ITUテレコムワールド2006、ITでも韓流を狙う [2006年12月5日]

「情報通信技術分野のオリンピック」とも呼ばれる「ITU(国際電機通信連合)テレコムワールド2006」が12月4日から8日まで、香港アジアワールドエキスポで開催されている。アジア初のテレコムワールドだけあって、韓国のIT関連新製品が一堂に会するほか、大手企業のCEOやIT業界の大物もみんな香港に集結する盛り上がりをみせている。

 韓国国内の報道では、ITUに初参加加するチャイナモバイル、チャイナネットコムなど中国勢に注目すべしと騒いでいるし、中国通信業界の世界進出のきっかけになるだろうという指摘もなされている。一般ユーザーからすると「テレコムワールドってそんなすごい展示会なの?」としか思えないが、「へ~」と驚くべき便利な最新モバイル技術がどっと披露されるという点は注目すべきではないだろうか。


中国の韓流は衰え知らず、その波及効果はIT機器にも


 最近、日本の韓流(韓国ブーム)は一時に比べると下火になったようだが、中華圏での韓流はまだまだ勢いが衰えていない。ドラマに登場するサムスンのPCや携帯電話、LGのTVや家電までもすごい勢いで販売が伸びているという。


 11月にあった俳優ソン・スンホンの除隊では日本や中国、台湾、シンガポールなどから5000人以上のファンが詰め掛けたそうだし、済州道であった韓流エキスポ開幕式ではヨン様が30分登場するだけで日本からの参加者が軽く3500人を超したそうだ。驚いたのは遠い砂漠の国、中近東でも韓国のドラマが人気で、韓国製の黄金TVやプラチナ携帯といった韓国や日本では見たこともないようなすごい製品が売れているそうだ。


 韓流ファンたちは韓国人にとってありがたい存在だ。自国の文化を尊重してくれて、ドラマや映画を観ながら一緒に感動してくれる仲間だからだ。この勢いに乗って、ITでも韓流が続いてくれればという思いもあるが、一方でサムスンとLGの独走ゆえに、韓国にはこの二つの会社しかないのかと思われるのは悲しい気もする。


 冒頭に紹介したITUテレコムワールド2006に参加するのは世界40カ国、700以上の企業だ。韓国からは日本のNTTのような電話・通信企業であるKT、携帯電話会社のSKテレコムとKTF、加入者100万人を目前した衛星DMB(日本の衛星をシェアしている衛星モバイル放送)のTUメディア、端末関連ではサムスン電子とLG電子といった韓国を代表する大手IT企業が参加する。


 韓国勢の展示の目玉は、今年から商用化された3.5GのHSDPA、Wibro(モバイルWimax)といった新しい通信サービスと端末。IT強国と自負しているだけあって、世界に向けあっと驚くような最新技術を紹介するべきという義務感を感じているようだ。KTとKTFは「ユビキタスライフパートナー」というテーマで公園(U-Park)、商店街(U-Mall)、駅(U-Station)、地下鉄(U-Metro)、家(U-Home)など、生活の中の具体的なシーンを挙げた展示コーナーを設けた。


 SKテレコムは「Innovation & Inspiration」がテーマで、日本でも提供されている携帯電話での決済、いわゆるおサイフケータイ機能のほかに韓国が発信地となったマルチメディアサービスを展示する。1回の決済で再課金なく、PC、MP3プレーヤー、携帯電話など、いろいろな端末から音楽を再生できる「Melon」、携帯電話が人の動きに反応してゲームの操作が簡単にできる「GXG」、世界4カ国でサービスされているメガヒットSNS「モバイルサイワールド」などを展示する。


 日本ではなかなか定着しないモバイル衛星放送も韓国ではポピュラーな存在だ。韓国では有料サービスにもかかわらず高速鉄道や地下鉄の中を含め全国95%に至るカバレッジの広さとチャンネルの多さから人気を集めていて、映像15、オーディオ19チャンネルを提供している。利用できる端末も54種類と選択の幅が広く、加入者数100万人まであともう少し。ITUでもそのノウハウに注目が集まっている。



 モバイル衛星放送を独占的に提供しているSKテレコムの子会社TUメディアのソ・ヨンギル社長は4日「世界初有料モバイルTV商用化開始」という発表を通じて、その成功の鍵を「TVやCATVでは見られない世界のスポーツ中継、独自番組にも力を入れ、携帯からTVを見やすい端末を製造するためベンダーと協力してアイデアを出し合う。割引料金制度で負担を軽くすることも重要」と述べた。


Webアプリ対応の多機能型携帯電話が続々


 サムスンは「ウルトラエディション」、LGは「チョコレートフォン」、「シャインフォン」といった一押しの端末を展示する。どれも小さく薄く、液晶面はスライド式。もちろんモバイルTVにも対応している。サムスンの「ウルトラエディション」は「ウルトラミュージック」、「ウルトラビデオ」、「ウルトラメッセージング」の3つの新機種で、9.4mm~11.8mmのスリム携帯なのにエンターテインメント機能を取り揃えているのが売りだ。


 ウルトラミュージックとビデオは携帯電話のキーパッドを後ろに配置したデュアルフェイスで、MP3プレーヤーやPMP(動画再生機)と見分けがつかないほど変わったデザインなのも話題になっている。ウルトラメッセージングはHSDPAスマートフォンで、Windows Mobile 5.0とパソコンと同じキー配列である QWERTYキーパッドを採用した。ポッドキャスティング、RSSリーダー、Googleトークなど多様なウェブアプリケーションにも対応している。これらは2007年からヨーロッパで先に発売される。


