2G対応スマートフォン魅力向上でWi-Fi競争が激烈に

韓国の移動通信事業者であるKTとSKテレコムは第3世代(3G)に限らず、第2世代(2G)対応スマートフォンからも無線LANを利用して自由にインターネットにアクセスできるようにすると発表した。

 SKテレコムは、米グーグルが開発した携帯電話向けOS「Android」を搭載するモトローラのスマートフォンを2G向けにも発売するとしている。中国で2008年12月に発売されたXT800と同じモデルで、3.7型WVGAタッチスクリーン、Android 2.0、GPS、500万画素カメラ、LEDフラッシュ、Wi-Fi機能を搭載する。これに地上波DMB(韓国のワンセグ)が追加される予定。KTも3G対応スマートフォン10種のほかに、無線LANを利用できる2Gスマートフォンを15種発売するとしている。


 データ通信サービスを利用する3Gは「高仕様」、音声通話中心の2Gは「低仕様」、という区別はなくなってきている。2Gでもタッチスクリーン、大画面、高画素カメラを搭載する“プレミアム携帯電話”としてスマートフォンが人気だ。代表的な機種はサムスンのHapticシリーズである。


 韓国では3Gに機種変更すると電話番号を変えないといけない理由から(局番は011、017、016、018、019から010へ、3桁+4桁の電話番号が4桁+4桁になる)、2Gに固執するユーザーが根強くいる。2G対応の高仕様・高価格端末は3Gに比べ奨励金が少ないので端末価格は高くなってしまうが、それでも番号を変えたくないユーザーに受け入れられている。



問題はWi-Fi接続の未整備



 3Gのスマートフォンに限らず、2G端末からも無線LANが利用できるようになったことで、通信事業者の間では端末やコンテンツ競争以上に、「無線LANサービスエリア競争」が始まっている。


 韓国の通信事業者は家庭向け有線ブロードバンドとW-CDMAにばかり集中していたため、屋外の無線LANのアクセスポイントは増えるどころか減少していた。2004年まで首都圏のどこでもKTの無線LAN電波が届いたが、加入者の伸び悩みを理由にだんだんとアクセスポイントが減り、2008年ころになるとすっかり自宅でしか使えない無線LANサービスになってしまった。そのため、街中でノートパソコンやiPodからインターネットにアクセスしたい場合は、パスワードを設定していない誰かの無線LANモデムに接続するしかなかった。


 無線LANスポットが少ない分、無線LAN対応の良しあしがスマートフォンの選択条件の大きな一つ。KTが独占販売するiPhoneに加入すればKTの無線LANを利用できる(無料)。一方、SKテレコムのOMNIA2(サムスンのスマートフォン)に加入すると利用できる無線LANスポットがKTより少ない。スマートフォンは移動通信事業者3社から発売されているため、無線LANのスポットが多く使えるスマートフォンが当然便利である。



KTは「ただ乗りやめて」



 KTは現在1万3000ある無線LANスポットを2010年内に2万7000に増やす計画だ。SKテレコムはカフェやレストランなどを中心にフリースポットを増やす方針である。同社は無線LANスポットを持っていないため、提携先の無線LANモデムをフリースポットにしてもらうことで、スマートフォンやノートパソコンを使う人は誰でも無料でインターネットにアクセスできるようにするという。


 一方、ほかの通信事業者より早くインターネット電話サービスを始めたLGテレコム。約200万世帯がLG系列のブロードバンドと無線LANを使ったインターネット電話サービスを利用している。加入者宅にある無線LANモデムにパスワードを設定しない方法でフリースポットとして利用できるのではないかという話もあったが、個人が利用料を支払う無線LANを、スマートフォンへのサービスのために通信事業者がフリースポットにしてしまっていいのか、議論がある。接続速度が落ちるだけでなく、同じネットワーク上に知らない人がつながることでデータハッキングの可能性もある。


 KTの無線LANに加入するカフェやレストランが、モデムにパスワードを設定しないことでフリースポットとして無線LANを使えるようにすると、当然、KTの無線LAN加入者数は伸びていかない。自社の投資にSKテレコムやLGテレコムが便乗することになるため、KTは、「ただ乗りするなんて許せない」、「セキュリティのためにも家庭や企業の無線LANモデムにパスワードを設定してほしい」と訴える。


 スマートフォンのほかにも無線LANを利用できる電子ブックリーダーが次々に発売され、iPadのようなタブレット、無線LANを利用するモバイルVoIPも続々登場している。韓国通信事業者による、無線LANのアクセススポット数増加やサービス向上競争の激化は免れず、4G商用化まで続くとみられる。



(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年2月4日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100204/1022688/