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土葬文化の韓国で火葬を望む人が増加
旧暦8月15日は韓国のお盆、「秋夕(チュソク)」である。2011年は9月12日がこのお盆に当たり、9月11日~9月13日が連休であった。連休が短いせいか、帰省ラッシュが終わったと思ったら、すぐに帰京ラッシュが始まった。
最近は秋夕の雰囲気がずいぶん変わってきている。
教会に行くクリスチャンの人は法事をしない。「イエス・クリストしか信じてはならない」「先祖を祭ることは異教徒のやること」ということで、お祈りをするだけで法事をしないのだそうだ。なので、田舎にいる彼らの両親が、逆に彼らの家に遊びに来たりする。家族みんなで海外旅行に行ったりする知人もすごく増えた。
昔ながらの慣習で大忙し――田舎の家に親戚一同が集まり、伐草(ボルチョ)をして、法事の準備をする、秋夕当日は早朝からお墓の前に料理を並べて省墓(ソンミョ、お墓参り)をする――なんていうのはもう筆者の家ぐらいかもしれない。
朝鮮時代から土葬が始まった
韓国は、高麗時代までは仏教が盛んで、遺体は火葬していた。これが朝鮮時代に入って、儒教の教えを大事にする「抑佛崇儒」が起こり、火葬を禁じた。代わりに、遺体を棺に入れて土葬をしてきた。特に田舎では、家ごとに山を買って代々の先祖のお墓――丘のように丸い封墳――を作る。封墳は棺を守り、ここがお墓であることをはっきりさせるためのものである。亡くなって間もない方のお墓は土の封墳。だいぶ前に亡くなった方のお墓は、きれいに芝生が生えた封墳になっている。
儒教の教えに則れば、風水で明堂という吉地に先祖の墓を建て、大事に祭れば子孫が繁栄する。お墓の大きさ、派手さがその家門の威勢を象徴するものとされた。
お墓参りの準備は草むしりから
秋夕の1~2週間前になるとお墓の雑草を抜いて、草をきれいに刈る伐草(ボルジョ)をする。毎年8月23日前後にやってくる處暑(チョソ)から秋夕の前までが伐草の期間だ。封墳が雑草だらけにならないようにする。ちなみに「立秋」の次が「處暑」。韓国では處暑になれば残暑も終わり、蚊の口もへし曲がると言われている。
伐草は秋夕の前に終わらせないといけない。なので、秋夕連休の2週間ほど前から全国の高速道路は伐草しに行く家族連れで大渋滞となる。テレビのニュースは「伐草の際には蛇や蜂に注意するように」と呼びかけ、蜂に刺された時の応急処置方法を紹介する。テレビや新聞で何度注意しても、伐草中に蜂に刺されて救急車のお世話になる人が後を絶たない。これも秋夕の風物詩だろうか。
筆者の家の場合、先祖のお墓がある山があって、従兄弟たちと一緒に区域を分けて伐草している。だが忙しいビジネスパーソンは伐草代行業者を利用することもある。伐草代行業は村の農業組合や山林組合が副業でやっていることが多く、農家の所得になる。伐草する様子を動画や写真で送ってくれるので、海外に住んでいる人やどうしても伐草する時間がない人にはうれしいサービスである。
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By 趙 章恩
2011年9月21
-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110914/222637/