2000年から始まった韓国のVoIPサービスは、当初のパソコンを使ったソフトフォンで、その品質が悪かったためにVoIP離れを定着させてしまった。しかし、2004年になって品質基準や事業者許可基準、接続料問題、緊急電話や位置追跡問題、セキュリティなどの議論が始まり、VoIPは加入電話と変わらない通話品質で安心して使える電話であるという認識改善と2008年10月31日から始まったVoIPの番号移動制度、不況による通信費節約のニーズから、韓国では2009年人気を集めるサービスとしてVoIPが注目され . . .
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韓国版モバイルWiMAX、携帯でのVoIP利用や搭載自動車開発へと用途広がる
日本では2月から始まったモバイルWiMAXサービスがちょっとした話題のようだが、韓国では、同様のサービス「WiBro」が2006年に商用化された。当初は高速で移動しながらもブロードバンドが使える「携帯インターネット」として注目されたが、注目度のわりにエリアがなかなか広がらなかった。いまや、都心よりも無線インターネットを必要としているのは、地方居住のユーザーなのだが、そういった人々には使いたくても使えないサービスという位置付けだ。
また、使い方もUSB型のモデムをノートパソコンに差し込んで使うのがメインだったため、WiBroが持つもっとも魅力的な要素である「高速で移動しながらも使える値段の安いモバイルインターネット」というメリットが活かされなかった。
WiBroのショールームを作り体験イベントを開催しても、アクセスポイントがあるソウルの都心に住む人や首都圏大学に通う大学生、記者を除いては、WiBroを利用するべき理由が見つからなかった。KTも年々WiBroに力を入れなくなっているようにも見えるし、SKテレコムも政府に催促されてUSB型モデムは発売したもののそのまま放置しているという印象が強かった。
ところが、そのWiBroが2009年に入ってから再び注目の的になっている。3月11日に行われた現代自動車の新車発表会では、WiBroをサービスしているKTと現代自動車が提携し、世界で初めてWiBroを搭載した自動車を開発することが発表された。
2009年内に現代自動車からWiBroモデムを搭載した新車を発売し、車の中で移動しながらブロードバンドを使えるようにするため協議を進めているという。現代自動車は賢い車(Smart Car)という特別なイメージカテゴリーをカバーする車種を持てるし、KTは世界に輸出される現代自動車と一緒に世界市場へ進出できる基盤を作れる。いわゆる「Win-Win」の関係として評価している。
さらに、KTは子会社KTFの3G携帯電話にWiBroを搭載して音声通話もできる企業向けモバイルVoIPサービスも始める。KTは「3GとWiBroの融合でより魅力的な端末を登場させ新しい市場を開拓し、海外にも進出したい」としている。
通信政策を担当する省庁の放送通信委員会は3月中にWiBro携帯電話に010局番を与えた。KTはWiBroに音声を搭載するからといってユーザー獲得のために移動通信と熾烈な競争をするつもりはないようだ。むしろ、機能の融合で斬新なサービスを提供し、新しい顧客層を狙うため、ブラックベリーで成功したカナダのRIMをモデルに企業向けにターゲットを絞ったVoIPサービスにするという。
端末の開発やネットワーク連動などの作業があるため、WiBroを使ったモバイルVoIPが始まるのは早くても10月。筆者としては、WiBroのサービスエリアがまだ全国をカバーしていないため、携帯電話端末を使って料金の安いVoIPを利用できるとうたったところで、使いたくても使えない「絵に描いた餅」になるのではないかと少々心配だ。
放送通信委員会も同じ懸念を持ったのだろうか。WiBroのエリア拡大を支援するとしている。2013年までにモバイルコンテンツの市場規模を1兆ウォンから3兆ウォン規模にまで成長させるための「モバイルインターネット活性化計画」を発表し、キャリアのモバイルコンテンツ料金回収手数料値下げ、多様なパケット定額導入と並んでWiBroのエリア拡大を推進する方針である。
さらにWiBroを海外輸出戦略品目に選定し、総力支援するともしている。WiBro、DMB(モバイル放送)、IPTV、放送コンテンツを海外輸出4大品目に指定し、海外でのマーケティング費用として2009年だけで66億ウォン(約4.4億円)を支援する。ターゲットはブロードバンドの普及が遅れている南米、ロシア、アジア、東ヨーロッパ。WiBroモデム装備の輸出も順調に増加すると見込んでいる。
韓国が開発した技術として自慢しながらもここ1年ほど目立った話題のなかったWiBroだけに、次々に新しい計画が発表されるのは嬉しい。これが計画で終わらずちゃんと製品化され通話品質も問題なくカバレッジも全国へ広がれば、携帯電話と同じ番号で安いWiBro電話を使わない手はない。2009年は韓国でも日本でもWiBro、モバイルWiMAXそれぞれにおいて、メルクマールとなる年になりそうだ。
(趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
2009年3月12日
