WHOのインターネット依存診断ガイドラインを韓国が作成することに [2014年10月10日]

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韓国中毒精神医学会は2014年10月8日、同学会がWHO(世界保健機関)のインターネット依存(ネット中毒)診断ガイドライン制定業務を遂行することになったと発表した。韓国中毒精神医学会は精神医学を専門とする医師が参加する学会である。

 同学会はWHOから経費の一部を支援してもらい、2017年までにインターネット依存を診断するためのガイドラインを制定する。2017年導入予定であるWHOの第11版国際疾病分類(International Classification of Disease 11th Revision:ICD-11)に合わせてガイドラインを提示し、WHOはこれを世界各国に勧告事項として配布する。これは、10月2~6日に横浜で行われた国際嗜癖医学会(International Society of Addiction Medicine)で決まったことだという。

 その背景としては、インターネット依存が世界各国で社会問題になっているものの、まだ国際的にインターネット依存かどうかを診断する共通のガイドラインがないことがきっかけとなった。韓国中毒精神医学会は2000年代初めからインターネット依存に注目しており、少年400人を2005年から2012年まで7年間観察して、青少年のインターネット依存実態を追跡した論文で注目されたこともある。

インターネット依存は世界各国の社会問題(イメージ写真)

 インターネット依存は、パソコン通信の時代から問題になっていた。韓国ではインターネット依存の中でも「オンラインゲーム中毒」が社会問題となり、その治療と予防を国家政策として取り組んできた。

 韓国では、政府が「インターネット中毒予防相談センター」を2002年にオープンしている。韓国政府の説明では、これは世界初のインターネット依存、オンラインゲーム中毒を治療するための施設だという。このセンターで韓国初の「インターネット中毒診断尺度」が作られ、今でも自己診断用や学校での集団テスト用に利用されている。

 診断尺度を見ると、「インターネットをしないと不安で何も手につかない」「長時間インターネットをしてしまい予定をキャンセルしたことがある」といった項目がある。韓国は年に数回、小中高校で教師がこの診断尺度を利用して子供達のインターネット依存をチェックし、危険な状態という結果が出た場合、心理カウンセラーと相談できる場を作る。

 オンラインゲーム中毒は、ゲームのキャラクターになりきって現実の自分を忘れられることから、受験勉強や成績競争に疲れた子供たちが現実逃避として中毒になるケースが非常に多い。



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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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