韓国IT企業の人材選び 就職難が生んだ新採用方式
韓国の教育科学技術部(日本の文部科学省に当たる)の調べによると、2008年2月卒業の大学生のなかで正社員として新規採用されたのは48%にすぎなかった。09年度新卒を対象とする採用活動の真っ只中の韓国。連日、書類選考の競争率が100倍を超えたとか、30人募集に4000人近くが応募したため急遽採用数を50人に増やしたとか、すごい話ばかりである。
これだけ倍率が高くなると、採用する側も大変だ。今までのような書類選考、面接、適性検査の流れでは人材を選び出すのが難しい。採用に関する今年の話題は、選考資料を紙ではなく動画にして提出させる動きである。自分をうまくアピールできるのも才能の一つ。なぜ自分が採用されなければならないのかを動画にして投稿させ、1次選考資料にするIT企業が増えている。
学生たちは入社したい企業のCMを作って投稿したり、新しいマーケティング戦略をプレゼンテーションする動画を作ったり、アイデア総動員で投稿している。企業側は、履歴書を動画で作るというからにはITを使いこなす力があり、アイデアも豊富で積極的に新しいことにチャレンジする人物と判断しているようだ。
携帯電話キャリアの子会社で、韓国最大のソーシャルネットワークサイトを運営しているSKコミュニケーションズは、インターンを募集する際に動画履歴書を投稿させ、インターネットのユーザー投票から200人のなかで12人を選出。ユーザーが面接者になったわけである。
社員募集を兼ねた公募もたくさん開催されている。新規サービスアイデア公募、マーケティングアイデア公募、デザイン公募、技術公募など。ここで入賞すると入社試験で加算点がもらえるので必死になって応募する。
韓国の企業は終身雇用制ではない。いつリストラされるか分からないため、自分が必要な人材であることを常にアピールできるようにしなければならない。年俸も交渉で決める企業が増えていることから、自分の能力を客観的に証明できるよう学歴や資格を取るためがんばるしかない。新人として採用され会社で育てられるのが日本だとしたら、韓国の企業は即戦力になる人しか必要としないということだろう。
(趙 章恩●取材/文)
[BCN This Week 2008年10月13日 vol.1255 掲載]