Twitterや検索キーワードを悪用、あの手この手の選挙運動

韓国では6月2日、地方選挙が行われる。韓国の選挙法では選挙120日前から本人による対面名刺配布・電子メール・選挙管理委員会の承認を得た印刷物の郵送による選挙運動ができるが、他人による選挙運動は事前選挙運動として取り締まりの対象になる。

 Twitterやブログ、インターネットコミュニティー、動画投稿サイトなど、韓国人が日常的に使う情報源となるサイトを利用してはならないという、IT大国らしくない規定がある。しかし、選挙法にひっかからないよう、あの手この手を使ったインターネット選挙運動が問題になっている。


 先日は、自分の名前が検索キーワードランキング上位になるよう、有名ポータルサイトから繰り返し検索させる知識検索(Yahoo!知恵袋のようなユーザー同士の質問と答え)に自分に関する質問と人柄を褒める答えを繰り返し書き込む方法を取った選挙候補が「事前選挙運動」違反で逮捕された。「○○区選挙候補」と検索すると、自分の名前が検索結果上位になるようにしたわけだ。


 この候補はオンライン広告代理店にお金を渡して選挙運動を依頼し、代理店がアルバイトを雇ってこのようなことをしていた。さらに、代理店が100人以上もの個人情報を盗みIDを作って、ポータルサイトに特定候補を褒め称える質問と答えを書いていたことから、実名制度の穴ともいえる個人情報管理実態が問題になっている。こんなに簡単に盗まれて悪用されてしまうようでは実名制度(参考記事はこちら)の意味がないからだ。


 検察は地方選挙を前に、Twitterをはじめインターネットに特定候補に有利な印象を与えるよう宣伝の書き込みをすることを「選挙犯罪」として取り締まっている。してもいない世論調査をでっちあげて、「○○候補が支持率1位」と何十回も書き込んだ50代の男性も逮捕された。市長のメールをハッキングして選挙動向を探りライバル候補に渡した公務員もいたというから、選挙は怖い。

選挙まで約40日残した時点で、616人が立件、23人が拘束されている。数字だけ見れば2006年の選挙に比べると減っているとは言え、選挙候補だけで約1万5000人。これに関連する選挙運動組織まで含めると、監視対象はきりがない。


 選挙管理委員会は8000人規模の「選挙不正監視団」を運営している。インターネットについては250人体制で24時間モニタリングし、選挙法違反をチェックしている。このほかに警察からサイバー捜査員945人、一般市民から募集したサイバー名誉警察「ヌリカップス」1181人が動員され、インターネット選挙運動監視を担当する。


 政府の調査によると、インターネットを悪用した選挙法違反が選挙法全違反件数に占める割合は、2004年の9.2%から2010年現時点において14%にまで大きく増加している。人々のコミュニケーションが対面や郵便・電話から、インターネット、ソーシャルネットワーキングサービスへ移行しているからだろう。


 さかのぼれば2002年、「インターネットの力で大統領が誕生した」と言われたものだが、その後選挙法が厳しくなったことで、ネットの世論に押されて政権が変わるといったことはなさそうだ。それでも、韓国ではネットが世論の中心であることは間違いない。2002年当時でも紙の新聞より信頼されていたネット上の新聞であったが、2010年、Twitterが特ダネの発生地になりニュース源として、より信頼されるようになっている。選挙運動にTwitterを利用できないのは、今度の選挙が最後かもしれない。


 選挙では使えないTwitter、一方で企業では積極的に利用されている。CEOが自分の日常をTwitterでつぶやいて親近感を与えることで企業イメージアップを狙うのは当たり前。韓国の大手企業は部署別にTwitterを運営しているほどだ。最近は病院が患者とのコミュニケーションのためにつぶやいていることが話題になっている。


 韓国のへぇ~なTwitter事情もまた今度詳しくお伝えしましょう。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年4月28日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100428/1024636/