットを安く提供して、世界有のネット普及率を誇った。


 


 時リストラされた人はオンラインゲムブムにってPCバン(ネットカフェ)を経営したりネットベンチャを立ち上げたりし、世界に羽ばたく企業も出てきた。ブロドバンド、ADSL連分野だけで59万人の雇用果が生まれた。1997年から携電話端末の格が下がって普及が促進され、今では端末世界シェアの2位と4位を韓の企業が占めている。


 


 政府の電子化も進んだ。の就職難を利用して大生を最低賃金で雇用し、法文を始めとする各種家情報をデジタル化してインタネットで公開し索できるようにしていったのである。これは「公共勤事業」という雇用策の一種だったが、大を卒業したばかりの20代が初めて社に一足を踏みむ職場にしてはみじめなものだった。古い紙の文書を渡されワドに打ちむだけという純作業で最低賃金しかもらえない。IMF経済危機で就職難がなかったら韓の情報化はもっとれていたかもしれないと考えると、皮肉なものである。


 


 


3大分野17事業を支援


 


 今回の不況でも、政府は新成長動力事業として「色技術産業(グリITやエネルギ再生)」「先端融合産業(放送と通信の融合など)」「高付加サビス産業」というITを中心とした3大分野17事業を支援する政策を打ち出している。成長産業への重点投資で経済を活性化させ、IT輸出でを支えるという略である。


 


 放送と通信の融合では、全で地上波デジタル放送をIP由で視できるIPTVが2008年11月に商用化されてから、韓を世界のテストベッドにしてな付加サビスの実験が行われている。IPTVを始めモバイルIPTV、Wibro(モバイルWiMAX)に音を搭載したモバイルVoIPなど、融合サビスの展により連端末や部品などの市場が生き返り、雇用もえると見んでいる。


 


 1953年に朝鮮戦争が休となってから、墟となったこのは「ハンガンの奇跡」と言われる怪力でここまで突き進んできた。だから、どんなことがあっても落ちむことがなく、IMF経済危機の時も「ま、なんとかなるさ」と、前向きにり越えてきた。外光客から韓は全然不況には見えない、と言われるのも、「なんとかなる」精神があるからかもしれない。


 


 韓は、不況になるほど慈善体の募金額がえるだ。政治家や企業家といったお金を持っている人ほど欲深くて庶民をがっかりさせるニュスが後を絶たないが、それでも、みんなが少しずつって、助け合いながら生きればなんとかなると勇を持ちけたいものだ。


 


 


 – 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  


[2009年1月22日]