 LGはHSDPAモデム内蔵ノートパソコンや携帯を展示したほか、ドラマ「天国の階段」の悪役キム・テヒが登場する携帯電話広告を香港中に貼り付けるなど、展示場の外でも韓流マーケティングを積極的に展開している。


 実は、韓国の携帯電話は品番よりも、広告に登場するモデルの名前や愛称が付けられることが多い。普通に「ジョンジヒョン携帯」、「クォンサンウ携帯」などと呼ばれているわけだ。これもまた興味深い点が多いので、次回くわしくご紹介したい。


 韓国の人口は4800万人。日本や中国に比べて内需が本当に小さいだけに、世界に向けて羽ばたきたいという意識がとても強い。2007年にはついに待望のヨン様主演ドラマ「太王四神記」が世界90カ国で公開されるそうだし、これからも韓流が芸能界のみならず、IT分野でも続いてくれることは業界挙げての願いといえそうだ。なお、韓国のIT製品は日本でもどんどん発売されているので、皆さんぜひお店でみかけたらお手にとってご覧ください。


参考:テレコムワールド2006のニュースはITproでも配信しています。ご活用ください。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061205/256061/

ITUテレコムワールド2006、ITでも韓流を狙う

「情報通信技術分野のオリンピック」とも呼ばれる「ITU(国際電機通信連合)テレコムワールド2006」が12月4日から8日まで、香港アジアワールドエキスポで開催されている。アジア初のテレコムワールドだけあって、韓国のIT関連新製品が一堂に会するほか、大手企業のCEOやIT業界の大物もみんな香港に集結する盛り上がりをみせている。

 韓国国内の報道では、ITUに初参加加するチャイナモバイル、チャイナネットコムなど中国勢に注目すべしと騒いでいるし、中国通信業界の世界進出のきっかけになるだろうという指摘もなされている。一般ユーザーからすると「テレコムワールドってそんなすごい展示会なの?」としか思えないが、「へ~」と驚くべき便利な最新モバイル技術がどっと披露されるという点は注目すべきではないだろうか。


中国の韓流は衰え知らず、その波及効果はIT機器にも


 最近、日本の韓流(韓国ブーム)は一時に比べると下火になったようだが、中華圏での韓流はまだまだ勢いが衰えていない。ドラマに登場するサムスンのPCや携帯電話、LGのTVや家電までもすごい勢いで販売が伸びているという。


 11月にあった俳優ソン・スンホンの除隊では日本や中国、台湾、シンガポールなどから5000人以上のファンが詰め掛けたそうだし、済州道であった韓流エキスポ開幕式ではヨン様が30分登場するだけで日本からの参加者が軽く3500人を超したそうだ。驚いたのは遠い砂漠の国、中近東でも韓国のドラマが人気で、韓国製の黄金TVやプラチナ携帯といった韓国や日本では見たこともないようなすごい製品が売れているそうだ。


 韓流ファンたちは韓国人にとってありがたい存在だ。自国の文化を尊重してくれて、ドラマや映画を観ながら一緒に感動してくれる仲間だからだ。この勢いに乗って、ITでも韓流が続いてくれればという思いもあるが、一方でサムスンとLGの独走ゆえに、韓国にはこの二つの会社しかないのかと思われるのは悲しい気もする。


 冒頭に紹介したITUテレコムワールド2006に参加するのは世界40カ国、700以上の企業だ。韓国からは日本のNTTのような電話・通信企業であるKT、携帯電話会社のSKテレコムとKTF、加入者100万人を目前した衛星DMB(日本の衛星をシェアしている衛星モバイル放送)のTUメディア、端末関連ではサムスン電子とLG電子といった韓国を代表する大手IT企業が参加する。


 韓国勢の展示の目玉は、今年から商用化された3.5GのHSDPA、Wibro(モバイルWimax)といった新しい通信サービスと端末。IT強国と自負しているだけあって、世界に向けあっと驚くような最新技術を紹介するべきという義務感を感じているようだ。KTとKTFは「ユビキタスライフパートナー」というテーマで公園(U-Park)、商店街(U-Mall)、駅(U-Station)、地下鉄(U-Metro)、家(U-Home)など、生活の中の具体的なシーンを挙げた展示コーナーを設けた。


 SKテレコムは「Innovation & Inspiration」がテーマで、日本でも提供されている携帯電話での決済、いわゆるおサイフケータイ機能のほかに韓国が発信地となったマルチメディアサービスを展示する。1回の決済で再課金なく、PC、MP3プレーヤー、携帯電話など、いろいろな端末から音楽を再生できる「Melon」、携帯電話が人の動きに反応してゲームの操作が簡単にできる「GXG」、世界4カ国でサービスされているメガヒットSNS「モバイルサイワールド」などを展示する。


 日本ではなかなか定着しないモバイル衛星放送も韓国ではポピュラーな存在だ。韓国では有料サービスにもかかわらず高速鉄道や地下鉄の中を含め全国95%に至るカバレッジの広さとチャンネルの多さから人気を集めていて、映像15、オーディオ19チャンネルを提供している。利用できる端末も54種類と選択の幅が広く、加入者数100万人まであともう少し。ITUでもそのノウハウに注目が集まっている。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月5日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061205/256061/