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090312/1013066/
韓国のVoIP市場 KT、メモリフォン事業に進出(2006年8月7日 掲載)
ブルートゥースによる無線で
大手参入で市場は激変か
【ソウル発】 KTはPCにUSBを差し込めばインターネット電話(VoIP)が使えるメモリフォン事業に乗り出す計画だ。キャリアのLGテレコムが携帯から固定電話料金で電話をかけられるサービスを開始し、KTもより値段の安い電話サービスを求められていた。
固定電話サービスの独占事業者であるKTがVoIPにまで乗り出せば、インターネット電話市場への影響はかなり大きいと予想される。
メモリフォンとはUSB保存装置にインターネット電話プログラムユーザー情報を内蔵したもの。インターネットにつながったPCにUSBメモリフォンさえ差し込めば、いつどこでもログインなしでインターネット電話を利用できる。
KTはメモリフォン事業のためにアイオセル、KMTEC、イノステックなどUSB端末製造会社を選定し、一般ユーザーを対象に非公開テストサービスを始める予定だ。
メモリフォンはBluetoothを駆使した無線ヘッドセットを利用する。128MBのメモリを内蔵しているので、移動型保存装置としても活用できる。
課金はあらかじめ充電した金額分、利用時間に応じて差し引かれるプリペイド制と毎月無制限に使える定額制がある。
USBメモリフォンは昨年下期から登場し、一部中小企業からサービスされている。 KTがメモリフォン事業に関心を持つのは、個人用インターネット電話市場を攻略するためとみられている。
KTはこれまで電話機を使うIP電話方式のインターネット電話事業を展開してきたが、IP電話は端末が高価なため主に企業が使っている。
個人ユーザーたちはIPフォンよりは使いやすく値段も安いヘッドセット型のソプトフォンを利用している。またスカイプ、アイエムテル、ネイバーフォンなどソフトフォンサービス提供会社がどんどん増えているため、有線電話市場を奪われているKTとしては、積極的な防御が必要な時期でもある。KTはメモリフォン体験顧客を募集し、7月から8月までテストサービスを提供してから商用化計画を決める。
韓国でインターネット電話相互接続が完了してから、KTのほかにも新規VoIP事業者のサービスが今年から本格的に提供され始めている。さらに、事業許可が一度保留されたケーブル事業者連合会の VoIP事業が許可されれば、VoIPは「トリプルプレーサービス(TPS)」の一環として注目される見込みだ。
既存事業者のなかではDACOMがポータル事業者と連合し、着・発信できるVoIPサービスをより強化する態勢だ。DACOMはNHN(ポータルサイトNaver)と協力し、NHNメッセンジャーフォン加入者を対象に提供してきた発信用VoIP事業を着・発信できるVoIPへ拡大させる計画であり、早いうちに自社VoIPプログラムを内蔵したUSBメモリフォンの供給を始め、VoIPの大衆化に乗り出す予定だ。
趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト)
[BCN This Week 2006年8月7日 vol.1149 掲載] Link
韓国 政府機関がVoIP導入(2006年12月18日 掲載)
来年の商用化に先立ち検証作業
【ソウル発】韓国政府機関の電話が電子政府通信網を利用した070局番のインターネット電話(VoIP)に変わる。情報通信部本部、政府統合電算センター、労動部、関税庁、海外広報院の5つの政府機関は11月30日から電子政府通信網基盤VoIPを利用することになった。2007年のVoIP商用化に先立ち、通話品質、他の通信網との相互連動性、費用効果分析およびセキュリティなどを検証するためだ。
今回のVoIP導入は、2010年にすべてをインターネットプロトコル(ALL-IP)網に切り替える計画に対応し、政府機関の電話料節減および多様なマルチメディアサービスを利用するため、政府統合電算センターの主導で推進されている。 韓国でインターネット電話が常用化されてから1年4か月、この1年間で市場規模は急拡大した。韓国IDCの調査では毎年平均54%成長し、05年の1570億ウォンから09年には9689億ウォンに高まると予想している。
00年1月、セロムC&Tが韓国で初めてPCからPCに電話をかけるインターネット電話無料サービスを提供して以来、03年末までこのような方式のインターネット電話加入者は20万人を超えた。安い電話料金は魅力だが、通話品質がとても悪く、インターネット電話は使い物にならないという認識が強まった。このため電話機を使う現在のVoIPがなかなか普及しない状況だった。
05年8月、三星ネットワークスが韓国で初めて070局番のインターネット電話を商用化してから、11月にKT、12月にはHanaroTelecom、SKテリンクなどがサービスを提供し始めたが、まだ加入者は13万人ほど。PCから利用するVoIPの加入者は90万人ほどだ。
政府機関がVoIPを導入することで信頼性が高まり、利用も増えるのではないかと期待されている。
趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト)
[BCN This Week 2006年12月18日 vol.1167 掲載] Link