最近韓国で人気なのが、お笑い芸人が貧乏旅行をするバラエティー番組や、人気歌手が仮想夫婦となって新婚生活を送るリアリティ番組(日常生活を追いかける番組)である。視聴率の高い番組だけに、出演者のファッションやアクセサリーも話題となり、ヒット商品につながっている。
この季節、これら番組から生まれたヒット商品は、スマートフォンのカバー。カラフルで革素材のかっこいいカバーで個性をアピールする芸能人のおかげで、iPhone 4やサムスン電子のスマートフォンGalaxy S向け端末カバーがばか売れしている。
iPhone 4は韓国で発売されたばかりで、予約から端末を手に入れるまで早くて2週間待たないといけない。しかしさすが芸能人。テレビに私物として登場する携帯電話のほとんどがiPhone 4かGalaxy Sだった。みんな同じスマートフォンを持っているからか、誰もがカバーを付けてすぐ自分の物を見分けられるようにしていた。芸能人だけでなく、Twitterで人気の財閥御曹司らが何気に自慢したスマートフォン向け手製高級革カバーも輸入が追いつかないほど売れまくっているというからすごい。
韓国では携帯電話にストラップをじゃらじゃら付けることはあまりしない。ストラップを売っている露店やアクセサリーショップはたくさんあるのになぜ付けないんだろう。周りの人は、ストラップが端末にぶつかってキズを付けるのがいや、重くなるのがいや、ポケットに入らないしかさばる、などの理由を挙げていた。若い女性でも、せいぜい小さい鏡やミニチュアのリップグロス、金やクリスタルのジュエリーをさりげなく付ける程度である。
または、T-Money(韓国のプリペイド式交通カード、自動販売機やコンビニでも使えるSUICAのような電子マネー)のストラップ式カードを付けて、iPhoneを使いながらモバイルペイメントを利用できるようにする。これはかなり便利で、モバイルペイメント機能を持たない端末であっても、親指ぐらいの大きさのカードをストラップのようにぶら下げるだけ。電車も乗れて、乗り換えもでき、バスにも乗れる(乗り換える度に運営会社が違うからと切符を買い替えないといけない日本とは違って、韓国ではすべて統合してどんな乗り物だろうが、乗った距離で計算するようになっている)。
もちろん、これはT-Moneyまたはクレジットカードの交通カード機能を使ったときだけ適用され、現金払いの場合は乗り換える度に交通費を支払わなくてはならない。なお、3G端末の場合は、SIMの中にT-Money機能が入っているので、ストラップ式のカードはいらない。
さまざまな形状のT-Moneyストラップ式カード。モバイルペイメント機能がない携帯端末に付けて使うと便利(T-MONEYのサイトより)
携帯端末にキズがつくのがいや、というのはスマートフォンでも同じで、タッチで液晶が汚れたり傷ついたりを防ぐための透明シールはほぼ100%付けている。端末にカバーを付けるのが好きなのもその延長なのかもしれない。
サムスン電子はGalaxy Sをはじめ、スマートフォンやタブレットパソコン向けのアクセサリーショッピングモールを運営している。街中や電車の中で使っている人をよく見かけるのは、クロコダイル模様になった革製カバー4万4000ウォン(約3400円)、ランボルギーニのロゴ入りで液晶まですぽっとかぶせる革製ケースは4万5000ウォン(約3500円)、爪が長く指先でタッチするのが難しい女性向けスタイラスペン1万9800ウォン(約1500円)である。
革製ケースは約3500円(写真左右とも:スマートフォンアクセサリーショッピングモール Anymode)
爪の長い女性向けスタイラスペン
もう一つ、韓国にはアップルの修理センターが少なく、修理代もかなり高額なので、iPhoneは気を付けて使わなくてはならないという認識が広がっていることも、カバーの人気に火を付けた。
今年は冬の訪れが早く、10月で既に気温が氷点下に下がるほどの寒さである。凍えそうなほど寒い韓国で、いちいち手袋を脱いでタッチしなくてはならないというのはとても不便である。携帯電話加入者の約15%が利用しているスマートフォンだけに、日本で発売されたiPhone用手袋もブログを中心に紹介され、注目を集めている。
韓国では昨年の冬、手袋を脱がずにiPhoneにタッチできる方法として「魚肉ソーセージ」で画面をタッチするのが大ブームとなったことがある。
iPhone画面をタッチする「魚肉ソーセージ」。去年はやった
そのほかには、スマートフォンから動画を楽しむ人が増えていることから、パソコンのモニターのようにスマートフォンを固定できるアクセサリーも多数登場。ナビゲーションの代わりに使う人もかなりいるせいか、自動車や自転車に固定できるアクセサリー、車の中で充電できる車両用充電池、車のオーディオにつなげられるジャック、無線でスマートフォンの音楽ファイルを伝送できるオーディオなども売れている。
韓国ではスマートフォン向けアクセサリー市場は国内だけで年間700億ウォン(約54億円)に上ると見込まれている。アクセサリーはデザインやアイデア勝負でいくらでも高く売れ、世界市場でも販売できるだけに、いろんな産業からアクセサリー市場に飛び込む、特に中小企業が増えるものと見られている。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
2010年10月28日
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101028/1028200/