DS Liteが発売8カ月で58万台突破。でもこれって多いの? [2007年11月1日]

韓国では、ゲームとはお金をかけずにできる娯楽という認識を持っているため、ゲーム機を買うなんて子供が駄々をこねるから仕方なく買うもの、あるいはお金持ちの単なる道楽だと思われていた。実際、パソコンとネットさえつながっていれば無料で楽しめるカジュアルFLASHゲームやネットワーク対戦ゲームがゲーム市場の大半を占めているし、PS2/3、PSPもXboxもパッとしない状態だ。このように韓国のテレビゲーム機市場なんてないに等しい中で、パソコンを使ったゲームさえも市場規模は頭打ち状態。しかもギャンブルゲームの取り締りが厳しくなってからオンラインゲーマーの溜まり場だったPCバン(日本のネットカフェのようなもの)も傾き始めている。


そこにDS Liteが登場し、あれよあれよという間に本体が58万台、タイトルは120万個以上も売れたのだからみんな驚くのも無理はない。金額ベースでは本体が870億ウォン(日本円で約113億円)、タイトル470億ウォン(日本円で約61億円)で合計1340億ウォン規模、ゲーム機市場で1000億ウォンを超える売り上げを記録するのは韓国では初めてだろう。


DS Liteの本体価格は一台15万ウォン(約1万9300円)、タイトルの価格は1本3万3000ウォン(約4200円)と、Play StationやXboxと比べて手が出ない値段でもないし、いつでも携帯できるので「これ知ってる?」と見せびらかして自慢できるところもよく売れる理由だ。


そういえばこのごろ「DS Lite買って!買って!」とねだる旦那さんをなだめるのに一苦労したと愚痴る人がやけに多い。それに、今までオンラインゲームなんて一度もしたことがなさそうな40~50代のサラリーマンがお昼休みの街角や電車の中で左手にはニンテンドーDS Liteを、右手にはタッチペンを握って夢中になって足し算をしたり、図を描いたりしている姿を見かける。改めてDS Liteって流行っているな~と感心してしまう。


身の回り以外のところにもDS Lite人気をうかがい知れる話題がある。


今年からFTTHの普及に熱を上げている韓国のインターネット接続事業者。その中でもLGパワーコムは「今、FTTHに申し込むとDS Liteを差し上げます」というキャンペーンを実施し、予想を超える加入者を獲得できたそうだ。これを見た韓国HanaroTelecomは、PS3を安く販売する代わりにセットトップボックスとして使わせるインターネットTVパッケージを販売開始したが、DS Liteの人気にはかなわないようだ。


ソウル市の支援を受けるベンチャー企業「ノルラム」はPMP(Portable Multimedia Player)で3Dゲームとコンテンツを利用できる3Dエンジンを開発した。PMPは動画再生、MP3再生、電子辞書、ナビゲーション、FLASHゲームなどを利用できる端末。しかし、DS Liteがあまりにも人気を得たので、ゲーム機能が重要だと考えたわけだ。


DS Liteの人気タイトルは日本とほぼ同じ。韓国でも今までにないジャンル、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」(脳トレ)の韓国語版ソフトを前面に押し出して、注目されるようになった。韓国ニンテンドーは、日本とまったく同じように脳トレがはじき出した脳年齢58歳という結果に有名芸能人が呆然とするテレビCMを流している。CMの効果はてきめんで、痴呆症予防のため親にプレゼントするなどで脳トレの人気は爆発(といってもまだ20万本しか売れてないが)。相乗効果か、連想ゲーム、早読み、同じ図を探せといった内容の「家族みんなの脳を若くする」というテレビ番組がどんどん増えている。一種の社会現象に発展している。


脳トレのほか、「Newスーパーマリオブラザーズ」「えいご漬け」「nintendogs」「マリオカートDS」の5本が人気だ。このほかにも、韓国ニンテンドーは40社以上の韓国ゲーム開発会社をサポートし、ニンテンドーDS向けのタイトルの翻訳と新企画を進めている。ゲームソフト企業のスタジオナインが開発した「韓国人の常識力DS」というタイトルも2007年10月26日に販売を開始した。無線通信でクイズ大会も開催できるという。日本で400万本以上も売れたタイトル「おいでよ どうぶつの森」も2008年に登場予定だ。


2008年には、日本で大人気のゲーム機「Wii」も韓国での発売が予定されている。これもまた面白そうなゲーム機だ。はてさて、韓国内での反応はどうなるのだろうか。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

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