著作権法違反をネタにした「謝罪金請求」が多発、告訴爆弾に歯止めをかけろ!

この頃、著作権保持者と法律事務所が手を結び、ブログやカフェ(同好会サイト)などに音楽ファイルを掲載したネットユーザーを手当たりしだい告訴している。有料で購入した音楽ファイルであっても、ブログのBGM用に販売されているファイル以外の音楽ファイルを添付したり、リンクしたりしていると告訴の対象になる。ちょっとしたことでもすぐ告訴されてしまうので、社会問題にまでなっている。

 作品を批評するため漫画の半ページ分を掲載したのに、ある法律事務所から著作権違反で告訴されたユーザーは、100万ウォンの謝罪金を払わないと告訴は取り下げられといわれ、漫画の作者に事情を説明して告訴を取り下げてもらったという。


 権利を委任されているとはいえ、このケースのように、作者ですらあっさり取り下げに合意するような著作権法違反告訴を法律事務所が実行しているのは、著作権法を守らせるためというより「謝罪金ビジネス」に過ぎないとの批判の声が上がっている。謝罪金をたくさん集めるほど法律事務所がもらえる手数料も増えるからだ。


 すでに、未成年に対する高額な「謝罪金」請求は看過できない状況だ。著作権とは直接の関係はないが、2009年1月には、オンラインゲームをしながらチャットで相手に悪口を言ったとして高校生が告訴された。悪口を言った相手のゲーマーが弁護士だったのだ。この弁護士は高校生を相手に罰金100万ウォン(約6万5000円)と謝罪金として2000万ウォン(約130万円)ほどを要求する損害賠償訴訟を起こした。高校生は裁判に出席した後、貧しい家計で苦労するお母さんに謝罪金まで払ってもらえないと悩んだ末に自殺した。


 2007年11月には著作権法違反で警察への出頭要求を受けた高校生が、貧しくて謝罪金を払えないと悩み、飛び降り自殺をした。


 チャットで人を中傷することは確かに「悪いこと」だし、著作権法を違反してもいいということではない。しかし、法を盾に、著作権法の過度な適用、そしてそれに基づく謝罪金請求によって、貧しい学生たちが自殺を選択するとは悲しいことである。あたかも、謝罪金ビジネスが未成年者を殺しているようにも捉えられる。

ポータルサイトの知識検索(ユーザー同士で質問と答えを書き込む検索)には小学生までも告訴され、保護者に謝罪金を払えと要求しているという。謝罪金の相場も小学生30万ウォン、中学生50万ウォン、高校生60万ウォン、大学生80万ウォン、社会人100万ウォンと決まっているほどで、著作権とは何か、どんなことをすると法律違反になるのかを説明するより、お金さえ払えば告訴しないという態度では、著作権を侵すような行為も見つかりさえしなければいいという認識を植えつけるのではないかという点も心配だ。


 一般市民が投稿するブロガーニュースには小学生の子供がP2Pでダウンロードした小説を他のP2Pサイトに載せてしまい、著作権法違反で出頭要求を受け取ったという主婦の体験記が投稿された。


 「警察から電話があり、ある法律事務所がうちの子供を著作権法違反で告訴したので、和解した方がいいのではないか言われた。告訴を取り下げてもらわないと子供が学校にも行けず警察で調査を受け、裁判所にも出席しないといけないという。警察は小学生なので謝罪金はないだろうと話していたが、法律事務所はうちの謝罪金は小学生であっても70万ウォンだと繰り返すばかり。子供が警察に裁判所に連れまわされ、一生忘れられない恐怖を感じるより謝罪金を払った方がマシだと思った。子供のためには何でもしてしまう親の立場を利用して謝罪金をかき集めている」と憤慨していた。


 警察のサイバー捜査隊の説明によると、著作権法違反で告訴されるネットユーザーのほとんどが未成年者だという。未成年者なので保護者に出頭要求書が届けられるが、子供を守るためほとんどのケースで親が30万~80万ウォンの謝罪金を払って和解する。未成年者に著作権法とは何かを教育し、再発を防止するより、警告もなく謝罪金さえ払えば罪がなくなるとする法律事務所のビジネスには問題があるのではないだろうか。


 著作権を担当する省庁の文化観光体育部と法務部は、著作権とは何かを解説するキャンペーン「Let’s Clean UP!」を開始し、違法ファイルを掲載できないようP2Pやポータルサイトに対する取り締まりも強化している。未成年者が著作権法を初めて違反した際には起訴する代わりに8時間関連教育を受けさせ処罰を免除する「教育条件付起訴猶予制度」を2008年8月にソウル地域に限定して導入。現在は、この制度を全国へ展開すべく、推進している。


 間違いだとは知らず、好きな漫画だから、好きな音楽だからみんなに教えてあげたいとファイルを載せる子供は少なからずいる。未成年者への無差別的な告訴を防止するためにも起訴猶予制は必要だ。


 ポータルサイト側も違法ファイルを摘発して削除するモニタリングを強化している。自主的に表現の自由は最大限保護し、一方でユーザーも自分がしていることに責任を持ってもらうため、「韓国インターネット自律政策機構」も設立した。


 未成年者だから著作権法を違反してもいいということではない。しかし無差別告訴は法律を利用したお金儲けに過ぎない。処罰よりは再発防止を目的にした著作権保護が望ましいのではないだろうか。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年3月6日

-Original column

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090306/1012908/